Free Course Student Doctor実習報告書

フリーコース・スチューデントドクター 実習報告書
自治医科大学
ご挨拶
学長 永 井 良 三
今年もフリーコース・スチューデントドクター(FCSD)による学
外実習が終了しました。このカリキュラムは全国的にも極めて独
自であり、本学の教育レベルの高さを示すものです。自治医科
大学の教育は国家試験の高い合格率によって知られていますが、
優秀な学生を育てるには、国家試験以上の高度の教育が必要で
す。そこで生まれたのがこの制度です。5 年生の段階で国家試
験に合格できる実力をつけた学生達は、半年間にわたり学内外
の病院や研究室における臨床実習と研究の機会が与えられます。
すでに昨年末の報告会で FCSD の学生達にその成果を発表して
もらいましたが、学生自身が素晴らしい成長を遂げたことを多く
の教員に印象付けました。
FCSD 制度は学生の主体性を伸ばすうえで大きな力を発揮し
ます。これまで会ったこともない国内外の医師や研究者に連絡
をとり、見知らぬ世界で仕事をするのは決して容易なことではあ
りません。しかし医師として、また人間として成長するためには、
新しい境遇に身をおき不安を乗り越えなければなりません。人
間は困難に直面したときに、能力を大きく伸ばすことができるか
らです。人生はそうした試練の連続ですが、学生は適応力が高く、
勇気と実行力があれば案ずることはありません。世界中の大学
や研修病院は、実習学生を受け入れきちんと教育するという紳
士協定ができているのです。それは旅人に対するホスピタリティ
フリーコ
フリ
フ
ーコース
ス・ス
スチュ
チューデ
ーデ
デン
デ
ントドク
ドクター
ター
ー
実習報告書
と同じことです。
現在、世界中で医学教育の国際標準化が進められています。
本学の FCSD はわが国ではユニークなカリキュラムですが、世界
的には一般的なことです。したがって、これからの自治医科大学
は、できれば半分くらいの学生にこのコースに参加できるよう、
平素から学生教育に力を入れ、学力を伸ばすことをめざす必要
があります。
FCSD の学生諸君はお世話になった多くの方々への感謝の気
持ちを忘れずに、この経験を社会に還元すべくこれからも努力を
続けてください。同時に、周囲の友人や次の世代に、今回の経
験と平素の勉強法、さらに目標をもつことの大切さを伝えていた
だきたいと思います。
最後に、学生をお引き受けいただいた病院の先生方、チュー
ターの先生方、この教育システムを支えていただいている事務
職員の皆様に心より感謝を申し上げます。
Free Course Student Doctor 制度
自治医科大学 教務委員長 消化器・一般外科 佐 田 尚 宏
Free Course Student Doctor(FCSD)制度の発足以来4
は大多数の科目が必修で、「現在の医学教育では自主性が育
年が経過し、2014年度は4期目になる8名が実習を行いまし
たないのではないか」という問題点が常に指摘されていま
た。FCSD制度は、6学年の5-11月の半年間、自分自身で自由
す。FCSD制度はこの問題に対するひとつの解答であり、必
に臨床実習を計画し、学内外の施設(海外を含む)で実習す
要な教育を個別に考えていくための試みであると認識してい
るという、極めてユニークな自主的臨床実習制度です。自治
ます。選抜された学生達は、自分の将来に何が必要かを自分
医科大学では、2010年に進級基準である5学年・6学年総合
で考え、自分自身で指導医・医療機関との交渉を行い、臨床
判定試験の実施方法を変更し、医師国家試験に準じた試験を
実習を企画します。このような実習は他に類がなく、選抜さ
同時に行う制度へと変更しました。この試験改革によって5
れた学生にとっては大きな財産になるものと確信していま
学年の約60%が既に6学年基準で合格となる学力を有するこ
す。学生達は、全く義務のない生活に戸惑いながらも、半年
と、また約5-10%の学生は6学年の平均点をも上回っている
間の有意義な実習を行い、その経験を報告書という形にまと
ということが明らかとなりました。優秀な学生が6学年を有
めました。来年度以降も、先生方に実習指導等でお世話にな
意義に過ごせるように、また5学年までの学生のmotivation
ることも多いと思います。今後ともご指導、ご佃撻いただき
向上のために、2011年度にFCSD制度を創設しました。FCSD
ますよう、宜しくお願い申し上げます。
制度に選抜する学生は成績優秀だけではなく、BSL実習や学
習態度が他の学生の規範となることを条件にしています。今
年度選抜した8名は、十分にその条件に合致する学生で、全
員ユニークな充実した実習を行いました。従来の医学部教育
1
地域医療のリーダー育成に向けたフリーコース
自治医科大学・教務副委員長(FCSD 担当)
苅 尾 七 臣
自治医科大学は「地域医療を担うリーダーを養成する」とい
臨床実習成績が優秀である学生の中から、厳正な面接を経て
う特別な社会的役割を持って設立されている大学です。将来、
選出されます。FCSDは、6年生の5月から11月までの6か月
地域で活躍できる医師となるためには、幅広い医学知識と実践
間、各人が描く理想とする将来の医師像を目指し、学生の
的な診療能力を身に着けることは必須です。しかし、それだけ
うちにしかできない実習プログラムを立案します。実習場
では十分ではありません。地域医療には定型的な学問体系はな
所は、学内に加え、国内や海外の医療機関を対象としていま
く、いかに自らの置かれた環境下で、限られた人・モノの資源を
す。各学生にメンター教官1名がつき、実習計画に対する助
活用し、有効な医療を実践する、まさに「実学」の医療です。
言や問題が起きた際の相談に乗りサポートします。
すなわち患者および周囲の人に感受性豊かに共感できる
本報告書は、8名の2014年度のFCSDが、積極的に自主性
力、物事を定量的に評価し、論理的に人を説得できる力、さら
を持って描いた6か月間の軌跡です。そこには、彼らが学生
に、物事の重要度を間違わずに判断できる力が必要です。こ
の視点で興味を持ち意気揚々と取り組んだ体験が記録されて
れらの力は、知識とは異なり、端座して書物を読んでいても身
います。それぞれが将来、地域医療を行うに際して糧となる
に付きません。自分の足で、現場に飛び込んで行って、人と会
人との出会いやキーワードを学び得たことがわかります。
い、情熱をもって行動することによってのみ身に付きます。
本学のFCSDを快く受け入れ、熱意をもって指導してくだ
自治医科大学では、これらの力を習得する実学教育プロ
さった先生方に感謝いたします。医学教育の最終年度におい
グラムとして、2011年度より「Free Course Student Doctor
て、学生が自ら「志」を持ち「行動」することにより、優れ
(FCSD) 制度」という試みを始めています。FCSDは5年生
た先人との間に生み出された「相互作用」が、将来の我が国
の総合判定試験の成績が6年生を上回り、ベッドサイドでの
の地域医療の発展につながると信じています。
2
「 Free course-student doctor 制度」について
5年生終了時において、既に医師国家
家 試験合格レベルの知識を有
目的
し、かつ志の高い優秀な学生に対して
て 、能力を最大限に研鑽する
機会を与えることを目的とする。
機会を与えることを目的とする
1 5年生で、M5,6共通総合判定試験を
を受験した結果、6年生の平均
概要
点以上(通常75点以上を獲得した学生に対し、教務委員会にお
いてBSLや面接試験などの多面的な
な評価を加え、選考された学生
を対象とする。
2 選出された学生は、6年時の総括講
講義の出席、卒業試験(M5,6
共通総合判定試験は除く)の受験が
が免除される。
3 この学生
学生は
は 、5月
5月から
から11
11月ま
月までの7
7か月間において、希望する研
修 や実習等プログ
や
ログラ
ラムを自
自主
主的
的 に作成し、責任学内指 導 教 員
(Mento
tor)
or)の指
の指導のもと
指導のもと
とに
に受
に受講
受講する
受講す
講する
する。
る。
4 研修先等は、
、学 内の臨
臨 床、
床 基礎講座
座をはじめ、国内の卒業生の
勤務先(へき地診
診 療 所、中核病院)や海外での研修などを対象
対象
象と
する。
学生が、5月か
か ら 11月
から1
から
1 1 月までの
11
月 ま での
の 7か
か 月間
月 間 にお
お いて
て 、学
学 内の
内 の 臨床
臨床
臨床、基
学資資金
補助
礎 講 座を
礎講
座 はじ
じ め 、国内
、 内 の卒
卒 業生
業 生 の勤
の 勤務
勤務
務先
先 (へ
( へ き地
き 地 診療所、中核病
診療
院 や海
院)
や 外で
で の希
の 希 望す
望 す る研
研 修や
や 実習
実 習 等プ
等 プ ログ
ロ グ ラムを受けるに当た
り、それ
り、それ
それに係
れに係
係る
る学
学資
資資
資金を
を補助
助する
する。
次 区分
次の
分によ
より、支給
支給する
する。
する。
する
1
海 の場
海外
場合 1人300,000円
2 国内
国内
国
内の場合 1人100,000円
3
平成 26 年度フリーコーススチューデントドクター及び責任学内指導教員一覧
Ji ch i
5 − 8 ページ
(和
和歌山県出身)21 − 24 ページ
田島 幸治 (
●責任学内指導教員
導教員
●責任
任学内指
学
導教員
鏡視下手術部
小児
児心臓
臓血管外科
教授 佐田
田
尚宏
宏
教授 河田
9 − 12 ページ
●責任
責任学内指
学内指導教員
導
和歌山
歌山県
県出
出身)
身 25 − 27 ページ
中村 諒 (和
●責任
責 学内指
内指導
導教員
医学教育
教育セン
センター
ー
学内教授
教授 石川
政明
学籍番号:M09077
学籍番号:M09008
(山梨県
梨県出身)
今井松 寛人(山
Un i v e r s it y
学籍番号:M09065
学籍番号:M09002
出 )
石岡 秀基 (岩手県出身
M ed i cal
地域医療
地域
療学セ
センタ
ンター総
ー 合診
ー総
合 療部門
療部
部門
鎮清
教授 松村
教授
村
学籍番号:M09104
学籍番号:M09025
奥山 博仁 (秋田県出身)
正巳
ジ
13 − 16 ページ
●責 学内指
●責任学内指
●責任
指導教員
導
導教
村上 司 (埼玉県出身)
28 − 31
3 ページ
●責任学内指
●責
学
導教員
感染
染制御
制御
制御部
呼 器内科学
呼吸
部長(学内准
長
准教授
授)
森澤 雄司
准 授 坂東
准教
東
学籍番号:M09038
玉県出身
玉県
出身
身)
木村 恭彰 (埼玉県
政司
学籍番号:M08078
ジ
17 − 20 ページ
野口 翔太 (
● 任学内指
●責任
内指導教員
導教員
教員
員
●
●責任
学内 導教員
学内指
地域医療
地域
