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新商品・ソリューション・サービス解説
貿易帳票ソリューション
Trade Documentation Solutions
要
旨
グローバル化が進展し国際競争が激化している昨
【キーワード】
貿 易 帳 票 、 ペ ー パ ー レ ス 、 電 子 化 、 Apeos
今、企業は市場を海外に求めると同時に生産拠点の海
PEMaster Evidence Tracker、進捗管理、可
外シフトを加速しており、グローバル視点での効率的
視化
で確実な貿易戦略が求められている。貿易では各国に
応じたさまざまな法令、税制、規制対応が必要であり、
業務は複雑である。このような環境下で、リードタイ
ム短縮、業務コスト低減とコンプライアンス遵守実現
が国際競争力を強化し、業績に直結する時代になって
きた。貿易プロセスでは、事務代行、運送、金融、保
険などの業者と絡み合い、証跡として大量の帳票が必
要となる。
ここに、富士ゼロックスの誇る文書管理技術をベー
スに、文書ベースの業務プロセス可視化技術、電子帳
簿保存法対応等を組み合わせ、貿易帳票業務をトータ
ルにサポートするソリューションとして具現化した。
本ソリューションは、業務効率化、コスト低減、コン
プライアンス強化に大きく貢献する。
Abstract
【Keywords】
trade document, paperless, digitization, Apeos
PEMaster
Evidence
Tracker,
progress
management, visualization
執筆者
小林
田口
村上
木暮
高塚
晴法(Harunori Kobayashi)
亮治(Ryoji Taguchi)
亮介(Ryosuke Murakami)
洋輔(Yosuke Kogure)
洋平(Yohei Takatsuka)
ソリューション・サービス開発本部 ソリューション開発部
(Solutions Development, Solution Service Development
Group)
富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015
In today’s age of globalization and intense global
competition, companies are seeking new markets
abroad and accelerating the transfer of production
bases overseas. This situation requires an efficient
and secure trade strategy. Companies engaging in
international trade must handle complicated tasks
while complying with each country’s laws, tax system,
and regulations. Under these circumstances, a shorter
lead time, cost reduction, and regulatory compliance
are directly linked to improved international
competitiveness and business performance. Trade
operations involve various industries, including
outsourcing services, transportation, finance, and
insurance. Companies must consequently use a
number of trade documents as evidence.
Fuji Xerox has developed a trade document
management solution that combines Fuji Xerox’s
document management technology with work process
visualization technology. This solution contributes
significantly to higher business efficiency, cost
reduction, and improved compliance.
1
新商品・ソリューション・サービス解説
貿易帳票ソリューション
輸出者
1. はじめに
海貨業者
通関業者
P/O受理
グローバル・ビジネスのさらなる進展に伴い、
た戦略を展開している。その一方で、貿易業務
易法)
」などといった輸出入に関するさまざまな
法律・税制・規制に対応する貿易コンプライア
イ
ン
