プレス時に優れた耐パウダリング性と耐フレーキング性を有する高

JP 2006-97102 A 2006.4.13
(57)【 要 約 】
【課題】
プレス時に優れた耐パウダリング性と耐フレーキング性を有する高張力合金化溶融亜鉛
めっき鋼板とその製造方法を提供する。
【解決手段】
鋼板表面に合金化溶融亜鉛めっき層を備える合金化溶融亜鉛めっき鋼板であって、前記
鋼 板 が 質 量 % で 、 C:0.05∼ 0.25% 、 Si:0.02∼ 0.20% 、 Mn:0.5∼ 3.0% 、 S:0.01% 以 下 、 P:
0.035% 以 下 お よ び sol Al:0.01∼ 0.5% を 含 有 し 、 残 部 が Feお よ び 不 純 物 か ら な る 化 学 組
成 を 有 し 、 か つ 前 記 合 金 化 溶 融 亜 鉛 め っ き 層 が 質 量 % で 、 Fe: 10∼ 15% お よ び Al: 0.20∼
0.45% を 含 有 し 、 残 部 が Znお よ び 不 純 物 か ら な る 化 学 組 成 を 有 す る と と も に 、 前 記 鋼 板 と
前 記 合 金 化 溶 融 亜 鉛 め っ き 層 と の 界 面 密 着 強 度 が 20MPa以 上 で あ る こ と を 特 徴 と す る 高 張
力合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
【選択図】なし
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板表面に合金化溶融亜鉛めっき層を備える合金化溶融亜鉛めっき鋼板であって、前記
鋼 板 が 質 量 % で 、 C:0.05∼ 0.25% 、 Si:0.02∼ 0.20% 、 Mn:0.5∼ 3.0% 、 S:0.01% 以 下 、 P:
0.035% 以 下 お よ び sol.Al:0.01∼ 0.5% を 含 有 し 、 残 部 が Feお よ び 不 純 物 か ら な る 化 学 組
成 を 有 し 、 か つ 前 記 合 金 化 溶 融 亜 鉛 め っ き 層 が 質 量 % で 、 Fe: 10∼ 15% お よ び Al: 0.20∼
0.45% を 含 有 し 、 残 部 が Znお よ び 不 純 物 か ら な る 化 学 組 成 を 有 す る と と も に 、 前 記 鋼 板 と
前 記 合 金 化 溶 融 亜 鉛 め っ き 層 と の 界 面 密 着 強 度 が 20MPa以 上 で あ る こ と を 特 徴 と す る 高 張
力合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項2】
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鋼 板 が 、 Feの 一 部 に 代 え て 、 質 量 % で 、 Ti:0.01∼ 0.5% お よ び Nb:0.01∼ 0.5% の う ち の
1 種 ま た は 2 種 、 な ら び に Mo:0∼ 1.0% を 含 有 す る 化 学 組 成 を 有 す る こ と を 特 徴 と す る 請
求項1に記載の高張力合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項3】
表 面 粗 度 Raが 0.9μ m 以 下 で あ り 、 表 面 の う ね り Wcaが 0.6μ m 以 下 で あ る こ と を 特 徴 と
する請求項1または2に記載の高張力合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項4】
請 求 項 1 ま た は 2 に 記 載 の 化 学 組 成 を 有 す る 鋼 板 を 、 浴 中 Al濃 度 が 0.08∼ 0.14質 量 % の
溶 融 亜 鉛 め っ き 浴 に 浸 漬 し て め っ き 層 を 付 着 さ せ た 後 、 め っ き 層 中 の Fe含 有 量 が 10∼ 15質
量 % と な る よ う に 470∼ 530℃ の 温 度 で 合 金 化 処 理 を 施 す こ と を 特 徴 と す る 高 張 力 合 金 化 溶
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融めっき鋼板の製造方法。
【請求項5】
合 金 化 処 理 後 の 高 張 力 合 金 化 溶 融 め っ き 鋼 板 に 、 3 μ m 以 下 の 表 面 粗 度 Raと 0.5μ m 以
下 の 表 面 の う ね り Wcaを 有 す る 調 質 圧 延 ロ ー ル を 用 い て 、 1.47∼ 2.94MN/m の 圧 延 線 荷 重 で
調質圧延を施すことを特徴とする、請求項4に記載の高張力合金化溶融めっき鋼板の製造
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高張力合金化溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法に関する。本発明は、
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主として、家電、建材、自動車等の分野で用いられる、優れた耐パウダリング性を有する
合金化溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、家電、建材及び自動車等の分野において溶融亜鉛めっき鋼板が大量に使用されて
いるが、とりわけ経済性、防錆機能、塗装後の性能の点で優れる合金化溶融亜鉛めっき鋼
板が広く用いられている。
【0003】
この合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、通常、次のようにして製造される。鋼板を溶融めっ
き 前 に 予 熱 炉 に お い て 加 熱 し 、 不 め っ き が 生 じ な い よ う に 露 点 を -20℃ 以 下 に 調 整 し た H2