医療
療学セ
センタ
ンター総合診
ー総
総合診
合診療部
療部門
療部
門
医学
医
学教育
学教育
教 セン
セ ター
タ
教授
教
授 松村
授 松村
教授
授 岡崎
岡崎
正巳
城県
県出身
出身)
) 32
ページ
ペー
3 − 35
5 ページ
仁昭
4
Free Course Student Doctor 実習報告書
M09002 石岡 秀基
メンター 佐田 尚宏 先生
1.実習目標 Free Course Student Doctor として半年間の実習を行うにあたり、次のような目標を立てました。
1)地域医療の実際を肌で感じ、自分が将来行うべき地域医療の姿をより明確にする。
2)地域の臨床現場で活かせる外科的知識や手 技を身につける。
3)学会発表や論文作成など記録に残る活動に参加する。
4)医療を「点」ではなく「線」として経験する。
2.実習施設と期間
済生会宇都宮病院
外科
3 週間
自治医科大学附属病院
緩和ケア科
3 週間
つるかめ診療所
1 週間
在宅ホスピスとちの木
1 週間
さいたま医療センター
皮膚科
国保藤沢病院
2 週間
2 週間
自治医科大学附属病院
感染症科
4 週間
自治医科大学附属病院
ICU
3 週間
岩手県立千伯病院
外科
2 週間
2−1.地域医療
地元の地域医療を肌で感じるため、出身県(岩
手県)にある国保 藤 沢 病院で 2 週間の実習をさ
せ て 頂きました。 藤 沢 病 院は 私 たちの講 義にも
度々来て下さる、佐藤元美先生(岩手県 2 期)が
院長を務められている病院で、保 健・福祉・医療
が一体となった町づくりを推 進する藤沢で中心的
な役割を果たしている施設です。2 週間の実習で、
外 来 や病 棟の見 学 だけでなく、 訪 問 診 療・看 護
への同行、特養・老健・グループホームといった
国保藤沢病院 佐藤元美先生・吉田典史先生と
福祉施設の見学、地元の小 学 生との医療をテー
マにした交流会、フットケア勉強会など、数多くの経験をさせて頂きました。地域に根差した医療を
実 践していく上でコアとなる部分の一端を藤沢病院での実習を通じて学べたような気がします。
2−2.緩和ケア
日本人の 2 人に 1 人ががんを患い、3 人に 1 人ががんで亡くなる時代に、病院あるいは自宅におけ
るがん診 療、特にも緩和ケア領域における看取りに関して強い興味を抱き、自治医科大学附属病院
の緩和ケア科(3 週間)、つるかめ診療所(1 週間)、在宅ホスピスとちの木(1 週間)で、計 5 週間
の実習をさせて頂きました。附属病院では丹波嘉一郎先生のご指導の下、患者さんとのコミュニケー
5
ションの取り方や仏痛コントロールの方法、患者さんの状態から考える予後予測、社会的背景も含め
たアセスメントのポイントなどを細かく学ぶことができました。
つるかめ診 療所は訪問診 療に力を入れている施設で、鶴岡浩樹先 生、優 子 先 生に同行し、地 域
の訪問診療に関して勉強させて頂きました。また、7 月 13 日(日)に行われた第 3 回つるカフェ市民
講座にもボランティアとして参加させて頂き、訪問診療や在宅緩和ケアについて市民の方々と一緒に
勉強する機会を頂きました。
在宅ホスピスとちの木では在宅緩和ケアを中心に行っており、訪問診 療の範囲は栃木県全 域と非
常に広域で全国的にみても珍しい施設です。また、日本では数少ない緊急往診車所有する施設とし
ても有名で、所長の渡辺邦彦先生には在宅緩和ケアの専門的知識だけでなく、緊急往診車が認定さ
れるまでの経緯や診療地域が広域であることの難しさなど、他所では聞けないようなお話をして頂き
ました。
5 週間の緩 和ケア実習を通じて、終末期における病状変化のスピード感を経験し、仏痛やその他
の苦痛の軽減することの重要性、患者さんだけでなくそのご家族との関わり方など、言葉では言い尽
くせないほど多くのことを学ばせて頂きました。
第 3 回つるカフェ市民講座
在宅ホスピスとちの木 渡辺邦彦先生と
2−3.外科
済生会宇都宮病院(3 週間)と岩手県立千伯病院(2 週間)で実習をさせて頂きました。済生会
宇都宮病院では、2 0 件以上の手術(膵頭十二指腸切除術、肝部分 切除術、胃全摘術など)、50 件
以 上の内 視 鏡 検 査( 上部、 下部、EUS、ERCP など) を見 学しました。 岩手 県立千伯 病院では、
回盲部切除術や低位前方切除術といったメジャー手術から虫垂切除術や鼠径ヘルニア根治術などコ
モンな疾患に対する手術まで幅広く見学しました。また、皮膚縫合(垂直マットレス縫合、埋没縫合
など)や救急対応時の FAST など実 践的な技術も指導して頂きました。
済生会宇都宮病院 外科の先生方と
岩手県立千伯病院 外科の先生方と
6
2−4.自治医科大学附属病院・さいたま医療センター
①自治医科大学附属病院 緩和ケア科(3 週間)
「2−2.緩和ケア」にて記載。
②さいたま医療センター 皮膚科(2 週間)
外来や手術見学から、ダーモスコピー所見や KOH 法といった実 践的な知識まで多くのことを学
ばせて頂きました。また、初診外来も担当し、3 4 人の患者さんの診断から治療までのプロセス
を経験させて頂くことができました。
③自治医科大学附属病院 感染症科(4 週間)
総合診療的なアプローチで患者さんの状態を把握、起因菌を推定し、適切な検 査と抗菌薬を選
択していくという流れを経験することができました。実際に自分がいざアセスメントを行おうとする
と、不明な点ばかりで中々上手くいかないことも多かったのですが、その分 学ぶことも多く、4 週
間で自分の成長を実感できた実習であったと思います。
④自治医科大学附属病院 ICU(3 週間)
3 週間の実習で何人かの患者さんを担当し、入室から退室までの流れを経験させて頂きました。
全身管理においてどういう点に注意し、どう対処していくかを ICU の先 生方に丁寧にご指 導して
頂きました。
2−5.学会発表、論文作成
丹波 嘉 一郎先 生のご 厚意 で、6 月 19 日( 木)
∼ 21 日(土)に神戸で行われた第 19 回日本緩
和医 療 学会 学 術 大会に参 加させて頂きました。
また、10 月 23 日( 木) ∼ 26 日( 日) に神戸で
行われた JDDW 2014 で、「インスリノーマの局
在 診 断 に おける造 影 早 期 相 thin slice CT 撮
影の有用性 」について発 表する機 会を頂きまし
た。なお、同内容に関して佐田尚宏先生、Alan
Lefor 先 生のご 指 導 の下で英 語 論 文を作成し、
現在 PubMed 掲載誌に投稿中です。
JDDW2014 会場 佐田尚宏先生と
3.半年間の実習を振り返って
実習を行う前は、半年間という自由な実習期間がとてつもなく長いものと感じていましたが、実際
に実習を終えてみると半年間はあっという間でした。それだけ半年間の実習期間で多くのことを学び、
多くの手 技を経験し、多くの方々と出会い、非常に充実した実習を行うことができたと思っています。
最初に 4 つの目標を掲げましたが、お陰 様でほぼ達成することができました。中でも、学会発 表
や英語の論文作成は以前より経験してみたいと思っていたことなので、FC SD としての実習の一環で
このような素晴らしい機会を与え、ご指導して下さった、佐田尚宏先生、Alan Lefor 先生、石黒保
直先生には何と御礼を申し上げて良いか分かりません。また、4 番目の目標として掲げた、医療を「点」
ではなく「線」として経験 することに関して少し説明を加えさせて頂くと、4 年生から始まる BSL で
7
は大学病院という特性上、患者さんの急性期(点)しか見ることができません。しかし、当たり前の
ことですが、患者さんには急性 期だけでなく、入院 前や退院後という期間も存在し、そこまで含め
た医療の流れ(線)を見てみたいと予てより思っていました。今回、半年間の実習で、プライマリケ
アから終末期医療まで、幅広いステージに渡って患者さんと向き合えたことは、今後医師として働い
ていく上で非常に重要な経験であったと確信しています。
4.謝辞
ご多忙にもかかわらず、快くメンターを引き受けて下さった佐田尚宏先生、論文作成のご指導をし
て下さった Alan Lefor 先生、学会発 表のご指導をして下さった石黒保直先生、制度運営を行って
下さった FC SD 関係者の皆様、実習を受け入れて下さった施設の皆様に、この場を借りて無事半年
間の実習を終えることができたことをご報告するとともに、心より感謝申し上げます。
8
Free Course Student Doctor 実習報告
M09008 今井松 寛人
1.はじめに 今回、Free course student doctor として実習を行えることとなり、様々な先生方からのアドバイ
スを受け以下のような目標のもとに計画をたてた。
・実習を行う中で臨床医としての動的な思考の流れに近づく
・必修 BSL でできなかったこと、もっと学びたいと思ったことを学ぶ
・自分の今興味のある分野について、いろいろな立場から知る
これらの目標を達成し、来年から医師として働くうえでより広い視野をもてるよう実習を行った。
2.実習日程
日程
実習施設
4/7 4/25
自治医科大学 総合診療内科(選択 BSL 第 3 クール)
6/2 6/27
自治医科大学 感染症科
6/5
自治医大 ATOM(Advanced Trauma Operative Management)コース見学
6/30 7/25
都立小児総合医療センター 救急・集中治療部
7/28 8/8
帝京大学医学部附属病院 救命センター
9/1 9/12
Singapore General Hospital Department of Emergency Medicine
9/15 10/3
自治医科大学 放射線科
10/13 11/7
八戸市立市民病院 救命センター
3.実習内容
・総合診療
選択 BSL 第 3 クールとして自治医大の総合診療内科で実習した。
チームの一員として議論に参加したほか、身体診察や問診の基本的なところを復習することができ
たほか、チームの指 導医の先生による臨床推論や老年医学のミニレクチャーは地域医療にもつなが
る内容であり、特に老年医学での患者の背景も包括的に考えた介入の仕方は非常に興味深かった。
今回聞いた内容をまた卒後 3 年目以降にも思い出して診療に当たりたい。
・感染症
自治医大感染症科にお世話になり、感染症診療と抗菌薬の使い方の基本を学ぶことを目標に実習
を行った。
新規コンサルテーションの患者さんの担当として先生方と一緒に治療方針について検討し、カンファ
レンスでの発表も行うことで必要な情報を端的に伝えることの大切さ、むずかしさを改めて実感した。
また、そのなかで最新の情報を文献から手に入れる方法や、コツを教わることもできた。
コンサルテーションを受けて診療を行うという他の診療科とは違った方向からの診療を体験したこ
とでは、診療科の枠を超えたチームでの医療を行う難しさを感じた。お互いによく理解する必要があ