ボ
イ
ス
単
位
の
フ
INV
DHC_P
INV
DHC_P
P/L発行
P/L
P/L
DHC_P
DHC_P
P/L
DHC_P
税関
ブッキング
NACCS
は「関税法」や「外為法(外国為替及び外国貿
P/O送付
DHC_P
DHC_P
新たな市場の開拓および国際競争力強化に向け
取引先
INV発行
INV
企業間の国際競争が激化する中、多くの企業は
船会社
P/O
輸出申請
イ
リ
ン
グ
E/D
E/D
B/L
B/L
DHC_P
DHC_P
E/D
DHC_P
DHC_P
DHC_P
B/L発行
帳票受理
P/L
DHC_P
INV
E/D
DHC_P
DHC_P
ンスへの準拠が必須条件となっている。このよ
図1
うな環境下で、各企業はリードタイム短縮、業
一般的な輸出業務のフロー
Flow of general trade business
務コスト低減、コンプライアンス遵守の実現に
貨物の種類、輸送方法、相手国などによっ
取り組んでいる。
て必要な手続きや必要書類が異なるため、
貿易業務は、社内外のさまざまな関係者が絡
非常に複雑な業務プロセスとなっている。
む複雑な業務であり、関係者間でやり取りされ
る必要書類の伝達には納期遵守と正確性が求め
2)紙主体の業務プロセス
られる。また、税関監査を考慮した厳密な書類
貿易業務では、上述の関係者間で多種大
の保存・管理も必要である。各企業にとって、
量の帳票をやり取りすることによって業務
貿易業務の最適化を促進するためには、帳票の効
が進められる。図1に、輸出業務における代
率的なハンドリングが大きな課題となっている。
表的な帳票のやり取りの例を示す。図1に
貿易帳票ソリューションは、富士ゼロックス
加え、企業内においても、部門ごとに書類
1)
の文書情報マネジメント に関する技術・ノウ
の作成や承認を行い、関連部門間での書類
ハウに加え、
「言行一致」というコンセプトのも
のやり取りが頻繁に行われている。
と、自社内の実践から得たノウハウを最大限に
このように、企業や部門にまたがる業務
活かし、帳票管理をベースとした貿易業務の課
であることや、業務プロセスの複雑さから、
題解決を支援する。
システム化が難しく、依然として紙主体の
本論文では、各企業が抱える貿易業務の共通
非効率な業務となっている。
課題と当社が提供する貿易帳票ソリューション
の概要、また本ソリューションを支える技術に
3)書類の確実な保存と管理
ついて説明する。最後にソリューションの適用
事例を紹介する。
貿易取り引きで発生する書類の多くは、
国税関係書類に該当し、関税法等の税法で
保管が義務づけられている。また、税関の
2. 貿易業務の共通課題
ここでは貿易業務の特徴と、企業の多くが抱
事後調査において、帳簿や関係書類などの
確認が行われるため、発生した書類の確実
な保存と管理が非常に重要である。
える共通課題について述べる。
2.2
2.1
貿易業務の特徴
1)複雑な業務プロセス
共通課題
上述のような特徴から、多くの企業は以下の
課題を抱えている。
貿易業務は契約から支払いまでの一連の
プロセスにおいて、営業担当者や貿易担当
2
課題①:業務の見える化
者などの社内関係者に加え、海貨業者、通
貿易業務は非常に複雑でノウハウが必
関業者、取引先など国内外の社外関係者と
要なため、案件ごとに専門知識を有する
も連携しながら進める業務である。また、
貿易部門のエキスパートが実務を担当す
富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015
新商品・ソリューション・サービス解説
貿易帳票ソリューション
る。前述のように、貿易業務は複数の社
が実務を担当し、複数の案件を同時に遂
内外関係者と帳票のやり取りによって業
行する。その場合、複数の案件から都度
務が進められるが、相手先によって、宅
送付される文書類の仕分け、確認、送付
配便、メール、ファクスといったさまざ
等の作業に大きな負荷がかかっている。
まな媒体が利用されている。そのため、
業務量の増加にあたっては、これらの
担当者は帳票を紙に出力し、振り分け、案
作業効率を上げ、案件あたりの処理コス
件ごとにファイリングして管理している。
トを低減させることが重要な課題となっ
このように業務を特定の担当者が抱え込
ている。
んでしまうことから、担当者以外が各案件
の進捗状況を把握することが困難になる。
また、多数の拠点・部門にまたがる業
課題④:コンプライアンス遵守
z 書類の確実な保管と検索性の向上
務であることから、拠点や部門ごとにシ
貿易関係書類には保管義務があり、税
ステムが分断されていることが多い。こ
関の事後調査において書類の確認が行わ
の場合、業務全体を俯瞰することが困難
れる。各企業では、案件ごとにファイリ
になる。
ングした書類を、棚や倉庫等で保管して
業務の効率化や継続的改善を行うため
いる。事後調査のときには、保管してい
には、業務の見える化が重要な課題と
る紙帳票を搬出し、膨大な帳票の中から
