Page 1 Page 2 ー漢 字 音 考 察 の 一 d ー 一 藤原教僕の作った古今

Title
藤原教長「古今和歌集註」の撥音仮名表記: 漢字音考察の1 d
Author(s)
高羽, 五郎
Citation
金沢大学法文学部論集. 文学篇 = Studies and essays by the Faculty of
Law and Literature, Kanazawa University. Literature, 12: 21-26
Issue Date
1965-03-20
Type
Departmental Bulletin Paper
Text version
publisher
URL
http://hdl.handle.net/2297/40841
Right
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21
藤原教長﹁古今和歌集註﹂の擬音仮名表記
である。
しい表記法に依るというような、表記の区別があるかもしれ
今染の古くからの伝統の表記法を取り、註釈はその時代の新
献である.従って両者には表記法の違いl例えば木文は古
ていると認めてよいであろう。このように、類の中でンムを
ンムの用字に関しては特別な傾向の差が無く、両字を混用し
もンムの用い方に偏りが無い.全体にも、本文と註の間にも
も多いが、さほど大きい蕊ではない。また本文と註との間に
この川例数全体として見ると、ンの表記が幾分ム表記より
例数は次のとおりである。︵←次頁︶
I、m類のうち、助詞・助動詞及び使川例の多い語の表記
したが、それをまとめて表記様相を見る。
教長古今集註の擬音仮名表記の用例は稿末に語莱別に表示
一一
この洲炎に川いたテキストは批亜図齊影本刊行会の複製本
で両者を区別する。
の接音表記はそれ自身として表記の推移を見る必要もあるの
るべき表記様相が強くは見えないように思うが、古今集本文
高羽五
l漢字音考察の一dl
藤原教災の作った古今築註︵京都大学蔵︶は片仮名交り文
献の一つであるが、所々の巻の奥沓によると仁治二年︵一二
四二︶の将淳本である。同時代の他の片仮名交り文の一類と
比較すると、接音の表記についてたいへん遮う点があって、
本書の俊脊表記ではンを多く用いている。本書が仁治二年の
書写本であるならば、私の調査した範囲では、片仮名交り文
一つとして本書の接音表記の様相を具体的に報告する。
のうちンを多く用いる類の中では早いものである。その類の
本瞥は古今災の本文︵序・歌・詞杏など︶を引用して砿釈
ない。棚査の結果としては接音の表記にそのような差を謹め
しているから、歌災本文の部分と教促の註釈文とは別簡の文
郎
翌
むむむむ
四四
ーハ一
一一ハー
一一一秒
五一
Q
Q
七五
ン表
本文岬砿一計
一○四
五
二五
四一
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五馬
一八二黒
雲Q
二七
四
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一三一四
一一一一一
−
−
記
計
七 一 一 三 一
記
九○二二黒
一一一一一︾
三四七Q
二○一五一二二○
表
九 一 六
七○一○八六六六
による川宇法とも迎い、さきに報告した西方指南抄︵本文︶
や本稿と肱んで本誌に報告した明恵上人歌災のように、類n
類ともにムを多く川いてンが少数混在する類とも違う、別の
一類と思われる。ただこのような表記様相は全体︵右に挙げ
た用例の多い語の︶としての事であって、個々の語について
一方目立ってムを多く用いているのは助動詞﹁らむ﹂で、
が4倍に近い。