るのはもちろん、コンサルトを受ける側としては相手の立場を尊重することが、コンサルトする側とし
ては何に困っているのか明確にしておくことが大切である。改めて書くと当然のことのように思えるが、
将来 働くうえでほかの先 生にコンサルトする機 会はとても多いと考えられるため今後そのような機 会
があるたびに意識しておきたいと思った。
9
・ATOM コース見学
自治医大で行われた ATOM コースの見学をさせていただいた。先端医療技 術開発センターを使
用し、実際に動物を用いて外 傷モデルに対し手 術トレーニングを行う様 子を近い距離で見ることが
でき、外傷に対する手術治療がどのように行われているのかを知ることができた。全国各地から講師、
受講生として外 傷治療にかかわる先 生方がいらっしゃり、貴重なお話を聞くことができたこともよい
経験となった。
・都立小児総合医療センター
救命・集中治療部で実習させていただいた。
前 半 2 週 間 は 集 中 治 療 科で の 実 習を中 心 に
行った。集中治療 科では、術後の患者さんのほ
か、ER で受け入れた重症患者の全身管理を行っ
ていた。事前に PAL S プロバイダーコースを受講
し、その評 価方法 や対応のプロトコールが実 際
にどのようなものなのかを意識して実習した。
またこの期間内に救 急振興財団東 京研修所で
の救 急救命 士養成の講座を見学する機 会もいた
だいた。 病院の中ではないが、 おなじく医 療に
PICU の先生方と
かかわるものとしての熱心な様 子にとても刺激を
受けた。
後半 2 週間は小児 ER で時間外診療の実習を
行った。
小児の場合、本当に重症な疾 患の頻度は低い
ため Common な訴えや所見を多く経験 すること
ができた。受 診 する患者は非常に多く、その中
からいかに重症な疾患を見抜くかということの重
要さやむずかしさを感じた。忙しい中でも確実な
医療を提供するため、スタッフには無理をさせな
い 勤 務 体系が
東京 ER・多摩(小児)の先生方と
とられており、
人 員を 集 約し
て医療を行うことの利点の一つであろう。
・帝京大学医学部附属病院 救命救急センター
都市の救命センターの様 子を知る目的で 2 週間実習させていた
だいた。
自治 医大 附属病 院と同じ大 学 病 院 であるが、 救 急部 門として
ER、外 傷センター、救命センターの 3 部門に分 かれており多くの
スタッフが所属していた。
ほぼ 泊り込みで実習させていただき、大学による救 急部実習の
帝京大学付属病院
10
違いを知ったほか、身 元 不明患者、危険ドラッ
グ中毒など都 市部ならではの症例から都 市部 救
急医療の社会的な問題 点を知ることができたと
思う。
帝京大学坂本教授、藤田先生とともに
・Singapore General Hospital
国際 水 準の医療を知ること、医学 英語の学習のため
2 週間実習した。
広大な敷 地の中に多 数の 病院が集 合しており、 その
中の 1 つの病院の ER で一人の医師のシフトに付いて実
習を行った。多様な人種の集まる国であるため、人種に
よる疾患頻度の違いなども考慮して診察を行う点など日
本で実習する中ではできない経験ができた。
単 独での実習であったが、実際に実習するとなると想
像 以 上に英語が 扱えずとても苦 労した。現地の学 生と
の交流もあり、医学を英語で学んでいないことに対して
驚かれたことが 印象的であった。実 際、医学の思考過
Singapore General Hospital 外観
程が日本語であるため英語で投げかけられた質問に対し返 答に時間がかかることが多くあり、今後
のさらなる英語学習の必要性を痛いほど実感した。
・放射線科読影実習
課題図書を決め、書籍に沿って急性腹症の CT を中心に読影実習を行った。
書籍で所見を確認しながら実際の症例画像を見ることで、実 践的な読影実習をすることができた。
・八戸市立市民病院 救命センター
卒業生である今先生のもと、ER での診察を中心に 4 週間実習させていただいた。
緊急消防援助隊訓練の様子
11
八戸ドクターヘリ(撮影:今先生)
見学だけでなく自分で問診し、身体診察を行って鑑別を挙げ検 査を考えるという一連の流れを何
度かやらせていただき、当初の目標であった動的な思考のトレーニングができた。
また、緊急消防援助隊北海道東北ブロック合同訓練での DMAT 訓練に同行させていただき、災
害時の医療がどのように展開されるかを見学できたほか、高校 生対 象の AED 講習に補助として参
加することもでき、地域に密着した救命センターとしての使命を実感できた。
その他の期間中の活動として、PAL S プロバイダーコースを日本赤十字 社医療センターで、ACL S
プロバイダーコースを八戸市立市民病院で受講した。
4.まとめ
この半年間の実習を通じ、当初の目標はおおむね達成できた。
また、様々な場所を訪れ様々な人の考えや思いに触れるなかで、医師としてどのように生きていくか
考えされられる機会を持つことができた。今後も研 鑽を積んでいく中で、この半年間で得たものを大
切にしていきたい。
5..謝辞
メンターとして実習計画を支 援してくださった石川先生をはじめ、関係者の先生方、また実習先の
先 生方には、半 年間にわたり温かく見守り支えていただき、有意義な実習を行うことができました。
この場を借りて心より御礼申し上げます。
12
報告書
2014 年度 Free Course Student Doctor
M09025 奥山博仁
メンター 森澤雄司 先生
実習をするにあたり、2つの目標を設定した。
テーマ1■これからも学び続けられる医師としてのきっかけを見つける テーマ2■卒後を何となく過ごさないための『目標』を見つける
目標を達成するため、5項目 10 診療科での実習を設定した。
大項目
検査医学
感染制御
総合医学
地域医療
国際医療
実習施設
自治医科大学 放射線科
自治医科大学 臨床検査部
自治医科大学 感染症科
亀田総合病院 感染症科
亀田総合病院 地域感染症疫学予防センター
済生会宇都宮病院 総合内科
自治医大さいたま医療センター 皮膚科
福井県おおい町 名田庄診療所
沖縄県竹富町 波照間診療所
ミャンマー ワチェ慈善病院| Japan Heart
実習科
4 週間
2 週間
2 週間
3 週間
2 週間
2 週間
2 週間
1 週間
1 週間
検査医学■診断ツールを使いこなすために
救急外来で実習を行うこともあったが、CT をとったはいいが解釈に困って読影を待つしかなかっ
た、エコーをやっていればもっと早く治療方針が決まった、といった場面に遭遇することが何度
かあった。そのために放射線科と検査部(超音波)を選択した。
自治医科大学 放射線科
放射線科では主に救急疾患の CT を読影、レポートを作成してそれをもとに指導を受けるという実習
を行った。カンファレンスでの症例呈示なども経験でき、画像診断に対する理解が深まった。
自治医科大学 臨床検査部 臨床検査部では腹部エコーを中心に実習した。実際の患者さんにエコーを行い、上級医にチェックし
てもらい指導を受けるという流れで行った。合計 20 例ほど経験でき、流れの把握はできた。今後も継
続してトレーニングをつんでいきたい。
感染制御■感染症との『正しいたたかい方』を身につけるためにに
あらゆる診療科でも必ず遭遇する感染症。これまでに感染症のプロのもと現場で感染症診療を学
ぶことがなかった。一体どのようなプロセスで感染症とたたかっているのか、病院全体でどのよ
うな感染制御を行っているのか目にするため選択した。
自治医科大学 感染症科 感染症科はコンサルトを受けた症例に対し、詳細な問診や身体診察を行い実際に検体を染色し検鏡、
これらのデータをもとにしてディスカッションを行い、治療方針を決定していくというものであった。
13
これほどに詳細な身体診察をするのか、グラム染色はこれほどに重要だったのか、など驚きにも似た感
動の連続であった。また、感染症科の担当する患者は全ての診療科の患者であるため各科横断的な知識
が要求される。感染症を正しく診療・治療するために必要な知識は感染症の知識だけではないという点
を知ることができた。感染診療の流れも実際に体験することができ、今後医師になった後の診療に大き
な影響を与える実習となったと思う。
亀田総合病院 感染症疫学予防センター 感染症科と地域疫学感染症予防センターで実習を行った。感染症科では毎日のカンファレンスでのプ
レゼンテーションやグラム染色道場など、より実践的な実習を行うことができた。
地域感染症疫学予防センターでは ICT 活動や臨床疫学に関する実習など、座学でも必修の実習でも
なかなか体験できない実習をすることができた。特に ICT は多職種から構成され、各部署の中に感染
制御の考えをもった職員を育てることで内側から意識を向上させていくという画期的なものであった。
『感染制御』の考えに触れ、その重要性を実感することができたので、将来的にはその考えを浸透させ
るような活動もしてみたいと強く思う実習であった。
上段
左|自治感染症科の先生と
中|疫学予防センター
右|亀田感染症科の先生と
下段
左|プレゼンター奥山
中| ICT のメンバーと
総合医療■全身をくまなく診るためのトレーニングを
将来はへき地での勤務が待っている。その時、あらゆる患者を診察することになるだろう。診察
に当たってどのような思考プロセスで問診を、身体診察をしているのか、そして何を根拠に検査
を選ぶのか、その一連の流れを体験すべく選択した。また、全身をくまなく診る姿勢を養うとい
う意味で皮膚科もここで選択した。
済生会宇都宮病院 総合内科 初診外来を担当させていただいた。『7 分間の制限の中で必要な情報を問診・身体診察から得、検査特性を
考慮して本当に必要な検査を考える』実際にやってみるとかなり難しく、毎回反省ばかりであった。しかし、より実
践的な外来実習であったと思う。今後外来を行う機会が多くなるが、常に考え行動し、研鑽を積んでいきたいと思う。
さいたま医療センター 皮膚科
初診外来では膠原病といった全身性疾患が皮膚にも現れる症例を経験し、また小児の感染症による皮
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疹も経験できた。皮膚所見の記載の方法も学び、将来地域で皮膚
科への紹介をする際のスマートな記載へ向けた基礎を作ることが
できたと思う。
さらに、麻酔から生検、縫合までと一連の手技を行わせていた
だいたり、粉瘤の手術を経験できたりと地域で役に立つような手
技を多く経験できた。
将来皮膚科疾患には必ず出会うことになる。そこで今回の実習
で得た診察の仕方、所見の記載方法などを活かしていきたい。
地域医療■将来のイメージを、ヒントを得るために
これまでも多くの地域実習を経験してきた。今回フリーコースで実習を行うにあたり、より将来
をイメージした実習を行うこと、将来自分は何ができるのかというヒントを得ることを目標にし