なっている。
書類を探さなければならず、多くの工数
がかかっている。また、書類の抜け漏れ
課題②:リードタイム短縮
や紛失のリスクも抱えている。
市場のさらなるグローバル化に伴い、
業務量の増加に伴い、管理すべき書類
貿易業務量が大幅に増加する一方で、製
も増え続けるため、確実な保管に加え、
造業をはじめ、国内外の競合に勝ち抜く
保管した書類の検索性を向上させること
ために、輸出入のリードタイムを短縮す
も重要な課題となっている。
ることが非常に重要となっている。紙
ベースの業務プロセスでは、効率化の限
z 自社の輸出入情報の全件把握
界に達しており、リードタイム短縮に向
企業の多くは、社内の貿易管理システ
けて、ITを駆使した抜本的な業務の改革
ムや表計算ソフト等を利用し、貿易部門
が必要になっている。
が輸出入情報を管理している。
しかし、営業現場等が国際宅配便など
課題③:コスト削減
z ドキュメントコストの抑制
を利用し、イレギュラーな輸出入を行っ
た場合、貿易部門の統制下にない輸出入
貿易取り引きで発生する書類は、1つの
行為が発生する。このような輸出入行為
輸出入単位に対して20種類以上となる
は、コンプライアンス上問題であり、監
場合もある。それらの文書を印刷・複写
査の指摘事項になる。これは企業にとっ
するため、多くの出力・配布コストがか
て大きなリスクとなるため、貿易管理に
かっている。また、帳簿や関係書類に関
おいて自社の輸出入の全件を正確に把握
しては、保管義務があるため、保管スペー
することは重要な課題となっている。
スなどのコストも増加する一方である。
貿易業務量の増加に伴い、文書の出力・
保管コストの抑制が課題となっている。
3. 貿易帳票ソリューション
ここでは前章で述べた課題に対する、アプロー
z 生産性の向上
チと、提供するソリューションについて述べる。
貿易業務は、通常貿易部門のメンバー
富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015
3
新商品・ソリューション・サービス解説
貿易帳票ソリューション
にソリューションの概要図を示す。
基幹システム
見える
(定型業務)
課題①:業務の見える化
[解決方法]
業務プロセス
D H C _P
DHC_P
D H C_ P
見えにくい
貿易帳票ソリューションでは、貿易業務
DH C _ P
DH C_ P
(非定型業務)
DH C _ P
DH C _ P
DH C_P
基幹システムから分断された
煩雑なドキュメントフロー
図2
で扱う帳票類を電子化し、文書管理システ
雑然と導入された
IT機器
ムである、Apeos PEMaster Evidence
非定型業務
Non-routine tasks
Manager®に格納する。
Apeos PEMaster Evidence Tracker®
3.1
課題解決のアプローチ
は、文書の格納状況と、ERP(Enterprise
従来の基幹システムは、データとその流れを
Resource Planning)などの基幹システム
管理することで、定型業務の効率化につながっ
から出力された案件情報を取り込み、
個々の
た。しかし、ドキュメントと人手による非定型
案件の進捗状況を業務プロセスの形式で見
業務は定型業務より多く存在し、この領域も共
える化する。また、個々の文書が必要となる
に解決しない限り本当の意味での生産性向上は
条 件 を Apeos
実現できない(図2)。
Trackerに設定しておくことで、個々の案件
PEMaster
Evidence
我々は、業務の主要な工程間では文書が発生
に必要な文書とその格納状況が、
視覚的に表
すると考え、文書の生成状況とその流れを管理
示される。その結果、必要な作業や文書格納
することで、従来は困難であった非定型業務の
の抜け漏れを一目で確認できるようになる。
システム化を可能とした。
課題②:リードタイム短縮
さらに、基幹システムのデータを取り込んで
[解決方法]
一元管理することにより、定型/非定型業務全
文書を電子化して共有することで、紙文
体の進捗状況を見える化し、業務の全体最適を
書のやり取りが不要となる。また、1つの
実現した。
案件に対して複数の部門が並行して作業を
3.2
貿易帳票ソリューション
進められるようになる。さらに、部分的な
貿易帳票ソリューションが、貿易業務の課題
定型作業を自動化することで、手作業で処
をどのように解決するのかを述べる。また、図3
理していた時間を大幅に削減することが可
基幹システム連携
プロセス管理 ( Apeos PEMaster Evidence Tracker )
Invoice
No
基幹システム
担当者
取引先
進捗
4096584 富士一郎
A社
100%
0353965 富士次郎
B社
66%
C社
50%
状態
I/V
P/L
C/O
WebUI
Drag&Drop 操作
E/D
PDF
DH C _P
DHC_P
不要
属性情報 各種帳票
