関係機関の取り組み紹介 観光客が嬉しいと感じる ひと言、ひと行動 ~宮島で実際にあったちょっといい話~ 廿日市市 環境産業部 部長 隅田 誠 Ⅰ.はじめに 広島県廿日市市は、沿岸部、内陸部、山間部、島しょ部と広範な県西部エリアに位置 しますが、本市の観光資源は、海に浮かぶ朱の大鳥居に象徴される世界遺産「宮島」を 擁することが最大の特徴です。 また、本土側の臨海部にはかつての西国街道の面影を残す社寺、内陸の田園地域には 複数のゴルフ場、中国山地側にはスキー場、もみのき森林公園等の森林レクリエーショ ン施設、複数の温泉施設等があります。 本市における観光振興の基本方針の一つとして、宮島は“一流の国際観光拠点”を目 指すべき姿としております。昨年、宮島の観光客への調査の中で「観光客が嬉しいと感 じるひと言、ひと行動(宮島おもてなしハンドブック) 」を観光関連業者の皆様向けに まとめました。本稿では紙面の都合上、その一部をご紹介します。 厳島神社 表参道商店街 弥山山頂からの眺望 宮島水族館「みやじマリン」 旬レポ中国地域 2015 年 3 月号 1 店員さんから気さくに声を 掛けてくれると嬉しい お店の⼈との会話が盛り上がると、観光客のお店への好 感度が⾼まる傾向がうかがえます。「どちらから?」「どこから 来たん?」といった声かけから始まる、なにげないコミュニケ ーション、ちょっとした世間話が、意外と観光の潤滑油にな っているのかもしれません。 【観光客の声】 ○もみじ饅頭屋でセルフサービスのお茶を飲んでいたら、店員さんが気さくに声をかけ てくれて、世間話がはずんでとても楽しかった。また来たい。(東京都、男性、10 代) ちょっとした合間のやり取りが好 印象となる ⾏列に並んでいる間や注⽂待ちの時間に、お店の⽅から やさしいひと⾔があると「忙しいのにわざわざ気にかけてくれ ている」と、観光客の印象は変わるようです。ちょっとした合 間のお薦め商品の説明や⼼配りが喜ばれています。 【観光客の声】 ○昼⾷にカキ飯を注⽂したところ、待ち時間を利⽤して醤油の説明などがあり、親 しみが持てた。(⼭⼝県、⼥性、60 代) 旬レポ中国地域 2015 年 3 月号 2 宮島の歴史や特産品の由来 などの話が聞きたい 観光客の⽅々は、飲⾷店やお⼟産物屋などで地元のス タッフの⽅々から、宮島の話が聞けると、得した気分になり ます。しゃもじの由来、宮島独特の⾵習、宮島での⽣活 などを伝える“⼩ネタ”を持っておくと喜ばれます。 【観光客の声】 ○おみやげのマグカップを買う時に宮島の話や観光案内をしてくれるなど、親切、丁 寧に対応してくれた。宮島の歴史やしゃもじの由来など、勉強になった。(⿃取 県、男性、30 代) <若者向け> 笑顔・元気・明るい接客が 気持ち良い 元気なあいさつや、笑顔の接客は単に評価されるだけ でなく、観光客の気分まで明るくする⼒を持っているよ うです。中でも、特に若者世代には、お店の⽅の明る い雰囲気に親しみを覚える傾向がうかがえます。 【観光客の声】 ○牡蠣を売っている⼥性が、とても愛嬌が良かった。宮島に着いて最初に寄ったお 店だったこともあり、気持ち良く、旅のスタートを切ることができた。(福岡県、⼥ 性、20 代) 旬レポ中国地域 2015 年 3 月号 3 <ファミリー向け> 子どもにやさしく接して くれることが嬉しい ⼦供の⽬線で話しかけたり、飽きないようにしたりとい った気遣いは、家族にもしっかり評価されています。 ファミリー世代には「⼦供の笑顔が⼀家の喜び」に直 結しているとも⾔えそうです。 【観光客の声】 ○孫との旅、⼩腹がすいたので、もみじ饅頭を⾷べようと 3 個買ったところ、お店の お姉さんが孫に「よく宮島に来たね」とレモン味のもみじ饅頭を 1 個くれた。とても 喜んでお⺟さんへのお⼟産にすると⾔って、⼤事にカバンに⼊れた。また帰りに寄 ろうねと嬉しそうだった。(広島県、男⼥、60 代) 特に乳幼児連れのパパ、ママのコメントからは、⼦どもに 対する⼼配りを感じ、観光の途中でホッと⼀息つけた時 に喜びを感じる傾向がうかがえます。 【乳幼児のいる観光客の声】 ○旅館の飲⾷での利⽤だったが、広めの場所を⽤意してくれてゆったりと過ごすこと ができた。乳幼児連れだったが、ベビーカーを持ち上げようとしてくれたり、⼦供⽤ の⾷器を⽤意してくれたりして嬉しかった。(⼭⼝県、⼥性、30 代) 旬レポ中国地域 2015 年 3 月号 4 <中⾼年層向け> カキの調理法など、知らない ことへの説明が嬉しい 知らないことを教えてもらえると嬉しいものです。