page2015 FFGS セミナーレポート[1] 「省資源」の徹底で印刷ビジネスに活力を。 ~もっと儲かる。もっと稼げる。~ 富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ株式会社 平成 27 年 3 月 10 日 2 月 4 日から 6 日にかけて開催された『page2015』において、富士フイルムグローバルグラフィッ クシステムズ(社長:渥美守弘、以下 FFGS)は、展示会場でのソリューション紹介に加え、「省資 源」「Web to Print」「ワークフロー」に関するソリューションをより深く掘り下げて解説する FFGS セミ ナーを実施した。本稿では、2 月 4 日開催の「『省資源』の徹底で印刷ビジネスに力を。 ~もっと儲 かる。もっと稼げる。~」の概要を紹介する。 ----富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ株式会社 技術一部 部長 奥野 敬 本日は、FFGS が提唱する「省資源」について、5 つの切り口から紹介する。省エネとい う言葉はよく聞くと思うが、エネルギーだけでなく、より大局的な観点で捉えた概念であ る。 印刷業界は依然として厳しい状況が続いており、 『印刷白書 2014』 (公益社団法人 日本印 刷技術協会)によると、2012 年の売上高は 5 兆 6,170 億円で、営業利益率が 1.1%。2013 年、2014 年と利益率は上がってきていると言われているが、厳しい状況には変わりがない。 こうした中で経営を進めていくには、当然ながら、売上を伸ばし、コストを削減し、利 益率を高めていくことが重要。売上を伸ばすための取り組みとしては、商品である印刷物 の付加価値を上げていく、新しい分野に事業領域を拡げる、企業価値を高める、などが考 えられるが、これらと同時に、さまざまなコストを削減することで利益を上げていくこと が重要である。この「利益アップ」のお手伝いをさせていただくのが、これからご紹介す る「省資源ソリューション」である。 ■「5 つの省資源」で生産性向上・コスト削減・環境対応を実現 印刷にかかるコストの内訳を見てみると、最も大きな割合を占めるのが用紙。次いでイ ンキ、光熱費となる。印刷物の特性により、それぞれの割合は変動するが、大きくはこの ような内訳になっている。つまり、損紙の削減やインキ使用量の抑制などが、コスト削減 には効果的である。こうしたコスト削減を多角的に支援し、皆さまの利益アップに貢献し ていくことが、省資源ソリューションのコンセプトである。 FFGS では「省資源」を、 「省材料」 「省工数」 「省エネルギー」 「省排出」 「省ウォーター」 の 5 つの角度から追求している。これにより、生産性向上・コストダウンを図り、同時に 環境対応も実現しながら、利益アップにつなげていく。 「5 つの省資源」それぞれのポイン トは次の通り。 ・省材料…消費している材料に無駄はないか。コスト比率の大きい材料に着目して重点的 に削減する。 ・省工数…当たり前だと思っている作業時間はないか。仕方がないと思っているトラブル はないか。 ・省エネルギー…印刷機の駆動や乾燥装置など、生産工程の電気・ガスの使用量を抑える。 ・省排出…廃液・廃水・排気(VOC)など、環境によくないものは出さない。 「排出」にも コストはかかる。 ・省ウォーター…日本では“湯水のごとく”使ってしまいがちだが、水も無駄な使用を減 らすことが大事。 これらの省資源は、利益アップのための課題、つまり“What” 。この“What”を達成す るための方法、つまり“How”を、FFGS は 5 つのソリューションとして提案している。 それぞれの概要をここに紹介する。 ▽完全無処理サーマル CTP システム『XZ-R』 先に挙げた「5 つの省資源」すべての項目に貢献するソリューションである。現像液やガ ム液、水洗、自現機、自現機のメンテナンス作業がすべて不要になる。 実際の導入事例として、大阪の株式会社遊文舎様の例を紹介する。同社では現在、CTP 版は 100%『XZ-R』で運用されている。完全無処理化によって、自現機のメンテナンス作 業から解放されたほか、大幅な省スペース化が図れ、自現機のスペースにオートローダー を設置することによって生産性アップも実現。約 1.5 人分の人件費削減につながり、間接費 も年間 300 万円ほど節減できたという。 