CSV
DHC_P
PDF
946254
富士三郎
DHC_P
DHC_P
NACCS
連携機能
CSV
DHC_P
NACCS 端末
PDF
DHC_P
文 書 管 理 シス テ ム
Apeos PEMaster
Evidence Manager
DHC_P
DHC_P
電子化支援
ツール
DHC_P
DHC_P
Apeos PEMaster
Evidence Entry
属性情報 輸出入
許可書等
Q R コード による
スキャン入力
DHC_P
DHC_P
各種帳票
DHC_P
NACCS
N A C CS
輸出申告
各種帳票
連携
DHC_P
図3
4
D H C _P
貿易帳票ソリューションの概要図
Trade documents solution diagram
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新商品・ソリューション・サービス解説
貿易帳票ソリューション
の格納状況が一目でわかるので、保管義務
能となる。
定型作業の1例としては、
“必要な帳票が
のある文書の抜け漏れを防止することがで
そろった時点で、海貨業者や通関業者など
きる。また、税関による事後調査では、指
に対象帳票を送信する”というような業務
定 さ れ た 案 件 に 関 す る 書 類 を Apeos
がある。
PEMaster Evidence Trackerの画面から
ただちに提示することができる。
課題③:コスト削減
z 自社の輸出入情報の全件把握
[解決方法]
z ドキュメントコストの抑制
国際宅配便を簡単に利用できるように
海貨業者や取引先との帳票のやり取りを
なったことで、貿易管理部門の統制下にな
電子メールで行うこととし、発生する電子
い輸出入が行われる場合がある。この問題
帳 票 を Apeos PEMaster Evidence
に対し、貿易に関わる手続きをオンライン
Manager に 格 納 す る 。 ま た 、 Apeos
で処理するシステムであるNACCS® *1 か
PEMaster Evidence Trackerの画面を各
ら、自社に関するすべての輸出入許可書を
部門で共有することで、無駄な印刷や複写
取得することで、自社の輸出入情報の全件
のコストが削減できる。
を把握することが可能となる。また、
さらに、保管帳票の原本電子化を実現す
NACCS® から取得した輸出入情報と基幹
ることで、大量の紙文書を安全に保管する
シ ス テ ム の 情 報 と を Apeos PEMaster
コストが不要となる。当社は、貿易帳票類
Evidence Tracker上で突き合わせること
2)
の電子帳簿保存法 (正式名称:電子計算
で、統制下にない業務を検出することが可
機を使用して作成する国税関係帳簿書類の
能である。
保存方法等の特例に関する法律)に対応す
るソリューションを提供している。3), 4)
4. 適用する技術、商品
z 生産性の向上
本章では、貿易帳票ソリューションを実現す
電子メールでの帳票のやり取りを自動化
る商品と技術について述べる。
することで、帳票の送付や仕分けにかかっ
貿易帳票ソリューションは、文書管理システム
ていた作業が不要となる。
帳票の特性や取引先企業の都合などで紙
®
であるApeos PEMaster Evidence Manager、
帳票として受領した場合は、QRコード を
業 務 プ ロ セ ス の 状 況 を 見 え る 化 す る Apeos
用いたスキャン登録によって、効率的に
PEMaster Evidence Tracker、紙文書を電子
Apeos PEMaster Evidence Managerに
化するApeos PEMaster Evidence Entry、企
格納することが可能である。
業間連携を電子化するツール群、および、貿易
ま た 、 Apeos PEMaster Evidence
業務を扱うノウハウで構成されている。
Trackerの画面をWebブラウザーを通じ
て、いつでも、何処からでも個々の案件の
4.1
進捗状況を確認できるので、担当者への問
い合わせが不要となる。
文書管理
貿易帳票ソリューションを実現するうえで、
さまざまなプレーヤー、業務から発生する情報
を一元管理し、情報量や利用者が増加しても安
課題④:コンプライアンス遵守
定した性能や運用を可能にするコンテンツデー
[解決方法]
z 書類の確実な保管と検索性の向上
Apeos PEMaster Evidence Tracker
の画面では、個々の案件で必要な文書とそ
富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015
*1
NACCS ( Nippon Automated Cargo and Port
Consolidated System)は、入出港する船舶・航空機お
よび輸出入貨物について、税関や関係行政機関に対する
手続きや関連する民間業務をオンラインで処理するシス
