「職員による政策研究」グループ№8 南信州地域における山岳高原資源の活用について ~未来を拓く地域資源は南アルプス・中央アルプスにあり~ 長野県下伊那地方事務所 地域政策課 環 境 課 税 務 課 林 務 課 商工観光課 建 築 課 東城 岩下 百瀬 岡田 石神 吉川 景子 裕昭 貴文 岳雄 直樹 敦 1 研究の背景 南信州(飯田・下伊那)地域は、豊かな自然と伝統芸 能に恵まれた地域であり、三遠南信自動車道の全線開通 や、リニア中央新幹線の開業により都市圏との結びつき が一層深まることが期待されている。 しかしながら、人口減少、特に若年人口の流出により 地域の活力低下が懸念されており、本研究では、人口流 出防止を目的として、この地域独自の資源を活用した地 域振興策について研究することとした。 2 南信州地域の現状と課題 (1)南信州地域の現状 南信州地域は、長野県の最南端に位置しており、天竜 川を中心に東西をアルプスで囲まれた中山間地域である。 温暖な気候と標高差を活かした農林業が盛んである。 また、アルプスを代表とする自然景観や温泉、数百年 受け継がれてきた民俗芸能や祭りなども多数残っており、 これらの資源を活かした観光産業も盛んであるが、人口 は昭和 60 年をピークに減少局面に入っており、特に若年 層の人口流出が進んでいる。 (2)南信州地域の課題 歴史的な民俗文化財等が数多く残る地域であるが、人 口減少による山村の衰退とともに継承の危機に瀕し、貴 重な文化資源が失われるおそれがある。そのため、地域 の実態に応じた保護の指針を示し、民俗文化を継承して いく仕組み・制度を作る必要がある。 また、南信州地域は体験型観光の先進地であるが、高 齢化が進んでおり、体験型観光の継続に困難が生じるお それがある。そこで、担い手確保・人材育成をするとと もに、より収益性の高い体験型観光を推進する仕組み・ 制度を作る必要がある。 研究報告書(概要版) 阿 智 村 役 場 地域経営課 大 鹿 村 役 場 総 務 課 長野県教育委員会 義務教育課 長野県南信会計センター飯田分室 牛山 宮坂 赤津 小林 敦志 浩二 英男 憲史 3 地域振興策としての「観光」 地域の活力を奪う過疎化を防ぎ、定住者を確保する ためには、雇用の確保、雇用を生み出す産業の確立が 求められる。 本研究で観光による地域振興策を取り上げたのは、 ・観光は、地域固有財を用いた産業である ・観光は、裾野の広い産業である ・南信州地域の観光は、発展の余地のある産業である という理由からである。 特に、当地域には、豊かな自然と民俗芸能といった、 山岳高原ならではの地域資源が数多く存在する。また、 当地域を訪れる観光客は減少傾向にあり、一人当たり 観光消費額も低迷しているため、広域的な連携や滞在 型観光の推進、観光客・観光消費額の増加によって観 光産業が発展する余地がある。 4 政策目標(ありたい姿) 本研究では、 「南信州地域を訪れる観光客(特に宿泊 観光客)及び1人当たり観光消費額を増加させるとと もに、観光関連産業の活性化が果たされることで、地 域住民の雇用の確保を図り、地域経済の振興へと繋げ る」ことを政策目標(ありたい姿)とした。 そのため、現状の「小規模・分散、通過型」観光を、 線的・面的につなげることで「周遊・滞在型」の観光 構造への転換を目指し、次の2つの施策について研究 する。 ①域内共通のコンセプトとしてエコミュージアムの概 念を用いた「南信州エコミュージアム(MSE14) 」の 実現。 ②従来の観光客のみならず更なる客層の拡充が求めら れることから、 「外国人の誘客」を図る。 5 施策Ⅰ 「南信州エコミュージアム(MSE14) 」 (1)目的 地域の暮らしや文化、伝統を観光資源としてとらえ、 南信州地域 14 市町村全体を1つのコンセプトである 「南信州エコミュージアム」 (以下 「MSE14」 という。 ) と見立て、地域連携を行うことにより、観光資源が線 的・面的につながり、長期間滞在し、域内を周遊する 観光となる。 (2)南信州地域の観光に必要なこと 今までの典型的な観光資源であるレジャー目的の施 設や名勝だけでは、これまで以上に発展させていくこ とは難しく、これからは地域の文化や伝統、暮らしと いったものをパッケージングし、観光資源としていく 必要がある。 また、観光消費額を増加させるためには、宿泊客数 の増加が見込める滞在型の観光を提供していく必要が ある。 (3)エコミュージアムの概念 定義:ある一定の地域の生活、自然、文化や社会環 境を史的に探究し、自然遺産および文化遺産を現地で 保存、育成、展示することにより、地域社会の発展に 寄与することを目的とする新しいタイプの博物館。 (4)MSE14 構想の概要 エコミュージアム構想(博物館活動・現地保全・住 民参加)に、 「観光地域づくり+創造地域機能」を加え た新たな南信州版エコミュージアム構想。南信州地域 全体をエコミュージアムと見立て、従来の枠を超えた 主体の連携・協働の仕組みづくりにより、地域住民主 体の地域資源を活用した観光コンテンツ開発・一体的 な情報発信に地域全体で取り組む。 (5)MSE14 地域文化活用基金(仮称)の創設 目 的 地域文化の保存、活用及び発展のために 必要な、地域住民自身による様々な取組 に対する資金支援を行う 造成先 MSE14 事務局 財 源 長野県等地方公共団体による予算の拠出 及び一般からの寄付金 対 象 公共的団体、中小企業者、その他 (6) 「MSE14」施策の効果 ・地域資源の価値の再発見と広域圏における共有や 連携の推進。 ・地域内の組織や団体のネットワーク化、資源等の 地域の力を引き出す仕組みの形成。 ・遺産保護や広域観光地域の形成などの促進。 ・住民参加型観光地域づくりの推進。 ・生活の質の向上と定住人口の増加。 (7)所要額 会議費、事業費等 5,000 千円 6 施策Ⅱ 「外国人の誘客」 (1)目 的 南信州地域において、その自然や伝統文化を活用し て滞在型観光客の増加を図るには、現状に加えた新た な客層を誘客することが必要となるため、滞在型の観 光が見込める欧米などの外国人を対象とした誘客を提 案する。 (2)南信州の外国人の誘客の現状 南信州地域は外国人観光客の来訪が少なく、地元の 意識、インフラ整備などの受け入れ体制は不十分であ り、特に、地域住民の理解を得る必要がある。 (3)外国人誘客の方法「外国人オーナーの活用」 外国人の視点から可能性のある南信州地域の観光資 源が発見でき、外国人と各地域の理解を進めたうえで 外国人観光客を誘客することができる (4)外国人オーナーの活用について ①外国人オーナーとは 今回想定する外国人オーナーは、観光客の減少等 によって休廃業状態となった旅館や民宿、公共宿泊 施設等に市町村等から委託されて管理運営を行う外 国人のこと。 ②外国人オーナーの役割 ・自身が関心を持つ南信州地域の自然環境や伝統文 化などの観光資源の発見 ・母国等海外に対して南信州地域の観光資源の PR ・来訪する外国人観光客に対する観光ガイド、通訳 ・日常生活や行事等への参加など地域住民との交流 ・MSE14 と連携した観光インフラや招致メニュー の整備 (5)外国人オーナー誘致の方法 ①「外国人を対象とした南信州体験ツアー」開催 1泊2日の日程で南信州地域の自然、風土、伝統 文化等に触れるツアーを4回程度開催する。 ②「外国人オーナー」の募集・養成 「南信州体験ツアー」の参加者等が、南信州地域の 観光資源を活用した事業の展開を試してみて、その 可能性を探るとともに、オーナー候補と地域住民が 接してその人柄等から受入の可否を判断するため、 期間を1年とし、試験採用を実施する。 (6) 「外国人の誘客」施策の効果 ・外国人観光客の増加に伴う滞在型観光地の形成 ・地域の飲食店利用の増加による地域の活性化 ・当地域の豊かな自然環境や独特な伝統文化の海外 への発信 ・伝統文化等の価値の再認識による次世代への継承 (7) 所要額 外国人を対象とした南信州体験ツアー・ 「外国人オ ーナー」の募集・養成事業費等 54,100 千円
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