みずほインサイト 政 策 2015 年 2 月 27 日 消費税の設計シリーズ④ 政策調査部主任研究員 鈴木将覚 非課税とゼロ税率 03-3591-1319 [email protected] ○消費税を課さない方法として、非課税とゼロ税率がある。非課税では仕入に含まれる税が控除され ないが、ゼロ税率は前段階までに課された税が全て控除される。 ○日本の消費税では、非課税品目はあるが、ゼロ税率品目はない。諸外国では、ゼロ税率は食料品等 に対する軽減税率として利用されることがある。 ○非課税措置は、中間財に対して適用されるときに税の累積という問題を引き起こす。非課税化に伴 う税の累積の問題は現状では納税者に十分に理解されていないが、その問題への対応は重要である。 1.はじめに 消費税は多段階で課税するものであるため、一般に理解されているほど単純な税ではない。消費税 を難しくしている要因の1つに、非課税とゼロ税率の区別がある。小売段階である商品が非課税になっ ていると聞けば、その商品に消費税が課税されていないように思われるが、実際はそうではなく、そ の商品には仕入にかかる消費税が含まれている。一方で、ある商品にゼロ税率が適用されていると聞 けば、その商品は消費税率ゼロで課税されているわけだから課税されていないような印象を受けるが、 これは後述するように正解である。このように、非課税とゼロ税率は同じではない。また、非課税と ゼロ税率は、小売段階ではなく生産・流通の中間段階に導入されたときにその違いがより大きなもの となり、非課税措置は後述するように税の累積(tax cascading)の問題を引き起こす。税の累積によ って、最終的に消費者が支払う税額が大きくなる。 このため、非課税とゼロ税率という耳慣れない制度がもたらす影響を理解することは、政策当局に とってはもちろん、一般の納税者にとっても重要なことである。そこで本稿では、非課税とゼロ税率 の違いについて、具体的な数値例を用いて明らかにしていく。 2.日本の消費税における非課税品目 現在、日本の消費税には非課税品目はあるが、ゼロ税率は導入されていない。日本の消費税にはイ ンボイスが導入されておらず、これまで単一税率が維持されてきたことから、ゼロ税率の導入が具体 的に検討されることはなかった。ゼロ税率の例として有名なのは、英国などでみられる食料品等に対 するゼロ税率の適用である。ゼロ税率は税率がゼロということであり、軽減税率の究極的な姿と考え 1 られる。日本でも消費税に飲食料品に対する軽減税率を導入する方向で作業が進んでいることから、 将来的に日本でもゼロ税率が導入される道が開かれつつあると言えるかもしれない。 非課税措置については、日本の消費税では図表1のように分類されている。一般に、非課税措置が導 入されるケースは、技術的に消費税を課税できないか、または何らかの理由により消費税を課すべき ではないと判断される場合である。日本の消費税法では、非課税品目は税の性格から非課税としてい るものと、社会政策的配慮から非課税としているものに分けられている。 税の性格から非課税とされているものは、土地の譲渡及び貸付、銀行・保険などの金融サービス、 切手、外国為替取引などである。土地は、それ自体は付加価値ではないため、その取引に対して消費 税は課されない。銀行・保険などの金融サービスは基本的には消費税が課されるべきものであるが、 金融サービスの対価が利ざやの形態をとる場合には、技術的に消費税を掛けることが困難であるため、 それらについては消費税は課されていない。一方で、社会政策的配慮から非課税とされている品目は 主に医療・介護、教育関連品目である。助産、埋葬料、身体障害者用物品なども非課税品目に含まれ る。また、家賃も貸家に居住する人の方が持家に居住する人よりも所得が低い場合が少なくないこと 等を理由に非課税とされている。 