テム
5
新商品・ソリューション・サービス解説
貿易帳票ソリューション
タベースが必要不可欠である。当社のエンター
4.1.4
電子化と原本性保証
貿易業務で扱う多くの文書は国税関係書類に
プライズ領域向けの文書管理ソフトウェアであ
るApeos PEMaster Evidence Managerは、
該当するため、さまざまな税法においてその保
大量の文書を長期間にわたって安全に保管する
存義務が課せられている。Apeos PEMaster
だけでなく、文書を扱う業務を支援する、さま
Evidence Managerの原本性保証オプション
ざまな機能を提供する。
を利用することで、e-文書法*2による要件への
対応を実現している。
4.1.1
管理体系
Apeos PEMaster Evidence Managerは、
Apeos PEMaster Evidence Manager原本
性保証オプションでは、コンテンツデータベー
キャビネット/ドロワー/フォルダー/ドキュ
スに登録されたドキュメントに対して電子署名、
メントといった階層構造で管理することができ、
タイムスタンプを付与する。また、ドキュメン
部門単位や社外の取引先単位、業務単位で柔軟
トの改ざん検知、改ざん不可能な第三者による
な管理体系を構築することができる。
認証を提供し、原本性保証を実現している。
また、各階層や個々の文書ごとに、閲覧、ダ
ウンロード、印刷、などの操作権限を設定でき
4.1.5
るため、きめ細やかなセキュリティー管理を行
うことが可能である。
文書ワークフロー
貿易業務においても、文書の承認や回覧と
いった定型業務が存在する。このような定型業
務では、各作業の確実な実施を支援し、正しい
4.1.2
検索機能
Apeos PEMaster Evidence Managerでは、
手順/経路で業務を遂行したことを記録するこ
とで、業務品質の向上につなげることができる。
Apeos PEMaster Evidence Managerでは、
ドキュメントやフォルダーに対して属性情報を
付与することができる。あらかじめ定義されて
文書の回覧、改訂、承認、といった操作を簡単
いるシステム属性に加えて、ユーザーが用途に
に行える、文書ワークフローを利用することが
合わせて定義したユーザー属性が設定可能であ
できる。
また、この文書ワークフローの実行履歴は、
り、任意の属性を検索条件として指定した検索
を行うことができる。
また、検索エンジンコンポーネントとの連携
帳票などの文書と同様に、業務の成果物である
証跡情報として扱うことができる。
により、文書中のテキストを対象にした全文検
索を行うことができる。
4.2
見える化
貿易業務では、業務の見える化が大きな課題
4.1.3
ドキュメントライフサイクル
大量の文書を長期間にわたって保存する場合、
である。Apeos PEMaster Evidence Tracker
は、個々の帳票の格納状況を監視することで、
文書の状態に応じて公開範囲を変更したり、保
貿易業務全体の進捗状況を見える化する(図4)
。
管期間が終了した時点で廃棄したり、といった
テーブル状に表示された画面の、各行が個々
管理が必要となる。
の案件に相当し、各列が文書の種類に相当する。
各案件の特性に応じて、個々の文書が必要か
Apeos PEMaster Evidence Managerでは、
文書のライフサイクルを属性情報や状態遷移に
不要か、登録済みか未登録か、納期に遅れてい
連動して管理することができる。作成中、承認
ないか、といった状況がアイコンの種別で表示
済み、公開、廃棄、といった任意の状態を定義
されるので、案件ごとの進捗状況を一目で把握
し、それぞれの状態におけるアクセス権限を設
できる。また、必要なのに登録されていない文
定することができる。また、日時や管理年限な
書が一目で確認できるため、次にやるべき作業
どによって文書の公開期限を設定しておくこと
が明確になる。
で、保存義務期間を終了した文書を自動的に廃
棄することができる。
6
*2
法人税法や商法、証券取引法などで紙による原本保存が義
務づけられている文書や帳票の電子保存を容認する法律
富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015
新商品・ソリューション・サービス解説
貿易帳票ソリューション
4.4
企業間連携
貿易業務では、企業をまたぐ文書のやり取りが
頻繁に発生し、その多くが人手を介して行われて
いる。貿易ソリューションでは、これらのやり取
りを自動化し、リードタイム短縮やコンプライア
ンス強化を図るためのツール群を提供している。
その一つに、電子メールを用いた、電子帳票
の送受信機能を提供しており、必要な書類がそ
ろったらただちにメールに帳票を添付して送信
したり、受信したメールに添付されている帳票
図4
進捗状況の見える化
Visualization of progress
