関西地区第42回観劇会「壽初春大歌舞伎」鑑賞 1月16日(金)大阪松竹座昼の部 関西地区の歌舞伎観劇会を去る1月16日大阪松竹座にて実施し た。 今回の公演は中村翫雀改め四代目中村鴈治郎襲名披露の壽初春大歌 舞伎。上方歌舞伎を代表する名跡の10年ぶりの復活である。演目 は寿曾我対面、玩辞楼十二曲の内廓文章吉田屋、天衣粉上野初花河 内山の三本立てであった。 最初の演目の壽曾我対面は日本三大仇討ちとして知られる曽我兄弟の仇討ち事件のエピ ソードで、頼朝の信の厚い工藤祐経(中村橋之助)が富士の裾野で催される巻狩りの総奉 行職に任じられた祝いの祝宴に、18年前祐経に父河津三郎を討たれた曽我十郎(中村扇 雀)五郎(片岡愛之助)が対面を願い出る。実はこの二人、親の仇の顔を知らないので縁 を頼って確認の為やって来たのである。 その場で決行しようと逸り立つ弟五郎とそれを抑える兄十郎、彼らの思いを知りながら今 は総奉行の大任があるので討たれる訳にはいかぬが何れ務めを果たした後は受けてやろう と言って狩場の通行証を与える祐経の潔さ、そして最後に決める新春を寿ぐ鶴・富士・亀 の型が見せ場であった。 第二の演目が四代目中村鴈次郎襲名披露の舞台となり、初世鴈次郎以来成駒家の家の芸と 言われる玩辞楼十二曲の一つ、吉田屋の通称で知られる「廓文章」である。近松門左衛門 の浄瑠璃を基に脚色されたもので、正月前で正月飾りの賑やかな吉田屋に放蕩の末勘当さ れた鴈次郎演ずる伊左衛門が、子までなした夕霧が病と聞き、粗末な紙衣で訪ねてくる。 吉田屋の主人夫婦の好意で夕霧に会えたが、長い時間待たされて子供っぽく拗ねて、坂田 藤十郎演ずる遊女夕霧に当たり散らす。それを夕霧が真心こめて宥めすかし、やっとのこ とで仲直りする。そこへ伊左衛門の勘当が解けたと知らせがあり、実家から夕霧身請けの 金も届き目出度い正月を迎える。無邪気に拗ねる伊左衛門とそれを誠心誠意宥める夕霧の やり取りは上方和事芸の見どころだといわれる。 お披露目とあって脇役も豪華で吉田屋主人喜左衛門に中村梅玉、女房おきさに片岡秀太 郎、若い者松吉に中村橋之助、手代藤助に片岡愛之助といった具合にお祝儀舞台であっ た。 最後の演目は河内山。講談「天保六花撰」を河竹黙阿弥が脚色した全七幕の原作の内、河 内山宗俊を中心にした筋である。 悪巧みに長けたお数寄屋坊主の河内山宗俊(片岡仁左衛門)は松江出雲守(中村梅玉)に 腰元奉公する上州屋の娘が幽閉されていると知り二百両で娘を取り返すと請負い前金も受 け取る。 上野寛永寺の高僧と偽り松江邸に乗り込み首尾良く娘を解放させ口止め料までせしめる が、帰途の玄関先で素性を暴かれる。宗俊は慌てず逆に開き直って啖呵を切って堂々と引 きあげる。黙阿弥の七五調の名台詞、仁左衛門の颯爽とした退場の姿が見事な幕切れとな る。 今回の参加者は同伴者も含めて10名となったが、座席も例年どうりの一階右側の桟敷席と いう絶好の場所を確保して頂き有難かった。 昼食も山本・平沼両氏のお手数を煩わし「はり重」のビーフカツサンドを用意してくださ り、とても美味しかった。 (関西地区 横山博克 記)
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