【ドイチェアセット】臨時レポート「ロシアに対する経済制裁の影響」

臨時レポート
ロシアに対する経済制裁の影響
2015年2月20日
ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社
経済制裁の内容
2014年3月初にロシアがウクライナに軍事介入を決定したこと等を受け、米国や欧州連合(EU)は2014年3月6日にロシアに対する
経済制裁の実施を決定しました。その後もウクライナ情勢の混乱が継続したこと、加えて2014年7月に起きたマレーシア航空機
撃墜事件の発生等を受け、米国やEUによる経済制裁は段階的に強化されており、内容は広範囲にわたっています。
【図表1】主な経済制裁の内容(2015年2月19日時点)
<米国>
 ロシアの主要銀行(ガスプロム銀行、ロシア開発対外経済銀行、モスクワ銀行、ロシア農業銀行、VTB銀行、ズベルバン
ク)に対し、米国における新規の株式の発行及び満期が30日を超える資金調達の禁止
 ロシアの主要エネルギー会社(ガズプロム、ガスプロムネフチ、ルクオイル、スルグトネフテガス、ロスネフチ)に対し、深海、
北極海、シェール事業でのロシアの原油生産を支援する可能性のある機器・サービス(金融を除く)・技術等の米国からの
提供・輸出・再輸出の禁止
 ロシアの政府高官、軍関係者、企業トップ等の資産凍結・渡航禁止 等
<EU>
 ロシアの主要5銀行に対し、欧州圏における新規の株式の発行及び満期が30日を超える資金調達の禁止
 欧州投資銀行(EIB)、欧州復興開発銀行(EBRD)による新規融資の禁止
 ロシアに対する深海、北極海、シェール事業でのロシアの原油生産に必要な機器・サービス・技術等のEU加盟国からの
輸出の禁止
 ロシアの政府高官、軍関係者、企業トップ等の資産凍結・渡航禁止 等
出所:米国政府、EUホームページよりドイチェ・アセット・マネジメント㈱が作成
国内経済への影響
欧米諸国による経済制裁はロシアに対し、政治的・経済的揺さぶりをかけるものとなっています。
ロシアの政局に影響力を持つロシアの財界要人等は、これまで投資機会を求め欧米諸国で運用してきました。欧米諸国は今回
それらの海外資産を凍結することで、ロシア政府に対する政治的揺さぶりにつなげる意図があると思われます。また、ロシア企
業は投資機会を求め欧米諸国で行っていた新規資金調達の機会を奪われる状況となっており、企業活動にも影響が出ている
模様です。
これらを受けて、ロシアの信用力は低下し、ロシア国内及び海外からの資本がロシアから急速に流出していると見られます。加
えてロシアの主要輸出品目である原油価格が大幅に下落したこともロシアの景気を悪化させ、結果、通貨ルーブルは大幅安と
なりました。ロシア中銀はルーブル防衛のため2014年の間に6度の政策金利の引き上げを行いましたが、ルーブル安に歯止め
はかからず、むしろ急激な利上げが国内の借入コストの上昇、および借入需要の減退につながり、国内景気を更に冷やすことと
なった模様です。
エネルギー産業
ロシアのエネルギー関連事業への制裁は、エネルギー依存度の高いロシアにとって大きな痛手となると見られます。しかしロシ
ア産の原油やガスを主なエネルギー供給源としている欧州がこれらの輸入を大きく削減することは考えにくく、実際はロシア産原
油の欧州への輸出については現時点では経済制裁の対象外とされています。なお、経済制裁が実施された2014年以降のロシ
アの輸出額(米ドルベース)は減少傾向にはあるものの、貿易収支は黒字となっています(図表2ご参照)。
【図表2】ロシアの貿易収支(米ドルベース)
期間:2000年1月~2014年12月、月次
(億米ドル)
600
500
400
(億米ドル)
300
貿易収支(右軸)
輸出(左軸)
輸入(左軸)
250
200
300
150
200
100 出所:ロシア中央銀行
100
50
0
2000/1
0
2002/1
2004/1
2006/1
2008/1
2010/1
2012/1
2014/1
のデータを基にドイ
チェ・アセット・マネジメ
ント㈱が作成
(年/月)
※データは記載時点のものであり、将来の傾向、数値等を保証もしくは示唆するものではありません。
当資料は、情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品の推奨や投資勧誘を目的としたものではありません。当資料は、信頼できる情報をもとにドイチェ・アセット・マネジメント株
式会社が作成しておりますが、正確性・完全性について当社が責任を負うものではありません。当資料記載の情報及び見通しは、作成時点のものであり、市場の環境やその他の状況
によって予告なく変更することがあります。当資料に記載されている個別の銘柄・企業名については、あくまでも参考として記載したものであり、その銘柄・企業の株式等の売買を推奨す
るものではありません。 D-150218-1
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ロシアに対する経済制裁の影響
市場の反応
欧米諸国による経済制裁や原油価格の大幅下落により、ロシアの信用力が低下したことから、クレジットリスクの指標となるロシ
アの5年物CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)は250前後から一時600を上回る水準まで急上昇しました(図表3ご参照)。格付
会社においても景気悪化等を背景にロシアの格付けを見直す動きが出ています(図表4ご参照)。
このような状況を受け、ロシアが1998年に続き再度破綻(デフォルト)するのではないかといった見方もあります。
【図表3】ロシアの5年物CDSの推移
期間:2000年12月31日~2015年2月17日、日次
【図表4】ロシアのソブリン格付(2015年2月19日時点)
(ベーシスポイント)
1,200
自国通貨建て
外貨建て
1,000
見通し
800
S&P
BBBBB+
ネガティブ
ムーディーズ
Baa3
Baa3
