19-20 木村茜、久保田洋子(PDF:1598KB)

『注射ガンバロウネ』2004年 紙に油性マーカー 各383×543mm(作品写真撮影:高石巧)
『水着のお姉さん』2004年
水彩紙に鉛筆、色鉛筆
542×395mm
『チャイナドレスのお姉さん』2005年
水彩紙に鉛筆、色鉛筆
546×394mm
『お線香花火』
[左]2002年 [右]2002-2003年
紙に鉛筆 各382×542mm
A k a n e K i mu r a
Yo ko K ub ot a
1983年∼ /滋賀県在住
1977年∼ /滋賀県在住
木村 茜
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久保田 洋 子
木 村さんの絵はある日突然始まりました。
コトンとかわいい音がします。彼女はまるで
らだも本当に気持ち良くなって、自分だけの
久保田さんは、ファッション雑誌を熱心に
妙な座標に導きます。
りその情動を掻き立てるためでもあるかのよ
通っている福祉施設のアトリエを外からそっ
音楽のリズムを楽しむように絵を描いている
深いイメージ世界を泳いでゆくのです。
見ながら、中でも一層挑発的な魅力に満ちた
彼女の描く女性像は、まぎれもなく彼女自
うです。頭の中ではよく架空の恋愛をして悩
と見ていた彼女が、ある日ふらりとアトリエに
のです。また、彼女の絵の描き方はダンスの
様々なデジタル情報があふれるこの社会
写真を選び出し描いてゆきます。特に彼女の
身の憧れの投影であり、絵の女性に同化する
んでみたり、ぐちったりするようです。
入ってくると、何か不思議なカタチをいくつも
ようにも見えます。腕の動きはまるで「振り付
の中にあって、彼女が自分で考えついたこの
関心が強い部分を描く時には、独自のアレン
ことへの願望で満たされています。堂々とした
彼女は以前から時々絵を描いたりしていた
続けて描き、プイと出て行ったのです。その後、
けされたダンス」のように、流れるような1つ
「ダンスと音楽の絵」は、私たちに多くのことを
ジを加えて強調します。髪はどんどん大きく
女性美をアピールする絵の中の女性に、自ら
ようですが、地域の福祉施設が開催している
アトリエのスタッフが様々な画材を置いて様
のスタイルとなってゆきました。
気付かせてくれます。ここちよい時間を、幸福
波打ち、口紅は紅く濃く、色鉛筆がゴリゴリと
うっとり見惚れながら、ゆっくりと時間をかけ
アトリエに2000年頃から通うようになり、現
子を見ていると、気持ち良さそうに何枚も描
1枚の絵は約2∼3分で一気に描き上げま
な時間を、彼女はささやかに発明したのです。
音を立てるほどの筆圧で何度も塗り込んでい
て描いています。
在のような絵を熱心に描くようになりました。
くようになってゆきました。使っているのは太
す。
「 お線香花火」
「 うちわ」
「 注射ガンバロウ
きます。筆圧の力は、彼女自身の中で出口を
彼女は気分の変動が大きく、絵はかなりの
彼女は母親とともに、洋服やおしゃれ用品を
い油性マーカーと濃い鉛筆です。マーカーは
ネ」
「緑のドレミ」
「おかあさんのスカート」。そ
さがしているエネルギーを誘い出すようで、
期間中断されていたりするため、作品の数は
見て回るのが大好きというチャーミングな女
滑りが良くキュッキュッと音が出ます。また画
れぞれに自分で名付けた題名もあります。そ
描くほどにそのテンションを上げてゆきます。
多くはありません。彼女にとっては、絵に描く
性です。
用紙の端から鉛筆がはみ出す時には、コトン
の題名をつぶやきながら彼女の絵は、心もか
絵の中にあるその独特の情動は、観る者を奇
ことで自分の心を癒すというのではなく、よ
(はた よしこ)
(はた よしこ)
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