この『XZ-R』は、世界中の刷版生産拠点で製造を行なっており、現在までにワールドワ イド約 3,000 社、国内では約 450 社に導入いただいている。 ▽自動現像処理システム『ECONEX II』 富士フイルムでは、有処理タイプのサーマル CTP についても、省資源に寄与するシステ ムを提供している。その核となる自動現像機『XP-940R/1310R』は、安定性に優れた独自 の補充システムを採用することで、 「3 万㎡または 6 カ月」というロングバスライフを達成。 これにより「省材料」 「省工数」に貢献する。さらに、現像廃液削減装置『XR』と再生水再 利用装置『XR-R60』の組み合わせにより、廃液の排出量と水洗水の使用量も削減可能。 「省 排出」 「省ウォーター」も実現する。 『ECONEX II』を導入いただいたアート印刷株式会社様では、液交換頻度、廃液量が削 減でき、加えて、現像液感度の安定性向上といったメリットも出ている。母液の発注頻度 も少なくなったため、材料のコストダウンが実現。XR の導入により、廃液処理コストは従 来の 3 分の 1 程度まで削減できている。 ▽環境対応印刷関連薬品『ECOLI-CHEMICAL SERIES』 湿し水をはじめとする印刷薬品は、印刷コストに占める割合としては 1%程度にすぎない が、湿し水によって、コスト比率の大きい用紙やインキの使用量を削減することができる。 すなわち、印刷現場で起こるさまざまなトラブルは、湿し水で解消することができ、それ が、損紙の削減やインキの削減につながっていく。 その中でユニークな例が、ブランパイリング抑制ケミカル『アンチパイリング M1/K1』 である。これを使用することにより、ブランケットの洗浄回数を大幅に低減することがで きる。ブランケットの洗浄作業は、印刷機を停めて行なうため、とくにオフ輪では大きな ロスになる。洗浄頻度の低減は、印刷機停止時間の削減になり、生産効率アップ、損紙低 減に寄与。その結果、 「省工数」 「省エネ」 「省材料」が実現する。 実際に『アンチパイリング M1』を活用いただいているオフ輪大手印刷会社様からは、 「印 刷機の稼働時間が月 41 時間も増加し、損紙による出費が月あたり 300 万円もダウンした」 とのご報告をいただいている。このユーザー様では、ブラン洗浄頻度が従来「5 万枚に 1 回」 であったところ、 「10 万枚に 1 回」へと半減し、1 日あたり 100 分ほど印刷機を多く回せる ようになった。 ▽『XMF』インキ削減機能/FM スクリーニング『TAFFETA』/高精細スクリーニング 『Co-Re SCREENING』 ワークフローシステムとスクリーニングの組み合わせで省資源を実現するソリューショ ンである。実証テストの結果、ハイブリッドワークフローシステム『XMF』に標準搭載し ているインキ削減機能により 10~30%、 『TAFFETA』 『Co-Re SCREENING』により 15 ~25%のインキ削減効果が確認できている。インキ量の削減は、セット時間の短縮につなが り、 「省材料」はもとより、 「省工数」 「省エネルギー」に寄与する。 神戸の服部プロセス株式会社様では、GCR 機能の活用により、トータルのインキ使用量 が約 24%減少。さらに、乾燥性が向上したことで、 「次工程に回すまでの待ち時間の短縮」 「裏移りの激減」など、さまざまなメリットが生まれている。 また、神奈川県の株式会社野毛印刷社様は、AM175 線から『Co-Re SCREENING』250 線への切り替えを進められ、AM175 線時の調子再現を維持したまま、現状、4~5%のイン キ量削減を達成されている。同時に、高精細化によって品質が向上し、宝飾・アパレル分 野などのクライアントから高い評価を得ているという。 ▽印刷工程改善支援ソリューション『Eco&Fast Printing』 印刷工程における生産性向上・コスト削減などを支援するコンサルティングソリューシ ョンである。まず、セミナーや勉強会で、印刷工程のさまざまなトラブルやその対処法な どを理解していただいたうえで、 FFGS のプリンティングアドバイザーがお客さまの現場に 出向き、印刷機診断を実施。その結果に基づき、具体的な改善方法の提案から実践のサポ ートまでを一貫して行なう。その結果、 「印刷時の水・インキ量の最適化」が実現し、多く の省資源効果が得られると同時に、生産現場の体質強化も図れる。 