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+ N2 の 還 元 雰 囲 気 中 で 焼 鈍 し 、 次 い で め っ き 浴 温 前 後 に 冷 却 し 、 そ の 後 に 溶 融 Znめ っ き
を 施 す 。 そ し て 、 こ の 溶 融 亜 鉛 め っ き を 施 し た 鋼 板 を 、 熱 処 理 炉 に お い て 480∼ 600℃ の 材
料 温 度 で 3∼ 30sec加 熱 し て Fe− Zn合 金 め っ き 相 を 形 成 す る こ と に よ っ て 、 合 金 化 溶 融 亜 鉛
めっき鋼板を製造する。
【0004】
しかしながら、合金化溶融Znめっき鋼板をプレス加工する場合、めっき表層における
Fe含 有 量 が 比 較 的 低 い 軟 質 な 合 金 相 (ζ 相 )を 有 す る と き は 、 め っ き 表 層 と 金 型 表 面 の 凝 着
現象などにより金型表面と鋼板との間の摺動性に劣るため、めっき剥離(フレーキング)
や 鋼 板 の プ レ ス 割 れ が 生 じ る こ と が あ る 。 そ し て 、 め っ き 層 中 の Fe含 有 量 が 高 い 場 合 に は
、鋼板とめっき層の界面近傍に硬質なΓ、Γ1 、δ1
c
相が形成されるため、合金化溶融
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Znめっき鋼板をプレス加工する場合にめっき層の粉化(パウダリング)が発生しやすく
なる。この現象が発生すると、金型に剥離片が付着して押込み疵が生じることになる。
【0005】
このような問題点を解決するために、軟鋼板を母材とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板に
ついて、被膜のめっき層を比較的硬度のバランスが取れたδ1主体の合金相とすることが
提案されている。
【0006】
2
例 え ば 、 特 許 文 献 1 に は 、 目 付 量 :45∼ 90g/m /片 面 を 有 す る 耐 パ ウ ダ リ ン グ 性 及 び 耐
フレーキング性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板が提案されている。ここでは、めっき
層 中 の Fe含 有 量 が 8∼ 12% に 、 そ し て Al含 有 量 を 0.05∼ 0.25% に 管 理 し て 、 被 膜 の め っ き
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層 に η 、 ζ 相 を 存 在 さ せ ず 、 母 材 と め っ き 層 の 界 面 の 合 金 層 の Γ 相 を 1.0μ m 以 下 に す る
ものである。
【0007】
ま た 、 特 許 文 献 2 に は 、 被 膜 の め っ き 層 中 の Fe含 有 量 が 8∼ 12% と な る よ う に 合 金 化 処
理 を 行 う 合 金 化 溶 融 亜 鉛 め っ き 鋼 板 の 製 造 方 法 に 関 し て 、 め っ き 浴 中 の Al濃 度 を 0.13% 以
上 に 管 理 す る と と も に 、 母 材 と な る 鋼 板 の 侵 入 板 温 を 浴 中 Al濃 度 の 増 加 に 伴 っ て 上 昇 さ せ
たり、高周波誘導加熱炉出側の板温を適正範囲に管理することによって、耐パウダリング
性及び耐フレーキング性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造することが提案されて
いる。
【0008】
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次に、高強度鋼板について、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の耐パウダリング性の改善方法
が、次のとおり提案されている。
【0009】
特許文献3で提案された合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、母材となる鋼板の化学組成を質
量 % で C:0.05∼ 0.20% 、 Si:0.02∼ 0.70% 、 Mn:0.50∼ 3.0% 、 P:0.005∼ 0.10% 、 S:0.1%
以 下 、 sol.Al:0.10∼ 2.0% 、 N:0.01% 以 下 、 お よ び Si+Al:0.5% 以 上 に 規 定 す る と と も に
、 750∼ 870℃ で 還 元 焼 鈍 を 行 い 、 次 い で 350∼ 550℃ の 低 温 に 20sec以 上 滞 留 さ せ し 、 そ の
後、溶融亜鉛めっきを行ってから、特定の合金化温度と滞留時間で合金化処理を行うこと
によって得られるものであり、母材となる鋼板中にオーステナイト(γ)相の含有量が1
体積%以上残存することによって、母材となる鋼板に優れた局部延性とともに高強度を付
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与 し て い る 。 そ し て 、 被 膜 の め っ き 層 中 の Fe含 有 量 を 8∼ 15質 量 % に 規 定 す る と と も に 、
めっき層におけるΓ相平均厚みを2μm以下、厚み方向の最大Γ1相長さを1.5μm以
下、そして、最大Γ1相長さとΓ相厚み比を1以下に規定することによって、耐パウダリ
ング性を改善している。
【0010】
そして、特許文献4で提案された合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、母材となる鋼板の化学
組 成 を 質 量 % で C:0.05∼ 0.20% 、 Si:0.01∼ 1.50% 、 Mn:0.5∼ 3.0% 、 P:0.05% 以 下 、 S:0.