て実習を行うこととした。
福井県おおい町 名田庄診療所 おおい町名田庄地区は人口 3000 人ほどの小さな地域である。後方病院である小浜病院までは車で 40
分程度離れた距離にある。診療所長の中村伸一先生のもと、外来診療や在宅診療などの実習をさせてい
ただいた。先生の診療は患者の家族背景を理解し、それを勘案し
て治療法や対応を考えていく、いわゆる『家庭医』としての医療を
行っていた。まさしく小さい地域だからこそできる診療である。また、
超音波検査や内視鏡装置もあり、内視鏡手術も診療所で行う。患
者の『入院でなく名田庄で』との想いを受けての医療である。
今回は在宅でのターミナルケア、そしてお看取りまでを経験させ
ていただいた。先生は出張先からも家族を気にかけて連絡をして
おられ、その点に関してもご家族は大変喜んでおられた。亡くなっ
たときもご家族の第一声は『ありがとうございました』であり、ご
家族の、そしてきっとご本人も納得できるような最期を自宅で迎え
ることができた証でもあると思う。介護制度などの変化からこれか
らますます在宅での医療は増えていくと思われる。その中で医師
に何が求められ、また何をすることができるのかそのヒントを得る
ことができた。
沖縄県竹富町 波照間診療所
波照間島は石垣島から高速船で 1 時間程度離れた人口 500 人ほどの島である。診療所の朴先生のもと、
外来診療や介護実習、保健活動にも参加させていただいた。
家庭医としての診療態度なども学ぶことができたが、何より保健活動など公衆衛生的視点の重要性を
学んだ実習であった。たとえば『こどもがどのような時は診療所を受診すべきか』など地域住民に向け
た健康教育、
さらには医師としてではなく『住民』として青年会や島の行事に参加し積極的に地域に入っ
ていく姿勢など。その地域で何が問題で、どのようにすればそれが改善できるのか、自らの足を使って、
自ら情報を探しに行くことによってみつけ、改善する。小さな地域だからこそまんべんなく、そして偏
りなくこれらのことが行える。地域医療を行う上で必要な視点とは、まさしくこのようなものではない
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のだろうかと、将来の自分をイメージできるような、実に濃厚な 1 週間であった。
国際医療■途上国で日本人の活躍する現場を目にするために
途上国での医療。興味はあったものの恥ずかしながら具体的に何をやってきたかというと、特に
何もせず6年間過ごしてきた。そこで、この機会に一度でいいからこの目で見てみたい、この体
で体感してみたい、そう思い選択することにした。
ミャンマー ワチェ慈善病院 ジャパンハートという東南アジアを中心に無償で医療支援活動を
行っているNGO団体が、ミャンマーで活動拠点としているワチェ慈
善病院へボランティアとして参加してきた。日本と文化もことばも、医
療環境も全く違うところである。そこでどのような医療を提供できるの
か、実際に行ってみるまでは想像もできなかった。
実際行ってみてどうだったか。たしかに医療資源も乏しい、ことば
の壁もある。手術中に停電するし、スタッフも足りない。ただその中で最善を
尽くすスタッフの姿からは情熱が伝わってきたし、環境を覆すくらいのすばらし
い医療が展開されていた。代表の吉岡先生とお話をすることがあった。医療
の発展が医療機器の発展とほぼ同義に近くなっている現代、モノのない発展
途上国に必要なのは『ヒト』の支援であるとのこと。日本人には成熟した医療
や看護を行う力がある。それを普及させていくことが大事ではないだろうか。
他にもお話をいただいたのだが、この話がいちばん印象に残っている。海外
への支援、ODAなど金銭やモノでの支援はできるかもしれない。ただ、専門
職として何をできるか考えたとき『専門職だからこそ』できることがあると思う。日本には長い間かけて培わ
れてきた技術がある。医療過疎の地域に医療の技術や考えを普及させる、それも支援として大切な形だと思
う。この考え方は外国だけではなく日本に、地域にも応用できるものではないか。将来自分にも何かできな
いだろうか。ミャンマーでの活動に参加して、自分に何ができるのだろうかと深く考えることができたと。日
本では味わうことのできない気持ちを胸に、今後活かしていきたい。
この半年間で学んだことは沢山あるが、おおきく 2 つの点にまとめたい。
1■今回学んだことを土台としてこれからも学び続ける医師となる 2■今いる環境『だからこそ』できる医療を追求する
将来に役立つような知識や技術を多く得ることができた。それを今後もしっかり磨いて、常に学
び続ける姿勢を大切にしていきたい。また大学病院からへき地離島、そして海外の医療過疎地域
までと、全く環境の違う場所で医療を目にすることができた。それぞれに役割があり、その環境
でできる最善の医療を行っていた。たとえば大学病院には最新の機器や技術が、へき地にはその
地域全体を見渡せるような環境がある。その環境の利点を最大限に活かし、その環境『だからこ
そ』できる医療を考えて、実行していきたい。
謝辞
今回の実習にあたり、
多くの方に助言・ご協力をいただきました。メンターの森澤先生をはじめ先生方、
学事課の皆さん、実習を受け入れて下さった各機関のみなさま、すばらしい機会を与えて下さり、本当
にありがとうございました。
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2014 年 Free Course Student Doctor 活動報告書
M09038 木村恭彰
Mentor 松村正巳 先生
1.実習にあたっての目標
6 ヵ月間の実習が有意義なものになるように 3 つの目標をたてて、実習を行いました。
① プライマリ・ケア 将来地域でプライマリ・ケアを行うにあたって必要な臨床能力を学ぶこと。具体的には、家庭医
療、超音波検査、皮膚科、小児科を学ぶ。
② 病棟
研修医になってからすぐに必要となるプレゼンテーション・カルテ記載の能力を学び、経験を積
むこと。抗菌薬について学ぶこと。
③ 海外研修
最新の医学情報を得るために必要である英語の能力を向上させること。自分の視野を広げること。
2.実習内容
実習期間
実習場所
4/14 ‒ 5/2(3 週間)
安房地域医療センター
亀田ファミリークリニック館山
総合診療科・救急外来
家庭医療科
6/2 ‒ 6/27(4 週間)
自治医科大学
臨床検査
6/30 - 7/4, 7/14 - 7/25(3 週間)
自治医科大学
感染症科
8/25 ‒ 9/12(3 週間)
自治医科大学
皮膚科
総合診療科
9/15 ‒ 10/3(3 週間)
自治医科大学
10/17 ‒ 11/2(2 週間)
Oregon Health and Science University(OHSU) Family medicine
11/4 ‒ 11/21(3 週間)
芳賀赤十字病院
※学会・勉強会参加および資格取得
・2014 年 5 月 10・11 日 第 5 回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会
・2014 年 7 月 19 日 第 3 回 臨床研修医・医学生のための救急セミナー
・2014 年 11 月 29・30 日 城県 総合医療を学ぶ特訓ゼミ
・BLS プロバイダーコース取得
3.実習を通して学んだこと、感想
○プライマリ・ケア
【家庭医療】
家庭医療は、安房地域医療センター、亀田ファ
ミリークリニック館山で実習させて頂きました。
病棟、救急外来実習が主でしたが、その他に、
リハビリ・在宅などの様々な他職種間カンファ
レンス、家庭医療に関する勉強会に参加させて
頂きました。他職種間でのカンファレンスで印
象に残っているのは、D & D カンファレンスと
いう末期患者さんのケアを考える会に参加した
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診療科
小児科
ことです。ケアをするにあたってどんなことを考えたらいいのか、どんな人が関わっているのか、ま
たそういった人たちはどう考えているのかということを、コメディカルから全く医療に関わりない事
務の方まで、皆で考えながら意見交換をしました。大変貴重な経験ができ、改めて終末期の医療を考
える良い機会となったので、こうした勉強会を地域の病院でも行い、地域の医療をよりよくしていき
たいと思います。家庭医療の勉強会・家庭医療科の外来では、今まで漠然としていた家庭医療という
ものを、
「患者中心の医療」など体系的な概念として学ぶことができました。最新の医学知識を身に
つけるだけではなく、人と人とのつながりを大切にしていくことで、本当の意味で患者さんにとって
質の高い医療を行えるということを感じました。
【超音波検査】
非侵襲的で、診療所でも行うことができる超音波検査を学ぶことは、地域に行ったときに有用であ
ると考え、自治医科大学の臨床検査で実習させて頂きました。腹部エコーを中心に 4 週間実習を行い、
たくさんのコツを教わり、自分なりの流れをつくるこ
とができ、さらにレポートの書き方、頻度の高い疾患
の所見の読み方、良性か悪性かの考え方も学ぶことが
できました。指導してくださる先生方の画像をみて、
人によってこんなにも画像がかわるのかと驚き、解剖
学的な理解・悪性腫瘍の侵襲度をある程度エコーで把
握できることに、奥深さも感じました。実習を通して、
超音波検査に慣れることができたので、研修医になっ
てからも積極的に超音波検査をあてて、最大限に活用
できるように励みたいと思います。
【皮膚科】
皮疹の所見や経過を正しく伝えられるようになること、皮膚科領域の Common disease の知識をつ
けることを目標に、自治医科大学の皮膚科で実習させて頂きました。初診外来を通して、アトピー皮
膚炎や蕁麻疹などの common な疾患について学ぶことができ、先生方の診察を見学することで、皮
疹をどのように観察するべきかを少しずつ考えていくことができました。皮疹の所見をどう病理組織
検査での所見と対応させて診るかが、面白くて難しいところだと教わり、皮膚のどの深さでイベント
が起きているかなど、病態を考えながら皮疹を診ることの重要性も学ぶことができました。また、皮
膚科疾患の鑑別を考える際に内科疾患をしっかり鑑別に挙げて除外することの大切さを教わり、皮膚
科だけではなく内科疾患についても改めて学ぶことができました。
【小児科】
市中病院での小児科の common disease をしっ
かり学びたいと思い、芳賀赤十字病院の小児科
で実習させて頂きました。新生児の蘇生や ICU
管理、新生児診察や心臓・脳エコー、小児に対
しての採血や予防接種など普段なかなか経験で
きないことを経験することができ、子どもに対
しての苦手意識を良い意味で消すことができま
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した。気管支ぜんそく、グループ症候群、食物アレルギーなど common disease に関しても、病棟や