図表 1 消費税における非課税品目 ○ 税の性格から非課税としているもの ○ 社会政策的配慮から非課税としているもの • 土地の譲渡及び貸付け • 医療保険各法等の医療 • 有価証券、支払手段の譲渡 • 介護保険法の規定に基づく居宅サービス、施設サービス等 • 貸付金等の利子、保険料等 • 社会福祉法に規定する社会福祉事業及び社会福祉事業に類する事業等 • 郵便切手類、印紙、物品切手等の譲渡 • 助産 • 行政手数料等、外国為替取引 • 埋葬料、火葬料 • 身体障害者用物品の譲渡、貸付け等 • 一定の学校の授業料、入学金、施設設備費、学籍証明等手数料 • 教科書用図書の譲渡 • 住宅の貸付け(家賃) (資料)国税庁資料より、みずほ総合研究所作成 非課税措置が適用される理由が技術的に課税できないか、あるいは社会政策的に必要と判断される ものであることから、諸外国の付加価値税(Value-Added Tax, VAT)の非課税措置も、日本のそれと あまり変わらない。但し、何らかの理由で課税しない品目に対して、ある国は非課税措置を取り、別 の国はゼロ税率で対応するということもある。日本でも、今後各品目において非課税とゼロ税率のど ちらを選択すべきという問題に直面するかもしれないが、その際には非課税とゼロ税率がもたらす経 済への影響を十分に考慮した上で判断を下すことが大切である。そのためには、次節にみるような非 課税とゼロ税率の制度上の違いを理解する必要がある。 2 3.非課税とゼロ税率の仕組み 以下では、簡単な数値例を用いて非課税とゼロ税率の違いを説明しよう。まず、ゼロ税率も非課税 措置も存在しない基本ケースから考える。消費税額は、売上にかかる税額(以下、売上税額)から仕 入にかかる税額(仕入税額)を引いたものとして計算される。生産・流通が3段階に分かれており、 各段階に1つずつ企業が存在して1種類の製品を作っている状況を想定する。各段階では、A企業が20、 B企業が60、C企業が20(合計100)の付加価値をつけるものとし、税率は単一で10%と仮定する(図 表2)。このときの各段階での消費税額を考えると、各段階の税額は売上税額から仕入税額を引いて計 算され、その合計は10になる。つまり、消費者は税込みで110を支払う。 小売段階でゼロ税率が適用されるケースはどうなるであろうか(図表3)。ゼロ税率とは、売上に対 してゼロの税率を掛けて売上税額を計算することを意味するため、売上税額は文字通りゼロになる。 一方で、仕入税額は基本ケースと変わらず、今の数値例ではゼロ税率品目を生産しているC企業の仕 入税額が8となる。よって、売上税額から仕入税額を控除して計算されるC企業の消費税額は-8とな る。C企業の仕入には8の税額が含まれるものの、同時に8の税還付を受けられるため、C企業が消費者 に転嫁すべき税はない。よって、消費者が支払う消費税額はゼロになる。 図表 2 基本ケース A企業 B企業 C企業 合計 1.課税売上 20 80 100 ― 2.売上税額 2 8 10 ― 3.課税仕入 0 20 80 ― 4.仕入税額 0 2 8 ― 5.税額(2-4) 2 6 2 10 (注)消費税率10%。 (資料)みずほ総合研究所作成 図表 3 ゼロ税率ケース(C 企業) A企業 B企業 C企業 合計 1.課税売上 20 80 100 ― 2.売上税額 2 8 0 ― 3.課税仕入 0 20 80 ― 4.仕入税額 0 2 8 ― 5.税額(2-4) 2 6 -8 0 (注)消費税率10%。 (資料)みずほ総合研究所作成 3 これに対して、非課税措置はその品目が消費税体系から除外されることを意味する。C企業が非課 税とされるケースでは、C企業の課税売上及び課税仕入がともに制度の枠外に置かれることからとも にゼロになり、C企業の消費税額はゼロになる(図表4)。この点はゼロ税率のケースと同じであるが、 非課税の場合には(制度の枠外になるため)仕入税額を控除することができない。よって、C企業は 仕入にかかる税額(2+6=8)を製品価格に転嫁することになり、消費者が支払う税額は8になる。 このように、非課税ではC企業が仕入に含まれる消費税を控除することができないため、非課税と いっても実質的に非課税となるのはC企業の付加価値に対する消費税だけである。非課税品目におけ る小売業の付加価値が小さければ小さいだけ、非課税化の影響も小さくなる。