資料2 人工林資源の利用促進について Ⅰ 人工林資源の現状 Ⅱ 現行ビジョンにおける施策の推進状況 Ⅲ めざす姿と進むべき方向(たたき台) Ⅰ 人工林資源の状況 1 森林資源の状況 ① 民有林の人工林では、伐採して利用が可能とされる 46 年生以上の森林が 64%を占めている。 ② 人工林の蓄積(立木の材積)は約 7,800 万 で、年間 120 万 が増加し ており、森林資源の充実が進んでいる。 ③ 人工林のうち、間伐の対象となる林齢 26~60 年の森林が約 17 万 ha ある が、近年の間伐実施面積は年間約4千 ha である。 ④ 林業経営の収益性の悪化等から、皆伐・再造林は、ほとんど実施されて いない。 ○ 民有林の樹種別面積 (平成 26 年 3 月末現在、単位:ha) その他 〔未立木地〕 14,411 (3%) ○ 人工林の林齢別の面積及び蓄積(平成 26 年 3 月末現在) 71~ 18,846 13,864 人工林 221,626 (42%) マツ 17,355 (3%) その他 2,867 (1%) (林務課調べ) 5,099 31~35 3,175 26~30 9,811 1,701 695 21~25 5,758 221,626 ha 8,661 36~40 14,097 面積合計 15,569 14,180 41~45 18,199 3,672 針葉樹 81,030 (15%) 9,534 46~50 26,460 ヒノキ 92,273 (17%) 6,408 56~60 51~55 38,527 民有林 面 積 530,912 3,906 61~65 22,530 39,588 広葉樹 213,845 (40%) 天然林 294,875 (55%) 9,201 66~70 8,050 スギ 109,131 (21%) 1,190 964 70 16~20 272 11~15 48 6~10 1~5 7 蓄積合計 78,456 千 (林務課調べ) 1 2 木材の需給状況 ① 木材の供給先は、主に建築向けの製材・合板用とパルプ用。 ② 製材・合板用は、昨年は消費税増税前の駆け込み需要の影響で増加した が、今後の住宅市場からすると、国内需要の大幅な拡大は見込めない。 ③ この他、県内で複数の木質バイオマス発電施設の稼動計画があり、発電 燃料用としての需要が今後増大する見込み。これには、林地残材等未利用 木材が活用される。 ○ 県産木材の供給先 ○ 全国の新設住宅着工戸数と木造住宅戸数の推移 (万戸) 180 160 現状(数値はH25実績) 約1,200千 合板用 49千 製材用 126千 年間原木生産量 240千 予測値 100 木質バイオマス 発電燃料用 木材チップ用 65千 120 木質バイオマス発電施設 80 60 県内チップ工場 県内外パルプ工場 40 20 県外合板工場 0 県内外住宅用 県内製材工場 出典:人工林年間成長量:林務課調べ 年間原木生産量:農林水産省「木材統計調査」 S55 S59 S63 H4 H8 H12 H16 H20 H24 H28 H32 H36 人工林の 年間成長量 林地残材等 未利用木材 140 は今後の見込み 総数 木造 出典:国土交通省「住宅着工統計」 予測値は野村総合研究所の公表資料(2014 年7月)から引用 2 ○ 需要部門別素材生産量の推移 (円/ (千 ) 500 450 400 50,000 452 45,000 40,000 114 35,000 350 291 300 250 200 83 296 270 207 64 150 177 170 60 46 192 134 50 42 S55 13 H7 9 H12 113 4 H17 102 98 265 103 240 65 76 195 100 0 ) 30,000 製材用 25,000 合板用 20,000 15,000 125 117 126 45 49 H24 H25 90 22 26 47 H21 H22 H23 木材チップ用 10,000 その他 スギ中丸太県内原木単価 5,000 0 出典:農林水産省「木材統計調査」 3 3 林業経営の状況 ① 個人所有の森林の多くは小規模であり、個々の所有林単位では、効率的 な施業が困難。 ② そのため、森林所有者の多くは、森林組合や民間事業体に短期の経営や 施業を委託している。 (自ら林業経営をし、施業を行う者は少数) ③ 近年、森林への関心が低下し、管理が粗放化している所有者が増加。 ④ 森林組合等の多くは、森林所有者からの短期の施業受託を事業の中核と しており、長期的な観点で主体的に事業展開している組合等は少ない。 ○ 森林所有者(個人)における林業経営のイメージ ○ 保有山林規模別林家数 (戸) 25,000 21,527 森林所有者 短期の経営を委託 20,000 森林組合へ短期の経営を委託 森林組合 15,000 森林組合や民間事業体へ 施業のみを委託 10,000 施業を委託 一部施業委託 5,000 0 3,655 経営、施業ともに自身で実施 1,646 699 160 98 施業を委託 8 民間事業体 出典:2010 年世界農林業センサス 4 Ⅱ 現行ビジョンにおける施策の推進状況 [講じた主な施策] 1 原木生産(川上)対策 ① ② ③ ④ 低コスト原木供給団地の設定 林内路網の整備 高性能林業機械等の導入促進 森林施業プランナーの育成 ① 低コスト原木供給団地の設定 ア 原木を低コストで安定的に供給するため、個々の森林所有者ごとに小規模・分散して いる森林について、一定の規模(概ね 50ha)を対象として施業の実施や路網の整備等を 共同で行うことについて所有者の合意を形成 イ 木材需要に見合った原木を生産するために必要な団 地面積を設定し、平成 25 年度末までに計画どおり 178 ○ 低コスト原木供給団地の設定の実績 区 分 H25 末までの実績 団地を設定 ウ 今後見込まれる木材需要の増加に向けて、新たに計画 を策定し、引き続き団地の設定を推進 計画期間 (H18~H26) 団地数 178 面積(ha) 10,311 見込まれる原 木需要(千 ) 256 5 ② 林内路網の整備 ア 低コスト原木供給団地内の路網密度が 100m/ha ○ 「ひょうご林内路網 1,000km 整備プラン」 (単位:km) となるよう、団地内を中心に路網を整備 イ の路網整備を達成 ウ 区 平成 25 年度末までに計画どおり延べ 1,000km 団地の新計画に合わせて、計画を策定し、引き 分 計画期間 (H18~H27) H25 末まで実績 アクセス道路(林道) 130 団地内路網(作業道) 938 計 1,068 続き路網整備を推進 ③ 高性能林業機械等の導入促進 ア 立木の伐倒、木寄せ、枝払い、玉切り(造材) 、運搬(集材)という生産工程に応じて 開発された林業機械の導入を促進 イ 平成 25 年度末現在、高性能林業機械等 253 台が稼働中。今後見込まれる木材需要の増 加に向けて 300 台を当面の目標として引き続き導入を支援 ④ 森林施業プランナーの育成 ア 森林所有者に対して、施業を提案し、実施を働きかける「森林施業プランナー」の育 成を図り、その実践活動を支援 イ 森林施業プランナー認定者数は 13 名(平成 25 年度まで) 。各森林組合及び民間事業体 に1~2名(当面計 50 名)を当面の目標として引き続き育成を図るとともに、実践力向 上のため研修を実施 6 2 加工・流通(川中)対策 ① 拠点施設としての(協)兵庫木材センターの整備 ② 既存の製材工場等の体制強化 ① 拠点施設としての(協)兵庫木材センターの整備 ア 県産木材の加工流通拠点施設として、平成 22 年 12 月に宍粟市に開設 イ ○ 兵庫木材センターの生産状況 区 山元からの原木直送による流通合理化、少 品目大量生産による加工・流通コストの低減 を図り、JAS 規格に沿った乾燥、強度等の品 質・性能が確保された製品を安定的に供給 ウ 分 H22 (12~3 月) H23 単位:m3、( )は計画比 H24 H25 計画 23,000 104,000 115,000 126,000 実績 13,564 (59%) 76,226 (73%) 95,775 (83%) 123,694 (98%) 前年比 129% 原 木 取扱量 区 分 H22 (12~3 月) H23 H24 H25 原木取扱量は計画をほぼ達成(H25 対計画 比 98%)し、製品生産量も計画を上回っている (同比 132%)。 ② 既存の製材工場等の体制強化 ア 計画 12,000 53,000 59,000 67,000 実績 7,196 (60%) 50,503 (95%) 59,593 (101%) 88,269 (132%) 前年比148% 製品 生産量 (林務課調べ) 既存の製材工場等は、総じて事業規模が零細、生産性が低く、品質を明確化している 事業者は少ない。 イ 多様な市場ニーズに応えて県産木材を供給する体制を強化するため、品質の向上・明確 化に向けた木材乾燥機等の導入や JAS 取得の促進、運転資金の低利融資による運営支援 7 3 木材利用(川下)対策 ① 公共施設や住宅等への県産木材の利用促進 ② 木質バイオマスのエネルギー利用の促進 ① 公共施設や住宅等への県産木材の利用促進 ア ○ 県産木材利用住宅建築戸数の推移 県・市町が建築・改修する公共施設の木造・木質化を推進 (ア) 平成 25 年度は、建築・改修した県・市町 36 施設の うち 19 施設が木造化。