外来で、実際に経験して学ぶことができました。
○病棟
問診や身体所見をしっかりとれるようになり、プレゼンテーションやカルテ記載の方法を学んで経
験を積むため、そして医師になったら必ず直面する抗菌薬の使い方について学ぶために、自治医科大
学の総合診療内科と感染症科で実習させて頂きました。総合診療内科では、不明熱の患者さんが多く
診断に至ることが難しかったですが、問診や身体所見から鑑別診断を挙げて、それらに優先順位をつ
けるという流れを繰り返し経験することができ、不明熱に対してのアプローチと鑑別診断の重み付け
の重要性を学びました。感染症科では、
診察をしっ
かり行い、鑑別診断をたてて、想定された菌に対
しての抗菌薬を選択するというプロセスの重要性
を学び、感染症科の治療の流れ・考え方を学ぶこ
とができました。他に、血液培養の大切さ、すぐ
に抗菌薬で治療を開始しなければならない場合、
感染防御などを実体験として学ぶことができ、今
後に役立つ実習となりました。2 つの科を通して
プレゼンテーションに関しても繰り返し経験を積
むことができました。
○海外研修
アメリカでの生活や実習を通して英語力を向上させること、異文化とふれあい視野を広げることを
目標として、アメリカのオレゴン州にある OHSU で研修を行いました。外来・病棟実習、学生の講
義・実習カンファレンスに参加して思ったことは、毎回質問がないか確認し、疑問に対して先生と話
し合い理解を深めるという形式が定着しており、疑問に思うこと、そしてそれを質問して議論するこ
とが理解につながるということです。また学生の実習カンファレンスでは、実習中に疑問に思ったこ
と、こういうとき次に何をしたらよいかなどの疑問を、英語の文献を調べて発表し、実習班で共有し
合うということを行っていて、英語を使えることの有用性と、共有し合う学習の効率性を実感しまし
た。英語力の向上に関しては、この研修を通して英語に抵抗がなくなり、英語でのコミュニケーショ
ンに関しても苦手意識がなくなったことは良かったと思います。バスケットボールを通して、学生と
一緒にバスケの試合をして、たくさんの友達をつくれたことは、とても良い思い出となりました。
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4.目標に関してのまとめと今後の課題
・家庭医療を学び、患者さんの気持ち、家族・社会背景を考え、一緒に医療を行っていくことを大切
にしたいと改めて感じました。患者さんと信頼関係を築いていくためには、人間的にも成熟した医
師になる必要があります。医師になってから、思いやりと正直さを持って患者さんと接していきた
いと思います。
・病棟管理を学び、しっかり診察し、アセスメントすることの重要性を学びました。診察を大切にし、
根拠をもって行動できるようにしようと思います。また、ささいなプロブレムでも忙しさでないが
しろにせず、患者さんと向き合いアセスメントしようと思います。
・海外研修だけでなくすべての実習を通して、英語の重要性を改めて感じました。今後も英語の勉強
に励みたいと思います。また、英語の文献を活用していきたいと思います。
5.謝辞
FCSD の機会を頂き、大変楽しく充実した実習を行うことができました。快く受け入れて指導して
くださった各施設の多くの先生方、スタッフの方々、FCSD を支えてくださった部会の皆様、メンター
として温かく見守ってくださった松村先生に、心より感謝申し上げます。
20
2014 年 Free Course Student Doctor 活動報告
M09065 田島幸治
1.はじめに
今回 Free Course Student Doctor(以下、FCSD)実習を行う上で、大きく 2 つの目標を立てました。
① 卒後に活かせるような実習にする
② 興味のある先天性心疾患の分野について内科(小児科)・外科の両面から深く学ぶ
2.実習日程・施設
目標を達成するために以下のように実習日程・施設を設定しました。
6/2 ∼ 6/20(3 週間)
自治医科大学附属病院 総合診療内科
6/23 ∼ 7/4(2 週間)
自治医科大学附属病院 感染症科
9/1 ∼ 9/26(4 週間)
とちぎ子ども医療センター 小児心臓血管外科
9/29 ∼ 10/17(3 週間)
長野県立こども病院 循環器小児科(長野県安曇野市)
10/20 ∼ 10/31(2 週間)
Hospital for Sick Children(Sickkids)
Cardiovascular Surgery(Toronto,Canada)
11/3 ∼ 11/28(4 週間)
自治医科大学附属病院 放射線科
3.実習内容
3.1 自治医科大学附属病院 総合診療内科
総合診療の考え方は、将来地域で働く際に必要
になるものだと思われます。病棟管理についても、
必修 BSL の時より実臨床に沿って実習したいと考
え、当院の総合診療内科で実習させて頂きました。
来年からは医師として働き始めるということを
意識し、チームの一員として診療に参加するよう
に心がけました。採血・問診・身体診察・カルテ
記載などを行いました。当科では確定診断のつい
ていない患者さんも多く、そのような患者さんに
総合診療内科 チームの先生方と
は、何か診断のきっかけになるようなことはないかと注意して診察し、そこから患者さんの病態を考
察するように心がけました。既に診断のついている患者さんには、前日から病態はどのように変化し
たか、新たなプロブレムは発生していないかなど、経過に注意して診察しました。3 週間実習させて
頂いたので、入院から退院・転科まで一連の流れ
を経験することができ勉強になりました。
3.2 自治医科大学附属病院 感染症科
感染症科では、感染症マネージメントの基礎を
学ぶこと、抗菌薬の使い方を学ぶことを目標にし
ました。
感染症は全身にその症状が現れうるので、感染
症を疑う際には、全身を診察しなければいけませ
ん。今回の実習で、皮疹がどこにあるのか、どの
21
感染症科 チームの先生方と
ような性状なのか、前回と比べて範囲はどのように変化したかなど、全身を診る重要性を再確認しま
した。患者さんの自覚症状・身体所見・L/D に表れる変化にも 1 つ 1 つ考察し病態について考えなけ
ればならず、そこから適切な抗菌薬を選択しなければなりません。抗菌薬は多くの種類が有り、医師
になってから必ず必要となる薬剤であるため、今のうちに少しでも学んでおこうと考えました。患者
さんに使用されている抗菌薬について、自分なりに考察した後に、先生になぜこのような使い方がさ
れているのかを伺ったりしました。患者さんに応じて evidence のある治療を調べることが多く、こ
れは医師になった際にも忘れてはいけないことだと思いました。
3.3 とちぎ子ども医療センター 小児心臓血管外科
ここでは、先天性心疾患の各論や患者さんへの
適切な医療介入について学びたいと思いました。
実際に患者さんに接し手術に参加することで、
今まで学んできた知識の整理にもなり、新たな知
識を吸収することもできました。1 ヶ月間実習さ
せて頂いたので、様々な症例を経験することがで
きました。また、周術期管理におけるモニターの
重要性について学びました。負荷をかけないため
に、周術期に鎮静をかけられている患者も多く、
そのような患者さんの病態を知るためにはモニ
小児心臓血管外科 河田先生と
ターの意味を知り、そこから推察することはとても重要なことです。
プレゼンテーションもさせて頂きましたが、患者の病態から治療方針をプランニングすることの難
しさを改めて実感しました。栄養はどうするのか、薬は減らして良いのか、抜管はいつ行うのかなど、
臨床で役立てるためにはより具体的な知識を身につけることが重要であると感じました。
成人先天性心疾患の外来を見学させて頂くこともできました。今後は小児期に手術を受けた患者さ
んが、成人して来院することも多くなる時代だと思います。成人だから循環器内科・心臓血管外科が
診るのか、先天性心疾患に精通する小児循環器・小児心臓血管外科が診るのか、難しい問題があるこ
とに気付くきっかけになりました。
カンファレンスノートの記録係を担当する機会もあり、ポイントを図示することでよりわかりやす
くすることの大切さにも気付きました。
3.4 長野県立こども病院 循環器小児科
内科的な立場から先天性心疾患を学ぶため、長
野県立こども病院の循環器小児科で実習させて頂
きました。ここでは、内科的な医療介入を学ぶこ
と、心エコーで基本的な view を出せるようにな
ることを目標に実習に臨みました。
食事管理、薬物治療など基本的なことから学び
ました。心疾患は食事量・運動量などが負荷にな
りうるので、その管理はとても重要なものです。
小児の場合、必要量の食事(ミルク)を摂取しな
いと体重増加不良に表れます。成長に必要な量を
長野県立こども病院
22
負荷にならない程度に調節したり、調節ミルクと
母乳の混合にしたり、オイルを添加したりします
が、その難しさを実感しました。また、明らかな
原因がないにも関わらず、吐乳したり飲まなかっ
たりという場合もあり、乳首を変える、哺乳後に
すぐに横にならないようにする、漢方を使用する、
など様々な対応をしますが、それによる親の不安
にも上手に対応することも大切だと学びました。
小児心エコーは、食後や薬で眠っている間に行
勉強会
います。起こさないように注意しながら綺麗な
view を出すことは難しかったのですが、だんだん慣れてきて、徐々に綺麗な view を出すことができ
るようになってきました。通常の BSL ではなかなか学生が実施する機会がないので、貴重な経験を
させて頂きました。
また、小児循環器という subspecialty で診療していても、決して小児科であることを忘れてはいけ
ない、心臓以外にも目を向けることの大切さについても学べました。
研修医の先生方と共に合宿形式の集中勉強会にも参加させて頂きました。新しいことを多く学ぶこ
とができ勉強になりましたし、より深いことを知りたいと思いました。
3.5 Sickkids Cardiovascular Surgery
海外での医療・先天性心疾患の診療を見てみた
いと思い、Sickkids の Cardiovascular Surgery(以
下、CVS)で、オブザーバーとしてですが実習さ
せて頂きました。
朝 は 毎 日、Cardiac Critical Care Unit( 以 下、
CCCU)のカンファレンス・回診に参加しました。
CCCU の医師だけでなく、CVS や Cardiology の
医師も参加し、術後の様子やプロブレム、治療な
Sickkids の前で
どを discussion していました。
手術自体には日本と大きな違いはないと思いました。し
かし、世界トップクラスの小児病院だけあり複雑心奇形も
多く、理解するのが難しい術式も多々ありました。