特 に、牡蠣については、⾃宅での調理⽅法や美味し い⾷べ⽅を伝えることができると喜ばれます。 【観光客の声】 ○カキの販売所で、カキの調理法を教えてくれた点が良かった。蒸すとキッチンが汚 れないということを聞いて、調理してみる気になった。主婦はちょっとした役⽴つ情 報があると嬉しく感じるものだ。(福岡県・熊本県、⼥性、50 代・60 代) 困った時のその場の機転で 旅の印象も好転 旅全体の印象まで左右しかねない、旅⾏中のトラブ ル。そんな時に⼿を差し伸べてくれる⼈の思いやりは、 強く⼼に残るようです。観光客の“困った”に応えようとす るその場の機転が、旅の印象を好転させるファインプレ ーになっています。 【観光客の声】 ○宿泊後、旅館に携帯を忘れたが、おかみさんがすぐに対応してくれて、船着き場 付近のタクシー乗り場までわざわざ届けてくれた。(東京都、男性、10 代) 旬レポ中国地域 2015 年 3 月号 5 道に迷う人が意外と多いので 親切な道案内がありがたい 観光客の⽅々は、ガイドブックやスマートフォンなどの情報 を頼りに宮島を散策していますが、⾏きたい場所が⾒つか らない、桟橋への帰り⽅が分からない、今いる場所が分か らないなど、道に迷っている⼈が意外といます。道を聞かれ たら、親切に教えてあげて下さい。 【観光客の声】 ○⼆位殿燈籠のそばで、ろかい⾈乗り場を⼈⼒⾞のお兄さんに聞いたところ、笑顔 で教えてくれた。嚴島神社の裏で、別の(⼈⼒⾞の)お兄さんにロープウェーバ ス乗り場を聞いた時も笑顔で答えてくれた。嬉しい気持ちになり、楽しい⼀⽇の 始まりが迎えられた。(富⼭県、男性、60 代) 意外と見られている町の人達の ちょっとした親切 道のゴミ拾い、体が不⾃由な⽅の⼿伝いなど、観光客は 想像以上に周りのことも⾒ています。町の⼈達の思いやり や、地域への取組みなどが感じられると、宮島全体のイメ ージも良く感じられます。 【観光客の声】 ○弥⼭に登ったが、頂上近くで⼀般の⽅がゴミを拾っていたのに感⼼した。弥⼭が 地域の⼈に愛されているからだろう。(愛知県、男⼥、60 代) ○結婚式を終えたカップルが商店街を通られた際、店員さんが拍⼿で祝っておら れ、観光客の皆さんも拍⼿。温かい気持ちになった。(⼭⼝、⼥性、60 代) 旬レポ中国地域 2015 年 3 月号 6 Ⅱ.おわりに 宮島には年間 400 万人の来島者があり、多くの外国人観光客も訪れています。東京や 京都といった観光地を駆け足でまわった外国人観光客の中には、 「広島に来てやっと落 ち着けた」という声や、大都市圏にはない地元の人とのふれあいが嬉しいという声が多 く聞かれます。 観光立国実現に向けたアクションプログラム 2014(観光庁)では、外国人旅行者の 受け入れの改善として、交通機関による快適で円滑な移動のための環境整備、多言語対 応の改善強化などが提言されています。他方、観光客に最大の満足度を上げる本質的な 要素は、観光地における旅行者との接点において、旅行者を快く受け入れ、温かく迎え る「おもてなしの心」ですね。宮島では、外国人観光客と積極的にコミュニケーション をとり、宮島ならではのゆったりした雰囲気を感じていただける一流の国際観光拠点に していくことが期待されます。 廿日市市では、平成27年4月から平成37年3月までの10年間を計画期間とする 「廿日市市観光振興基本計画」を策定しております。 http://www.city.hatsukaichi.hiroshima.jp/kanko_index.html トピックス 平成28(2016)年4月28日(木)~5月1日(日)の4日間、本市に おいて「ASTC アジアトライアスロン選手権」が開催されます。 この大会は、2016年にブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開催されるオリ ンピックのアジア大陸別選考会に位置付けられており、国内外からトライアスリ ートが集い、熱いレースを展開します。 本市では毎年、宮島を起点とした「みやじま国際パワートライアスロン大会」 が開催されておりますが、オリンピックへつながる国際大会の開催は初の取り組 みであり、国内外の多くの人に「廿日市市」をアピールし、市の活性化に繋げる こととしております。 経済産業省 中国経済産業局 広報誌 旬レポ中国地域 2015 年 3 月号 Copyright 2015 Chugoku Bureau of Economy , Trade and Industry. 7
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