税金読本(6-1)NISA(少額投資非課税制度)

6
−1
NISA(少額投資非課税制度)
● NISA
●NISAのイメージ
非課税期間:最長 5 年間
平成25年 26年 27年 28年 29年 30年 31年 32年 33年 34年 35年 36年 37年 38年 39年
基準日
1/1
基準日
1/1
勘定設定期間
︵4年間︶
1年目
平成26年分勘定
2年目 3年目
基準日
1/1
4年目 5年目
・ 1 非課税管理勘定における
投資額は100万円まで
平成27年分勘定
平成28年分勘定
平成29年分勘定
勘定設定期間
︵4年間︶
NISAの概要
す。「貯蓄から投資へ」の流れを促進し、
制度(NISA)が始まりました。この制
個人投資家のすそ野を拡大することがこ
度は、家計の安定的な資産形成の支援と
の制度のねらいです。制度の概要は以下
経済成長に必要な成長資金の供給拡大の
の通りです。
ニ ー サ
平成31年分勘定
平成32年分勘定
平成33年分勘定
平成34年分勘定
平成35年分勘定
5 年間で累積最大 5 勘定
・
非課税投資総額最大500万円
・ 1 金融商品取引業者等に
つき 1 非課税口座開設可
・ 1 非課税口座に各年の非
課税管理設定を設定可(同
一の者が同一年分に複数の
非課税管理設定を設定する
ことは不可)
・ 勘定設定期間ごとに基準
日の住所の住民票等が必要
100万円を超えない
範囲で新たな非課
税管理勘定に移管
可 能(同 一 の 非 課
税口座内で行う場
合に限ります。)
(出所)国税庁「平成25年度 税制改正のあらまし」を大和総研が一部修正
NISA
両立を図ることがその目的となっていま
勘定設定期間
︵2年間︶
平成26年1月から、少額投資非課税
平成30年分勘定
・
非課税口座に受け入れることができる上場株式等
●制度概要
制度を利用可能な者
その年の1月1日時点で20歳以上の居住者等
非課税対象
上場株式等の配当、公募株式投資信託などの分配金、これらの譲渡益
非課税投資額
毎年、新規投資額で100万円まで(未使用枠は翌年以降繰越不可)
投資可能期間
10年間(平成26年∼平成35年)
非課税期間
投資した年から最長5年間
途中売却
自由(ただし、売却部分の枠は再利用不可)
再投資
100万円までの非課税投資額に算入されるため、非課税枠を利用
損益通算
非課税口座以外で生じた配当・譲渡益との損益通算は不可
口座開設数
各年分の勘定について、1人1口座
この制度で非課税の対象となるのは、
非課税枠の残額を翌年以降に繰り越すこ
証券会社等を通じて新たに買い付けた上
とはできません。同じケースでいえば、
場株式、外国上場株式、株式投資信託、
翌年に130万円(=100万円+30万円)の
外国株式投資信託、上場株式投資信託
非課税枠ができるわけではありません。
(ETF)、上場不動産投資信託(REIT)
外国上場株式など外貨建て金融商品を
などです(次ページの図表その1)。なお、
購入した場合、外貨での購入代金を購入
公社債や公社債投資信託などは非課税の
時の為替レートで円貨に換算し、100万
対象とはなりません。
円以下かどうか計算します。
非課税口座では、年間100万円(委託
次ページの図表その2に該当する上場
手数料等は含まれません)まで新たに投
株式等も非課税口座に受け入れることが
NISAとは、少額上場株式等に係る配
平成35年12月31日までの間に、年間100
資をすることができます。例えば、非課
できます。ただし、既に保有している上
当所得および譲渡所得等の非課税措置
万円を上限として専用の非課税口座で新
税口座において、70万円で上場株式を購
場株式や株式投資信託などを非課税口座
(少額投資非課税制度)のことです。英
たに取得した上場株式や公募株式投資信
入し、同一年内に72万円で譲渡したとし
に移管することはできません。また、ス
国のISA(Individual Savings Account)
託などについて、その配当・分配金と譲
ます。この場合、その同一年内において
トック・オプション税制(76ページ)
制度を参考にして設けられた日本
渡益が、取得した年から最長で5年間、
非課税口座では30万円(=100万円−70
の適用を受けて取得をした上場株式や持
非課税となる制度です。
万円)以内でしか上場株式等を新たに購
株会に基づき取得した上場株式、さらに