Sickkids の CVS はカナダ、オンタリオ州にある唯一の
CVS 施設で、先天性心疾患の患者は Sickkids に集まって
きます。様々な症例が集まってくるので、様々な研究を行
うことができます。また、世界中から医師が集まってくる
ので、各々の診療に対する負担が分散され、その分の時間
を研究やスキルアップなど自由に使うことができます。分
業化も進んでおり、例えば CVS は術前診察・手術がメイ
ンで、基本的に術後管理は CCCU の医師が行い、一般病棟・
外来などの管理は Cardiology の医師が行います。レセプ
トやレポートなども、医師が直接記載することはありませ
23
Sickkids ホール
ん。全て海外の方がいいというわけではありませんが、日本の医療が海外から学ぶことは多々あるよ
うに思いました。また海外で臨床に従事する日本人医師(指導医の本浄先生)の仕事ぶりも拝見する
ことができました。先生にお話を伺うことができ、海外で活躍するために必要なことを学ぶことがで
きました。
3.6 自治医科大学附属病院 放射線科
読影の基礎を学ぶこと、見逃してはいけない疾患を見極められるようになることを目標に、当院の
放射線科で実習させて頂きました。
先生にコツを教えて頂いたり、教科書を読んだりすることで勉強させて頂きました。また、毎日救
急部で撮影された CT は全て読影するようにし、実際の画像から見逃しがなくなるよう練習しました。
4 週間の実習で、体系的に読むという点に関しては慣れてきたと思いますが、今後も読影が上手くな
るよう精進したいと思います。
4.まとめ
この半年間の実習で、実臨床に活かせる知識・技術を習得・訓練することができました。また、興
味のある分野についてより深く学ぶことができましたし、短期間ではありますが海外の医療に触れる
こともできました。多くの貴重な経験をさせて頂き、きっと将来の自分の糧になると思います。さら
に、熱心に指導して下さる多くの先生に出会うことができ、このような繋がりを築けたことも自分の
財産や目標になると思います。一方、到達目標をより具体的に設定することで到達の度合いをより明
確に把握でき、今後の課題の把握や目標の設定に役立ったのではないかと考えています。
5.謝辞
本実習を行うに当たり、メンターを引き受けてくださった河田先生をはじめとする FCSD 関係者の
皆様、実習を引き受けて下さった実習施設の先生方皆様に、心より感謝申し上げます。
24
2014 Free Course Student Doctor 制度 活動報告
M09077 中村 諒
担当指導医 総合診療内科 松村 正巳 教授
1.実習目標
FCSD 制度を活用させていただくに当たり、以下の 3 つを目標に挙げました。
・診療科にとらわれず、実際の患者さんを通じて学ぶ
・海外での実習で、日本との教育・臨床の違いを学ぶ
・市中病院で、common な疾患への対応を学ぶ
2. 実習日程
日程
実習場所
診療科
3/31 ∼ 4/25(4w)選択海外 BSL
UC Irvine
General Internal Medicine
5/7 ∼ 5/30(4w)選択必修 BSL
日本赤十字社和歌山医療センター
救急科
6/2 ∼ 20(3w)
自治医科大学
感染症科
6/23 ∼ 7/4(2w)
亀田総合病院
総合内科
7/7 ∼ 11(1w)
自治医科大学
臨床解剖
8/11 ∼ 29(3w)
名古屋大学
救急・ICU
9/1 ∼ 12(2w)
東京ベイ浦安市川医療センター
総合内科
9/16 ∼ 10/3(3w)
自治医科大学
臨床検査(腹部エコー)
10/20 ∼ 11/6(3w)※
自治医科大学
総合診療内科
OHSU
Family Medicine
11/10 ∼ 21(2w)
※ 3 日間新小山市民病院での初診外来実習
3. 実習内容
①市中病院での実習、②大学での実習、③海外での実習の 3 つに分けて、まとめたいと思います。
①市中病院での実習(亀田総合病院・東京ベイ浦安市川医療センター・新小山市民病院)
2 年間自治医科大学で臨床実習をさせていただき、多くの患者さんから学ばせていただきました
が、難病といわれる疾患や、まれな疾患で入院されている方を担当させていただくことが多く、私た
ちが地域の第一線で働くときに出会うであろう、いわゆる common な疾患を勉強する機会が少なかっ
たように思いました。そこで、市中病院で、教育的な指導が受けられる亀田総合病院・東京ベイ浦
安市川医療センターや、自治医科大学の先生が勤めておられる新小山市民病院での実習をお願いし、
common な疾患への診断へのプロセス・治療の勉強をさせていただきました。
亀田総合病院・東京ベイ浦安市川医療センターでは、総合内科のチームの 1 つに参加させていただき、
病棟の患者さんの問診・診察から、カンファレンスでの症例発表・ベットサイドでの直接の指導や、様々
な勉強会に参加させていただきました。病棟に入院している患者さんは、狭心症や弁膜症から憩室炎・
虚血性大腸炎・肺炎・髄膜炎など、common な疾患で入院加療されている方が多く、地域での診療に
直結するような実習を行うことができました。ここで学ぶべきことは非常に多く、なかでも標準治療を
学び、実践することの大切さを感じました。地元での地域実習をさせていただいた際に感じたことの一
つに、対応する医師によって、治療が少し異なっていたり、検査の閾値が違ったりと、医師の経験に
基づいた診断・治療が行われているということがありました。初学者である私にとっては、これらは非
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常に困惑する要因の一つであり、2つの病院で標準的な診断・治療へのプロセスを学ぶことができた
ことは、非常に良い経験となりました。また、これらの病院で教えていただいたことで共通することは
「自
分で正しいことを取捨選択し、調べる」ということです。「たとえ上級医の先生が言ったことでも、患
者さんに処置する以上、責任を持って自分で適切な標準医療は何かを調べ、考えることが大切である」
と指導医の先生に教えていただいたことが印象的でした。これからも、数ある情報の中から正しいと
思うものを取捨選択できる能力を育み、学んだことを患者さんに還元したいと考えます。
新小山市民病院では初診患者さんに対し、診察を行い、検査・治療のマネジメントを如何にするか
を勉強しました。複数の患者さんを診させていただき、教科書通りのプレゼンテーションでは来ない
ことの、臨床の難しさと面白さを実感できる実習でした。
(名古屋大学松田教授、村上君と)
(自治医大総合診療内科の先生方と)
②大学での実習(名古屋大学:救急・ICU 自治医科大学:感染症科・臨床検査・総合診療内科)
名古屋大学では救急・ICU の松田教授のもと、急性期医療の勉強をさせていただきました。松田教
授は臨床・研究ともに世界の最先端を牽引されている先生であり、松田先生の vitality と医学への熱
意に感銘をうけ、今まであまり考えていなかった研究への興味を持つことができました。
自治医科大学では選択実習で選ぶことのできなかった感染症科・臨床検査での腹部エコー、また興
味のある総合診療内科での診断学および、患者さんのマネジメントの勉強をさせていただきました。
6 年生選択 BSL で UC Irvine で 1 ヶ月勉強させていただき、アメリカの学生をみてきたなかで、私
の 2 年間の BSL を振り返ってみると、「チームの一員として働いている」というにはほど遠いもので
した。学生は学ばせていただく立場であり、現実問題として日本では学生に機会や責任が与えられる
ことは少ないように思います。そんな中、FCSD 制度での大学の実習は、今までの大学での実習とは
少し異なるものでした。臨床検査では、スクリーニング目的の患者さんの病変を適切に描出でき、レ
ポートに記したことに対して、学生として責任をもって診療にあたることができる喜びを感じまし
た。感染症科・総合診療内科では担当患者さんのマネジメントについて真剣に意見を聞いてくださり、
discussion に参加させていただき、患者さんへの first contact の役割を担うことができました。ある
患者さんに検査を行うか否かについて、私の意見を聞かせてほしいと言われた時には、診療チームの
一員として参加できている実感を持つことができました。このような可能な限りの機会と責任を与え
ていただき、本当にありがとうございました。3 月の日本内科学会関東地方会での発表も十分準備し、
発表したいと考えています。
③海外での実習(OHSU Family Medicine)
将来地域で働くにあたり、自分の専門にとらわれず、患者さんのニーズに対応できる医師が必要と
26
なりますが、最も地域医療に近いのは Family Medicine ではないかと考え、Family Medicine の最先
端である OHSU で Family Medicine とは何か、勉強させていただきました。
Family Medicine に訪れる患者さんは全員が体調不良を訴えて、受診するわけではありません。生
まれてから死ぬまで、継続性をもって患者さんを診るというのが Family Medicine の考え方の基本で
あり、健康相談から風邪、予防接種、小児・妊婦検診、精神疾患など、診療範囲は患者さんが相談す
ること全てです。Family Medicine のスタッフの中には帝王切開や一般外科処置を行うことができる
先生も多く、将来地域で働く素晴らしいモデルを勉強することができました。Family Medicine を地
域で行うために、common な疾患に対する守備範囲を広く・深く持ち、全人的な医療を提供できるよ
う、初期研修から様々な科を学びたいと考えています。
(OHSU Nurse Practitioner の方と)
(OHSU 学生と Columbia Gorge にて)
4. 後輩へ
教科書で学んだことはすぐに忘れても、患者さんに向き合い、懸命に調べ考えたことは忘れにくい
ものです。教科書での勉強は家でもできますが、患者さんの診察・discussion は病棟でしか、学ぶこ
とができません。1 人 1 人の患者さんから学ぶことを大切にしてください。
6 年間は長いようで短いものだと思います。部活・勉強・私生活すべてにおいて、今できることを
懸命に、悔いのないように楽しんでください。
5. 最後に
担当指導医として、様々な相談に乗っていただいた松村先生をはじめ、FCSD 制度に関わっていた
だいた全ての方に、深く感謝を申し上げます。このような貴重な機会を与えてくださり、本当にあり
がとうございました。自治医科大学で学ぶことができたことに誇りをもって、これからの人生を歩ん
でいきたいと思います。
(OHSU スタッフの Ben さん宅にて)
27
7
(Oregon 西海岸での sun set)
FCSD 実習レポート
M09104 村上司
Mentor 坂東政司先生(呼吸器内科)
1.実習の目的
Ⅰ.
