税金読本(6-2)非課税口座の開設・変更等の手続き

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非課税口座の開設・変更等の手続き
● NISA
同一の勘定設定期間内に他の証券会社等
引業者等変更届出書を提出することにな
に口座を変更したい場合は、金融商品取
ります(149ページ)。
非課税口座開設届出書
非課税口座開設届出書は、前述の非課
もっとも、異なる勘定設定期間であれ
ば、別々の証券会社等に非課税口座開設
るのは、1人につき同一の年において複
することができます。
届出書を提出することも可能です。同一
日時点で20歳以上のわが国の居住者(ま
数の非課税管理勘定が設定されるのを防
非課税口座開設届出書は、同一の証券
の勘定設定期間内で証券会社等を変更し
たは国内に恒久的施設を有する非居住
止するためです。
会社等においても重複して提出できませ
たい場合は、金融商品取引業者等変更届
者)が証券会社などに1人につき毎年1
この非課税適用確認書の交付を受ける
ん。したがって、同一証券会社等の異な
出書を提出することになります(149ペ
勘定設定することができます。非課税口
ために、投資家は、口座を開設する証券
る営業所で複数の非課税口座を開設する
ージ)。
座を利用するためには、法律で決められ
会社等で申請手続を行います。勘定設定
こともできません。
た期間(勘定設定期間)ごとに、税務署
期間、基準日、交付申請書提出期間は、
が交付する非課税適用確認書が必要で
次のとおりです。
●口座開設手続のイメージ
1
交付申請書提出期間
平成25年1月1日
平成25年10月1日∼
平成29年9月30日
平成30年1月1日∼
平成33年12月31日
平成29年1月1日
平成29年10月1日∼
平成33年9月30日
平成34年1月1日∼
平成35年12月31日
平成33年1月1日
平成33年10月1日∼
平成35年9月30日
非課税適用確認書
添付
基 準 日時 点の 住民 票の 写 し等
4
非課 税口 座開 設届 出 書の 提出
ただ し 、①と 同 時に 提出 が可 能
2
e-Taxま た は電 子媒 体で ① の
情 報を 提供
3
非 課税 適 用確 認書
税務署
基準日
投資家
勘定設定期間
平成26年1月1日∼
平成29年12月31日
非 課税 適用 確認 書の 交 付申 請
書 の提 出( ※1 )
金融機関
す。非課税適用確認書が必要とされてい
●勘定設定期間、基準日など
NISA
税適用確認書の交付申請書と同時に提出
非課税口座は、投資を行う年の1月1
※1 ①の提出可能期間は、勘定設定期間が開始する年の前年10月1日から、終了する年の9月30日。
非課税口座を設けるためには、非課税
付される住民票の除票の写しなどが必要
適用確認書と非課税口座開設届出書を証
です。申請書の提出は、書類による提出
券会社等に提出することが必要です。
のほか、インターネットや電子メールに
非課税口座を開設された証券会社等
ができます。
まず、非課税口座を開設しようとする
よることも可能です。この場合でも、基
は、当該非課税口座を開設した居住者等
非課税管理勘定に受け入れることがで
場合、税務署から非課税適用確認書の交
準日時点の住所を証する住民票などにつ
から提出を受けた非課税適用確認書に記
きる上場株式等は、当該非課税口座のあ
付を受けるため、申請者の氏名、生年月
いては、郵送などにより提出する必要が
載された勘定設定期間内の各年の1月1
る証券会社等を通じて新たに取得した上
日、住所を記載した申請書を、非課税口
あります。
日に非課税管理勘定を設けます。
場株式・公募株式投資信託等だけでな
座を開設しようとする証券会社等を通じ
非課税適用確認書の申請書の提出を受
非課税管理勘定は、非課税口座に年分
く、保有している非課税口座の他の年分
て税務署に提出します。申請書には、本
けた税務署は、その提出者が、他の証券
毎に設けられ、設定日からその年の12月
の非課税管理勘定から一定の手続を経て
人確認書類と居住地の市区町村長から交
会社等で非課税口座を開設していないこ
31日までの間に上場株式等の取得対価の
移管がされる上場株式・公募株式投資信
付を受けた基準日時点の住所を証する住
とを確認し、確認できれば、非課税適用
