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提言
提言
貿易・サービス収支改善の提言 ∼ 経常収支赤字化の回避 ∼
中経連は、経済委員会(委員長:豊田副会長)において「貿易・サービス収支改善の提言 ∼ 経常収支
赤字化の回避 ∼」を取りまとめ、政府、地方自治体等へ要望した。概要は以下のとおり。
1.趣旨・目的
●
わが国経済はアベノミクスにより長期低迷から脱しつつあるが、貿易・サービス収支は悪化しており、
これに
伴い経常収支も悪化し将来的には赤字へ進行するおそれがある。
●
本会は、経常収支赤字が問題となる理由や悪化の背景を検討した結果、赤字自体が問題というよりも、巨額
の財政赤字、産業空洞化の進行、国内産業構造転換の遅れ等、赤字が生じるわが国の経済構造に問題が
あると考えた。
●
この提言書は、財政赤字の重要性を認識しつつも、経常収支悪化の主因である貿易・サービス収支に焦点
を絞り、悪化の要因分析や対応策の検討を行い、政府ならびに企業に対して提言するものである。
●
換言すれば、貿易・サービス収支を検討の入り口とする、
わが国産業の競争力再生に向けた提言である。
2.貿易・サービス収支の悪化をもたらす要因と示唆
(1)円安の下でも輸出が伸びていない。要因は以下のとおり。
①世界経済の成長鈍化で世界の貿易量が伸びていないため、輸出市場が伸び悩んでいる。
②企業は外貨建て輸出価格を下げておらず輸出数量が増えていない。
【示唆】円高期に製造業の海外進出が進んだ結果、わが国の輸出品目は非価格競争力の強い品目が中心と
なっており、
そのような品目をさらに増やしていくことが必要。
③製造業企業の海外生産シフトが輸出を肩代わりしている。
【示唆】海外進出する場合でも付加価値の高い基幹部品等の生産を日本で続ける工夫が必要。
④新興国のキャッチアップで、電気機械産業などを中心に海外市場で苦戦している。
【示唆】デジタル技術やモジュール化が進展する分野においても、製品の競争力を長期間保持できるような
ビジネスモデルを構築することが必要。
(2)円安と原発の停止等でエネルギー資源輸入額が増加している。
【示唆】エネルギー資源の輸入量や輸入金額の抑制につながるような努力の継続が必要。
3.主要な提言・要請
■提言群1 : 企業の競争力を高め輸出を増やす経済体質をつくる
(高くても売れるものを作る経済体質)
(政府へ)産学官連携プロジェクトの推進、国家戦略的な産業クラスター費用への国費の半額投入、中堅・中
●
小企業の輸出や新規事業開発の支援
(企業へ)
ビジネスモデルの変革・知財戦略や標準化戦略の強化、国内投資で競争力を磨く、新興国と競合
●
しない製品開発、製品の非価格競争力の強化、輸出品の国内での付加価値額向上
(中部圏へ)非価格競争力の強化、事業拠点の国内維持・拡充、eEXPO/Linkersを使ったビジネスマッ
●
チングの促進
提言群2 : 新たな輸出産業を育成し輸出を増やす経済体質をつくる(新興国と競合しない経済体質)
(政府へ)農業分野の規制改革、医療機器や再生医療等製品の認証制度や保険適用の洗練、航空機に
●
おける認証制度の欧米との相互承認を図る、輸出品の日本ブランドの向上促進
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中経連 2015.3
中経連 2015.3
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提言
(企業へ)農業の6次産業化・輸出産業化、社会インフラ・航空機を輸出産業として成長させる
●
(中部圏へ)中部の次世代型リーディング産業の輸出競争力強化、農商工連携による
「食材の製造業」の創
●
造、観光と一体化した地域特産品の輸出拡大
■提言群3 : 観光産業を振興し観光で稼ぐ経済体質をつくる
(サービス収支の改善)
(政府へ)政府による観光プロモーションの強化、訪日客の利便性・快適性・安全性に関する政府所管の措
●
置の推進
(企業へ)海外の人々の関心を日本に向けさせる情報発信、観光資源の開発
●
(中部圏へ)昇龍道プロジェクトの推進、
イベントのショーアップ・誘致・開発、中部圏の空港や港湾の機能強化
●
■提言群4 : 内外企業の国内立地を促進する立地環境をつくる
(海外生産シフトへの対応)
(政府へ)国内でのマザー工場の維持・拡充の促進、海外企業の日本国内への投資を呼び込む制度の整
●
備、中堅・中小企業の経営革新支援、中部圏への特区の設置
(企業へ)競争力を国内投資で磨く努力、中小企業を含む国内生産機能の維持・伝承・保全
●
