Teachers~ USe 。f the First Language f。r Faciーitati。n2 ーtS Reーati

Teachers' Use of the First Language for Facilitation:Its Relationship to Students'
Anxiety towards Foreign Language Learning in Japanese Elementary Schools
教育学研究科
英語教育専攻 英語科教育学領域
畠山 直子
指導教官 高橋 美由紀
副指導教官 小塚 良孝
Abstract
本研 究は、小 学校外国語活動 におけ る教師 の母語使用 と児 童の外国語不安との
関係を明 らかにす る。結論 として、教師の母語使用にはDirection型 とFacilitation
型 があ り、小 学校外国語活動 におい ては後者 の母語使 用が重 要であることを明
らかにし た。
外国語 教育におい ては、これまで実践的 にも学術的 にも目標言語のみ使用し
て教える(Monolingual teaching) べきか、学習者の母語とあわせて使用すべきか
(Bilingual teaching)
とい う異なる二つ の主張 が存在してい る。Monolingual
teaching側においては、教師は学習者に目標言語を最大限にインプットすべきで
あり、教師の母語使用は教育的価値のない ものとしてみな されている。 さらに
母語を使 用しないほ うが、「学習者 の緊 張が高まり授業 に集 中できる」と主 張し
てい る。一方Bilingual teaching
側において母語使用を教育的価値 のあ るものとみ
なし、Optimal use
(最適な母語使 用)を主張してい る。また、母語使用 が効果的
であるこ との根拠 として、複数の文献が「学習者の不安の軽減」を挙げてい る。
そこで本研 究では、こ の両極の主張 の着地点を探 るこ とを試 みる。 具体的 に
は、児童 の学習 意欲、 不安、 教師 の母語使用 の三つ の変数 をめぐっ て以 下二つ
のリサーチ クエ スチ ョンを明らかにしていく。
第一に、 日本 の小学 校外 国語活動 におい て、児 童の適度 な不安が学習意欲を
高めると仮定し、適 度な不安 とはどのよ うな状態かを明らかにすることを目的
とした。 第二に第一 の目的 で示 された適 度な不安を保つ ためには、母語使用を
適 切に使 用す ることが必要であると仮定し、適切な母語使 用の具体像を明らか
にすること目的とする。
そこで本研究は、まず児童の不安と母語使用との関連性を質問紙調査に よっ
て明らかにしていった。 次いで、児童の適度な不安を維持する ような母語使用
について探るた めに授業の発話を文字化し、そ のト ラン スクリプト を分析 した。
その結果、以下 の三点が明 らかとなった。
第一に、児童 の学習意欲 と不安 の関連性を明 らかにしえ た。外 国語活動 にお
け る児童 の不安には否定的評価不安 と外国語不安 の二因子 が存在し、 高い 学習
意欲を持つ児童は、外国語不安 が高不安であ る一方、否定的評価 不安 は中程度
であるこ とを示した。すな わち、不安感情 は必ずし も高け ればよい わけではな
く、(特に否定的評価不安については)む しろ適度な水準に保つ必要があるこ と
を示 した。
第二に、トランスクリプ トを参照しながら、教師は、児童の否定的評価不安
を適度な水準に保つ よ うに母語を使用してい ることが明らかになった。
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第三に、この ような教師の母語使用には、Direction型 とFacilitation
型 の二類
型が存在するこ とが明らかになった。 Direction
型 は主に不安の低い 児童に対し
て授業を円滑に進 めるた めに使用 される一方で、Facilitation
型 は比較的 不安の高
い児童に対して、状況に応じて不安を高 めたり、あるいは高ま りすぎた不安 を
低 めたりするた めに使用 され る。 児童 の不安感情を適切な水 準に保 ち、 目標言
語への学習意欲につなげ るた めには、特にFacilitation
型 の母語使用 が有用であ
るこ とを本研究では強調してい る。
本研究に より、小学校外国語活動に携 わる教員 が、これまで抱いてい た罪 の
意識を持たず 自信を持って母語を使用す るこ とができ るようにな ると考える。
また児童の学習意欲を高 めるた めに不安を コントロールす るとい う考えは、 教
員の指導の幅を広げると ともに、英語が未習熟な児童 の外国語習得を促進す る
研究である といえる。
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