を 自 動 的 に Apeos PEMaster Evidence
Managerに登録することを可能にしている。
また、Apeos PEMaster Evidence Tracker
NACCS®とも連携しており、NACCS®から、
は基幹システムなどで管理されているデータを
自社の貿易行為に関する帳票を自動的にダウン
取り込むことができる。これにより基幹システ
ロ ー ド し 、 属 性 情 報 を 付 与 し て 、 Apeos
ムで管理されている受発注などの情報と、帳票
PEMaster Evidence Managerに登録するこ
類を一元管理することができ、業務全体の見え
とができる。
る化が可能となる。
4.3
5. 事例紹介
紙文書の登録
貿易業務では、帳票の特性や連携する取引先
の都合などで、紙文書を排除しきれない場合が
ここでは、A社に適用した貿易帳票ソリュー
ションの事例を紹介する。
ある。また、業務プロセスを電子的に行うこと
に大きな効果が見込めない場合、業務プロセス
そのものは紙文書で行い、成果物を電子化する
という場合もある。
5.1
お客様の課題
A社は、創業当初より海外企業との取り引き
に注力しており、特に輸出による売り上げはこ
貿 易 帳 票 ソ リ ュ ー シ ョ ン で は 、 Apeos
®
こ30年で3倍に増加している。これまで、海外
PEMaster Evidence Entry を用いて、貿易業
市場における営業力強化とサポート体制の拡充
務で発生する紙文書を、電子データに変換して
を目指し、海外に子会社・代理店を設置するな
Apeos PEMaster Evidence Managerに取り
ど、海外営業力強化を図ってきた。その一方で、
込む機能を提供している。
販路拡大によりますます複雑になるプロセスと、
Apeos PEMaster Evidence Entryでは、当
業務増加への対応が必要になっていた。
社のデジタル複合機ApeosPortと連携してお
り、複合機の操作パネルからタッチ操作で、紙
A社の抱えていた業務課題を以下に示す。
文書をApeos PEMaster Evidence Manager
1)業務量の増加と複雑化への対応
に登録することを可能にしている。
また、Apeos PEMaster Evidence Entry連
®
2)問い合わせや監査時の対応工数効率化
携オプションを利用することで、QRコード が
過去5年分の帳票を数カ所の倉庫に分散
印刷された帳票シートを、登録したい紙文書と
保存していたため、お客様からの問い合わ
重ねて複合機から取り込むことで、ユーザーが特
せや監査時の証憑提示などのたびに、膨大
別な操作をすることなく登録することができる。
な紙文書の中から必要な情報を探しだす必
要があり、この作業が業務を圧迫していた。
3)納入後のサポートスピードアップ
A社の商品は、船舶の安全航海に必要不可
富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015
7
新商品・ソリューション・サービス解説
貿易帳票ソリューション
欠な商品が多く、販売・納入はもちろん、サ
管理体系で統合管理することで、検索性の向
ポートにおいてもスピードが求められていた。
上に加え、セキュリティーの向上も実現した。
5.2
適用したソリューション
② 電子化による作業の効率化と自動化
標準化した業務プロセスのうち、承認作業
ソリューションの導入は以下のステップで行
われた。
の よ う な 定 型 業 務 を Apeos PEMaster
Step1)業務プロセスの最適化・標準化
Evidence Manager の ワ ー ク フ ロ ー オ プ
業務の効率化を最大にするため、単純に成
ションを用いて、電子的に正確かつ効率的に
果物を電子化するのではなく、可能な限り
行える仕組みを実現した。また、必要な帳票
電子的に業務を行えるよう、業務プロセス
がそろった時点で、社内関係部門や通関業者
の最適化・スリム化を実施した。
などに対象帳票を自動配信することで、作業
Step2)システム構築
の効率化を実現した。
Step1)で最適化した業務プロセスに基づ
いてシステムを構築した。システム構成の
③ 業務の見える化
Apeos PEMaster Evidence Trackerを
概要を図5に示す。
用いて、帳票の格納状況をベースに業務の進
導入したソリューションのポイントを以下に
捗状況のビジュアル化を実現した。文書の登
録や承認ワークフローの起動などは、Apeos
示す。
PEMaster Evidence Trackerのユーザーイ
① 情報の一元管理
ンターフェイスから行う。これにより、担当
基幹システム(ERP)で作成・管理されて
者のファイリング作業や問い合わせ対応の効
いる帳票類や情報と、各現場で都度発生する
率化に加え、関係者からも容易に進捗確認が
帳 票 類 を 文 書 管 理 シ ス テ ム で あ る Apeos
