企業レポート

日化ポリマー中国 株式会社
緩衝材や防振材の製造に特化
徹底した品質管理を実践する
「人財」豊富な信頼される企業へ
今回お訪ねしたのは、広島ICにほど近い、日化ポリマー中国
株式会社の本社工場。6S(整理・整頓・清掃・清潔・躾・作法)を
実践中の社内は、すっきり片付いています。同社は、不織布や
フェルト等と両面テープを貼り合わせた緩衝材や防振材、防
音材などの製造で40年以上の歴史がある企業。現在、2代目
の日浦隆社長が同社をリードしています。人材育成に力を入
れ、自らも社員と共に成長しようと、積極的に勉強し続ける日
浦隆社長に、自らの実践理論や熱い思いをうかがいました。
本社工場
緩衝材、防振材となる
両面テープや不織布をカット
区緑井へ工場を移転。機械の台数も増やして、
さらに
弊社の創業者は私の父です。昭和49年、工業用の
弊社の製品は、車両の内装材の内側に貼る緩衝材
両面テープの定寸カットからスタートしました。
もともと、
や防振材、
防音材などが中心で、
一般の消費者の目に
父が商社に勤務していた関係で、独立してからもそれ
触れることのないものばかりです。
自動車関連資材、工
までお世話になった方を中心にルートを開拓。中国地
業用接着剤・シーリング材・ゴム製品の加工や販売など
方ではほかにない珍しい機械を導入したことで、
お引き
も手掛けています。不織布やフェルト、両面テープなど
合いをいただいたそうです。
当初は機械3∼4台で、
ウレ
の原料は、各取引先や原材料メーカーから仕入れま
タンやゴムスポンジなど、型に合わせて打ち抜きを行っ
す。納品先の用途に合わせ、各種ある両面テープと不
ていました。平成2年に広島市西区庚午から、安佐南
織布やフェルトの取り合わせをご提案。両面テープと不
成長を目指しました。
織布(フェルト)
を張り合わせ、
トムソン
(型)
で抜いて、
貼
しりり製
て、、品
い周不の
る囲要一
はな例
は所。
ぎ 不
やは織
す穴布
いを
よあに
うけ両
にて面
剥くテ
離りー
紙ぬプ
をいを
残た貼
り付けやすいようにして納品します。型で抜く時、両面
テープの下の剥離紙は切らないようにして、不織布だ
けをカットするなど、
ミクロン単位の調整が行われていま
す。不織布を剥離紙からはがしやすくするため、剥離
紙を余分に残し、
「はぎしろ」
を作るのがミソ。
お客さまの
ニーズにきめ細かに対応していたところ、少量多品種
化がすすみ、
アイテム数は1万を越えています。
ワイエムビジネスレポート 2015. 3月号 No.78
1
企業レポート/日化ポリマー中国 株式会社
サラリーマンも一度経験
二度目の創業で会社立て直し
工場が移転した平成2年、
私は将来的に会社を継ぐ
ことを見越して、
日化ポリマー中国株式会社に入社しま
した。
ところが、
バブルの崩壊や経営の不手際が重な
り、
20年前に一度、
会社が立ち行かなくなりました。
その
パート社員さんたちの頑張りが現場を支えている
とき、
メインの仕入れ先であるHKPさんが手を差し伸べ
てくれました。傘下に入らせてもらい、私も一サラリーマ
なってしまいましたが、毎年、京都へお墓に参りに行き、
ンとなって、
心機一転、
仕事に励んでいました。収支のこ
感謝の気持ちを伝えています。
とをそこまで心配せず、
月給制で働けるのはありがたい
経営の体制が変わったり、
2代目の私が経営者になっ
話だと思いました。
て再出発したりという変遷を、20年以上ずっとパート社
それでもやはり独立しようか、
このままサラリーマンと
員として見守ってくれた人がいます。
ある時「よく頑張っ
して働こうか…。
なかなかふんぎりがつかず何年も悩
たね」
と声をかけてもらいました。
私自身、
しんどい時もあ
みましたが、
いよいよ独立を決意。家族会議では、
「今
りましたが、社内外の多くの皆さんに支えてもらって、今
さら借金を背負うのか」
「このまま、HKPさんにお世話
があると実感しました。
になったほうがいい」
と反対の声が上がりましたが、
私の
トレーサビリティシートで
品質管理を徹底
「独立したい」
という決意を認めてもらいました。