入できません。その上場株式を譲渡して
はオプション取引の権利の行使または義
も当初の購入分(70万円分)の非課税枠
務の履行により取得した上場株式も非課
を再利用することはできません。また、
税口座に受け入れることはできません。
(Nippon)版の制度のため、
「NISA」と
呼ばれています。平成26年1月1日から
140
14税金読本_p139-152_06.indd 140-141
141
14.6.27 6:29:45 PM
● NISA
●非課税口座に受け入れることができる「上場株式等」の範囲 その1
証券会社等を通じた買い付け・証券会社等から取得・証券会社等が行う公募により新たに取
得した以下のもの
・上場株式
(株式・新株予約権の割当てを受ける権利、
新株予約権、
新投資口予約権(注)を含む)
・日本銀行出資証券
・上場新株予約権付社債、店頭転換社債型新株予約権付社債(旧上場転換社債・ワラント
債、店頭売買転換社債を含む)
・信金中金等の上場優先出資証券
・公募株式投資信託 ・ETF・ETN・上場不動産投資信託(REIT)
・外国上場株式等 ・上場未公開株式等投資証券(ベンチャーファンド)
●非課税口座に受け入れることができる「上場株式等」の範囲 その2
前ページ「上場株式等」の範囲その2の
3株とする株式分割が行われ、3株がそ
⑩の適用例は、以下の図表のようになり
れぞれ4.5株となった場合、端株である
ます。例えば、平成26年分の非課税管
平成26年分の0.5株は、最も新しい年に
理勘定と平成27年分の非課税管理勘定
設定された平成27年分の非課税管理勘
にA株式を3株ずつ保有していたとしま
定に入れられることになります。
す。平成27年にA株式について2株を
●前ページ「上場株式等」の範囲その2⑩の適用例 A株式について2株を3株とする株式分割が行われた場合
A株式
株式分割後に
保有する株式
①に当たるもの
⑩に当たるもの
平成26年分
3株
4.5株
4株
―
平成27年分
3株
4.5株
4株
1株
(0.5株+0.5株)
(出所)「平成23年度 税制改正の解説」(財務省)112ページを一部修正
により取得する新たな投資信託の受益権
⑤ 非課税口座で保有する上場株式等を発行した法人の分割により取得する分割承継法人
(または分割承継親法人)の株式
⑥ 非課税口座で保有する上場株式等を発行した法人の行った株式交換により取得する株式
交換完全親法人(もしくはその親法人)の株式または株式移転により取得する株式移転
完全親法人の株式
⑦ 非課税口座で保有する新株予約権を発行した法人の行った法人の合併、分割、株式交換
または株式移転により取得する合併法人等の新株予約権
⑧ 非課税口座で保有する上場株式等で取得請求権付株式、取得条項付株式、全部取得条項
付種類株式または取得条項付新株予約権が付された新株予約権付社債であるものに係る
請求権の行使、取得事由の発生または取得決議により取得する上場株式等
⑨ 次に掲げる行使または取得事由の発生により取得する上場株式等
・ 非課税口座で保有する上場株式等である新株予約権付社債に付された新株予約権
(従来の転換社債の転換権を含む)の行使
・ 非課税口座内上場株式等について与えられた株式の割当てを受ける権利(株主等と
して与えられた場合に限る)の行使
・ 非課税口座内上場株式等について与えられた新株予約権の行使
・ 非課税口座内上場株式等について与えられた取得条項付新株予約権に係る取得事由
の発生または行使
NISA
① 非課税口座で保有する上場株式等について行われた株式・投資信託・特定受益証券発行
信託の受益権の分割・併合により取得する上場株式等
② 非課税口座で保有する上場株式等について行われた株式無償割当て・新株予約権無償割
当て・新投資口予約権無償割当て(注)により取得する上場株式等
③ 非課税口座で保有する上場株式等を発行した法人の合併により取得する合併法人(また
は合併親法人)の株式
④ 非課税口座で保有する上場株式等で投資信託の受益権であるものに係る投資信託の併合
非課税管理勘定への受入れ
非課税管理勘定
100万円を超えて入れることが
できる場合
非課税口座で保有する上場株式等に無償で割り当てら
れた新株予約権や市場から購入した上場新株予約権を行
使して取得する上場株式は、年間累積購入代金100万円を
超えて非課税口座に入れることはできますか?