額の合計額が100万円(委託手数料は含
託等です。
民票の写しなどの書類を添付します。基
確認書を交付します。この非課税適用確
みません)以下のものを受け入れること
準日以降に転居により住所を変更した場
認書の申請書は、同一の勘定設定期間に
合には、転居前の市区町村の窓口にて交
重複して提出できません。口座開設後、
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非課税管理勘定
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● NISA
非課税管理勘定間の移管(非課税期間の延長)
非課税管理勘定で保有している上場株
り、非課税期間を延長することができま
式・公募株式投資信託等については、非
す(以下、ロールオーバー)
。元の非課
課税期間の5年間の終了時あるいはその
税管理勘定から新たな非課税管理勘定に
前であっても、一定の手続を経て他の年
移管する場合、以下の要件を全て満たす
分の非課税管理勘定に移管することによ
必要があります。
① 同一の証券会社等に開設する非課税口座内での手続であること。
② ロールオーバーは、当該ロールオーバーを指示した日の時価で購入した
において移管日の終値に相当する金
定で保有している同一銘柄は、すべ
額で再取得したものとして扱われま
て特定口座に移さなければならず、
す。
一部を特定口座に移すことはできま
なお、予め「非課税口座内上場株
せん。例えば、平成26年分の非課
式等の非課税口座から特定口座への
税管理勘定でA社株式を3,000株保
移管依頼書」を証券会社等に提出し
有している場合、そのうち1,000株
ておくことにより、非課税期間の満
だけを特定口座に移すということは
了時に、当該上場株式を非課税口座
できず、3,000株すべてを特定口座
から特定口座に移管することもでき
に移さなければなりません。
ます。
非課税口座から特定口座に上場株
非課税期間の満了時、非課税口座
式等を移管した場合、
「みなし譲渡」
でのロールオーバーの手続きも特定
となり、それまでの間に発生した譲
口座への移管手続きも行っていない
渡益は非課税、譲渡損はなかったも
場合は、当該上場株式等は、一般口
のとされます。その上で、特定口座
座に移管されます。
NISA
ものとして扱うこと、または過去に購入した上場株式等の非課税期間が
満了した日の時価で翌年1月1日に新たに購入したものとして扱うこ
と。
③ 新たに購入したものとして扱う場合に、ロールオーバーがされた上場株
式等の時価が100万円以内であること。
ただし、同一年分の非課税管理勘
例えば、平成26年に非課税口座で購入
間満了後の翌平成31年の非課税管理勘定
した上場株式等を、平成29年中にその時
に移管し平成34年まで4年間保有しま
の時価で購入したものとして、平成26年
す。さらに、翌平成35年の非課税管理勘
分の非課税管理勘定から平成29年分の非
定に移管し平成39年まで5年間保有する
課税管理勘定に移管することができま
ことにより、同一の上場株式等を平成26
ある金融機関で非課税口座を開設した
金融機関を変更するときは、下記の手続
す。移管できる上限は、平成29年の移
年から平成39年まで最大14年間非課税と
ものの、他の金融機関に取扱い口座を変
きが必要となります。
管時の時価で、100万円です。この場合、
することも可能です。
更したい場合は、
平成27年1月1日以後、
なお、その年分の非課税管理勘定に上
当該上場株式等の非課税期間は平成26年
ロールオーバーをする場合には、証券
1年単位で非課税口座を取り扱う金融機
場株式等の受入れ(買付け、分配金再投
から合計で8年間です。
会社等に対して、
「非課税口座内上場株
関を変更することができます。同一の非
資、ロールオーバー等)を行っている場
また、平成26年に購入した上場株式等
式等移管依頼書」を提出する必要があり
課税管理勘定設定期間内(例えば、平成
合は、その年には取扱い金融機関を変更
を平成30年まで5年間保有し、非課税期
ます。
26年から平成29年までの間)で取り扱う
することはできません。
非課税口座から特定口座への移管
非課税口座で保有している上場株式等を特定口座に移
