空間反転対称性の無い系の超伝導状態におけるスピン帯磁率の理論的研究 数理物理科学専攻 量子多体物理学研究室 41418133 横山 真司 空間反転対称性の欠損した系においては空間反転対称性の欠損により生じる ASOC(antisymmetric spin-orbit coupling) の影響によりバンドが二つに分裂する。そ して Rashba 型の ASOC では図 1 の (a) のように Fermi 面上の各点ごとにそれぞれ異 なったスピン量子化軸を向いているような電子状態になる。このため超伝導状態について も従来型超伝導体とは異なる特性が現れることが示唆されている。その一つがスピン帯磁 率の温度依存性である。スピン帯磁率の温度依存性は従来型の超伝導体では spin-singlet 状態と spin-triplet 状態を区別する重要な物理量であるが、そこに ASOC の効果がどの ように現れるか議論されている。 本研究では外部磁場を Zeeman 項として考慮し、Bogoliubov-de Gennes 理論により Rashba 型の ASOC を持った空間反転対称性の無い超伝導体の磁場下の電子状態につい て研究を行った。この結果磁場をかける方向や ASOC の強さを変えることで状態密度や spectral weight がどのように変化するかを調べた。またそれをもとに図 1(b) のようにス ピン帯磁率の温度依存性についても計算を行い、その振る舞いの特徴について電子状態と 関連付けて考察を行った。その結果、ASOC によりスピンが面内に固定されることで超 伝導ギャップ近傍の磁場方向に対して平行なスピンと反平行なスピンの DOS の差が変更 されることと、スピン帯磁率の振る舞いを関連付けることが出来た。 spin susceptibility 1 0.8 0.6 0.4 triplet singlet singlet triplet singlet and triplet singlet and triplet 0.2 0 0 (a) (b) 図1 0.2 z-direction z-direction x-direction x-direction z-direction x-direction 0.4 0.6 0.8 temperature [T / Tc] 1 図 (a) は Rashba 型の ASOC をもつ系の Fermi 面のスピン構造を表している。 図 (b) はスピン帯磁率の温度依存性。x 軸は温度を、y 軸はスピン帯磁率をそれぞれ超 伝導転移温度と常伝導状態のスピン帯磁率でスケールしている。 1.2
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