IChO-2015 Preparatory Problems 問題 1.ブレイトンサイクル 理想的なブレイトンサイクルとほぼ同じように動作する装置を学生たちが開発した。この 熱力学的サイクルは, かつて内燃機関の発展の中で提案されたものである。この装置は 1 モルのヘリウムを入れたシリンダーと, コンピュータ制御されている可動式のピストンか らなる。また、シリンダー壁には気体を加熱, 冷却するためのペルチェ素子がとりつけら れている。この装置では次のような動作が行える。 1)可逆的断熱膨張もしくは可逆的断熱圧縮,2)可逆的等圧加熱もしくは可逆的等圧冷却 冷却と圧縮の繰り返しによって, ヘリウムが初期状態の圧力 1 bar, 温度 298 K から, 終状態 の圧力 8 bar, 温度 298 K へと移ったとする。(冷却、圧縮は, 2 回から無限回までの任意の 回数行われるとする。) 1. この過程を実現するために気体に行われる必要のある最小の仕事を求めよ。その値を可 逆等温断熱過程における仕事と比較せよ。 2. この過程で気体に行うことのできる最大の仕事を求めよ。 3. この過程を 3 ステップで実現することを考えよう。それぞれのステップでヘリウムはま ず冷却され, その後圧縮される。各ステップ終了後の圧力はステップ前の二倍になり, 温度 は 298 K に戻るとする。このときペルチェ素子によって除かれた全熱量を計算せよ。 気体は圧縮された後, 加熱と膨張の 2 つの過程を経て初期状態(圧力 1 bar, 温度 298 K)に 戻る。 4. このサイクルの効率 η がとりうる値の範囲を求めよ。η は, 加熱過程で気体が吸収した熱 量に対して気体が行った仕事の割合である。 5. ある実験では, 数ステップを経て気体は 1 bar, 298 K の状態から 8 bar, 298 K の状態まで 圧縮された(問 3 と類似の過程を想定しなさい)。それぞれのステップの終了後に圧力は x 倍になり, 温度は 298 K に戻った。その後, ヘリウムは加熱と膨張の 2 つの過程を経て初 期状態へと移った。このサイクルに対する η の理論値は 0.379 であった。このサイクルの ステップ数はいくつか? 1 IChO-2015 Preparatory Problems 実際にはペルチェ素子は冷却過程において電力を消費する。ペルチェ素子は気体から除か れた熱量と同じ量のエネルギーを消費すると仮定する。 6. 冷却過程での電力消費を考慮して, このサイクルの可能な最大効率の値を求めよ。 ヒント:ヘリウムの可逆断熱過程では pV5/3=定数が成り立つ。また, ヘリウムの定積モル 熱容量は 3/2R である。 2
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