“軽度~中等度の認知症” に対するレクリエーション

特集 楽しみながら症状改善!
3
認知症の人のレクリエーション
重症度別レクリエーション
支援レシピ:その1
“軽度~中等度の認知症”
に対するレクリエーション
レシピ紹介に寄せて
坂本将德
介護老人保健施設古都の森
リハビリ部門/作業療法士
吉備国際大学
保健医療福祉学部 非常勤講師
2007年に西はりま医療専門学校(作業療法学科)を卒業後,作業療法
士として介護老人保健施設古都の森(岡山市)に入職。作業療法士とし
て認知症高齢者に対するリハビリテーション介入の活動を通じて「レク
リエーションの治療的効果」に着目し,高齢者を対象としたレクリエー
ションに関する研究活動を開始。2011年に開催された第21回全国介護
老人保健施設大会(演題発表部門)で優秀賞を受賞。現在は吉備国際
大学大学院に在籍し,高齢者のレクリエーション研究を展開。
私(坂本)は介護老人保健施設に作業
竹内宏充
療法士として入職して7年が経ちますが,
リハビリ部門/作業療法士
入職当初の一番の悩みが「認知症高齢者
介護老人保健施設古都の森
への対応」でした。個別リハビリテーショ
り状態であり,ゲーム性が高いプログラ
ンに誘っても協力してもらえず,こちらが
ムから低いものまで,卓上でできるもの
頑張って執拗に誘えば利用者を興奮させ
から屋外で行うものまでさまざまな内容
てしまったり,不穏な状態を引き起こし
のものを貪欲に試していました。
たりして,何かと悩む日々の連続でした。
そして2009年以降,私が行ってきた
このような状況の中で仕事をしていた
認知症高齢者に対する効果的なレクリ
ある日,普段は私からのリハビリテー
エーション介入に関する記録や知見を継
ションの誘いを激しく断る認知症の利用
続的に蓄積するようにし,その中で共通
者が,実に楽しそうに介護職スタッフと
する傾向や効果が得られやすい介入の方
レクリエーションのゲームをしている場
法やポイントがある程度明確化されてき
面に遭遇しました。あれほどまでに嫌
ました。具体的には,
「認知機能,QOL
がったり,怒ったりしていた利用者が,
におけるレクリエーションの効果」
「認
自ら進んで体を動かす姿を目の当たりに
知機能別の効果的なプログラム」
「集団
し,認知症高齢者に対するレクリエー
プログラムによって軽減が期待できる認
ションの可能性を強く感じました。
知症の周辺症状」などが挙げられます。
その後,私は認知症高齢者についての
今回紹介する重症度別レクリエーショ
リハビリテーション・アプローチの主軸
ン支援レシピは,私の経験と知見の蓄積
の一つとして,
「レクリエーション」を積
に基づいた推奨プログラムの一部です。
極的に取り入れるようになりました。そ
これらはまだ継続的に試行を行っている
の結果,先述した従来からの私の悩みは
最中ですから,今後も内容のブラッシュ
大いに解消されることにつながりました。
アップが必要かとは思いますが,認知症
レクリエーションを取り入れはじめた
高齢者を対象としたレクリエーション支
頃は,当然のことながら試行錯誤の手探
援をこれから始めるスタッフの方にとっ
季刊
Vol.16 No.1
71
ての一助になれば幸いです。
物まね連想ゲーム
は答える。
④1分間ものま
ねをしても正
解者が出ない
場合は,ホワ
イトボードに
絵を書く。書
いた絵をヒントに答えてもらう。
⑤最後にゲームを通して正解が多い方を
発表する。
ポイント・工夫
準備物
・スタッフが多い場合には,お題を引い
・BGM用音楽プレイヤー
た後にものまねを行うスタッフを指名
・ホワイトボード
するようにし,最後にものまねが上手
・箱(縦20cm,横20cm程度のもの)
だった職員を発表しても盛り上がる。
・お題を書いたメモ(20題程度)
・盛り上がるためにはスタッフの演技力
が重要である。恥ずかしがらず,でき
るだけ大きいアクションでものまねを
するとよい。
・お題は動物・職業・季節の行事などに
すると参加者が答えやすい。
準備・セッティング
・メモ紙にお題を書いたものを四つ折りに
して箱の中に入れる(1枚につき1題)
。
・隊形はホワイトボードを基準に中心を
お題が何かを連想することによって,
想起(思い出す機能)の向上に効果があ
ります。お題について集団の仲間と昔の
向くようにU字型に並ぶ。
思い出や体験を共有することによって,他
方法
者との交流を深めることが期待できます。
①箱に入ったメモ紙を1つ引いてもらう
(参加者にはお題を見せない)
。
②メモ紙を受け取ったスタッフがお題を確
どんどん相撲
準備物
認し,内容をものまねする(ものまね
・BGM用音楽プレイヤー
しているスタッフは音やヒントを言っ
・ホワイトボード
てはいけない)。
・箱(縦40cm,横40cm以上)
③ものまねを見てお題が分かった参加者
72
期待される効果
季刊
Vol.16 No.1
・力士の人形2体(段ボールなどで作成)
・勢いよく蹴る方がいる場合には,足ふ
みをするようにと促すと共に,箱の床
面にラバーシートなどを引くことに
よって箱の移動を防げる。
・ゲーム前に力士を手作りで作成するこ
とでより盛り上がる。
注意点
・必ずいすに座っ
て行うこと。熱
中して立って行
おうとする方が
現れないよう
準備・セッティング
・箱にマジックなどで土俵を書く。
・力士の人形は足の部分に重りを付ける。
方法
①箱の中心に力士の人形を向かい合うよ
に,事前に注意
を促しておく。
・いすからのずり落ちに注意する。ゲー
ム開始前の座位姿勢を整える。
期待される効果
うにセットする。参加者も箱を中心に
力士を動かすために箱を強く踏みつけ
向かい合うように座る。
る動作が,下肢筋力の維持・向上に効果
②「はっきょい,のこった」の合図で箱
的です。また,相撲が好きな対象者が多
の上で足ふみ,そして踏んだ勢いで人
いことから,人気力士の名前を人形に付
形を動かす。
記して行うと,より一層盛り上がります。
③相撲と同じルールで土俵から出たり,
倒されたりすると負け。
④トーナメント表を作り,優勝者を決める。
ポイント・工夫
・身体機能に
男性にも人気のゲームであり,男性参加
者の参加頻度の向上が期待できます。
列車玉入れ
準備物
よって勝敗が
・BGM用音楽プレイヤー
決まりやすい
・ホワイトボード
場合には,人
・買い物カゴ(持ち手が付いているもの)
形に付ける重
・玉(お手玉,新聞紙を丸めた玉でも可。
りを調整する
ただし,色分けができるもの)
ことで身体機能の差が勝敗に影響しに
・ビニールひも
くくなる。
・滑車が付いた板
➡続きは本誌をご覧ください
季刊
Vol.16 No.1
73