「総合医」に必要と思われることを学ぶ(初診外来、救急対応、皮膚科、整形外科)
Ⅱ.病棟管理を学ぶ(カルテ記載、プレゼンテーション、輸液、抗菌薬の使用法)
Ⅲ.英語に親しむ(論文、文献検索、外国人の患者への対応)
2.実習日程
実習期間
実習施設
4/ 7 4/ 30 (3週間)
自治医科大学 感染症科
5/ 7 5/ 30 (4週間)
さいたま赤十字病院 救急部
6/ 2 6/ 20 (3週間)
かみもとスポーツクリニック
6/ 23 7/ 4 (2週間)
東京ベイ浦安市川医療センター 救急部
7/ 14 7/ 27(2週間)
Oregon Health & Science University Family Medicine
8/ 6 8/ 10 (5日)
聖路加病院 Clinical Reasoning Workshop
8/ 11 8/ 29 (3週間)
名古屋大学 救急・集中治療部 (11/ 29 学会発表)
9/ 8 9/ 19
10/ 28 11/ 7 (計4週間)
自治医科大学 皮膚科
9/ 22 10/ 4 (2週間)
Beth Israel Medical Center & 東京海上記念病院
10/ 14 10/ 24 (2週間)
神奈川県立循環器呼吸器病センター 呼吸器内科
3.初診外来・救急対応
総合医として最も重要な能力の一つは、初診の患者さんに対した時の鑑別診断力です。それを磨く
ため、実際に初診外来を経験させていただき、
「問診、身体診察、鑑別診断、検査、診断」という流
れを身に着けようと思いました。また、地域で働く医師には救急診療の能力も重要です。医療資源の
関係で出来ることは少なくとも、その患者さんが緊急を要するのか、最低限何をしなければいけない
か、といった判断はできなくてはならないと思います。鑑別診断を挙げる能力と共に、患者さんの命
を繋ぎ止める医療も経験することも必要と考えました。
さいたま赤十字病院では3次救急病院の診療を身をもって経験することが出来ました。高エネル
ギー外傷 , 敗血症性ショックなどの緊急度の高い患者の命をどのように救うか…ABC の大切さを感じ
ました。東京ベイ(2次救急病院)では Walk in 患者の問診、診察上級医へのプレゼンテーションを
経験することが出来ました。その患者さんは帰し
てもよいか、rule out しなくてはならない疾患は、
どんな検査が必要かといった実践的な学習ができ
ました。名古屋大学集中治療部(3次救急病院)
は救急治療室と ICU が連動しており、よりよい
全身管理のための初期治療の大切さを学ぶことが
出来ました。生理学、薬理学的視点から救急治療
を再考するとても良い機会になりました。
名古屋大学救急集中治療部にて 松田教授、中村諒君と
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4.皮膚科・整形外科
整形外科・皮膚科の知識、技術は地域で働く医師の教養であると思い、今回の機会を通じ教科書で
は得られない、より実践的なことを勉強したいと思いました。
かみもとスポーツクリニックでは、日常診療としての整形外科外来を見学させていただきました。
「膝が痛い、腰が痛い、肩が痛い」…その痛みの原因はどこにあるのか。実は腰かもしれないし、肩
甲骨かもしれない。運動器疾患の診断、治療、3次予防までの一連の流れを学びました。自治医科大
学皮膚科では、初診外来患者の問診、診察、鏡検、上級医の先生へのプレゼンテーションをさせてい
ただきました。ダーモスコピー所見の解釈、鏡検検体の作り方などの難しさを実感したと同時にその
威力を痛感しました。
「皮膚病変にはステロイド
外用!」の一点張りにならないように気を付けた
いです。
両科とも必要な知識と経験の膨大さを実感しま
した。患者層も生後数か月の赤ちゃんからスポー
ツ選手、90 歳を超えた方まで幅広く、一次診療
での重要性を再確認できました。
(ちなみにニュー
ヨークの外来見学でも整形外科・皮膚科疾患で受
診する人は非常に多かったです。
)
かみもとスポーツクリニックにて 上本院長と
5.病棟管理
自治医大生は将来へき地で働くことになる人がほとんどかと思いますが、へき地で得られることも
十分たくさんあると思います。しかし、それはレジデントの2年間でどれだけ多くのことを吸収でき
たかに比例してくると確信しています。レジデントの2年間でより多くのことを教わり、手技をやら
せてもらいたいと思うなら、自分はこれだけできるぞ、ということを指導医の先生に示さなくてはな
りません。そのために今回の機会を通じて、レジデントになってすぐ必要となる「病棟管理」という
概念をより深く学びたいと思いました。
自治医科大学感染症科では、コンサルテーションを受けた患者さんの問診、身体診察、カルテ記載、
プレゼンテーションを行いました。抗菌薬の選択・
投与方法、検体の取り扱い方に詳しくなることは
もちろん、病歴・身体診察から疾患だけでなく、
起炎菌の推察まで行う思考プロセスは非常に勉強
になりました。神奈川循環器呼吸器病センターで
は間質性肺炎、結核について濃厚に勉強すること
が出来ました。結核患者さんの入院∼治療∼退院
までの流れを学ぶことができ、間質性肺炎は学会
にも参加し、病理像と CT 画像、臨床症状との有
機的連携を学ぶことが出来ました。
自治医科大学感染症科にて 矢野晴美先生と
6.英語に親しむ
将来地域で働きながらも、最新の医学の情報を up-date するためには英語は不可欠だと思います。
そのようなことは分かっていながらも、5年生まではあまり英語に触れずにきてしまいました。今回
の機会に、敢えて自分を厳しい環境に置くことで英語に対しての苦手意識を払拭し、新しい視点から
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医学を見つめられるようになれたらいいなと考えました。
Oregon Health & Science University , Beth Israel Medical Center では、アメリカの医療制度、患
者意識、医師の考え方、医学生の熱心さなど日本と対比しながら経験することが出来ました。東京海
上記念病院では日本人医師の桑間雄一郎先生のもと1週間、外来の見学、問診・診察をさせていただ
きました。健康診断でのポイント、眼底鏡の使い方、日本人医師が海外で働くことについて教えてい
ただきました。聖路加病院 Clinical Reasoning Workshop では、海外の先生を招き、全国から集まっ
た非常に意識の高い医学生たちと英語で討論や、実際に外国人模擬患者の所見を取り、臨床推論しま
した。英語が出来るのは当たり前で、他大学の学生の医学への情熱、優秀さに触れて身が洗われるよ
うでした。
2 度の海外実習を通じて感じたのは、アメリカは細分化の医療、日本は機能性の医療であるという
ことです。アメリカの各専門科は非常に細分化されており、データベースも膨大でそれを調べる環境
にも恵まれています。各施設間で一定水準以上の
医療を受けられる環境は整っていると思いまし
た。しかし、入院患者のエコーをするにしても、
専門医にコンサルトしなくてはならず、また、読
影の結果が電子カルテに上がるまで担当医は動け
ないということもよく見られました。最新のエビ
デンスに基づいて行われているアメリカ医療に対
して畏敬の念を抱いている部分が少なからずあっ
たのですが、他科横断的に臨機応変に動ける日本
の医療も非常に魅力的であるのだと再実感するこ
東京海上記念病院にて 桑間雄一郎先生と
とができました。
7.学会発表
名古屋大学集中治療部で経験した症例について、中部地方救急学会地方会で発表をさせていただき
ました。短い時間で何を伝えるのか、その症例のポイントは何か、根拠のための文献検索の方法など、
非常に良い経験になりました。
8.まとめ・反省
新しい環境で、多くの科を回り、非常にたくさんの方に出会う機会に恵まれました。様々な科を勉
強し直すことが出来たので、病態把握に際して医学的視点の幅が広がったように思います。また、市
中病院実習や海外実習を通じて見知らぬ環境に飛び込んでいく勇気も少しついたように思います。
課題としては、様々な科を回っていたために、復習をきちんとしないと身になる知識にはならず、
すぐに忘れてしまうということです。使っていないと知識・技術は簡単に
びついてしまいます。しっ
かりと復習をして、医師になってからも貪欲にこの機会に得たものを応用して今後の医師人生の糧と
していきたいです。
9.後輩へのメッセージ
「選択することが重要なのではない。選択した結果を正しくするよう努力することが大切なのだ」
僕の浪人時代の恩師の言葉です。ちょっと気恥ずかしい気もしますが、とてもいい言葉だと思うの
でここに掲載させていただきます。共に頑張りましょう。
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10.謝辞
毎日が新しいことの連続で、非常に楽しく勉強でき、あっという間の7か月間でした。自分の好き
なことだけを、これほど我儘に勉強できる期間はもう無いかもしれません。本当に貴重な経験をさせ
ていただきました。メンターを務めてくださった坂東先生、このような素晴らしい機会を与えてくだ
さった苅尾先生、佐田先生、岡崎先生、実習の調整に奔走してくださった間中様、また、この度の実
習を支えてくださった皆様、本当にありがとうございました。
N.Y. Times Square にて 野口翔太君と
Mentor の坂東政司先生と
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Free Course Student Doctor 実習報告書
M08078 野口 翔太(
城 37 期)
Mentor 岡崎 仁昭 先生
1.はじめに
まず、実習に先だって次の 3 つの目標を設定しました。この目標を元にして、実習先も考慮しました。
①問診、身体診察の技術を磨き、病歴や所見から病態を考察する力を身につける。
総合診療科での、初診外来、病棟管理
②プライマリケア医として必要な診療能力や知識を身につける。
中でも、今まで勉強が足りていなかったと自覚していた、または、もっと学びたいと思っていた臨
床検査(検体検査、超音波検査)、整形外科、皮膚科
③地域医療の現場に触れ、将来地域医療の携わっていく上で大切なことや、患者さんやその家族との
関わり合いについて学ぶ。
