一般財団法人が、業務上横領の原因及

別紙
諮問第913号
答
1
申
審査会の結論
「一般財団法人○○が、業務上横領の原因及び経過等について東京都に提出した一連
の文書」について、その存否を明らかにしないで開示請求を拒否した決定は、妥当であ
る。
2
異議申立ての内容
(1)異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、東京都情報公開条例(平成11年東京都条例第5号。以下
「条例」という。)に基づき、異議申立人が行った「一般財団法人○○(法人名)○
○施設の設立に当たり、法人内での業務上横領が発覚し、○○(法人名)が東京都に、
業務上横領の原因及び経過等を提出している。その一連の○○(法人名)から東京都
に提出した文書」の開示請求に対し、東京都知事が平成26年6月18日付けで行った非
開示決定について、その取消しを求めるというものである。
(2)異議申立ての理由
異議申立書及び意見書における異議申立人の主張を要約すると、以下のとおりであ
る。
ア
条例7条3号に該当しないこと
異議申立人に本件文書が開示されたとしても、当該法人について「競争上又は事
業運営上の地位その他社会的な地位が損なわれると認められる」とは言えない。
よって、本件文書は条例7条3号には該当せず、開示されなければならない。
イ
条例7条3号イただし書に該当すること
仮に、本件文書の開示が条例7条3号に該当するとしても、本件文書の開示は、
- 1 -
「事業活動によって生じ」た「危害」から、
「人の生命又は健康を保護するために、
公にすることが必要であると認められる情報」に該当するので、本件文書は条例7
条3号ただし書イによって開示されなければならない。
ウ
条例7条3号ただし書イの該当性についての意見
本件拒否理由の該当部分の記載には、「本件対象公文書の存否を答えることで明
らかになる情報は」との記載があるが、同条号は開示の判断基準を定める規定であ
り、上記記載は理由として趣旨が判然としない。
エ
条例7条6号の該当性に対する意見
本件拒否理由の該当部分には、「当該公文書の存否を明らかにすることは、東京
都と法人との信頼関係を損ない、法人に対する適正・的確な指導監督が遂行できな
くなるおそれがある」との記載がある。
しかし、上記のようなおそれは、条例7条6号のイないしヘのいずれに該当する
のかの記載がなく、実際にいずれにも該当しない。また、「存否」を明らかにする
ことによって生じるおそれを記載しているが、そもそも同条号は開示該当性の判断
基準を示した規定であり、理由としての趣旨が判然としない。したがって、条例7
条6号は非開示の理由とならないことは明らかである。
3
異議申立てに対する実施機関の説明要旨
理由説明書及び口頭による説明における実施機関の主張を要約すると、以下のとおり
である。
(1)非開示(存否応答拒否)決定を行った理由
本件開示請求に係る公文書の存否を明らかにすることは、当該事実の発生の有無を
明らかにすることとなり、当該法人の信用の低下を招き、事業運営上の地位が損なわ
れ、条例7条3号に該当することから、条例10条に基づき、当該公文書の存否を明ら
かにしないで本件開示請求を拒否した。
(2)条例7条3号の該当性について
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当該事実の発生の有無を明らかにすることは、当該法人(法人が運営する○○施設
等を含む。)の信用の低下を招き、事業運営上の地位が損なわれ、条例7条3号に該
当する。
開示・非開示の判断に当たっては、開示請求者が誰であるかは考慮されるべきもの
でなく、何人に対しても等しく同様に取り扱うこととなる。
(3)条例7条3号ただし書イの該当性について
条例7条3号ただし書イの適用除外規定は、法人等又は事業を営む個人の事業活動
により、人の生命若しくは健康に危害を加え、又は与えるおそれがある場合には、当
該事業活動が違法又は不当であるか否かを問わず、人の生命等を保護するために公に
することが必要であると認められる情報が記録されている公文書は、開示しなければ
ならないとする趣旨である。
本件対象公文書の存否を答えることで明らかになる情報は、当該事実の発生の有無
に過ぎず、事業活動によって生じ、又は生ずるおそれがある危害から人の生命又は健
康を保護するために、公にすることが必要である情報とは認められない。したがって、
条例7条3号ただし書イに該当しない。
(4)本件請求文書は、任意で提出される指導・監督庁に対する報告書に相当すると考え
られ、当該公文書の存否を明らかにすることは、東京都と法人との信頼関係を損ない、
法人に対する適正・的確な指導監督が遂行できなくなるおそれがあるため、審査会へ
の諮問に当たって、条例7条6号を非開示理由として追加する。
4
審査会の判断
(1)審議の経過
審査会は、本件異議申立てについて、以下のように審議した。
年
平成26年
月
日
9月11日
審
諮問
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議
経
過
平成26年10月23日
新規概要説明(第153回第二部会)
平成26年11月13日
実施機関から理由説明書収受
平成26年11月27日
実施機関から説明聴取(第154回第二部会)
平成26年12月18日
審議(第155回第二部会)
平成26年12月25日
異議申立人から意見書収受
平成27年
審議(第156回第二部会)
1月29日
(2)審査会の判断