01% 以 下 、 Al:0.01∼ 2.0% 、 N:0.01% 以 下 、 Si+Al:0.5% 以 上 に 規 定 す る と と も に 、
780∼ 870℃ で 還 元 焼 鈍 し た 後 、 700℃ か ら 550℃ ま で の 温 度 範 囲 を 平 均 30℃ / sec以 上 の 冷
却 速 度 で 冷 却 し 、 次 い で 350∼ 550℃ の 低 温 に 20sec以 上 滞 留 さ せ 、 そ し て 、 常 温 ま で 冷 却
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し 、 得 ら れ た 母 材 に 、 Ni、 Cu及 び Coの う ち 1 種 又 は 2 種 以 上 付 着 さ せ 、 再 び 、 780∼ 870℃
で 5∼ 500sec滞 留 さ せ て 還 元 焼 鈍 を 行 い 、 そ の と き の 到 達 温 度 か ら め っ き 浴 温 度 近 傍 ま で
冷 却 し て か ら 、 め っ き を 行 い 、 520℃ 以 下 で 合 金 化 処 理 を 行 う こ と に よ っ て 得 ら れ る も の
で あ り 、 母 材 と な る 鋼 板 中 に オ ー ス テ ナ イ ト ( γ ) 相 の 含 有 量 が 1体 積 % 以 上 残 存 す る こ
と に よ っ て 、 母 材 と な る 鋼 板 に 引 張 強 度 TS( MPa) × 伸 び El( % ) ≧ 20000を 満 足 す る 高 強
度 と 高 延 性 を 付 与 し て い る 。 そ し て 、 被 膜 の め っ き 層 中 の Al含 有 量 を 0.2∼ 0.4質 量 % に 、
Fe含 有 量 を 8∼ 15質 量 % に 規 定 し 、 1 回 目 焼 鈍 後 の 、 Ni、 Cu及 び Coな ど の 付 着 量 を 増 加 さ
せ、合金化を促進させることで、耐パウダリング性と耐フレーキング性を改善している。
【0011】
【 特 許 文 献 1 】 特 開 平 1-68456号 公 報
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【 特 許 文 献 2 】 特 開 平 4-276053号 公 報
【 特 許 文 献 3 】 特 開 2002-30403号 公 報
【 特 許 文 献 4 】 特 開 2002-47535号 公 報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
合金化溶融亜鉛めっき鋼板は軽量化が強く要望されているところ、合金化溶融亜鉛めっ
き鋼板のうちの母材に用いる鋼板に関しては、高強度化を図ることによって、軽量化され
た鋼板が数多く開発されている。
【0013】
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しかしながら、高強度鋼板を母材に用いた合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、プレス成形時
に、その被膜のめっき層に掛かる面圧が急激に増加するので、軟鋼板を母材に用いた合金
化溶融亜鉛めっき鋼板よりも、プレス因子が被膜剥離挙動に大きく作用することになる。
したがって、高強度鋼板を母材に用いた合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、プレス成形時の被
膜損傷が大きくなる問題が生じることが想定される。
【0014】
上述の特許文献1に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板や特許文献2に記載の製造方法に
よって得られる合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、軟鋼板を母材に用いた合金化溶融亜鉛めっ
き鋼板に関して、被膜のめっき層の合金相を規定するものであるが、高強度鋼板を母材に
用いた合金化溶融亜鉛めっき鋼板に適用しても、プレス成形時の耐パウダリング性の改善
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効果は殆ど認められないことが判明した。
【0015】
また、上述の高強度鋼板のパウダリング改善方法として特許文献3及び特許文献4で提
案 さ れ た 合 金 化 溶 融 亜 鉛 め っ き 鋼 板 は 、 鋼 中 の Siお よ び Pの 含 有 量 が 比 較 的 高 い 鋼 種 で あ
る上に、その製造のために複雑な還元焼鈍ヒートパターンで熱処理を行う必要がある。さ
らに、これらの文献で提案された合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得るためには、従来のもの