消費税では医療関連品 目が非課税となっているが、その意味するところは診療費など病院の付加価値に対しては消費税がか からないということであり、病院の仕入に相当する診療器具やベッドには消費税が含まれている。毎 年日本医師会から医療関連品目に対する非課税をゼロ税率に変更すべきとの意見が出されている(日 本医師会, 2012等)が、この背景には非課税では仕入税額控除を用いることができないことがある。 家賃も同様である。家賃は非課税であるため、貸主はマンション等の建設に関して仕入税額を控除 できず、その結果として家賃には実質的に消費税が含まれている。このため、消費税率が上がった場 合には家賃を引き上げなければならないが、現実には消費税率引き上げに伴って非課税品目である家 賃を引き上げることに対して借主が抵抗するかもしれない。 次に、ゼロ税率及び非課税が生産・流通の途中段階で行われる場合を考える。このケースは、小売 段階の措置よりも複雑であり、一般的な理解も進んでいない。このため、消費税率引き上げ時におけ る価格転嫁の程度に関して混乱をもたらす原因となっている。 まず、B企業の製品にゼロ税率が適用されるケースを考えよう。このケースでは、B企業の売上税額 がゼロになる一方で、仕入税額が控除されるため、B企業の段階までの税額がゼロになる(図表5)。 中間段階でゼロ税率が適用される場合には、それが適用される段階までの税額がゼロになるのである。 一方で、ゼロ税率が適用されるB企業の次の段階に位置するC企業では、B企業からの課税仕入はない ので仕入税額がゼロになり、売上税額がそのまま消費税額となる。つまり、生産・流通の中間段階で ゼロ税率が適用される場合には、ゼロ税率が適用される段階までの税額がゼロになるものの、最終的 に消費者が払う税額は通常ケースと同じである。これは、政府からみれば、中間段階であれば、ゼロ 税率を適用しても税収は変わらないことを意味する。 非課税・ゼロ税率の問題で最も注意すべきなのは、中間段階の非課税措置である。数値例のように B企業が非課税であるケースでは、まずB企業が消費税の枠外に置かれることからB企業の課税売上と 課税仕入はともにゼロで、消費税額がゼロになる(図表6)。この点は、小売業が非課税のケースと同 じであるが、中間財に対する非課税措置で重要なのはその次の段階である。C企業では、課税仕入が ないので仕入税額がゼロとなり、仕入に含まれる消費税額2を販売価格に転嫁した102が課税売上、そ の10%の10.2が売上税額かつ消費税額となる。合計消費税額は、A企業の付加価値に対する税額とC 企業の付加価値に対する税額の合計で12.2となる。 このように、非解税のケースでは非課税措置が適用される前の段階までに含まれた税をその後控除 4 することができないため、非課税措置の後段階の企業の課税ベースのなかに非課税措置の前段階まで の企業に対する消費税額が含まれてしまう。その結果、最終的に消費者は標準税率である10%を超え る税負担を求められることになる。こうした現象は、税の累積(tax cascadingまたはtax on tax)と 呼ばれる。 図表 4 非課税ケース(C 企業) A企業 B企業 C企業 合計 1.課税売上 20 80 100(*) ― 2.売上税額 2 8 0 ― 3.課税仕入 0 20 80(*) ― 4.仕入税額 0 2 0 ― 5.税額(2-4) 2 6 0 8 (注)消費税率10%。(*)は消費税制度の枠外にあることを示す。 (資料)みずほ総合研究所作成 図表 5 ゼロ税率ケース(B 企業) A企業 B企業 C企業 合計 1.課税売上 20 80 100 ― 2.売上税額 2 0 10 ― 3.課税仕入 0 20 80 ― 4.仕入税額 0 2 0 ― 5.税額(2-4) 2 -2 10 10 (注)消費税率10%。 (資料)みずほ総合研究所作成 図表 6 非課税ケース(B 企業) A企業 B企業 C企業 合計 1.課税売上 20 (*) 102 ― 2.売上税額 2 0 10.2 ― 3.課税仕入 0 (*) 0 ― 4.仕入税額 0 0 0 ― 5.税額(2-4) 2 0 10.2 12.2 (注)消費税率10%。