可能となった。
PEMaster Evidence Managerで一元管理
する。貿易業務に必要な帳票や情報を適切な
社内システム
• 文書登録
D
H
• 監査対応
• 進捗管理
問い合わせ対応 • 承認作業
C_ P
D
H
C_ P
• 分析
D
H
C_ P
貿易帳票ソリューション構築範囲
ERP
Apeos PEMaster Evidence Tracker
取引先等
ERPから出力
•
登録
登録
表示
表示
登録
登録
表示
表示
登録
登録
表示
表示
登録
登録
表示
表示
登録
登録
表示
表示
登録
登録
表示
表示
登録
登録
表示
表示
登録
登録
表示
表示
登録
登録
表示
表示
登録
登録
表示
表示
登録
登録
表示
登録
登録
表示
各種帳票
D
H
C
_P
PDFデータ
Excelデータ
D
H
C
_ P
D
H
C
_ P
メール
サーバー
ユーザーインターフェイス提供
属性情報
D
H C
業務の進捗状況の可視化
_ P
CSVデータ
Apeos PEMaster Evidence Manager
登録プログラム
帳票登録
帳票・データの格納・管理
属性登録
ワークフロー(承認等)
図5
8
システム概要図
System configuration
富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015
新商品・ソリューション・サービス解説
貿易帳票ソリューション
④ 保存帳票の原本電子化
電子帳簿保存法や為替法などの要件を満た
し、帳票の電子保存を実現した。
8. 参考文献
1) 桂林浩ほか: “モノづくりを革新するドキュ
メントソリューションを支える技術”, 富士
5.3
導入効果
ゼロックステクニカルレポート, No.24,
(2015).
ソリューションの導入により、以下の効果が
得られた。
2) 電子帳簿保存法について:
https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeih
① 貿易・物流に関連する工数を45%削減
o-kaishaku/joho-zeikaishaku/dennsh
② 保管帳票の紙保存を75%削減
ichobo/jirei/index.htm
③ 年間約1000万円のコスト削減
3) 前阪学: “「貿易帳票管理システム構築」に
よる輸出入帳票の電子化と法対応”, 日本
文書情報マネジメント協会
上記に加え、本システムのデータや帳票を関
月刊IM, 5月
号, pp.6-9, (2014).
連部門で共有することにより、情報伝達や問い
合わせ対応の時間を大幅に削減できた。正確か
4) 森口亜紀, 前阪学: “村田製作所における「貿
つ迅速な問い合わせ対応はお客様満足度の向上
易帳票管理システム構築」による輸出関連
にもつながっている。
書類の電子化および法対応”, 日本文書情
報マネジメント協会
月 刊 IM, 8 月 号 ,
pp.8-11, (2012).
6. おわりに
本論文では、貿易業務を対象に、文書ベース
のプロセス管理技術を適用し、定型/非定型業
務の全体最適を目指すソリューションについて
紹介した。「人手を介した文書中心のプロセス」
において、
「見えない」業務を「見える化」する
取り組みは、業務革新のベースになると考える。
今後は、本技術の適用領域を拡大し、各種業
務に必要なツール整備とあわせて、お客様のよ
り良い業務環境構築を支援していく。
7. 商標について
z QRコードは、株式会社デンソーウェーブの
登録商標です。
z NACCSは、輸出入・港湾関連情報処理セン
ター株式会社の登録商標です。
z Apeos PEMaster Evidence Tracker 、
Apeos PEMaster Evidence Entry、Apeos
PEMaster Evidence Manager、ApeosPort、
は富士ゼロックス株式会社の登録商標です。
z その他の商品名、会社名は、一般に各社の商
号、登録商標または商標です。
筆者紹介
小林
晴法
ソリューション・サービス開発本部 ソリューション開発部に所属
専門分野:構造化文書、ソフトウェアエンジニアリング
田口
亮治
ソリューション・サービス開発本部 ソリューション開発部に所属
専門分野:文書管理、グループウェア
村上
亮介
ソリューション・サービス開発本部 ソリューション開発部に所属
専門分野:ソフトウェア開発、WEBアプリケーション
木暮
洋輔
ソリューション・サービス開発本部 ソリューション開発部に所属
専門分野:ソフトウェア開発、情報工学
高塚
洋平
ソリューション・サービス開発本部 ソリューション開発部に所属
専門分野:ソフトウェア開発、情報工学
富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015
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