(中部圏へ)次世代のものづくり産業の育成、
グレーター・ナゴヤ・イニシアティブ(GNI)の一層の推進、産学
●
の連携推進の強化
■提言群5 : 省エネや資源リサイクルによって資源節約型の経済社会をつくる
(輸入の抑制)
(政府へ)原発の早期再稼働、国産エネルギーの開発、国内リサイクル資源の有効活用の高度化
●
(企業へ)省エネの推進、国内資源のリサイクル
●
(中部圏へ)資源リサイクル技術の開発、水素社会に向けた取り組みの促進と燃料電池車(FCV)
の世界への普及
●
4.会員アンケート
●
調査研究を進める一環として、会員向けのアンケートを実施した。主な結果は以下のとおり。
(調査期間:平成26年10月下旬∼11月中旬、回答総数:200社、回答率30.2%)
(1)円高是正後の輸出価格の変化について(図1)
〇輸出品の外貨建て価格を
「変えていない」
との回答が圧倒的、
日銀の輸出物価指数の動きを裏付ける結果。
(2)海外生産について(図2)
〇「海外生産・国内生産ともに増やす」
「 海外生産を増やし国内生産は現状維持」
との回答が多く、
「 海外
生産を減らす」
との回答は少数。
品目によるが概ね
引き下げた
品目によるが概ね
引き上げた
海外生産を増やし、
国内生産も増やす
8%
海外生産を増やし、
国内生産は現状を維持する
5%
図1
8%
わからない
3%
その他
3%
0
%
10
%
33%
海外生産を増やし、
国内生産を減らす
73%
全般的に変えていない
答えられない
35%
7%
海外生産を減らし、
国内生産を増やす
2%
海外生産を減らし、
国内生産は現状を維持する
2%
海外生産を減らし、
国内生産も減らす
0%
10%
答えられない
20
%
30
%
40
%
50
%
60
%
70
%
80
%
図2
わからない
5%
その他
5%
0
%
5
%
10
%
15
%
20
%
25
%
30
%
35
%
40
%
【問い合わせ:調査部】
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中経連 2015.3
中経連 2015.3
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ルビ注意
新春経済講演会
中 部 経 済4団 体主催 新春経済講演会
1月19日(月)、中経連は中部経済同友会、名古屋商工会議所、愛知県経営者協会と共催で、新春経済
講演会を名古屋市内にて開催し、約500名が参加した。
今 回は政 治 評 論 家
③では、歴史認識について、国によって理解が
の加藤清隆氏をお招き
異なっている案件が生じている経緯についての解
し、
「 激動の政治情勢を
説や、
そうした認識のギャップを埋めるのに政府や
読む」
と題してご講演を
ジャーナリズムが果たすべき役割等について言及
いただいた。
した。
加藤氏は、①安倍内閣の行方、②激変する国
(会員部 伊藤 康隆)
際情勢、③歴史認識をテーマに講演を行った。
①では、
アベノミクスの経済効果や消費税の増
税の影響等について独自の視点で解説し、昨年
12月の衆議院総選挙後の国内政局の見通しにつ
いて方向性を示した。
②では、中東、
クリミア、尖閣諸島等世界各地で
発生する諸問題について多岐にわたり解説し、現
在の日本を取り巻く国際的な政治課題等につい
て、次世代のためにも我々の世代で解決に向けた
努力が必要だと強く訴えた。
委員会活動
第3回経済委員会
はないか」、
「愛知県
1月21日(水)、第3回経済委員会を開催、委員
等にとって産 業 観 光
長の豊田副会長はじめ45名が参加した。
は大きなテーマなの
今回は、提言書原案「貿易・サービス収支改善
の提言 ∼ 経常収支赤字化の回避 ∼」
について
最終審議を行った。
で、
もっと強調してい
いのではないか」等、多数の意見が出された。
今回の委員会で出された意見を踏まえた上で
委員からは、
「 経常収支の中で大幅な黒字の第
修正案を取りまとめ、
2月2日に開催する正・副会
一 次 所 得 収 支( 投 資 収 益など)を増やす努力も
長会および総合政策会議に上程することとし、審
大切である旨を書いた方がいいのではないか」、
議は終了した。
「医療機器産業の振興について、中部圏で出来る
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ことがもっとあるので
中経連 2015.3
(調査部 加藤 慎哉)
中経連 2015.3
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