21aSB-6 高スピン間の回転行列の数値評価における著しい桁落の回避方法 福井大工 田嶋直樹 Avoidance of the serious loss of significance in numerical evaluations of the rotation matrix at high spins University of Fukui N. Tajima オイラー角で指定された回転操作を表す演算子を角運動量の固有状態を基底として行列表現 したときの行列要素(Wigner の D 関数) は、例えば原子核構造論では変形核の平均場解に対し て角運動量射影を行う場合等、様々な局面で必要とされる。例えば、私の最近の研究では文献 [1] で使用した。その値を与える Wigner の公式 [2]、 djmk (θ) = ∑ (−1)n tn (j, m, k; θ), n tn (j, m, k; θ) = √ (j + m)!(j − m)!(j + k)!(j − k)! ( (j − m − n)!(j + k − n)!(n + m − k)!n! · cos 2θ )2j+k−m−2n ( · − sin 2θ )m−k+2n , は高角運動量状態間 (j が大きい場合)では著しい桁落ちが起きるため、多倍長変数を用いての 計算が必要となる。例えば、上式で j を整数、θ = π2 , m = k = 0 とした場合には、 ( π j, 0, 0; 2 tn となり、j が偶数なら n = j 2 ) 1 = j 2 ( j! (j − n)!n! )2 , で最大値 ( tj/2 π j, 0, 0; 2 ) 1 = j 2 ( j! (j/2)! √ )2 ∼ 2 j 2 πj をとる。Wigner の公式はこの巨大な値をとりうる項 tn の差し引きとして絶対値が 1 以下であ る djmk (θ) を表したものである。この計算方法では j ∼ 54 で仮数部 53 ビットの倍精度浮動小数 点実数の精度は完全に失われ、仮数部 113 ビットの四倍精度浮動小数点実数を用いても j ∼ 114 で精度はゼロとなることがわかる。 なお、Wigner の公式の導出の基となるような漸化式を直接用いても同程度の桁落ちが起きる ことが文献 [3] から読み取れる。 本講演ではこの桁落について詳しく調べ、更に、通常の倍精度実数で計算が可能な、桁落が 起きない新しい計算方法を提示する。 [1] N. Tajima, 2013 J. Phys.: Conf. Ser. 445 012014; doi:10.1088/1742-6596/445/1/012014 [2] M.E. Rose, Elementary Theory of Angular Momentum, 1957. [3] H. Dachsel, J. Chem. Phys., 124, 144115 (2006)
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