ムが躯例、ン4例、ムがンの8倍である。﹁けむ﹂もいくぶ
んム淡記が多く、ム吃例、ン6例でムが2傭であるが、用例
い。
数も少く、ンム使用の態も﹁らむ﹂ほどいちじるしくはな
右のように、特定の語についてン・ムどちらかを多く用い
る、または全く一方だけを用いるのは何故であろうか。﹁ら
にあるので推定を出すことができないが、﹁女﹂﹁御﹂のよ
む﹂のようにムを多く用いる類については関迎する疑点が他
うにンを多く用いる斌は、擬背の衷記にンを主として剛いる
後世の状態に近づく過秘として認める堺ができると思う。そ
の推定についてここにくわしく述べる紙而がないので後の報
告にゆずるが、以下に述べる、類の他の語︵川例の少い語︶、
を認める材料になるであろう。
あるいはn類の﹁等﹂の表記も右の﹁女﹂﹁御﹂の表記態度
これまで見てきたのは、類のうち用例数の多い語である。
ることはできないが、全体の傾向を考える材料として挙げる
その他の語は用例数が少いから各洛について表記の価向を見
個々の鵬について見るとンムいずれかを多く川いる特定の
見るとすべての語にンムを同様に用いているのではない。
べてン炎把である。さきに兄た川例数の多い語の我記と合せ
て考えると、助詞・助動詞以外の鵬は一般的にンを用いる傾
と次のとおりで、全例Ⅳのうちム表記は2例、他の胴例はす
向の表れと見てよいかもしれない。
語がある。まずンを多く川いる類には、”の川例すべてンだ
いる﹁御﹂が目立っている。この二語ほどきわだってはいな
けを川いている﹁女﹂と、一例ムのほかは蛎例すべてンを剛
いが、係助詞﹁なむ﹂はム皿例に対してン狐例で、ンの使用
言
F一
一 一 、
へ
へ へ
調
1本ム
1
文一肱
詞詞右右制
字偲J
も24
… ー ー ー ー
分←Ⅲ
汁 終 係 へ へ 助
助助l司同動
区別なく狐川する我記法は訓点などの、瀬ム。n類ンの区別
女御ななけらむ
ム表記
1
洸 ん
12
東 山
文 隈
2112121
神 司
上つ出霞寺
上つ逝
束
御息所
超l伽
●
1
の脊便︶などの和語と字青謡のモシ︵文字︶ホィ︵本意︶な
故︶ナメリ︵﹁なるめり﹂の脊便︶ハヘメリ︵﹁侍るめり﹂
ど、すべて擬音無表記である。
一一一
片仮名交り文の擬音の表記法には、訓点などによって従来
に、本稿と並んで報告した明恵上人歌集のような接音すべて
認められている表記法︵n類にン、m類にムを用いる︶以外
に主としてムを川いる我記法の一類があると考えたが、ここ
に報傭した救災古今災雄の侭汗友紀はンム両字を多く用いて
いるが、訓点の麺のような川字法ではなく、m類にンムを区
用している文献が多いが、本番はそれに比べるとンの使川が
別なく混用している。またムを多く用いる類でもンを少数混
の違いと言ってよいように思われる。従って本書の接音表記
きわだって多く、ンを普通に川いるのと例外的に用いるのと
との対照はムを主として用いる表記法の存在を認める材料に
もなるであろう。同時に本瞥のようにンムを区別なく混用す
ン表記本文1例註4例計5例
無表記本文3例註掘例計幅例
のように無表記が多いが、それを別にして見るとすべてンを
したと考える材料にもなるであろう。
る表記法が、訓点の瓶・ム飛川の額とは別に一類として存在
稿ではこの類の一例として教長古今築註の具体的な表記と、
もあるから同類の他の文献と比較して考える必要がある。本
本書の中だけでも認める事のできる傾向もあるが、他に疑点
数の語のほかはンを多く用いるという傾向を考えたように、
本書の擬青表記については、前節に、助詞・助動詞など少
用いている。他の文献にナムトと香いている例が多いのとく
のン表記があるだけで、その他はイカ、︵如何︶ナト︵何
クタン︵苦丹?︶註1例