(*)は消費税制度の枠外にあることを示す。 (資料)みずほ総合研究所作成 5 このように、生産・流通段階の途中に非課税措置が入り込むことで、最終的な消費税額が標準ケー スよりも大きくなる点は重要である。そもそもVATは売上が課税ベースとされる取引高税(売上に対 する課税)と異なり、仕入に含まれる税額を控除できることで税の累積を防ぐことができることが長 所である。生産・流通の中間段階に非課税措置が入ることで、こうしたVATの長所が失われてしまう。 中間段階における非課税措置の典型は、金融サービスに対する非課税措置である。銀行のATM手数 料など付加価値が明確な金融サービスに対しては現在でも消費税が課されているが、前述のように利 ざやの形をとる金融サービスに対する課税は技術的に難しいことから非課税とされている。銀行は企 業向けに貸出を行っており、その付加価値の大半は利ざやの形で表されるため、税の累積が生じてい る。このため、一般に金融サービスが非課税であるといっても、(最終的に消費税が転嫁される)消 費者は金融サービスに対する消費税を実質的にかなりの程度負担している可能性がある。金融サービ ス課税に伴う税の累積を排除する方法は過去に様々に提案されている(鈴木, 2009等参照)が、残念 ながら現在に至るまでその決定打はない。税の累積を排除する現実的な方策として、ニュージーラン ドでは企業間の金融サービスに対して(非課税ではなく)ゼロ税率が適用されている。 4.非課税化がもたらす歪み 生産・流通の中間段階における非課税措置が引き起こす税の累積は、企業行動に次のような歪みを もたらす。 第1に、非課税措置が企業の仕入に関する選択を歪める。非課税化された製品を仕入れる企業は仕入 税額を控除することができないため、その企業は仕入を非課税化されていない製品で代替しようとす る。これは、税がない場合と比べて企業の判断を変えることになるため、税が引き起こす経済活動の 歪みと捉えられる。 第2に、非課税品目の販売企業に垂直統合の誘因が生じることである。前述のとおり、非課税品目の 販売企業は仕入税額を控除できないため、仕入税額を控除できる方法を考えるはずである。その1つの 方法が、中間財を他社から仕入れるのではなく、自社で供給することである。M&Aによって中間財の 製造企業を自社に取り込み、中間財を自己供給することで、税の累積を回避することができる。これ は、非課税品目の販売企業に生じる「自己供給バイアス」と呼ばれる。 第3に、VATの仕向地主義が崩れる。この点については少し説明が必要であろう。VATは、通常仕 向地主義を採用しているため、国際貿易については輸出品が免税(ゼロ税率適用)、輸入品が課税で ある。非課税措置によって、こうした原則が崩れてしまう。この点を前述の数値例を拡張したケース で考えると、次のようになる(図表7, 8)。 C企業を輸出業者として、外国の輸入者としてD企業を加える。D企業の付加価値を10、外国のVAT 率も自国と同じ10%とする。基本ケースでは、外国の消費者は商品価格110の10%である11のVATを 支払う。仕向地主義のVATでは、輸入品は課税されるので、D企業は水際で10だけVATを支払う(国 境税調整)。その後、D企業は輸入税に対して仕入税額控除を用いることができ、自身の付加価値に 対するVATとして1を支払う。 6 これに対して、B企業が非課税であるとき、輸出企業であるC企業にはゼロ税率が適用されるものの、 C企業は課税仕入がないため仕入税額控除はゼロである。このため、A企業に対するVATが輸出品に含 まれてしまう。つまり、輸出企業の直前の段階が非課税であるとき、輸出品は非課税の前段階までに 課せられたVATが含まれたまま輸出されてしまい、外国で税の累積が発生する。こうした状況の下で は、非課税措置が自国の輸出企業の競争力を低下させる恐れがある(但し、為替レートが柔軟に変動 する場合にはその限りではない)。 輸入についても同様に考えることができる。B企業が非課税であるとき、外国に非課税措置がない とすれば、C企業はB企業から仕入れるのではなく、製品にVATが含まれていない外国企業から輸入し ようとする。