木造化できない 17 施設全てに ついて延床面積の 50%以上を木質化 イ 住宅分野での県産木材の利用促進 (ア) 県産木材利用木造住宅特別融資制度や木材利用ポ イント事業の活用、モデル住宅見学会・産地見学会等 ○ Tajima TAPOS(但馬テイポス) による県民への PR (イ) 木造軸組工法住宅の木材使用量の約3割を占める 梁・桁などの横架材への県産木材の利用に向けて、高 強度の梁桁接合部の形状「Tajima TAPOS(但馬テイポス) 」 を森林林業技術センターが開発 一般的なプレ カットの仕口 Tajima TAPOS の プレカット仕口 従来のU字型からV字型への改良により下方 向の圧力を横方向にも分散させ強度を高めた 8 ② 木質バイオマスのエネルギー利用の促進 ア 再生可能エネルギーの固定価格買取制度を活用した木質バイオマス発電施設の設置に より、従来、利用されずに林内に放置されていた未利用木材の有効利用を促進 ○ 県内 2 箇所の新たな木質バイオマス発電事業計画 発電事業者 設置場所 発電規模 運転開始時期 16,530kw (株)日本海水 平成27年1月 赤穂市加里屋 (一般家庭約2.6万 運転開始予定 世帯相当) (株)関電エネルギーソリューション 朝来市生野町 5,600kw 平成28年9月 (一般家庭約1万世 運転開始目標 〔Kenes〕 帯相当) イ 燃料必要量 備考 年間 約20万トン (うち県内未利用木材約5万t) FIT認定 平成25年2月 年間 約6.3万トン (未利用木材の専焼) FIT認定 平成26年6月 関西電力グループの発電施設では、発電側と木材供給側を結び付け、未利用木材を 20 年間固定価格で取引し、燃料チップの製造から発電までの一連の取組を官民協働で推進 する「兵庫モデル」を構築 9 [取組の評価] ① 原木生産(川上)対策 低コスト原木供給団地の設定、林内路網の整備は計画どおり整備目標を達成。 今後見込まれる木材需要の増加に対応して、さらなる整備が必要。高性能林業機 械の導入や森林施業プランナーの育成と合わせて、原木の生産性向上に向けた条 件の一部が整いつつある。 ② 加工・流通(川中)対策 (協)兵庫木材センターが外材等に対して競争力を持つ県産木材製品の供給を実 現しているほか、既存の中小規模製材工場は木材乾燥機等により、市場から求め られる品質に対応した木材の供給体制を整えつつある。 ③ 木材利用(川下)対策 公共施設の木造・木質化が進むとともに、県産木材利用木造住宅特別融資制度 等の取組により、県産木材の需要を一定程度確保している。また、木質バイオマ ス発電施設の計画が進んでおり、需要量が明確になりつつある。 川上から川下までの施策を講じてきた結果、県産木材の競争力強化に向けた条件整備 は整いつつある。今後は、高い経営能力を持った森林組合等林業事業体の育成と合わせ、 長期的な計画に基づく経営等により、多様な木材需要に対応しうる生産性の向上を図り、 その成果をより大きく発現させていくことが必要である。 10 Ⅲ めざす姿と進むべき方向(たたき台) [10 年後のめざす姿] ① 一部で皆伐・再造林が行われているが、大勢としては、間伐(長伐期施業)を基本とし た資源利用・森林管理が適切かつ計画的に実施されている。 ② 多くの森林所有者が、森林組合等の林業事業 体へ長期的な経営委託を行い、森林組合等は、 スケールメリットを生かした低コストで生産 性の高い林業経営を実現している。 →このような生産構造が、将来的には、皆 伐・再造林による持続可能な「資源循環型 林業」の構築に資する。 資源循環型林業のイメージ(住友林業 HP より) ③ また、原木の生産コスト低減による林地残材等未利用木材の有効利用や、建築 分野での新たな需要への供給など、森林資源の多段階活用を実現することによ り、木材生産量は、240 千 (平成 25 年)から増加して、木質バイオマス発電燃料向けを 含めて 400~450 千 程度を達成している。 11 [進むべき方向] ① 森林組合等林業事業体の組織の質的な転換 森林組合等林業事業体について、短期的な施業等の受託を主たる役割とする組織から、主 体的に森林の経営を受託するなどにより、長期的かつ計画的に、生産性の高い経営を行うこ とにより、森林所有者の収入を増大する組織への質的な転換を誘導する。 ア 経営部門については、森林施業プランナーを活用した個々の森林所有者から長期の経 営の受託の推進、施業集約化や事業量の拡大に向けた営業、長期的視点に立った事業の 企画立案、市場の需要に応じた木材の販売、他の事業体との連携の強化 イ 現場部門については、環境に配慮しつつコストを意識した工程管理の強化、現場技術 者の生産性の向上 ② 品質に応じた多段階利用の推進による資源の需要と供給の拡大 ア イ 製材品の高付加価値化や新たな分 野での利用拡大(新たな加工技術の開 発、CLT を利用した建築の促進 等) 建築用途から木質バイオマス発電 等エネルギー利用まで原木の安定供 給体制の確立 ○ CLT(Cross Laminated Timber) 鋸で切り出した挽き板を繊維方向が直角に交わるように積み重ねて 接着した厚い大判のパネル。強度や断熱性、耐火性に優れているほか、 コンクリートに比べて軽く、組み立ても容易なため、欧米を中心に、中 大規模の集合住宅や商業施設などで幅広く使われ、急速に普及が進んで いる。国では、平成 36 年度までに年間 50 万 の供給体制の整備を目標 としている。 12
© Copyright 2024 ExpyDoc