【平成 26 年度職員による政策研究報告書(概要版) 】 (研究テーマ) 4班(研究生の所属・氏名) 上小地方事務所 税務課 水野佳本 商工観光課 横山茜 建築課 西村宏 阿部裕子 長和町 企画財政課 上野公一 青木村 総務企画事業推進室 片田幸男 塩澤和宏 飯島町 総務課 森本大樹 1 はじめに 空き家対策について研究を進めていくうちに、空き家となった建物は、そこに住んでい た人達の思い入れが詰まった親族のコミュニティの場所であったり、経済的理由や相続問 題の未解決など様々な事情が背景にあり、また地方から都市部へ若年層が流出した結果、 後継者が遠隔地にいるなど、多くの自治体で既に取組実績のある「空き家バンク」を整備 しただけでは、解決しえない問題が根底にあると感じられた。 そこで当班では、特に適切に管理がなされない空き家がもたらす、防犯面や環境面にお ける外部不経済が大きな社会問題化している点に着目し、空き家所有者のニーズを能動的 に探り出し、空き家を適切に管理することで良質な状態に維持しながら「価値家」として 将来の住人に「つなぐ」ことができるような政策について検討を進めた。 2 現状と課題 今回の研究対象とした長和町(現世帯数 2700 余り)における空き家状況は、全町調査の 結果 480 棟余り(危険家屋 65 棟含む)が空き家となっており、空き家率は約 18%となり、 長野県の平均空き家率 13.5%を大きく上回っている。さらに詳しいアンケート調査(抽出 調査)では、このうち転売や賃貸を希望する者は、わずか 22%余りであった。 一方で、定住対策としてマンションタイプの町営住宅(町単独型)の建設を 5 か年計画 で実施しており、平成 25 年度までに 48 戸が建設されている。 また、平成 25 年 11 月から「空き家情報登録制度」 (HP での紹介等)を発足させるが、 物件や照会は数件にとどまっており、思うように進んでいないのが現状である。 さらに、町営集合住宅の建設により新たなコミュニティは生まれるものの、既存の集落 とのコミュニティ形成が難しくなるなど、集落ごとの活力の低下あるいは集落の機能・コ ミュニティの維持形成面で新たな課題も発生している。 3 検討結果と期待される効果 研究過程において定住、空き家対策に関する各自治体の先進事例の調査を行ったが、そ の多くは地理的メリットや自然環境の豊かさ、生活面におけるサポート体制の充実度とい った地域の強みなどを前面に押し出した施策が移住者のニーズと旨くマッチングして成功 している事例が多く見られた。 長野県は自然環境が豊かであり、首都圏、中京圏、北陸地域などからのアクセスが比較 的容易な地理的条件を有していることから、移住者受入れのポテンシャルは高いと考えら れるが、個々の移住先としての地域の魅力をリアリティに発信するには、それぞれの市町 村単位での工夫が必要と考えた。 従って県レベルではその情報発信力の大きさを有効に活用するべく、市町村の個別の取 組や地域の魅力について紹介する、空き家の有効活用に関する総合窓口(長野県空き家相 談窓口(仮称) )を設け、県内の空き家情報や地域ごとの魅力を広く PR すると同時に、窓 口に「価値家コーディネーター」を設置し、空き家の所有者に対して戸別訪問により適切 な維持管理を促し、同時に住宅賃貸市場への誘導を進めていく。貸し手と借り手のニーズ を旨くマッチングさせることで、空き家対策と定住促進を同時に進めることができると考 えた。 4 政策の提案 具体的な政策として以下の提案を行いたい。 空き家の有効活用に関する「総合窓口」の設置(長野県空き家相談窓口を想定) 「総合窓口」に所属する形で、空き家所有者に対してアドバイスを行う「価値家コー ディネーター」の育成及び設置 空き家所有者のニーズを把握した価値家コーディネーターからの相談に対して、適切 な対応が可能となるよう、専門知識を有するエキスパート集団(宅建取引主任者、建 築士、司法書士、弁護士、不動産鑑定士、税理士等)の支援の要請 空き家所有者、価値家コーディネーター、エキスパート集団をつなぐネットワークの 構築(県及び市町村のそれぞれの担当部局から各 1 名程度派遣し、部局を超えたプロ ジェクトチームを新設)
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