在宅医療など
2.実習日程
日程
内容
実習施設
実習科
6/2 6/13(2 週間)
検体検査実習
自治医科大学附属病院
臨床検査部
6/16 7/4(3 週間)
超音波検査実習
自治医科大学附属病院
臨床検査部
7/7 7/11(1 週間)
選択臨床解剖
整形外科
7-14 8/1(3 週間)
整形外来・手術
自治医科大学附属病院
8/6 8/10(5 日間)
英語による臨床推論
聖路加国際病院
8/18 9/5(3 週間)
初診外来・病棟管理
水戸協同病院
9/22 9/26(1 週間)
海外実習(New York)
東京海上記念診療所
9/22 9/26(1 週間)
海外実習(New York)
Beth Israel Medical Center
10/14 10/24(2 週間)
地域医療
生きいき診療所・ゆうき
11/17 11/29(2 週間)
皮膚科一次診療
石岡・平本皮膚科医院
総合診療科
General Medicine
皮膚科
その他、参加勉強会など 6/8 臨床推論セミナー、11/12 結城市在宅医療推進講演会
3.実習内容
○総合診療科
水戸協同病院では、初診外来と病棟の実習をさせて頂きました。
初診外来実習では、外来ブースを 1 つ使わせて
頂き、週 3 回月水金も午前中の間 1 日平均 5-6 人
程度の初診の患者さんを診察しました。問診、診
察、処方を決めるところまで自分一人で行い、こ
の段階で指導医の先生にプレゼンテーションし、
チェックして頂きました。その後の患者さんへの
説明に関しても自分で行わせて頂きました。
病棟実習では、入院患者さんを一度に 5 人程度
担当させて頂きました。日々の診察やカルテ記
載、チームカンファでのプレゼンテーションだけ
【水戸協同病院にて徳田先生、小林先生らと】
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ではなく、処方や検査を決めたり、看護師さんへ
指示を出したりするところまで経験させて頂きま
した。外来で自分が診た肺炎の患者さんがそのま
ま入院となり、入院診療計画書を作成し、その患
者さんの退院時の説明まで含めて経験することも
できました。
そこから感じたことですが、まず、外来実習に
関しては、必修の BSL でも初診外来を行わせて
頂く機会はありましたが、処方を考え、その後の
説明まで行わせて頂いたのは今回が初めての経験
【水戸協同病院 総合診療科 大澤先生チーム】
でした。どの薬を出すか考えることはできても、用法や用量、何日分出すかなどに関しては今まで気
にも留めていなかったことでした。薬の本の用法や用量の部分まで食い入るように読み、禁忌や副作
用の部分を見て、本当にこの患者さんにこの薬を使って良いのか、また自分の診断は本当にこれで良
いのかとフィードバックすることができました。次に病棟実習ですが、ここでも入院診療計画書の記
載や看護師さんへの指示出しなど今までなかなか経験できなかったことが多くありました。また、恥
ずかしい話ですが、ここまで患者さんに対して真剣になれたのは今回の実習が初めてのことでした。
今まで何となく優等生であろうとするような気持ちで実習していた自分を見つめ直すいい機会となり
ました。もちろん当初の目標であった、問診や診察のことに関しても多くを学ばせて頂きました。
○臨床検査
検体検査実習では、検査技師さんの方々に末梢血液の塗抹標本や骨髄標本、尿沈渣、細菌グラム染
色検体の基本的な見方や解釈の仕方まで丁寧に教わることができました。実際に顕微鏡を使い自分の
眼で見ることによって理解が深まりました。また、将来の勤務先でも検査室まで足を運んでみてみよ
うという気持ちを持つことができました。
超音波検査実習では、腹部エコーを中心に実習させて頂きました。まず、10 分間という時間制限
で患者さんに超音波を当て所見をとり、指導医の先生に写真を見せながらプレゼンテーションし、指
導医の先生に確認してもらい、エコーレポートを作成するという流れで一日 4 人程度経験させて頂き
ました。3 週間の期間でしたが、腹部エコーに関しては多少なりとも自信を持つことができました。
将来の勤務先で病棟エコーなど研修医でもエコーを使うことのできる機会は数多くあると思うので積
極的に使っていきたいと思いました。そして実習の全体を通して検査技師さんたちの偉大さを知るこ
とができたということが何よりの収穫だったと感じました。
○整形外科
整形外科では、外傷、脊椎、関節、小児整形それぞれのチームの外来の見学と手術の見学をさせて
頂きました。自分の中で勉強が足りていないと感じていた整形外科の診察手技等について学ぶことが
できました。また、整形外科実習の前の週は大学の選択臨床解剖を受講していたので、運動器解剖に
ついての理解をより深めることができました。
○皮膚科
城の 1 期生と大学の大先輩でもある平本先生が開業している石岡・平本皮膚科医院でも 2 週間お
世話になりました。外来の見学を通し、一次診療における皮膚科診療のお作法を学ぶことができまし
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た。ステロイド外用剤処方のポイントや KOH 法の手技などについても理解を深めることができまし
た。今まで教科書の写真と絵合わせのように見比べていた皮膚所見についてロジカルに解釈すること
ができるようになりました。
○地域医療
もともと私は地域医療に対して強い興味を持っておりました。5 年生の時、公衆衛生での地域保健
所実習で
城県結城市にある生きいき診療所・ゆうきという
城 26 期の卒業生である荒井先生が働
いておられる診療所を伺い、在宅医療についての話を聞きました。そのときに自分が考えていた理想
の医療の形がここにはあるのではと感銘を受けまして、今回の期間を利用して地域医療についてそこ
で学ばせて頂きました。
実習内容としては、基本的に、午前中は外来、午後は訪問診療という流れです。訪問診療に関して
は、生きいき診療所だけではなく、提携しているおやま城北クリニックや栃木市の蔵の街診療所の訪
問診療にも同行させていただきました。その他にも訪問歯科診療や訪問看護、訪問薬剤指導、訪問介
護の同行や介護認定審査会やケアカンファレンスの見学等様々な事を経験できました。
実習の感想としては、まず、訪問診療では、誕
生日の患者さんにお花を持っていくことや、最後
に患者さんと握手して帰るなど、将来是非真似し
たいと思うことが多くありました。また、一番印
象に残っていることは、在宅でのお看取りを経験
したことです。その際、亡くなった患者さんとそ
の家族の方々に「お疲れ様でした」と声掛けして
いたことが特に心に残っています。そして、この
2 週間の間は医師以外の医療職や介護職の方々と
接する機会を多く持つことができました。医療に
おけるチームワークの大切さを実感することがで
きた 2 週間でした。また、地域医療を行う上では、
医学の勉強だけでなく、医療保険や介護保険など
の法律や制度の勉強も重要だということも実感し
ました。
【生きいき診療所・ゆうき 荒井先生(
城 26 期)と
訪問看護ステーション陽だまりの看護師さん達と】
○海外実習
当初の目標には掲げていませんでしたが、この
期間を利用しなければ、日本と海外の医療の違い
について学ぶ機会はなかなか無いのではと感じ、
New York で 2 週間実習を行いました。最初の 1
週間は診療所で桑間先生という日本人の先生にお
世話になりました。そこでは、外人の方に英語で
問診と診察をとることも経験できました。また、
桑間先生からは検査前確率の見通しの立て方や、
検診の有用性についても学ぶことができました。
後 半 1 週 間 は Observer と し て で す が、Beth
【東京海上記念診療所にて 桑間先生と】
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Israel Medical Center でレジデントについて回
り、病棟業務を見学することができました。日本
とアメリカの医療の違いについて実感することが
多くありました。特に、アメリカは医療費が高い
ので入院期間を短くし、日本では入院で行ってい
く治療を外来で行っていく場合があることや、画
像検査は全て放射線読影医が読影するなど明確に
分業されていることなどが印象に残っています。
一方、病気の診断までのプロセスや治療内容自体
は大きく変わらないということも実感しました。
【Beth Israel Medical Center にて】
また全体を通して、Native の英語は早く、聞き取るのに苦労したこと、自分の思いを英語にして伝え
られなかったことなど、自分の英語力の低さを痛感する機会でもありました。今後ますます英語を使
う機会が増えていくので、課題としてしっかり勉強していかなければと感じました。
4.まとめ
多くのすばらしい先生との出会いや、多くの医師以外の医療スタッフと関われたことは、特にフリー
コースを選択したことで経験できたことだと感じています。非常に多くのことを学んだ 6 ヶ月でした。
学んだことも大きいですが、それよりもこれから医師になってもいつまでも学び続けていきたいとい
う思いを強く持つことができたということが何よりも良かったのではないかと感じています。課題も
多く見つかりましたし、将来どのような医師になりたいかということに関しても考える良い機会とな
りました。
5.謝辞
今回半年間実習を行う機会を与えて下さった大学関係者の皆様、実習先に連絡を取って下さり、実
習を支えて下さった学事課のスタッフの皆様、その他実習を行うにあたり、協力して下さった各医療
機関の皆様にこの場を借りて感謝申し上げます。そして、メンタ―の岡崎先生には、フリーコースだ
けでなく、自治医大での学生生活において言葉では言い尽くせないほど、大変お世話になりました。
ありがとうございました。自治医大で学んできたことをいつまでも大切にし、これからも精進してい
きたいと思います。
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自治医科大学
Jichi
Medical
University
お問い合わせ 自治医科大学 学事課教務係 〒329-0498 栃木県下野市薬師寺3311-1 TEL 0285−58−7046 FAX 0285−44−3625
●ホームページ http://www.jichi.ac.jp/