2014 年から『Eco&Fast Printing』に取り組まれているアート印刷株式会社様では、水 が約 20%絞れ、インキ量も 7~8%削減。網点のス抜けや形状崩れも低減し、品質も明らか に向上しているとのこと。また、新潟の株式会社第一印刷所様では、前準備時間が 30%短 縮したほか、パウダー量が何と 50%も削減され、大きな成果が挙がっている。 以上、 「省資源」を実現する 5 大ソリューションについて、事例とともに紹介してきた。 ぜひ、これらのソリューションを活用しながら、省資源の実践によって“もっと儲かる印 刷”を目指していただきたい。その過程で、FFGS の営業マン・技術スタッフをどんどん利 用していただければ幸いである。 最後に、水上印刷株式会社の取締役管理本部長・荻野正彦様から、省資源を実現するた めの「印刷工場のあるべき姿」について提言をいただく。 ■省資源を実現するための「印刷工場のあるべき姿」 ――水上印刷株式会社 取締役管理本部長 荻野正彦氏 当社の生産拠点である多摩工場では、生産性向上のための取り組みとして「PPORF(ポ ルフ) 」という活動を 15 年ほど続けている。この活動の基本になっているのは「4S」 (整理・ 整頓・清潔・清掃) 。一般的には 5S だが、 「しつけ」はトップダウンの考え方。それに対し てポルフは、ボトムアップの活動であり、それが最大の特色である。「4S」のほか、「段取 り替え迅速化」 「多能化」など計 20 項目について、リーダーを 1 人ずつ決めて改善を進め ている。 当活動の目的は、 「自分たちの働きやすい職場」を目指し、その結果、強い製造体質の会 社をつくり上げること。そのために、「すべての結果の数値化」 「全員参加の快適職場づく り」 「改善前後の比較」 「ボトムアップ方式の実践活動」を徹底している。15 年続けている が、実際に効果が出始めたのは 5 年ほど経過してから。効果が出てくるとモチベーション もさらに上がってくる。ポルフの中から、いくつか具体的な取り組み内容をピックアップ して紹介する。 ・機械故障削減 印刷機のメンテナンスは、損紙削減につながる重要な要素。当社では、13 年前から、印 刷事故をコスト換算して集計しているが、当初はリカバリーにかかる費用が売上の 1%近く に達していた。現在は 0.3%を少し下回るぐらい。最終的には 0.1%まで減らしたい。印刷 機メンテナンスは、日・週・月ごとに項目を決めて実施。このうち週・月ごとのメンテナ ンスは機械責任者が行なう。昨年からは、月 1 回、土曜日に全号機メンテナンスを実施し ている。これはトップの指示ではなく、印刷課の課長からの申し出で始まった取り組み。 メーカーにも協力いただき、メンテナンス勉強会も兼ねている。 ・多能化 「機長認定試験」によって機長の資格を付与するという独自の制度により、多能化を推 進している。1 人が数台の機長資格を持つようにしており、1 週間に 1 度、ポジションチェ ンジする。これにより、柔軟な生産体制を組むことができる。また、若手にとっては「機 長への挑戦」がモチベーションになるというのも、この制度のメリットである。 ・教育 「教育には時間とお金を惜しまない」というのが、創業以来一貫して掲げている経営方 針の一つ。その一環として、DTP エキスパートなどの資格取得、drupa などの展示会への 積極的な参加、メーカーでの研修、同業他社との交換留学などを行なっている。また、多 摩工場には多数のお客さまが見学に来られるが、その際、各部門のオペレーターが自ら説 明を行なう。誰もが自分たちの仕事についてプレゼンできる能力を身につけるようにして いる。 とにかく、すべての基本になるのは「4S」 。メンテナンスのどこに問題があるのか、損紙 などの無駄・ロスがどれだけ出ているのか、ということは、工場をきれいにしてみないと 正確に把握できない。 「きれいな工場でしか良い印刷物はつくれない」というのが当社の基 本的な考え方。そして、 「人づくりこそが、ものづくりの原点」であるとも考える。トップ がいくら指示を出しても、現場が動かなければ何も進まない。現場の社員が自ら考え、動 けるようになるためには、 “人づくり”すなわち教育が非常に重要である。
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