非課税口座には年間100万
しかし、非課税口座で購入した上
円までの上場株式等しか入
場新株予約権を行使して取得した上
れることができません。しかし、非
場株式は、非課税口座に受け入れる
課税口座で保有する上場株式等に無
ことはできません。なお、非課税口
償で割り当てられた新株予約権を行
座以外で保有する上場株式等につい
使して取得する上場株式について
て無償で割り当てられた新株予約権
は、年間100万円を超えて非課税口
を行使して取得した上場株式につい
座に入れることができるものと思わ
ては、その購入金額が年間100万円
れます(くわしくは今後公表される
以下であっても、非課税口座に入れ
通達などを参照して下さい)。
ることができません。
⑩ 同一の非課税口座に設けられた2以上の非課税管理勘定に係る同一銘柄の非課税口座内
上場株式等について生じた上記①から⑨までの事由により取得する上場株式等(上記①
から⑨までにより非課税管理勘定に受け入れることができるものを除く)で、その2以
上の非課税管理勘定のうち最も新しい年に設定された非課税管理勘定へ受入れるもの
(注) 改正金融商品取引法の施行日(平成26年12月1日の予定です)以後に取得するものに限ります。
142
14税金読本_p139-152_06.indd 142-143
143
14.6.27 6:29:45 PM
● NISA
譲渡所得・配当所得の取扱い
■ 非課税口座内で上場株式等を譲渡した場合
渡し譲渡損失が生じた場合、その損失は
は、次の図表の方法で譲渡した場合です。
ないものとみなされます。したがって、
投資した年の4年後の12月末までの譲
非課税口座で生じた譲渡損失を非課税口
渡益が非課税となります。非課税期間は
座以外で生じた譲渡益や配当と損益通算
暦年で計算されるため、例えば平成26
を行うことはできません。当該損失の繰
年1月と12月のいずれに購入した商品
越控除を行うこともできません。
であっても、非課税期間は平成30年12
非課税口座で保有する上場株式等は、
月末までになります。なお、上場株式等
最長5年間の非課税期間を待たずに、い
を証券会社等以外と相対で譲渡した場合
つでも譲渡することは可能です。ただし、
などは、非課税とはなりません。
前述のとおり譲渡した分の非課税枠を再
非課税口座で保有する上場株式等を譲
利用することはできません。
れる「株式数比例配分方式」に変更する
配当の受け取り方法を証券会社に入金さ
必要があります。
投資信託の分配金の取扱い
1.再投資した場合
非課税口座にある投資信託の分配金を再投資した場合、非課税枠を利用す
ることになります。例えば、70万円で分配金再投資型の株式投資信託を購
入し、その株式投資信託の分配金が4万円発生して再投資されたとします。
この場合、その同一年内では残り26万円(=100万円−70万円−4万円)以
内でしか上場株式等を新たに購入できなくなります。
2.元本払戻金(特別分配金)が支払われる場合
NISA
上場株式等の譲渡が非課税となるの
課税とする場合には、権利確定日までに、
株式投資信託を非課税口座で保有していても課税口座で保有していても、そ
の分配金のうち元本払戻金(特別分配金)は、
運用による利益ではなく、
税法上、
元本の払戻しに相当する金額であると考えられることから非課税の扱いを受けま
●非課税が適用される譲渡の方法
す(185ページ参照)
。さらに、
株式投資信託を非課税口座で保有している場合に、
① 証券会社等への売委託による譲渡
② 証券会社等に対する譲渡
③ 発行法人に対して行う単元未満株式の買取請求による譲渡で、非課税口座を開設する証券会社等の営業
所を経由して行う方法
④ 資本の払戻し、残余財産の分配に伴う金銭等の交付で、非課税口座を開設する金融商品取引業者等の営
業所を経由して行われる方法
⑤ 株式投資信託の解約または一部解約で、非課税口座を開設する金融商品取引業者等の営業所を経由して
行われる方法
元本払戻金(特別分配金)の支払いがあったとしても、いったん消費した非課
税枠が戻るわけではありません。例えば、株式投資信託を70万円分購入し、元
本払戻金(特別分配金)が7万円発生した場合、その同じ年に非課税口座で購
入することができる金額は30万円(=100万円−70万円)のままです。
非課税口座から上場株式等の払出しがあった場合
投資家が、非課税口座と非課税口座以
額が計算されます。このため、非課税口
外の口座の両方に上場株式等を保有して
座以外の口座で保有している上場株式等
次の①から⑤により、非課税口座から
いては、利益については非課税、損失は
いる場合は、両方にある上場株式等の譲
の譲渡所得を計算する場合、その収入金
上場株式等の一部または全部の払出しが
ないものとみなされます。非課税口座か
渡所得の金額は区分して計算します。ま
額から控除する取得費等について、非課
あった場合には、その払出事由が生じた
ら払い出された上場株式等の取得価額は
た、非課税口座と非課税口座以外の口座
税口座内の上場株式等の取得を含めて計
時に、その払出し時の金額(価額)によ
払出日における取引所の最終価格(株式
で同一銘柄を保有する場合には、それぞ
算することはできません。
り譲渡があったものとみなされます(み
投資信託の場合は払出日における基準価
れ銘柄が異なるものとして譲渡所得の金
なし譲渡)。例えば、最長5年間の非課
額)に数量を乗じた額になります。なお、
■ 非課税となる上場株式等の配当等
税期間が終了した場合、非課税口座で保
非課税口座から株式投資信託が払い出さ
有していた上場株式等は、特に指示がな
れた場合には、その個別元本は非課税口
非課税の対象となるのは、非課税口座
税となります。
ければ一般口座に移管されますが、これ
座から払い出される前の金額から引き継
で保有する上場株式等の配当等です。た
非課税口座で保有する上場株式等の配
は①にあたります。みなし譲渡損益につ
がれます。
だし、発行済株式の3%以上を有する大
当等であっても、銀行窓口に振り込まれ
口株主が受けるものは除かれます。
るものなど、信託銀行経由で支払われる
また、上場株式の場合は支払開始日、
もの(証券会社の口座に入金されないも
株式投資信託の場合は決算日が非課税期
の)は、非課税とはなりません。非課税
間内にある場合に、配当・分配金が非課
口座で保有する上場株式等の配当等を非
144
14税金読本_p139-152_06.indd 144-145
① 非課税口座から他の口座への移管
② 非課税口座内上場株式等に係る有価証券のその個人への返還
③ 非課税口座の廃止
④ 贈与、相続、遺贈
⑤ 非課税が適用される譲渡(144ページ参照)の方法以外の譲渡
145
14.6.27 6:29:46 PM