非課税措置は、こうした「輸入バイアス」を引き起こす。 このように、消費税における中間段階の非課税措置は国内の経済活動を歪めるのみならず、輸出入 を含めた企業活動全体に悪影響を及ぼすと考えられる。 図表 7 A企業 輸出ケース(基本) B企業 C企業 D企業 合計 (外国) 1.課税売上 20 80 0 110 ― 2.売上税額 2 8 0 11 ― 3.課税仕入 0 20 80 100 ― 4.仕入税額 0 2 8 10 ― 5.税額(2-4) 2 6 -8 10(輸入税)+1 11 (注)消費税率10%。外国VAT10%。 (資料)みずほ総合研究所作成 図表 8 A企業 輸出ケース(B 企業が非課税) B企業 C企業 D企業 合計 (外国) 1.課税売上 20 (*) 0 112 ― 2.売上税額 2 0 0 11.2 ― 3.課税仕入 0 (*) 0 102 ― 4.仕入税額 0 0 0 10.2 ― 5.税額(2-4) 2 0 0 10.2(輸入税)+1 13.2 (注)消費税率10%。外国VAT10%。(*)はVATの枠外にあることを示す。 (資料)みずほ総合研究所作成 7 5.非課税措置への対応策 では、非課税措置がもたらす歪みにどのように対応すべきであろうか。第1の方法は、非課税品目を 出来る限り少なくすることである。非課税措置そのものを縮小させることで、そこから生じる歪みを 縮小させるという発想は、各国で検討されているVATの望ましい姿にも合致するものである。国際的 に望ましいとされるVATの姿は、出来るだけ広い課税ベースに対して単一で課税すべきというもので ある。この実現には、非課税措置をいかにして減らすかという問題への対処が欠かせない。 第2の方法として、ゼロ税率の適用が考えられる。前述のように、ゼロ税率であれば小売段階での適 用品目では税を完全に排除することができ、生産・流通の中間段階における適用でも税の累積が生じ ない。このため、税の累積の解消だけを考えるのであれば、ゼロ税率を導入すればよい。しかし、こ の際問題となるのは、非課税措置をゼロ税率に変更すると税収が減少することである。非課税措置で は、それが小売段階で導入された場合にはゼロ税率よりも減収幅は小さくなるが、それが中間段階に 導入された場合には逆に増収になる(対消費者向け取引では減収、対企業向け取引では増収)。このた め、非課税措置を単純に止める場合でさえ、その税収効果の符号は理論的には定まらない。これに対 して、ゼロ税率の場合は小売段階の適用の減収効果が大きく、中間段階の適用の減収効果はない(つ まり基本ケースと同じ)ため、非課税措置をゼロ税率に代えた場合には必ず減収になる。また、日本 の場合はそもそも消費税ではインボイスが導入されておらず、ゼロ税率を導入しようとしても少なく とも現段階ではそれが不可能であるという制度上の問題もある。 各品目に対して非課税とゼロ税率のいずれで対応すべきかという問題は、消費税の理想的な設計や 税収との関係などから総合的に判断することが必要である。非課税措置がもたらす税の累積問題への 対応は技術的な要素も絡むため必ずしもその解決が容易ではないが、消費税率引き上げが確実視され るなかでは少なくとも今後非課税の問題が大きくなっていくとの認識を持つことは大切である。その 際、税務当局のみならず納税者が非課税の問題を理解していれば、非課税措置を減らして課税ベース を拡大する改革の実現が容易になるであろう。 【参考文献】 鈴木将覚 (2009)「VATにおける金融サービス課税-非課税化の問題とその対応策」(みずほ総合研究所『み ずほ総研論集』2009年Ⅱ号) 日本医師会 (2012)「平成25年度医療に関する税制に対する意見」 ●当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに 基づき作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。 8
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