右のほかには物名の題に出る﹁くたに﹂に
われる。
例の少い擶譜にンを多く用いているのと同一傾向のように思
らべて述いが目立つ。前菰、類の中で﹁抑﹂﹁女﹂その他川
一
│
'
」
。
│
‘
'
て
Ⅱ、n熱の擬音表記例は少数である。その中で﹁等﹂は
嘩兀
2
御覧(ず)
│
'
注
本文|註
’
G』81
1
砺恥艇
ン表紀’
ン|桂一
罰
23
24
その中で考え得る範囲の報告にとどめる。
なお本岱には擬音を含む語以外に接音を指す言葉としてム
をⅢいた例が二箇所ある︵附我末足参照︶・擬音を指す言莱
にはンを川いないでムを川いている班が当時の接音表記法を
考える材料になると思うので、くわしく述べる必要がある。
また綴音を指す用語は本書の作られた前後の頃に清輔・顕
昭・長明などの諸書にそれぞれの用語があり、当時の擢音の
状態あるいはその表記を考える材料として昔から取上げられ
ているが、各普の記述の解釈についてはなお問題があるよう
用、及び序の古註を指す︶と教長の註釈文を類別し、各類を
︹木文︺・界智と棟迅する。︵歌の用語と洞番の用語とは
区別を示さない︶。
す。巻数を①の形式で標示し、その中での用例の所在を1オ
3、用例の所在を古今無の潅数と各港の中での原木の丁数で示
犀一と標示する。︵複製本巻三に錯丁があるのは正した丁数
のように丁数とオ︵表︶ウ︵裏︶の形式で表す。序の巻は
による。巻四にある白紙一枚は丁数に加えない︶。
4、註の文中に本文の歌・詞を引用している場合は註の頽別に
含め、所在の下に﹁歌引﹂可詞引Lと附把する。︵本文の引
に思う。本併の記述もそれらと考え合せる材料になるであろ
場合だけを引川と見る︶・
御④ヲホム︹註︺⑧9ウ
て認める。
句の初字が原本で踊字の場合、その上の字に慨きかえた形とし
○原木の異体字はすべて現行普通の字体に改める。擾音を含む語
用か否かは碗爽に区別できない。明硴に本文の言莱どおりの
ているゆえ、穂を改めて述べる躯にする。
う。披宵を指すムについてはこのように和々の問題が含まれ
︹附表︺数挺古今集註擬音仮名表記例
○仁治二年書写教長古今集註︵京都大学蔵、貴重図書影木刊行会
いわゆる接音無表記・ニ表記・ウ表記などの語は採らない。た
複製本による︶の中で片仮躬書き擬音関係語の用例表である。
別オ鯛ウ鋤ウ釦ウ④6ウ⑦2オ2ウ⑰4
②ヲホン︹本文︺③3ウ皿オ”ウ型ウ”ゥ”オ
女②ヲンナ︹本文︺②3ウ肥オ”オ調オ”オ②
②ヲホ︹註︺③4ォ
オ9オ⑬4オ4ウ⑰3ウ
︹誰︺⑧4オ4オ5オ川オ③4ウ4ウ⑳9
ウ
だ無菱迅のうちンム浅妃と両用の語は参照のために加える。﹁
ムメLなど泌頭にムを用いた語は採らない。
○語句によって五十帝順に排列し、その中での排列と紀賊法は次
の方法による。
1、同じ語句の中でム麦把・ン表記・無表記の順に大別し、各
々一ムーラー③と標記する。
2、各表記類別の中で本文︵序・欧・詞など古今染本文の引
一
一
25
8ウ③4オ⑪1ウ3オ⑭5ウ6オ6ォ⑯
︹註︺①4ウ4ウMウ③1ウ④4オ4オ5
5オ
オ⑪2オ⑫7ウ⑬lウ2ウ2ウ5オ⑰7
ウ
神司②カンッカサ︹註︺③4ゥ4ゥ
上つ遊②カンッミチ︹敵︺⑫2ォ
上つ出婆寺②カンツイッモテラ︹註︺⑫lウ
囲蝿斑④カムナリノッホ︹本文︺④lゥ
②カンナリノッホ︹祉︺④lゥ③8ゥ
苦丹?②クタン︹誰︺⑳4ォ
けむ︵助動詞︶④ケム︹本文︺辱別オ”ウ⑳8オ⑬5
ウ⑮3オ4ウ
︹註︺①4オ4オ⑬4ウ⑮3ォ4ゥ4ゥ
②ケン︹本文︺①叩オ②7オ⑤3オ⑦2ウ⑳5ォ
︹繩︺⑤3オ
御覧︵ず︶②コラン︵ス︶︹本文︺④6ウ③8ォ
︹桃︺④7オ
等②ナント︹本文︺睦肥ォ
︹証︺①4オ⑪5オ⑬1ウ⑮Mォ
③ナト︹本文︺辱胴ウⅣオ⑨5オ
︹識︺③7オ①6ウ②6オ7オ8ウ③2ウ