管することはできますか。また、移管した場合の税制上
の扱いはどうなりますか。
取扱金融機関の変更
■ 金融商品取引業者等変更届出書
例えば平成26年にA証券会社に非課税
で保有することができ、配当・譲渡益に
管理勘定を設定し投資信託を購入してい
ついて非課税の扱いを受けることができ
たものの、平成27年においてはB証券会
ます。
社で非課税管理勘定を設定して他の投資
金融商品取引業者等変更届出書は、現
信託を購入したいという場合には、金融
在非課税口座を開設している(変更前の)
商品取引業者等変更届出書を使います。
金融機関の営業所の長に提出します(図
非課税口座で保有している
「非課税口座内上場株式等の非課税
この場合、変更前の金融機関(A証券
表の①)。
上場株式等を特定口座に移
口座から特定口座への移管依頼書」
会社)に非課税口座は残りますので、既
金融商品取引業者等変更届出書の提出
を提出する必要があります。
に非課税口座で購入した上場株式等は引
を受けた金融機関の営業所の長は、当該
き続き変更前の金融機関(A証券会社)
投資家には非課税管理勘定廃止通知書を
管する際には、証券会社等に対して
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● NISA
交付します(図表の③)。投資家は、こ
情報を通知します(図表の②・⑤)
。税
を受けることができません。変更前の金
届出書」を用いた方がよいでしょう。
の非課税管理勘定廃止通知書に非課税口
務署がこれらの情報を照合し、変更後の
融機関(A証券会社)の非課税口座で持
「非課税口座廃止届出書」を用いる場合
して、変更後の
金融機関の営業所の長に非課税管理勘定
っていた上場株式等を全て売却するとい
の手続きの流れは、書類の名称が異なる
金融機関の営業所の長に提出します(図
を設けることができる旨の通知がされる
った場合を除いては「非課税口座廃止届
以外は「金融商品取引業者等変更届出書」
表の④)。
ことでNISAの取扱金融機関変更の手続
出書」よりは「金融商品取引業者等変更
を用いる場合とほぼ同じです。
変更前・変更後の金融機関の営業所の
きが終了します(図表の⑥)
。
座開設届出書を添付
(注)
長は、それぞれの所轄の税務署に所定の
出国時の扱い
●金融商品取引業者の変更の手続きの流れ
■ 非課税口座廃止届出書・出国届出書
渡したものとみなされます。みなし譲渡
であるため、非居住者となる場合は非課
益は非課税、みなし譲渡損はないものと
税口座を廃止しなければなりません。海
みなされ、当該上場株式等の取得価額は
外転勤等などにより出国して非居住者と
非課税口座の廃止時の時価となります。
なる場合は、出国日の前日までに取扱い
非課税口座を開設している証券会社等
の証券会社等の営業所に出国届出書を提
が出国後に出国した旨を把握し、出国後
出しなければなりません。出国届出書を
にその非課税口座で支払われた配当等が
提出した場合、非課税口座廃止届出書を
ある場合には、その配当等に対して遡及
提出したものとみなされます。非課税口
して課税されます。
座廃止通知書が交付されます(平成26
帰国後に、非課税口座廃止通知書等を
年出国の場合は帰国後請求)。
提出して再度非課税口座を開設すること
なお、出国届出書が提出されなくても、
は可能ですが、その場合でも、非課税口
非課税口座は出国した日に廃止されるこ
座に受け入れられる上場株式等は通常の
とになります。したがって、出国後に非
場合と変わりません。すなわち、帰国前
課税口座を利用することはできません。
に非課税口座で保有していた上場株式等
非課税口座が廃止されると、非課税口
を再び非課税口座に移管することはでき
座内の上場株式等は廃止時点の時価で譲
ません。
氏名・住所、本支店等の変更
平成26年にA証券会社に非課税管理勘
非課税口座廃止届出書を提出した場合
■ 非課税口座異動届出書(氏名・住所の変更)
定を設定し投資信託を購入していたもの
は、変更前の金融機関(A証券会社)の
非課税口座を開設した後に、氏名、住
住所が記載された本人確認書類を、非課
の、A証券会社における非課税口座は廃
非課税口座は廃止されますので、既に非
所を変更した場合には、遅滞なく「非課
税口座を開設している証券会社等の営業