「人生
は一度きり。設備も人も揃っているし、
仕入れ先も顧客も
ルートが確保できている。何もないところからスタートす
ISO9001を取得して10年になります。皆さんもご存じ
る人より、取引先も社内もいい人に恵まれている。父を
の通り、
ISOの認証は取得したら終わりではなく、
更新し
越えてみせよう。
自分の裁量で会社をよみがえらせてみ
ながらスパイラルアップしていく必要があります。
たい」そんな気持ちで11年前、私は社長に就任し、改
弊社の場合は、入社8年目の品質管理担当者が非
めて会社がスタートしました。
常に頑張ってくれています。検査基準書や作業標準
独立から半年は不安でたまりませんでした。
その時、
書、手順書だけではなく、
「トレーサビリティシート」
という
私の背中を押してくれたのは、
HKPの担当者です。
「好
独自のシートで業務を遂行し、
また記録を残しています。
きなようにやってみい」
「お前が良いと思うたら、
やって
出荷した商品が、
いつ、
どこで、誰が、
どのように加工し
みたらいい」
という言葉には、大いに励まされました。
ま
たか分かるように、生産ロットごとにロット番号をつけて
た後に「成長したね」
という一言をかけてもらったことが
管理。
製品梱包時に添付または封入するラベルにロット
うれしく、
鮮明に覚えています。残念ながらその方は亡く
番号を転機し、
何らかの問題があった時にはロット番号
を手がかりにさかのぼって調査できるようにしています。
態整
に理
整
頓
さ
れ
、
不
要
な
物
が
出
て
い
な
い
状
2
ワイエムビジネスレポート 2015. 3月号 No.78
ミスの一つが寸法異常です。寸法が違う製品を作っ
たことが最終段階で分かっても、
廃棄処分するしかあり
ません。
お客さまにご迷惑をおかけすることは防げます
が、
ロスが出て、
その分、
利益を減らしてしまうことになり
ます。
そこで、加工工程での寸法測定、記録を実施す
ることで、
「現場でエラー検出」
「不良品を知らず知ら
ずのうちに作らないよう歯止め」
「不良品の出荷防止」
企業レポート/日化ポリマー中国 株式会社
社是
組んでもらっています。
現在、弊社では正社員10人、
パート社員さん35人が
顧客や社会との信頼関係をつくり、企業の顔を
明確にすることこそ新たな成長が可能となる。
働いており、
製造部門は特に、
女性のパート社員さんの
品質方針(経営理念)
の仕上げをお願いしている内職の方がかなりの人数い
勇気と信念をもち、正直・親切・愉快に積極的
に自己の責務を果たし、全社員一丸となってお
客さまの信頼を得る。
腕で成り立っている部分が大きいですね。
さらに、製品
らっしゃり、彼女たちの神業のような作業が欠かせませ
ん。正社員のほうがパート社員より偉いという考え方や、
下請けの人に立場を利用して無理を言うことは、
コンプ
ライアンス上もNGですし、何よりも人間として許せない、
「コスト低減」
といったよい循環が生まれています。
と思っています。おかげさまでそんな人はいませんが、
ここ3、4年で、社内に品質管理の考え方が浸透して
謙虚さを忘れないこと、
「気配り」
「目配り」
「心配り」
を大
来たのを感じます。当初はトレーサビリティシートを記入
切にすることなど、
日々、
お願いをしています。
また、
コミュ
することに追われ、
ミスが起きた時期もありました。
ミス
ニケーションを活発にすることも重要です。年末の最後
の大半は、
機械ではなく人間に由来する
「ヒューマンエ
の日に、全社員にバーベキューや年越そばを振る舞い
ラー」です。
より続けやすいシンプルなシステムを構築
「今年も1年ご苦労さまでした」
「また来年も頑張ろう」
し、
品質管理を継続して行います。
お客さまの信頼を裏
と心を一つにしています。
切ることなく、
成果を出していきたいと思います。
弊社が今後目指していくのは、
「人財の豊かさで
規模の拡大ではなく
人財が豊かな企業に
M&Aの対象になるような会社」。規模の拡大よりも、規
私が社長に就任してから一番しんどかったのは、
族同然。
いいことばかりでなく、時には厳しいことも言い
