マーケットウィークリー・818号 2015.3.6 マーケット展望 内需拡大で注目したい「おもてなし」企業 作成者:奥村義弘 訪日外国人の増 加で百貨店が活 況 今2月は、訪日外国人の消費動向に注目が集まった。訪日外国人で最 も購買意欲が高い中国が2月18日~2月24日まで大型連休となったから だ。その消費パワーを見せつけられたのが百貨店販売である。三越伊 勢丹(3099)の2月の既存店売上高は前年同月比7%増となった。特に 銀座店などで訪日客向けの免税売上が好調で、前年比約3倍の伸長。J フロント(3086)も2月の既存店売上高は同1.6%増と伸長。訪日外国 人向けは前年同月比4.4倍となった模様。高島屋(8233)は前年同月比 0.1%増であった。高額品は前年の消費税の反動減があったものの、訪 日外国人向けの免税売り上げは約3倍に増え、新宿店、日本橋店など都 心部の売上増がけん引した。 規制緩和や円安 進行が追い風 日本政府観光局の調べによると、2014年の訪日外国人の旅行消費額 は2兆305億円、前年比43%増と急増した模様。地域別には購買力を高 めた中国が5,583億円、同102%増。台湾を抜き構成比は27.5%(前年 同期19.5%)に達した。昨年は1月下旬からの旧正月休暇であったこと が影響したが、ビザの緩和、消費税免税制度の拡充といった規制緩和、 円安進行が追い風となった。メリットを受けたのは小売業界ばかりで はない。ホテル・旅館業界、飲食業界などへも好影響を及ぼした。安 倍政権は地方創生を掲げている。3月14日には北陸新幹線が開業するこ とが話題となり、金沢が注目されている。地方の観光資源の活性化に この流れをいかに結び付けられるか重要と言えよう。 「おもてなし」精 神にあふれる企 業が魅力 訪日外国人に日本の商品やサービスを売り込むキーワードとしては 「おもてなし」があろう。最近はスマホ向け観光案内アプリが旅行者 向けに提供されているほか、通訳ガイドを増やそうとする動きもある。 訪日客の拡大でニーズは一段と増そう。また本物を求めるリピーター を増やすには、日本の文化などのすばらしさをきちんと伝え、ブラン ドとして誇れるようなものにしてゆく努力が必要とされている。経済 産業省が推進する「クールジャパン」戦略では、メディアコンテンツ、 食・サービス分野、ファッション・ライフスタイル分野の3業種を対象 に、対外ビジネス展開や市場開拓のために、資金やM&Aの支援を行 う取り組みを進めている。ポテンシャルの大きい海外マーケットの開 拓とともに、日本ブランドの向上に重要な取り組みと言えよう。 「クール」な日本 が人気 次頁では内需活性化のキーになるであろう、「おもてなし」、「ク ールジャパン」に関連するイメージを持つ企業を選んでみた。食分野 は安全を重視する日本の得意技でクールな分野と言えよう。株式市場 でも粉ミルク関連で明治HD(2269)が取り上げられたことは記憶に 新しい。このほか醤油のキッコーマン(2801)、乳酸菌飲料の ヤクル ト(2267)、旨み調味料の味の素(2802)なども世界に通じる食のブ ランド企業となっている。このほか品質の高さからユニチャーム (8113)、花王(4452)のおむつなど家庭用品も人気。顧客満足度の 高いサービスの提供は高付加価値を生むことが多い。高級ホテルの老 舗帝国ホテル(9708)では外国人旅行者が増加しているという。また 外国人のお買い物の定番ゾーンでは、百貨店のほか、コンビニ、ドラ ッグストア、百円ショップ、中古品ブランド店なども日本特有の業態 として人気があるようだ。 マーケットウィークリー・818号 (億円) 25,000 ◇旅行消費額と訪日外国人旅行者数の推移 旅行消費額(左目盛) 20,000 15,000 10,000 5,000 2015.3.6 訪日外国人旅行者数(左目盛) 14,167 11,490 861 10,849 8,135 622 0 1,036 836 (万人) 2,000 1,800 20,305 1,600 1,400 1,200 1,341 1,000 800 600 400 200 0 (億円) ◇訪日外国人消費額 1,600 1,429 1,400 H25.10-12月期 1,200 H26.10-12月期 949 1,000 800 600 610 706 622 415 410 400 364384 293 200 0 韓国 (出所)日本政府観光局 台湾 香港 中国 米国 (出所)日本政府観光局 ◇「おもてなし」「クールジャパン」の主な注目銘柄 (単位:円、倍、%) 銘柄 コード 株価 予想 予想 コメント 3/2 PER 増益率 寿スピリッツ 2222 2,595 23.4 ▲7 お菓子の総合プロデューサー。北海道の「ル タオ」など地域ブランド菓子を展開 ヤクルト 2267 7,590 52.3 6 乳酸菌飲料の最大手。中国や中南米が伸長し 業績を上方修正。中国では工場新設 明治HD 2269 14,170 39.4 9 明治製菓と明治乳業が経営統合。機能性ヨー グルトやチョコレートが好調 コメ兵 2780 3,350 19.8 4 ブランド品、宝飾品や、衣料品の中古販売。 訪日外国人向け免税販売好調 キッコーマン 2801 3,440 46.4 4 しょうゆの最大手。国内シェア3割。海外は円 安効果もあり米国好調、欧州伸長 Jフロント 3086 1,715 23.8 1 大丸と松坂屋が経営統合。東京、心斎橋など 堅調。パルコ事業の収益寄与にも期待 マツモトキヨシ 3088 4,015 19.1 ▲14 ドラッグストア最大手。M&Aにも積極的。 免税対応店増やし取り込み強化 三越伊勢丹 3099 1,821 35.9 ▲16 百貨店最大手。新宿、銀座、日本橋など都心 の一等地に店舗。東京ミッドタウンにも出店 創通 3711 2,301 16.1 13 テレビアニメの企画・政策。ライツ事業では JQ 「ガンダム」シリーズが引き続き好調 花王 4452 5,249 30.2 10 化粧品や化学品を展開する家庭用品最大手。 アジアで紙おむつや洗剤を拡販 ドンキホーテH 7532 9,320 33.7 6 現場主義に立脚した店づくりが特徴のディス カウントストア。訪日観光客の増加が寄与 バンダイナムコ 7832 2,274 16.7 10 「妖怪ウォッチ」など人気キャラクター、ゲ ームを有する。中計をクリアし最高益 東宝 9602 2,898 27.0 ▲0 阪急阪神東宝グループ。「テルマエ・ロマエ 2」「妖怪ウォッチ」などが好評 エイチ・アイエス 9603 4,225 25.8 13 旅行事業とテーマパーク事業が柱。訪日外国 人の取り込みなどでハウステンボスが好調 帝国ホ 9708 2,618 59.7 3 高級ホテルの老舗で顧客満足度が高い。欧米 アジアからの訪日客利用が増大 乃村工 9716 1,177 20.5 19 商業施設向け企画、施工の最大手。企業の改 装需要底堅い。ホテル、駅の内装も手掛ける (注1)予想増益率は今期日経予想の経常増益率 (注2)コード下のJQは東証ジャスダック、他は東証 (出所)CAM作成
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