審査会は、実施機関及び異議申立人の主張を具体的に検討した結果、以下のように
判断する。
ア
本件請求文書について
本件異議申立てに係る開示請求は、「一般財団法人○○(法人名)○○施設の設
立に当たり、法人内での業務上横領が発覚し、○○(法人名)が東京都に、業務上
横領の原因及び経過等を提出している。その一連の○○(法人名)から東京都に提
出した文書」(以下「本件請求文書」という。)である。
実施機関においては、異議申立人が主張する当該事実の発生時期に当該法人が特
例民法法人であったことから、平成18年改正前の民法(明治29年法律第89号)67条
に規定する包括的な監督権によるほか、公益法人の設立の許可、認可、監督等に関
する規則(昭和31年東京都規則第65号)14条に規定する報告・検査権により、報告
書を徴することができるとのことである。
実施機関は、本件請求文書の存否を答えるだけで、条例7条3号に規定する非開
示情報を開示することとなるとして、条例10条の規定に基づき、その存否を明らか
にせずに開示請求を拒否する決定を行った。また、理由説明書において、条例7条
6号にも該当するとして、非開示理由の追加を行っている。
- 4 -
イ
条例の定めについて
条例7条3号本文は、「法人(国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立
行政法人を除く。)その他の団体(以下「法人等」という。)に関する情報又は事業
を営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等又
は当該事業を営む個人の競争上又は事業運営上の地位その他社会的な地位が損な
われると認められるもの」を非開示情報として規定している。また、同号ただし書
において、「イ
事業活動によって生じ、又は生ずるおそれがある危害から人の生
命又は健康を保護するために、公にすることが必要であると認められる情報」、
「ロ
違法若しくは不当な事業活動によって生じ、又は生ずるおそれがある支障から人の
生活を保護するために、公にすることが必要であると認められる情報」、
「ハ
事業
活動によって生じ、又は生ずるおそれがある侵害から消費生活その他都民の生活を
保護するために、公にすることが必要であると認められる情報」のいずれかに該当
する情報については、同号本文に該当するものであっても開示しなければならない
旨規定している。
条例7条6号は、「都の機関又は国、独立行政法人等、他の地方公共団体若しく
は地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることによ
り、…当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼす
おそれがあるもの」を非開示情報として規定している。
条例10条は、「開示請求に対し、当該開示請求に係る公文書が存在しているか否
かを答えるだけで、非開示情報を開示することとなるときは、実施機関は、当該公
文書の存否を明らかにしないで、当該開示請求を拒否することができる。」と規定
している。
ウ
本件請求文書の存否応答拒否の妥当性について
本件開示請求は、「一般財団法人○○(法人名)○○施設の設立に当たり、法人
内での業務上横領が発覚し、○○(法人名)が東京都に、業務上横領の原因及び経
過等を提出している。その一連の○○(法人名)から東京都に提出した文書」の開
示を求めるものであり、本件請求文書の存否を明らかにすることにより、開示請求
書に記載されている特定の法人が、業務上横領の原因及び経過等について記載した
文書を東京都に提出したという事実の有無(以下「本件存否情報」という。)を明
- 5 -
らかにするものであると認められる。
そこで、本件存否情報が条例7条3号に規定する非開示情報に該当するか否かに
ついて検討すると、本件開示請求は、開示請求書に記載されている特定の法人が、
業務上横領の原因及び経過等について東京都に提出した一連の文書の開示を求め
るものであることから、本件請求文書の存否を答えることとなると、過去に当該法
人が東京都に業務上横領の原因及び経過等について記載した文書を提出したか否
かが明らかとなり、当該法人の業務上横領に係る疑いを生じさせ、同法人の信用の
低下を招き、事業運営上の地位が損なわれると認められることから、本件存否情報
は、条例7条3号本文に該当する。
次に、同号ただし書の該当性を検討する。
異議申立人は、本件存否情報が、同号ただし書イに該当する旨主張する。
しかしながら、本件存否情報については、事業活動によって生じ、又は生ずるお
それがある危害から人の生命又は健康を保護するために、公にすることが必要であ
る情報とまでは認められないことから、条例7条3号ただし書イに該当しない。ま
た、その内容及び性質から、同号ただし書ロ及びハにも該当しない。
以上のことから、本件存否情報を明らかにすると、条例7条3号に規定する非開
示情報を開示することとなると認められるので、条例7条6号の該当性を判断する
までもなく、条例10条の規定に基づき開示請求を拒否した実施機関の決定は、妥当
である。
なお、条例に基づく情報公開制度は、個人情報保護制度と異なり、広く何人に対
しても開示請求を認めるものであり、開示・非開示の判断に当たっては、開示請求
者が誰であるかによって結論を異にすべきものではなく、何人でも等しく扱うこと
になることを付言する。
よって、「1
審査会の結論」のとおり判断する。
(答申に関与した委員の氏名)
横山
洋吉、中村
晶子、乳井
昌史、山田
- 6 -
洋