よりも合金化に長い熱処理時間がかかるため、炉長の長い熱処理炉を必要とし、新たな設
備投資が必要となるという問題がある。
【0016】
本発明は、このような問題点を解決することを目的としてなされたものであり、特に高
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張力鋼板特有の耐パウダリング特性を改善したプレス性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼
板とその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、高張力鋼板を母材に使用した合金化溶融亜鉛めっき鋼板のパウダリング
挙動をまず調査した。同一の成形条件では、同じ板厚であっても、母材強度が増すにつれ
て金型との接触面圧が増加するため、めっき母材が軟鋼板である場合に観察される圧縮変
形による被膜の脱落形態とは異なり、高面圧摺動による被膜の剥離形態に近いものが観察
された。
【0018】
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合金化溶融亜鉛めっき鋼板の母材が軟鋼板である場合には、耐パウダリング性を改善す
る た め に 、 被 膜 の め っ き 層 中 の Feの 含 有 量 を 制 限 す る と と も に 、 Γ 相 の 形 成 量 を 抑 制 す る
こ と が 有 効 で あ る 。 こ れ に 対 し て 、 降 伏 点 ( Y P ) が 350MPaを 超 え る よ う な 高 強 度 鋼 板 を
母材とする場合には、圧縮変形に耐えうる軟質な被膜のめっき層とするよりは、極力金型
との摺動抵抗を下げうる比較的硬質の被膜のめっき層とし、そして、母材とめっき層の界
面の密着力を高めることが有効ではないかとの着想の下に、このような構造と性質を有す
る被膜のめっき層について検討した。
【0019】
ま ず 、 被 膜 の め っ き 層 を 硬 質 化 さ せ る た め 、 め っ き 層 中 の Feの 含 有 量 は 10質 量 % 以 上 に
管理することが有効であることが判明した。また、高面圧で摺動を受ける場合、被膜の表
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層の凸部は変形抵抗を増加させる要因となり、そして、摺動により削られた被膜はパウダ
リ ン グ 量 を 増 加 さ せ る こ と と な る た め 、 め っ き 層 の 表 面 形 状 に 関 し て 、 表 面 粗 度 Raと 表 面
の う ね り Wcaを 所 定 値 以 下 に 制 御 す る こ と が 有 効 で あ る こ と が 判 明 し た 。
【0020】
次に、母材とめっき層の界面の密着力を高めるためには、極低炭素鋼板の場合、めっき
浴 中 の Al濃 度 を 高 め る こ と に よ り 、 母 材 と な る 鋼 板 の 粒 内 と 粒 界 に お け る 合 金 化 速 度 の 差
を拡大させ、鋼板と合金化溶融亜鉛めっき層との界面の凹凸増加を図るという手法を採用
できた。また、極低炭素鋼をベースとした高張力鋼板でも、同様な手法を採用すればよか
った。ところが、Cが粒界偏析しているような鋼中のC含有量が比較的高い高強度鋼板で
は 、 め っ き 浴 中 の Al濃 度 を 高 め て も 、 鋼 板 と 合 金 化 溶 融 亜 鉛 め っ き 層 と の 界 面 の 凹 凸 増 加
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を望むことができないため、界面密着強度の大幅な改善は困難であった。
【0021】
鋼中のC含有量が比較的高い鋼種は、このような問題点がある。さらに、高張力合金化
溶融亜鉛めっき鋼板は板厚が厚いため、曲げ加工をすると、その際の曲げ戻し変形によっ
て剪断応力が発生して、被膜の剥離が起こるという問題点もある。
【0022】
これらの問題を解決すべく、本発明者らは、種々検討の結果、母材となる鋼板の鋼中に
0.02∼ 0.2質 量 % の Siを 含 有 さ せ る こ と に よ っ て 、 合 金 化 処 理 過 程 に お い て 、 被 膜 の め っ
き 層 中 の Znが 母 材 と な る 鋼 板 の 粒 界 へ 拡 散 す る の を 助 長 し 、 鋼 板 と め っ き 層 と の 界 面 の 凹
凸 を 増 加 さ せ る と と も に 、 鋼 板 の 粒 内 へ の 拡 散 が あ ま り 活 発 に な ら な い 530℃ 以 下 で 合 金
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化を終えることが有効な手段であることを見出した。
【0023】