止して、平成27年においてはB証券会社
課税口座で購入した上場株式等は非課税
税口座異動届出書」および変更後の氏名、
所に提出する必要があります。
で非課税管理勘定を設定して他の投資信
口座から払い出され、特定口座や一般口
託を購入したいという場合には、非課税
座に移管されます。その後に譲渡した場
■ 非課税口座移管依頼書(本支店等の変更)
口座廃止届出書を使います。
合や配当等を受けたときは非課税の扱い
非課税口座の開設者が、転居などで、
依頼書を、移管前の営業所を経由して移
非課税口座を開設している証券会社の営
管先の営業所に提出しなければなりませ
業所から他の営業所に非課税口座を移管
ん。
(注)「変更後」の金融機関に既に非課税口座が
ある場合は、非課税口座開設届出書の添付
は不要です。この場合、既存の非課税口座
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に非課税管理勘定を再設定することになり
ます。
NISA
※①④の提出可能期間は、変更したい年の前年10月1日(ただし、平成27年においては平成27年1月1日)か
ら、その年の9月30日まで。
NISAは居住者等のための非課税制度
しようとする場合には、非課税口座移管
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証券会社等において事業譲渡等があった場合の取扱い
証券会社等の営業所の統廃合や事業譲
非課税口座を、事業譲渡等をする証券会
渡などにより、非課税口座を開設してい
社等の営業所から事業譲渡等を受ける証
る営業所が廃止された場合、統合先や事
券会社等の営業所に移管することができ
業譲渡を受ける証券会社等が非課税口座
ます。
の取扱いを行っていれば、開設している
非課税口座の開設者が死亡した場合(相続・遺贈)
非課税口座開設者(以下、被相続人と
相続人は、相続により取得する上場株
いいます)が死亡した場合、相続人は、
式等を相続人自身の非課税口座に受け入
被相続人が死亡したことを知った日以後
れることはできず、相続人の特定口座か
遅滞なく、「非課税口座開設者死亡届出
一般口座のいずれかに受け入れることに
書」を、被相続人の非課税口座を開設し
なります。受け入れる上場株式等の取得
ている証券会社等の営業所に提出しなけ
日は相続発生日となり、取得価額は相続
ればなりません。被相続人が死亡した日
が発生した日の時価となります。
から「非課税口座開設者死亡届出書」を
相続人が相続した上場株式等を特定口
提出するまでの間に、その非課税口座で
座に受け入れる場合は、同一銘柄は全て
支払われた配当等がある場合には、さか
その特定口座に移管される必要がありま
のぼって課税されます。
す。例えば、2,000株を1人の相続人が相
被相続人が非課税口座で上場株式等を
続した場合、1,000株を特定口座に入れ、
保有していた場合、被相続人が死亡した
他の1,000株を一般口座に入れることは
日に相続人がその上場株式等を相続した
できません。この場合、被相続人が非課
ことになります。また、被相続人が死亡
税口座を開設していた証券会社の営業所
した日に非課税口座から払い出されたこ
に対して、
「相続上場株式等移管依頼書」
ととされ、みなし譲渡となります(145
を提出する必要があります。
ページ参照)。
証券会社・金融機関の留意事項
NISAは、初めて投資を行う方や若年
6日)を公表しています。同協議会は、
の方など、投資知識・経験の浅い方が利
NISAが個人の中長期的な資産形成手段
用することも想定されています。むしろ、
として幅広く利用されるよう、NISAの
投資のすそ野を広げるという意味では、
普及・促進に向けた取り組みを進めてい
このような方々をターゲットにしている
る業界横断的な協議会です。金融庁も、
ともいえます。したがって、証券会社や
NISAを利用する顧客に対してNISAの
金融機関に対しては、NISA推進・連絡
制度設計・趣旨を踏まえた金融商品等の
協議会が「NISAの勧誘及び販売時にお
提供を行っているか等を監督指針に盛り
ける留意事項について」(平成25年6月
込んでいます。
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