リーマンショック後に仕事がガクンと減った時です。売
ますが、共に学び、力を合わせて成長していきたいと思
上的には大被害でしたが、
幸い1、
2年なら乗り越えられ
います。決して買収されたいわけではないですが、
「あ
る見通しができたので、
「空いた時間は教育に使おう」
んな素晴らしい社員がたくさんいる企業だったら、ぜひ
と決めました。社内で講習会や勉強会をしたり、本やコ
M&Aさせてほしい」
と頼まれるような、
人財で価値の高
ピーを渡したり、
そのころの蓄積が今に生きているように
い企業にしていきたいと思います。
模を拡大してもひずみが出ないよう、足場固めとしての
人材育成に力を入れていきます。私にとって社員は家
感じます。
ある程度の製品は、
お金さえあれば機械を購
製
品
の
サ
イ
ズ
を
図
っ
て
確
認
入して作ることができますが、
すばらしい人材はお金で
は買えません。私自身が勉強を続けたいという思いもあ
り、
「人材」
を
「人財」に変えるために、
日々の朝礼で話を
したり、社外の研修に参加してもらったりと、今も教育に
は力を入れています。
2012年にスタートしたネットショップも、
ある意味教育
の場と考えています。売上の核になるとは期待していま
せんが、
全員に経営に参加しているという感覚を持って
もらうために、実地で勉強してもらうチャンスです。収支
を確かめ、
売上を上げるにはどうするか、
認知度を上げ
るにはどうPRすればいいかなど、
みんなで考えて取り
げ検
、
ミ品
スの
をコ
見ー
逃ナ
さー
なは
い照
よ明
うの
に照
し
て度
いを
る上
ワイエムビジネスレポート 2015. 3月号 No.78
3
企業レポート/日化ポリマー中国 株式会社
社長に
お聞きしました!
私の朝時間
目覚まし時計をかけなくても、4時半か
ら5時に目が覚めます。
まずはリビング
で空気清浄機や床暖房などをスイッ
チオン、
こたつに入ってニュースを見ま
す。
5時半ごろに妻が起きてきて、
入れ
てもらったコーヒーを飲んだら出発準
備。6時30分には家を出て、
会社につ
いたらまずは整理整頓をします。デスク
についたら、朝のうちに売上や収支、
メールなどをチェック。社長業は8時半
の始業までに終わらせ、
昼間は入荷の
受付など現場で作業をしています。
好きな言葉
「神様は、
あなただったらできると見
込んで試練を与えてくれている」。こ
の言葉は2、3年前、落ち込んでいた
時に、経営者の友人からかけられまし
た。経営者という同じ立場で、互いに
本音を話せる大切な仲間の一言が
すっと心に響き、
自然と切り替えるこ
とができました。その後もいろいろな
課題が出てきていますが、
あまり悩む
ことなく、打開策を考え、
モチベーショ
ンを保っています。
私 の お 気 に 入り
アウトドアやバイクが好きです。昨年、
バイク免許の限定解除を取得。バイ
ク好きな社員と一緒にツーリングに出
掛けています。
毎年1度、2月に泊まりがけで湯治に
行くのも恒例行事です。経営者仲間
と男2人で、今年は3泊4日で大分県
の温泉へ。仕事を完全OFFにして、
昨
年からはパソコンも持参せず、文字通
り休養できています。
それぞれ一人部
屋でのんびり、
自分のペースでしっかり
骨休めをして、
ご飯は楽しく一緒に食
べています。
「湯治に行くために仕事
を頑張る」
と言えなくもないほど、私に
とって欠かせない旅になっています。
4
ワイエムビジネスレポート 2015. 3月号 No.78
代表取締役
日浦 隆
概 要
<所在地>
広島市安佐南区緑井2-28-6
< 設
昭和49年4月1日
立 >
<資 本 金>
1,000万円
< 従業員数 >
社員10名、
パート社員35人
< 事業概要 >
自動車関連資材、両面テープ、工業用接着剤・シーリン
グ材・ゴム製品などの加工・販売
企業沿革
昭和49年
設立
平成 2年
広島市西区から広島市安佐南区緑井に移転
平成 6年
HKPの傘下に入る
平成15年
ISO9001を取得
平成16年
日化ポリマー中国株式会社として独立
平成24年
ネットショップを開設