氏名・所属 大西立顕(東京大学),水野貴之(国立情報学研究所),清水

■氏名・所属
大西立顕(東京大学)
,水野貴之(国立情報学研究所),清水千弘(麗澤
大学)
,家富洋(新潟大学)
,渡辺努(東京大学)
■タイトル
不動産市場にみられるアベノミクス効果:首都圏の中古マンション売買
データの実証分析
■要約
日本のバブル景気やリーマンショックなど,経済の大きな変動は不動産
価格の大きな変動が原因となって生じており,不動産バブルを理解する
ことは重要な課題である.本研究では,過去 30 年間に販売された首都
圏の中古マンションの売買データ(約 100 万件)を分析した.バブルとは,
価格がファンダメンタルズから乖離することである.ファンダメンタル
ズを正しく推計できれば,実際の価格との乖離を計算することでバブル
の判定をすることができる.しかし,ファンダメンタルズを精度高く推
計することはできないため,現実には非常に難しい.そこで,ファンダ
メンタルズではなく,物件の価格分布の地域間格差に注目した.バブル
時には,すべて物件の価格が一律に上がるのではなく,急速に価格が上
がる物件とそうでない物件が存在すると考えられる.つまり,バブルが
発生すると価格の地域間格差が高まる.住宅価格を住宅の広さ,最寄り
駅から何分か,南向きか否かなどさまざまな要素を合計したものだとみ
なすと,中心極限定理により価格は正規分布に従うはずである.一方,
バブル期は,価格の地域間格差が大きくなり中心極限定理が成立しない.
そのため,価格は,平常時は正規分布に従うが,バブル期は正規分布か
ら乖離し裾野の長い分布になる.このことを実際に確かめることができ
た.この性質を利用して,物件の位置から物件間の距離を計算し,空間
的に近接した物件の価格分布が正規分布から乖離する度合いを算出した.
算出した乖離の度合いから同一需給圏の大きさを推定し,各地点のバブ
ルの度合いを定量化した.バブルの度合いは,1980 年台後半から 1990
年台前半にかけて大きな値をとり,その後,2012 年までほぼ0のまま
推移し,アベノミクスがはじまる 2012 年末から再び高い値をとること
が観測できた.さらに,都心で発生したバブルが空間的に波及し収束し
ていく様子などバブル度の時空間変動も観測した.