濃度レベル 水質保全学(1) % 生活環境(BOD, N, P) 10 4 ppm (mg/L) 人の健康 有機物指標 急性毒性 重金属, 農薬, 溶媒, …. 3 ppb (μg/L) 生態系影響 慢性影響・発がん性 浦瀬太郎 10 10 3 ppt (ng/L) 明解 p5 BOD, COD, TOC • これらは,すべて有機物の指標である • BOD5 は,有機物が生物によって分解される 際に必要となる酸素量を測定する. • COD は,有機物を化学的に酸化剤 (たとえば K2Cr2O7 や KMnO4 )を用いて酸化するのに必 要な酸化剤の量を測定する. • TOC は,有機炭素量を測定する. 質問 • なぜ,水中の有機物は汚染物質とされるのか? かえって生物をはぐぐむ栄養ではないのか? Answer • 有害な有機物はいろいろあるが,BODなどで 対象とする有機物は総じて言えば,毒物ではな い. • 環境水中で有機物は分解し,酸素を消費する ので,水中の有機物が多いと酸素が不足し,多 くの高等生物が生きていけない。 明解 p7 グルコースが完全に酸化分解するとき の理論的BODを求めよ BOD • BOD5 は,有機物が分解するときに消費され る酸素量を測定する. 有機物 + 酸素 → 二酸化炭素 + 水 Ex) C6H12O6 + 6O2 → 6CO2 + 6H2O 生物分解が難しい有機物 全有機物 明解 p9 グルコースの分子量は180 酸素の分子量は 32 でその 6 倍は 192 生物分解が可能な有機物 (10 / 180)×192 ≒ 11 ここがBOD 10 mg Glucose / L = 11 mg BOD / L 明解 p13 BOD, COD, TOC BOD, COD, TOC 有機物 生物分解性 有機物 生物難分解性 TOC Biodegradable 生物分解性 測定値を過大に する要因 COD Cr Cl-, H2S COD Mn Cl-, H2S BOD5 Nitrification Non-Biodegradable 生物難分解性 TOC 測定値を過小に する要因 COD Cr COD Mn BOD5 Toxic compounds 1971 1999 多摩川の場合 多摩川のBOD値の改善 明解 p14 東京23区の下水道予算と下水道普 及率 典型的な値 普及率 100% 予算(億円) 3000 家庭下水 下水処理水 多摩川の水 80% 2000 普及率 40% 1000 0 1965 60% 予算 20% 0% 1970 1975 1980 1985 1990 下水道普及率は区部で100%,多摩地域 も90%以上になっている BOD5 (mgO/L) 200 5 3 CODcr (mgO/L) 300 30 10 TOC (mgC/L) 80 7 3 明解 p14 多摩川でのBODとCODの経年変化 典型的な値と除去率 14 BOD5 (mgO/L) 200 CODcr (mgO/L) 300 TOC (mgC/L) 80 下水処理水 多摩川の水 95% 90% 5 3 30 10 7 3 田園調布堰 12 BOD or COD (mg/L) 家庭下水 COD(Mn) 10 8 6 4 BOD 2 0 1960 1970 1980 Year 田園調布堰地点の多摩川(1970) 現在の多摩川 1990 2000 明解 p7 BOD5 • BOD5=DO0-DO5, (無希釈時). DO : 溶存酸素 • BOD は,生物化学的酸素要求量という. • もしも,アンモニア性窒素 NH3が試料に含まれ, 水に硝化細菌が含まれていると, 有機物量以 外にアンモニアの硝化のために酸素が用いら れる • BOD は,毒物を含んだ水の汚染度や海水の 汚染度を測定する指標としては不適格 • BOD は,下水,下水処理水,河川の環境など の指標として,有益 なぜ,BODの測定に 5日間を考えるのか 明解 p8 下水処理施設 テームズ川の感潮区間の水の滞留時間がだいたい5日 だったから。 明解 p7 Measurement of BOD5 U-BODs • BOD5=(DO0-DO5), 無希釈時. • DO(溶存酸素)は,アジ化ナトリウム変法もしく は電極法で測定 • Ultimate-BOD. 30日,あるいは,それより長 い期間での究極的な生物分解性を試験する 方法。 BOD5 は易分解性の有機物のみを測 定する。 • U-BOD試験は,化学物質の安全性試験など に用いられる。 • DO5 (5日目の溶存酸 素)はこのようなガラス器 具で測定 明解 p8 明解 p10 COD BOD センサー -BOD センサーはDO電極と微生物を固定化した膜とか らできている -短時間での測定が可能 -ただし,BOD5とは別指標ともいえる • COD は,酸化剤 (国際的には,K2Cr2O7 ,わ が国においては,廃液の処理などの観点から KMnO4)を用いて,水中の有機物を酸化する のに必要な酸素量で評価. • COD は生物難分解性のもの(5日間に微生物 で分解できないもの)を含む有機物量の測定に 有用である. • COD は,湖沼の環境基準に用いられている。 湖沼の水の滞留時間が5日より長いというのが 理由 • 塩分を含む水のCODの測定は難しい。塩化物 イオンも部分酸化するため。 明解 p10 Measurement of COD • 重クロム酸を用いるCODは右 のようなガラス器具で,直火加 熱で測定する。過マンガン酸を 用いるCODでは湯浴が指定さ れているが直火加熱の方が安 定した値が得られるという説も あり。 • 反応後,滴定で定量する. いろいろなCOD COD(Cr): K2Cr2O7, 2時間加熱,酸性条件,開放 還流式あるいは閉鎖還流式 国際的なCOD COD(Mn): KMnO4, 30分加熱, 酸性条件, 100℃湯浴 淡水のCOD測定(日本) COD(OH): KMnO4, 20分加熱,アルカリ条件, 100℃湯浴 海水のCOD測定(日本) COD自動分析器 理論的な完全酸化に対する酸化率(%) 全自動COD測定器 連続CODモニター ヒーター K2Cr2O7がパックされたキット 紫外吸光で相関を 取って測る 分光光度計 Solution COD(Cr) COD(Mn) 蟻酸 99.4 14 ステアリン酸 92.5 0 メタノール 95.3 27 グルコース 97.6 59 デンプン 86.5 61 グルタミン酸 102 6 COD(Cr)がほぼ完全酸化なのに対して,COD(Mn)は,ばら つきが大きい 明解 p12 塩素消費量 • 塩素 (Cl2 or HClO) は水中の有機物と反応する. • したがって,塩素の消費量は,有機物指標と考え ることもできる。浄水では水質管理の重要な指標 となっている。ただし,塩素はアンモニアとも反応 する。 測定法:DPD比色法など (プールでも使っている) TOC • TOC は水中の有機炭素量である. したがって, TOCの測定単位は1リットルあたりの炭素の質量, すなわち, mgC/Lである。なお,BODやCODは 酸素の質量mgO/L. • TOC は,サンプルを燃焼させて,生じた CO2 ガ スを測定する. • 測定で機械化が容易である. • SS(懸濁物質)を多く含む試料では,測定値がば らつく TOC 機器分析 DOC • TOCでよく用いられているのは, 600℃から 950℃での燃焼法である。高温の方が,完全な 燃焼分解が期待できるが,低温の方が共存す る塩分の影響を受けにくい。 • TOC = TC-IC. 有機炭素から無機炭素(要する に炭酸)を差し引いて,TOCとする。 • DOC (Dissolved Organic Carbon)溶存態の 有機炭素のこと。 自動測定器の見本 明解 p15 生活環境の保全に関する環境基準(河川) 項目類 型 生活環境の保全に関する環境基準(湖沼) 基準値 水素イオ ン濃度 (pH) 生物化学的 酸素要求量 (BOD) 浮遊物質量 溶存酸素量 (SS) (DO) AA 6.5以上 8.5以下 1mg/l 以下 25mg/l 以下 7.5mg/l 以上 50MPN/ 100ml以下 A 6.5以上 8.5以下 2mg/l 以下 25mg/l 以下 7.5mg/l 以上 1,000MPN/ 100ml以下 B 6.5以上 8.5以下 3mg/l 以下 25mg/l 以下 5mg/l 以上 5,000MPN/ 100ml以下 C 6.5以上 8.5以下 5mg/l 以下 50mg/l 以下 5mg/l 以上 - D 6.0以上 8.5以下 8mg/l 以下 100mg/l 以下 2mg/l 以上 - 10mg/l 以下 ごみ等の浮 遊が認めら れないこと。 2mg/l 以上 - E 明解 p15 6.0以上 8.5以下 大腸菌群数 項目類型 基準値 水素イオン 濃度 (pH) 化学的酸 素要求量 (COD) 浮遊物質量 溶存酸素量 大腸菌群数 (SS) (DO) AA 6.5以上 8.5以下 1mg/l 以下 1mg/l 以下 7.5mg/l 以上 50MPN/ 100ml以下 A 6.5以上 8.5以下 3mg/l 以下 5mg/l 以下 7.5mg/l 以上 1,000MPN/ 100ml以下 B 6.5以上 8.5以下 5mg/l 以下 15mg/l 以下 5mg/l 以上 - C 6.0以上 8.5以下 8mg/l 以下 ごみ等の浮 遊が認めら れないこと。 2mg/l 以上 - 明解 p15 質問 生活環境の保全に関する環境基準(海域) 項目類型 基準値 水素イオン 化学的酸素 溶存酸素量 大腸菌群数 n-ヘキサン 濃度 要求量 抽出物質 (pH) (COD) (DO) (油分等) A 7.8以上 8.3以下 2mg/l 以下 7.5mg/l 以上 1,000MPN/ 検出されないこと。 100ml以下 B 7.8以上 8.3以下 3mg/l 以下 5mg/l 以上 - 検出されないこと。 C 7.0以上 8.3以下 8mg/l 以下 2mg/l 以上 - - 質問 多摩川の平常時の流量は,80%以上が下水 処理水で占められている • 各有機物測定法の特徴を述べよ BOD COD • 次のものを測定する場合に,どの有機物指標 が適切ですか(BOD, COD, TOC) 1) 環境基準 2) 工場排水基準 3) 家庭下水の有機物量 4) 研究で物質の出入り(マスバランス)を知り たい場合 TOC 下水処理水の流入を示す 分析に要する時間 三鷹市単独 多摩川上流 仕事量 立川市単独 1.81m3/s 北多摩2号 0.56m3/s 北多摩1号 0.51m3/s 0.27m3/s 2.43m3/s 廃液の質と量 初期投資 ばらつきの小ささ 真の値からの偏り 0.45m3/s 八王子 0.93m3/s 八王子市 単独 0.41m3/s 浅川 0.97m3/s 南多摩 1.87m3/s 等々力 多摩川原橋地点流況 Average 14.4 m3/sec Low 10.1 m3/sec ハロ酢酸の20oCでの ゆっくりとした分解の例 1 0.8 DCAA C/C0 C/C0 1 0.8 0.6 0.4 D-BODs • D-BOD (Dissolved BOD). 水中の溶存性(ろ 紙を通り抜ける成分)の易分解有機物量. 粒 子態BODは,全BODからD-BODを引いて求 める. TCAA 0.6 0.4 0.2 0.2 0 0 0 2 4 6 8 10 0 多摩川 海水 40 60 80 Time(day) Time(day) 水の由来 20 荒川 下水処理水 隅田川 Urase et al.
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