2014年10月号

新・参考業務月報
2014 年
10 月号
ICHIKAWA LIBRARY
発行:市川市中央図書館 編集:レファレンスカウンター 〒272-0015 市川市鬼高1-1-4 ℡.047-320-3333
INF
REF
こども 電話メール 中央計
行徳
BM 南行
信篤
平田
駅南
全館計
10月 1,172 792
769 22
0 2,755 1,420 35
242 353 148 1,042 5,995
累計 8,296 6,244 5,886 403
5 20,834 9,254 233 1,833 1,844 1,237 7,029 42,264
INF:インフォメーション・カウンタ REF:レファレンス・カウンタ BM:自動車図書館
今月のレファレンス記録票から
分類
525.5
質
問
と
内
容
鳶職人の歴史(特に江戸時代の鳶)と現代の鳶の様子などについての資料があれば見
たい。
『古写真と錦絵でよみがえる江戸時代おもしろビックリ商売図鑑』(新人物往来社 2009)
p.46 に江戸時代における鳶の仕事や、町民からどのような評価を得ていたか等についての記載が
ある。また、
『江戸のハローワーク』
(山本眞吾/著 双葉社 2012)p.115 から鳶職に関する詳細
な記載と、p.109 には「江戸を代表する職人といえば、「大工・左官・鳶」というのが通り相場で、
「三職」と併せ称せられた。(中略)江戸では度重なる火災の発生で建築生産の需要は高く、こ
の三職の社会的地位も高かった」と他の建築職との関連についても言及した記述がある。
現代における鳶職については、
『現代建築職人事典』(工業調査会 2001)p.8-14 に鳶工の歴
史、現代における鳶工の仕事や具体的な作業工程などについて記載されている他、鳶職人のイン
タビューも収録している。また、『鳶 上空数百メートルを駆ける職人のひみつ』(多湖弘明/著
洋泉社 2014)には、鳶職人である著者自身が東京スカイツリー建設における鳶職人の活躍など
を紹介している。
723.3
ピカソの絵画で以下の作品の解説はないか。
「人間喜劇Ⅰ」
(ヴェルヴ第 29-30 号所収)
、刷り師ムルロ刷のリトグラフで作品右
上に「31.1.54Ⅱ」のサインがある。作品は女性と男性が描かれており、一部の線
描に 色彩が使われたスケッチ。
『ピカソ全集』
(講談社 1981・1982)と美術の事典には該当する項目はなかった。国会図書
館サーチで「人間喜劇」「ピカソ」を入力すると、『原色版美術ライブラリーC第1』(滝口修造/
編集・解説 みすず書房 1955)が同館で蔵書し、デジタルコレクションでも公開されている。
デジタルコレクションで目次を見ると制作年月日がタイトルとなっており、調査作品の右上のサ
インをもとに 1954 年1月 31 日の作品を確認したところ、この作品が該当すると思われた。同書
の巻頭には編者による所収作品についての解説がある。
また、
『印刷博物誌』
(凸版印刷 2001)p.545 には、質問の作品が掲載されていた芸術雑誌
『Verve』について、
「テリヤードの『ヴェルヴ』
」という項目で解説があった。
791
下図の図案のようなものを見た。4文字の漢字「吾」「唯」「足」「知」を表している
ように見えるが、何かを示唆しているのか。
りょうあん
インターネット Google 検索で「吾 唯 足 知」と検索すると、複数のサイトから京都・龍 安
じ
つくばい
寺にある蹲踞であることがわかった。
龍安寺公式HPhttp://www.ryoanji.jp/smph/guide/grounds.htmlに蹲踞の項目があり、「中央
の水穴を「口」の字に見立て、周りの四文字と共用し「吾唯足知」
(ワレタダタルコトヲシル)と
読む。これは釈迦が説いた「知足のものは、貧しといえども富めり、不知足のものは、富めりと
といえども貧し」という「知足」
(ちそく)の心を図案化した仏教の真髄であり、また茶道の精神
にも通じる。また、徳川光圀の寄進とされる」との解説があった。『これで読める 茶席の禅語く
われ ただ た
し
ずし字辞典』
(淡交社 2009)p.247 に「知を含む禅語」として「吾唯知足[吾唯足るを知る]」の
記載がある。
この蹲踞のカラー写真は『龍安寺の四季』(水野克比古/著 東方出版 2006)№57 及び№58
に掲載されており、また、『龍安寺 枯山水の海』(井上靖・千宗室/監修 集英社 1989)p.66
ぞうろく
に「方丈の北東に東庭を隔てて蔵六庵の茶室がある。その前に水戸光圀から寄進された銭形をし
た「吾唯知足」と刻まれた珍しい手水鉢がある。
」との記載がある。
→TOPICS
他にもこんな質問ありました(クイック・レファレンスから)
分類
 回答、補足事項、薀蓄など
質問
や とびょう
493.8
野兎病『これだけは知っておきたい人獣共通感染症』
(神山恒夫/著 地人書館 2004)p.12
及び p.146 に記載あり。
911.3
「ひともとはかたきつぼみや福寿草」は誰の句か 『日本俳書大系 11』(日本俳書大系刊行会
1927)p.149 春泥発句集にあり。春泥とは江戸時代の俳人黒柳召波のこと(別号 春泥舎)
。
R911.30 「さとふりて柿の木持たぬ家もなし」は高浜虚子の句だと思っていたが違うようだ『新俳句
大観』
(明治書院 2006)p.114 に松尾芭蕉の句で記載あり。
TOPICS
蹲踞
茶庭に据える蹲踞は、茶事において、茶席に入る前、手水鉢の前で静かにつくばい、柄杓で水をす
くって手や靴を清めるために設けられます。蹲踞とは手水鉢だけでなく、役石を配した構成をいい、
冬季には水は冷たいため、湯桶に湯を入れて置いておく石を湯桶石、暗い時に燈火が必要になるため
手燭を置く台石を手燭石、前に前石、さらに鉢明かりの燈籠を据えます。
ちょうずばち
蹲踞付近の役石
ゆ お け いし
湯桶石
ご
ろ
手水鉢
てしょくいし
海
手燭石
た いし
呉呂太石
まえいし
前石
※流儀によっては、湯桶石と手燭石の位置は逆になる
このような石の配置もさることながら、蹲踞の位置も使用時に後ろで次客におしりを見せないよう
にじりくち
に角度を考え、 躙 口 に入りやすい位置に据えるなどの配慮がされており、茶道の様式美の一端を窺
うことができます。
出典:『露地のきまり』 小河正行/著 淡交社 2011