有機薄膜太陽電池のための新規材料の開発

NREL, Best Research-Cell Efficiencies
近年、有機太陽電池は、低製造コスト・軽量化が期待で
きることから、次世代太陽電池として注目を集めていま
す。この新型太陽電池の性能に決定的な影響を与えるの
PCBM
は、電子ドナー材料と電子アクセプター材料の混練体か
らなる活性層であり、世界中で新材料の開発が進められ 2001年以来、PCBM は現在
に至るまでアクセプター材料
ています。
の業界標準
本発表では、有機薄膜太陽電池に用いる材料のなかでも、
開発が遅れているアクセプター材料に着目し、分子設計 より優れたアクセプター材料の
開発を目指した系統的な研究、
-合成ならびに新合成法の開発-物性ならびにデバイス 最適な分子構造を探る研究は、
性能評価という、一連の開発研究について紹介します。 ほとんど行われていない。
開放端電圧向上を指向した分子設計
材料評価
変換効率(η) = 開放端電圧(VOC) ×短絡電流密度(JSC) × 曲線因子(FF)
ドナー材料とのマッチングを評価
LUMO
変換効率(η) = 開放端電圧(VOC) ×短絡電流密度(JSC) × 曲線因子(FF)
LUMO
γ
electron →
デバイス活性層におけるドナー・アクセプタ
ーの分子集合体構造(モルフォロジー)が電
流(Jsc)、曲線因子(FF)に多大な影響を与える
Vo c
HO MO
Donor
← hole
Acceptor
Probe
γ
SL
θ
LV
γ
SV
Sample film
HO MO
Glass
Kaelble-Uy: γtotal = γd + γp (mJ/m2)
高LUMOエネルギー準位化によるVoc向上
分子軌道計算による構造・エネルギー設計
活性層の相分離構造
(原子間力顕微鏡)
ドナー/アクセプター材料間の分子極性
差が相溶性に影響を与えていると推測
デバイスの試作と性能評価
設計した新規アクセプター材料の合成
ソーラーシミュレーター
X=
など…
Y=
(n = 5,9,13,17)
材料薄膜の接触角測定から表
面自由エネルギーを算出し、分
子極性を評価
ITO
透明電極
Al電極
緩衝層(TiOx)
活性層
(P3HT:アクセプター)
Voc: 0.68 [V]
Jsc: 7.99 [mA/cm2]
FF: 0.62
η: 3.31%
DMPCEP
など…
PEDOT:PSS
効率的な材料製造法の開発
マイクロリアクターを用いるフラーレン誘導体の選択的合成法の開発
・高速混合、精密温度制御、精密滞留時間
制御により、逐次反応をコントロールして選
択的にモノアダクト(PCBM)を合成する/数
時間かかる反応がわずか数分で完結
既知合成法の問題点
マイクロリアクター: KeyChem-L (YMC CO., Ltd. )
水の影響を受けないPCBM類合成法の開発
・低収率(<40%)
マイクロミキサー
イオウイリドを用いた[6,6]メタノフラーレン直接合成法の開発
カラム分離精製が必須
・無水条件、かつその度合いにより反応速度・生成比に影響
・反応時間が長い (70oC, 22h, [5,6]-PCBMが生成する)
・高温条件が必要 (180℃, 2-7h, [6,6]-PCBMへの異性化)
・窒素ガスが生じるため大量スケールでの合成に不向き
イオウイリドの反応
・水を用いた二層系反応により、
簡便高収率にメタノフラーレンを合成
・[6,6]-PCBMを直接合成
・高収率
・光反応により、異性化反応の時間を短縮
・室温条件下での反応
・窒素ガスを生じない
・簡便操作