桜まじ

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桜まじ
3月14日、北陸新幹線が金沢まで開業する。これまで、新幹線、在来線を乗り継い
で3時間50 分かかっていた東京―金沢間が 2時間28 分で結ばれることになる。大幅
な所要時間の短縮で、ビジネスはもちろんのこと、北陸方面への観光客増加がおおい
に期待される。地元石川県でも、この開業効果を最大限引き出すべく、2009年にア
クションプラン「STEP21」を策定し、①観光誘客拡大、②魅力ある交流基盤づくり、
③産業・地域づくり、の三本柱での官民あげての取組みを推進してきたという。
しかし、懸念されることもある。在来線と並行して新幹線が開業した際には、その
在来線の区間は JRから分離しなくてはならないというルールがあるのだ。今回の場合、
長野―妙高高原間は「しなの鉄道」
、妙高高原―直江津―市振間は「えちごトキめき
鉄道」
、市振―倶利伽羅間は「あいの風とやま鉄道」
、倶利伽羅―金沢間は「IRいしか
わ鉄道」へと、それぞれ経営分離されることになる。地域の足として欠かせないこう
した鉄道の経営は、全国どこでも厳しいのが現実だ。今回、経営分離される路線も将
来は赤字必至という見方もあり、地元自治体にのしかかる負担が心配されている。
一方で、外国人観光客は、政府あげての取組みや円安の効果もあって、2014 年に
は過去最高の1,341万4,000人となり思惑以上のスピードで増加している。ただ、海
外からの観光客が、東京周辺と京都という二大観光地に集中する傾向があり、日本の
各地に存在する、日本らしさを味わうことができる観光地まで訪れる人たちはまだま
だ少ないようだ。今後、さらに観光客が増えていくためには、都会から離れた地方の
魅力を知ってもらい、2回、3回と訪れるリピーターとなってもらうことが不可欠だ。
先日、仕事で訪れた飛騨・高山の駅は、白川郷・合掌造りの雪景色を楽しもうとい
う海外からの観光客であふれていた。東京からのアクセスが便利とは言えないこの地
域にも、インバウンドの波が押し寄せてきているのを実感したものだ。日本全国にあ
るこうした観光資源は、これからの観光立国日本を後押しする宝の山ともいえる。そ
こで地域鉄道が果たす役割も今後大きく変わってくるはずだ。
古より「春は三月、桜まじ」といわれる。三寒四温のこの季節、桜が咲くころに暖
かい南風が吹き、ほころびかけた桜の花が一夜にして開花する様をうたったものだが、
美しい日本の野山を走る地域鉄道にも、暖かい風が吹くことを祈りたい。
(編集室 心斎)
※「桜まじ」は、桜の咲く頃に南の方から吹く風を表す春の季語
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JMA マネジメント
2015.3