本 発 明 は 、 こ の よ う な 新 た な 知 見 に 基 づ い て 完 成 し た も の で あ っ て 、 次 の (1)か ら (3)ま
で の い ず れ か に 記 載 の 高 張 力 合 金 化 溶 融 亜 鉛 め っ き 鋼 板 に 係 る も の と 、 (4)ま た は (5)に 記
載の高張力合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法に係るものである。以下、それぞれ、本
発 明 (1)∼ 本 発 明 (5)と い う 。 な お 、 こ れ ら を 総 称 し て 、 本 発 明 と い う こ と が あ る 。
【0024】
(1)鋼 板 表 面 に 合 金 化 溶 融 亜 鉛 め っ き 層 を 備 え る 合 金 化 溶 融 亜 鉛 め っ き 鋼 板 で あ っ て 、
前 記 鋼 板 が 質 量 % で 、 C:0.05∼ 0.25% 、 Si:0.02∼ 0.20% 、 Mn:0.5∼ 3.0% 、 S:0.01% 以 下
、 P:0.035% 以 下 お よ び sol.Al:0.01∼ 0.5% を 含 有 し 、 残 部 が Feお よ び 不 純 物 か ら な る 化
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学 組 成 を 有 し 、 か つ 前 記 合 金 化 溶 融 亜 鉛 め っ き 層 が 質 量 % で 、 Fe: 10∼ 15% お よ び Al: 0.
20∼ 0.45% を 含 有 し 、 残 部 が Znお よ び 不 純 物 か ら な る 化 学 組 成 を 有 す る と と も に 、 前 記 鋼
板 と 前 記 合 金 化 溶 融 亜 鉛 め っ き 層 と の 界 面 密 着 強 度 が 20MPa以 上 で あ る こ と を 特 徴 と す る
高張力合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
【0025】
(2)鋼 板 が 、 Feの 一 部 に 代 え て 、 質 量 % で 、 Ti:0.01∼ 0.5% お よ び Nb:0.01∼ 0.5% の う
ち の 1 種 ま た は 2 種 、 な ら び に Mo:0∼ 1.0% を 含 有 す る 化 学 組 成 を 有 す る こ と を 特 徴 と す
る 、 上 記 (1)に 記 載 の 高 張 力 合 金 化 溶 融 亜 鉛 め っ き 鋼 板 。
【0026】
(3)表 面 粗 度 Raが 0.9μ m 以 下 で あ り 、 表 面 の う ね り Wcaが 0.6μ m 以 下 で あ る こ と を 特 徴
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と す る 、 上 記 (1)ま た は (2)に 記 載 の 高 張 力 合 金 化 溶 融 亜 鉛 め っ き 鋼 板 。
【0027】
(4)上 記 (1)ま た は (2)に 記 載 の 化 学 組 成 を 有 す る 鋼 板 を 、 浴 中 Al濃 度 が 0.08∼ 0.14質 量
% の 溶 融 亜 鉛 め っ き 浴 に 浸 漬 し て め っ き 層 を 付 着 さ せ た 後 、 め っ き 層 中 の Fe含 有 量 が 10∼
15質 量 % と な る よ う に 470∼ 530℃ の 温 度 で 合 金 化 処 理 を 施 す こ と を 特 徴 と す る 高 張 力 合 金
化溶融めっき鋼板の製造方法。
【0028】
(5)合 金 化 処 理 後 の 高 張 力 合 金 化 溶 融 め っ き 鋼 板 に 、 3 μ m 以 下 の 表 面 粗 度 Raと 0.5μ m
以 下 の 表 面 の う ね り Wcaを 有 す る 調 質 圧 延 ロ ー ル を 用 い て 、 1.47∼ 2.94MN/m の 圧 延 線 荷 重
で 調 質 圧 延 を 施 す こ と を 特 徴 と す る 、 上 記 (4)に 記 載 の 高 張 力 合 金 化 溶 融 め っ き 鋼 板 の 製
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造方法。
【0029】
な お 、 高 張 力 溶 融 亜 鉛 め っ き 鋼 板 表 面 の 表 面 粗 度 Raと 表 面 の う ね り Wcaは 、 JISB 0610の
規 定 に 基 づ い て 測 定 し た 。 す な わ ち 、 表 面 粗 度 Raは 中 心 線 平 均 粗 さ に よ っ て 測 定 し た が 、
カ ッ ト オ フ 値 0.8m m を 採 用 し た 。 そ し て 、 表 面 う ね り Wcaは 、 ろ 波 中 心 線 う ね り に よ っ て
