わきだ整形外科新聞

わきだ整形外科新聞 H27.1.31 発行 No.10
はじめに
新年明けましておめでとうございます。今年もわきだ整形外科をよろしくお願いいたします。
気がつけば、わきだ整形外科新聞も今回で 10 号目になりました。これからも色々な情報を発信していき
たいと思います。また、1月より最新の骨密度の検査機器が導入されました。骨粗しょう症は、女性に
多い病気です。60 歳代で 2 人に 1 人が、70 歳代では 10 人に 7 人が骨粗しょう症と言われています。
検査をご希望の方は、職員へお尋ね下さい。
転倒
介護が必要になった理由として、脳卒中、認知症、高齢による衰弱、関節疾患に次いで、転倒があげ
られています。転倒により、介護が必要となる背景としては下図のようなことが考えられます。
転倒するリスクは、高齢になるほど高くなる傾向
にあります。それは、年齢を重ねることにより、
足腰の筋力の低下やバランス能力の衰えにより転
倒しやすくなるためです。
また、季節としては、冬に多いといわれています。
冬に転倒が多い要因として、環境的な要因と身体的
な要因の 2 つが考えられます。
環境的な要因
身体的な要因
・電化製品のコードに足を引っ掛ける
・筋肉が強張る
・じゅうたん類に足を引っ掛ける
・背中を丸めて歩く
・路面の凍結や積雪
・上記の事が原因でバランスを崩した際に
・手をポケットに入れたまま歩く
体勢を立て直しにくい
・服装が厚着
・早歩きになりやすいため、つま先を上げ
・日没が早い
ずに歩いてしまう
冬場の転倒を予防するために下記のような対策を行いましょう。
・電化製品のコードを壁に這わせるか、短くまとめる
・じゅうたん類の端をテープやピンなどで固定する
・靴底に滑り止めがついた靴を履く
・手袋を使い、ポケットに手を入れずに歩く
・動きが阻害されるほどの厚着はしない
転倒しにくい体作り
転倒しにくい環境を整えることも大事ですが、足腰の筋力を鍛えたり、骨を強くすることも大切です。
棒などを用いて背骨の動きを意識し、背筋を伸ばしたり、左右に体を倒したりひねったりして、背骨の
動きやすさを維持していきます。
スクワットを行います。股関節を意識し、お尻を
イスに腰掛け、背筋を伸ばした状態での腹式呼吸を
後ろに突き出すように行うことで、膝への負担を
行います。口をすぼめてしっかりと息を吐き、吐く
軽減して股関節を鍛えることができます。
ときには背中をまっすぐにし、お腹を引き込みます。
・どの運動も、無理をせず、痛みを感じない範囲で行ってください。
・姿勢が悪いと効果が得られず、逆に悪くしてしまう場合があります。姿勢に注意して行ってください。
転倒により起こりやすい骨折
年齢を重ねることによる筋力やバランス能力の低下、骨粗しょう症などにより、転倒によって起こる骨折
のリスクが高くなります。転倒により起こりやすい骨折の場所として、下記の 4 箇所があります。
∼橈骨遠位端骨折∼
手のひらをついて転倒した時に起こりやすい骨折です。前腕は、橈骨と尺骨
という2本の骨で構成されています。そのうちの橈骨という骨が、手首の近く
で骨が折れることを橈骨遠位端骨折といいます。一緒に尺骨も骨折することが
あります。
∼大腿骨頸部骨折∼
尻もちをついた時に起こりやすい骨折です。大腿骨は骨盤と股関節を形
成しています。股関節に近い大腿骨頸部という部分で起きる骨折を大腿
骨頸部骨折と言います。大腿骨頸部骨折の特徴として、脚を動かすと脚
の付け根が痛い、立つことや歩くことができなくなるといったものが
あります。
∼上腕骨近位端骨折∼
肩から転倒した時や、転倒の際に手や肘を地面についた時に起こりやすい
骨折です。上腕骨は、肩甲骨や鎖骨と肩関節を、橈骨や尺骨と肘関節を形成
しています。肩関節に近い部分で起きる骨折を上腕骨近位端骨折と言い
ます。上腕骨近位端骨折が起こると、腕を上げられない、手首を返すと腕の
付け根が痛いなどの症状があります。
∼椎体圧迫骨折∼
尻もちをついた時や、荷物を持ち上げた時に背骨(胸椎や腰椎)が潰
れたようになる骨折です。圧迫骨折が起きると、ほとんどの場合は、
強い痛みが出現しますが、我慢出来る痛みの場合もあります。
椎体圧迫骨折は、1 箇所骨折が起こると、その後、何箇所も骨折を起
こす可能性が高くなると言われています。複数箇所の圧迫骨折が起こ
ると背中が丸くなることもあります。
診断と治療
骨折の診断では、まずレントゲン撮影を行います。基本的には、レントゲン撮影だけで骨折の有無が
わかりますが、場合によっては、MRI 検査などを行うこともあります。
骨折の治療は、基本的には、ギプスを巻いて数週間安静にすること
になります。しかし、あまりにも骨のズレが酷い場合などは、整復
(骨を元の位置に戻し、ギプスで固定する)や、手術を行うことも
あります。
骨折の手術について
∼橈骨遠位端骨折∼
あまりにもズレが酷い場合や、整復してもすぐにまたズレてしまう
場合などに手術を行います。骨のズレを戻し、橈骨にプレートを当て
て、スクリューで固定する手術やワイヤーで固定する手術があります。
∼大腿骨頸部骨折∼
骨折の種類によって、様々な固定器具を用いて手術を行います。
骨癒合が望める場合は、ハンソンピンやプレート、髄内釘などを
用いて固定する手術を行います。骨癒合が望めない場合は、人工
骨頭を使用します。
∼上腕骨近位端骨折∼
あまりにもズレが酷い場合や、整復してもすぐにまたズレてしまう場合
などに手術を行います。骨のズレを戻し、上腕骨をプレートやスクリュー
で固定する手術や、髄内釘を使って固定する手術があります。
∼椎体圧迫骨折∼
椎体圧迫骨折は、基本的には手術を行いません。2 ヶ月ほどコルセットを
巻くことによって完治することがほとんどです。数ヶ月たっても骨の癒合が
悪い場合や、痛みがあまりにも強い場合に、経皮的椎体形成術という手術を
行うことがあります。経皮的椎体形成術は、圧迫骨折を起こしている椎体に
バルーンを入れて矯正した後に、骨セメントを注入する手術です。
経皮的椎体形成術は、認定資格を得た医師しか行えない手術です。わきだ
整形外科院長
楊
昌樹は認定を受けています。
転倒をしないために、身の回りの環境の見直しや、足腰の筋力強化のために軽い体操や運動で転倒し
にくい体づくりを行いましょう。また、転倒における骨折の可能性が高くなる理由の 1 つとして、骨粗
しょう症があげられます。骨粗しょう症は自覚症状が出にくい病気です。早期診断のために、骨粗しょう
症の検査を定期的に行うことをお勧めします。
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