④6オ⑤1ウ⑥lウ⑦1オ3オ③3ウ7ォ
む 御 文 東 東 な な
,-、息屋lll
② む ② む
23助所②ナウ,-、⑭4⑤戸、822ナ13,−、へ⑮3オ9
オ動②②ピン終2ウ6註ウウンウ註係8オオ
調②フヒン,-、⑮助オォ、-′,-,ー'助オ⑫
24,−ノミンンカ本14洞7⑤⑨23本⑮厩詞329
オ④ヤヤカシ,ろウ鯛オ③イ!オ父432、-/13ウオオ
ムス,一、シ,-、2オウ−オウ④ウ
33ヘン本lll註③ナオIOK>-24唾ナ52
、ウ本卜文'一、、−′1ムオ5⑳ウ15①ム⑰オオ5
文コー証⑳オ,一、107i-l4,−、2ウ
①ーロ底−9本⑫ォウ25ゥ本オ62
5⑧,一、28③オ⑥文15オ16文ウオ⑳
W-15本オ71ーウ10ウ⑭オ9ー24
ウ文オ⑫オ⑫ウ626ウ⑤ウ64オ
13ー'23710オウ1632ウウ
ウ 1 6 ⑳ オ ③ オ オ ⑳ オ ウ ⑫ ウ 3 4
オ 6 7 2 2 6 7 ウ ⑭ 8 ウ
②ウウ⑬8オ①ウ18ウ⑭3ウ
1 1 7 3 オ ・ 7 ウ 1 3 6 ウ 1 0
ウオ⑰7J-10"-30⑬オウ⑬オ
3 ウ ⑬ オ ウ 1 8 5 4 2
4 1 7 ウ ⑭ 4 9 ウ オ ⑮ ウ ウ ⑪
オウ911オ?為¥20⑭舟132;
オ オ
③ 1 8 7 ウ 引 ウ 8 ウ ウ
2 ゥ 1 1 ゥ ① ゥ 4
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5オ ン ⑰ ウ 8 オ 5 4 ③ オ 戸 、 ⑰ 9 ⑭ ウ ウ
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歌 4⑫ オ
ゥ ウ 4⑪
オ
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オ 7 4 歌
オ ウ 5 オ
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ゥ⑦!ゥオオウウ④10兜ウ‘
7ウウ40ウ⑦
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オ 1 オ ウ ウ 8 7 オ
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オオ歌
5 引
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⑦ オ ウ
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ウ ③ オ ウ 7 ⑭ オ ウ 5 ウ オ
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6 5 ウ 7 オ オ オ 5 オ オ
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ウ3ウ4ウ4ウ③2ウ3オ4オ6ウ歌引
7ウ9オ叩ウ⑨6オ⑳2オ2オ2オ歌引
2ウ歌引4ウuオ⑪3オ5オ5ゥ7ゥ7ゥ
9ウⅢウ⑫3オ4ウ8ウ9オ9ウ⑬1ウ
6ウ6ウ⑭lウ3ウ6オ7ウ8オ、オ
⑮燗オ⑰6ウ
⑥ウ︹本文︺⑳6オ
読ん④ヨム︹本文︺①9ゥ
らむ︵助動詞︶④ラム︹本文︺⑧肥ウ配オ鯛ウ①9ゥ
Mオ②3ウ6ウ④5オ⑤lウ⑫2ウ3ォ
6ウ⑮2ウ4ウ5オ8ゥ
︹註︺⑧7オ①1ウ歌引胞オMウ②5オ7オ
④5ウ⑦lウ③lウ⑳6オ7ウ⑫3ウ歌引
⑭6オ8オ⑮8ウ⑰4オ
②ラン︹本文︺②5ウ
︹桃︺⑤2オ歌引4ウ⑦5オ
ン︵音を指す語︶④︹註︺⑳4オ5ウ
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