格下げ方向で
見直しを継続
フィッチ
BBBBBBネガティブ
出所:Bloombergのデータを基にドイチェ・アセット・マネジメント㈱が作成
600
400
200
0
2000/12
2003/12
2006/12
2009/12
2012/12
(年/月)
出所:Bloombergのデータを基にドイチェ・アセット・マネジメント㈱が作成
ロシアがデフォルトする可能性は低い
ロシアは1998年の財政危機を教訓とし、これまで財政状況の改善に取り組んできました。その結果、1999年には対GDP比で
約100%であった公的債務比率は2014年時点(予測)で約15.7%と大幅に改善しています。加えて、対外債務の返済に充てる
ことのできる外貨準備高についても通貨防衛を目的とした為替介入により減少ペースが速まりましたが、依然高水準を維持し
ています。
(%)
120
【図表5】ロシアの公的債務比率(対GDP比)
期間:1999年~2019年、年次
(億米ドル)
【図表6】ロシアの外貨準備高
期間:1999年1月~2014年12月、月次
7,000
100
6,000
予測値
5,000
80
4,000
60
3,000
40
2,000
20
1,000
0
1999
2002
2005
2008
2011
2014
2017
出所:IMF World Economic Outlook, October 2014のデータを基にドイチェ・
アセット・マネジメント㈱が作成
※2014年以降は予測値
(年)
0
1999/1 2001/5 2003/9 2006/1 2008/5 2010/9 2013/1
(年/月)
出所:Bloombergのデータを基にドイチェ・アセット・マネジメント㈱が作成
※データは記載時点のものであり、将来の傾向、数値等を保証もしくは示唆するものではありません。
当資料は、情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品の推奨や投資勧誘を目的としたものではありません。当資料は、信頼できる情報をもとにドイチェ・アセット・マネジメント株
式会社が作成しておりますが、正確性・完全性について当社が責任を負うものではありません。当資料記載の情報及び見通しは、作成時点のものであり、市場の環境やその他の状況
によって予告なく変更することがあります。当資料に記載されている個別の銘柄・企業名については、あくまでも参考として記載したものであり、その銘柄・企業の株式等の売買を推奨す
るものではありません。 D-150218-1
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ロシアに対する経済制裁の影響
ロシア政府にとって、主にエネルギー輸出企業からの税収は大きな財源となっています。足元、貿易黒字が維持されているこ
とでロシア政府の財源の下支えとなっているものと考えられます。しかし、石油輸出国機構(OPEC)の減産見送りや、米国に
おけるシェール油生産の台頭等、原油供給過多の状況が続いていると見られることでロシアの原油輸出量が徐々に減る可能
性もあります。従来、ロシア産エネルギーの主要輸出先は欧州であり、主要外貨の獲得先ですが、今後はエネルギー輸出に
おける選択肢の拡大を求めて、中国を筆頭とするアジア諸国の開拓を目指した動きを進めています。
ロシアにとって、エネルギーは重要な収入源であることからも原油をはじめとしたエネルギーの動向に引き続き注視が必要と
考えます。
今後のロシア市場見通し
今後については、ロシアに対する欧米諸国による経済制裁の一部解除や原油価格の下げ止まり等が確認される様な場面に
おいては、市場心理が改善し、相対的に高い利回りを求める需要からロシア市場への資本流入につながり、結果、ルーブル
の上昇要因になるとみられます。一方、市場心理は改善するとしても緩慢なペースで回復していくとみられ、それまでは引き続
き神経質な展開が予想されます。
<ウクライナ情勢・経済制裁について>
ウクライナ東部における親ロシア派武装勢力とウクライナ政府軍との戦闘は、2015年2月15日午前0時に停戦が発効されまし
た。欧米諸国は親ロシア派が停戦合意を順守すれば追加制裁を行わないことや既存の経済制裁を緩和する可能性も示唆し
ていました。しかし、停戦発効直後も一部地域で戦闘が続いている模様であることからEUは2015年2月16日に資産凍結の対
象を拡大する等といった内容の追加制裁を発動したことを発表しました。
今後も停戦が順守されなければ、欧米諸国は制裁を強化することも視野に入れている模様であり、ロシアの経済を更に悪化
させるような事態も想定されます。このように、ウクライナ情勢及び欧米諸国による制裁の内容には引き続き十分留意する必
要があると考えます。
<エネルギーについて>
ロシアの重要な収益源である原油の価格とルーブルの連動性が高まっています(図表7ご参照)。2014年、原油の供給過多等
を主要因とし、原油価格が大幅下落する過程においてルーブル安も進行しました。足元、原油生産量を見直す様な動きも一
部では見られることで、原油価格に下げ止まりの兆しも見られます。一方で、ロシア中銀は2014年12月に原油価格が2017年ま
で1バレル当たり60米ドル程度で推移した場合、2015年のロシアのGDP成長率が4.5%~4.7%のマイナス成長にまで落ち込む
との予測も示しています。そのため、今後もロシア経済は原油価格の動向に左右されるものとも考えます。
【図表7】ルーブル(対米ドル)とWTI原油先物の推移
期間: 2013年12月31日~2015年2月17日、日次
ルーブル高
(ルーブル)
0
(米ドル/バレル)
120
10
100
20
80
30
ルーブル安
40
60
50
40
60
20
ルーブル(対米ドル)(左軸)
WTI原油先物(右軸)
70
80
2013/12
0
2014/3
2014/6
2014/9
2014/12
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