施設野菜の安全防除新技術について 1 試験のねらい 施設内無人防除機であるくん煙機,常温煙霧機を用いて,施設トマトに農薬を散布した時の気 中濃度の経時変化,落下量の水平及び垂直分布,残留量の経時変化を測定し,慣行法(背負式動 噴)と比較して,無人防除機の安全性,有用性を検討した。 2 試験方法 表一1使用機種,施用薬剤及び施用量 区 分 使 用 機 種 施用薬剤 有効成分 施用量 有効成分量 くん煙ドクタースモークDDVP乳剤DDVP300g/10a(1000倍)150g/10a 動噴背負式動力噴霧機VPスモーク同 上500g/10a 同上 常温煙霧 ハウススプレニモレスタシ水和剤 キノキサリソ系 75g/10a(167倍) 19g/10a 動 噴背負式動カ噴霧機 同 上 同 上75g/10a(2000倍)同上 それぞれ,気中濃度,落下量,残留量を以下の要領で測定した。 気中濃度は,3∠/分X10分,計306の空気をアセトソ中に吸引し,無人防除機は図一1, 2定点における経時変化を,動噴は散布中の作業者の口付近を測定した。落下量については,定 点にろ紙を置き散布翌目回収,残留量については,施設内からトマトをムラなく収穫して,いず れの場合も試料を定法に従いガスクロマトグラフィーで定量分析した。 3 試験結果及ぴ考察 気中濃度について図一4に示した。動噴法では散布中の施設内空気に農薬がある程度検出され たが,くん煙法,常温煙霧法では14.5時問後に消失していた。くん煙法,常温煙霧法は夕方散 布し,翌朝開放時まで作業者は施設内に入らないから,散布中農薬を吸入する恐れのある動噴法 より安全である。 落下量は,くん煙法について図一5に示した。垂直分布(①∼⑥)は差が見られないが,水平 分布は⑥点(最遠部)が他の地点と比べ少ない。大規模ハウスにおける薬剤の均一な到達性を確 保するためには,機械の設置位置,台数などを工夫する必要がある。 残留量について図一6に示した。くん煙法,常温煙霧法とも動噴法に比べ果実の残留が少なく, 農薬残留の低下をはかる上では効果的である。 4 成果の要約 施設内無人防除機による薬剤散布を,作業者の安全性,薬剤の落下量分布,作物残留の点で検 討した。くん煙法,常温煙霧法は,散布中(夕刻)に施設内に作業者が入る必要はなく,翌朝の 開放時には施設内の農薬は消失しており,散布中吸入の恐れがある動噴法に比べ,作業者は安全 である。作物残留も動噴法より少なく,食品上も安全である。 今後,施用薬剤,施設条件を変えて試験,検討する必要がある。 (担当者 病理昆虫部 大谷 卓,鈴木信夫) 一59一 ←一50閉→ ↑ ④ 36閉 く←一一一20榊 ↑ → ① τ ぺ 12伽 ↓ 図一1 ◎ くん煙法試験施設 ( ④ ↓ 図一2 / ⑥ 常温煙霧法試験施設 図一3 落下量測定地点 ll:!・11 50 40 μψ μψ 動噴 気30 ⑮ 中 C}くん煙 濃20 ◎ ㏄3 !⑮1常温煙霧 気 申 濃 度 度 0C2 10 検出隈界 検出限界 ↓ O.01 一古…一苓干吋 込 05 1 1・5 2 145 時問 経過時問 時間 経過時間 図一4−1気中濃度の経時変化(くん煙法) 図一4−2 同 (常温煙霧法) 02 μψ涜 落 0.1 下 量 ①②③④⑤⑥ ④ ①②③④⑤⑥ ①②③④⑤⑥ ⑫ ◎ ①②③④⑤⑥ ⑪ 図一5 落下量の分布(くん煙法) PPm 04 残03 留02 PPm O−01 !動噴 動噴 ! くん煙 量0・1 常温煙霧 ■ 留O.005 量 0 1 3 7目 経過目数 7日 1 3 経過日数 図一6−1残留量の変化(くん煙法) 図一6−2 同 一60一 (常温煙霧法)
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