測 定 し た が 、 高 域 カ ッ ト オ フ 0.8m m お よ び 低 域 カ ッ ト オ フ 8m m を 採 用 し た 。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、優れた耐パウダリング性と耐フレーキング性を有する高張力合金化溶
融亜鉛めっき鋼板とその製造方法を提供することができる。
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【0031】
この高張力合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、プレス性に優れており、家電、建材および自
動車等の分野の構造部材として適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
まず、本発明の高張力溶融亜鉛めっき鋼板のめっきの基材である鋼板の規定理由につい
て説明する。以下、組成についての%は質量%を表す。
【0033】
A.本発明に係る鋼板の化学組成について
以下に、本発明の高張力合金化溶融亜鉛めっき鋼板とその製造法について、詳細に説明す
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る。本明細書において鋼板、合金化溶融亜鉛めっき層およびめっき浴の化学組成における
、「%」は特にことわりがない限り、「質量%」を示す。
【0034】
(1)母材となる鋼板の化学組成
C : 0.05∼ 0.25%
C は 低 コ ス ト で 強 度 向 上 に 有 効 な 元 素 で あ る 。 C 含 有 量 が 0.05% 未 満 で は 強 度 向 上 の 効
果 が 十 分 で は な い の で 含 有 量 の 下 限 を 0.05% と す る 。 好 ま し い 下 限 は 0.10% で あ る 。 一 方
そ の 含 有 量 が 0.25% を 超 え る と 切 断 や 打 ち 抜 き 部 の 亀 裂 進 展 が 大 き く な る 。 こ の た め 含 有
量 の 上 限 を 0.25% と す る 。 好 ま し い 上 限 は 0.20% で あ る 。
【0035】
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Si: 0.02∼ 0.20%
Siは 、 合 金 化 処 理 過 程 に お い て 、 被 膜 の め っ き 層 中 の Znが 母 材 の 鋼 板 の 粒 界 へ 拡 散 す る
のを助長し、母材とめっき層との界面の凹凸を増加させることにより、母材の鋼板とめっ
き層との界面密着強度を増加させる重要な元素である。
【0036】
Si含 有 量 が 0.02% 未 満 で は こ の 界 面 密 着 強 度 の 向 上 効 果 が 十 分 で は な い の で 、 含 有 量 の
下 限 を 0.02% と す る 。 好 ま し い 下 限 は 0.04% で あ る 。 一 方 、 そ の 含 有 量 が 0.20% を 超 え る
と合金化速度が著しく低下するため、合金化処理時間を長時間化する必要が生じて生産性
の低下や設備の長大化を招く。合金化処理時間を短縮するために合金化処理温度を上昇さ
せると、操業性の低下もしくは上記界面密着強度の低下を招く。このため含有量の上限は
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0.20% と す る 。 好 ま し い 上 限 は 0.10% で あ る 。
【0037】
Mn: 0.5∼ 3.0%
Mnは 、 鋼 板 の 強 度 向 上 に 有 効 な 元 素 で あ る が 、 そ の 含 有 量 が 0.5% 未 満 で は 強 度 向 上 の
効 果 が 十 分 で は な い の で 、 含 有 量 の 下 限 を 0.5% と す る 。 一 方 、 Mnの 含 有 量 が 3.0% を 超 え
る と 、 鋼 板 の 脆 化 が 生 じ る た め 、 含 有 量 の 上 限 を 3.0 % と す る 。 Mn含 有 量 が 増 加 す る と 鋼
板 の 製 造 コ ス ト が 嵩 む た め 、 好 ま し い 上 限 は 2.5% で あ る 。
【0038】
P: 0.035% 以 下
Pは 、 任 意 添 加 元 素 で あ る 。 0.02% 以 上 含 有 さ せ れ ば 、 高 強 度 化 に 有 効 で あ る が 、 過 剰
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に含有すると合金化速度が低下するため、合金化処理時間を長時間化する必要が生じて、
生産性の低下や設備の長大化を招く。合金化処理時間を短縮するために合金化処理温度を
上昇させる場合には操業性の低下もしくは上記界面密着強度の低下を招く。このため、P
の 含 有 量 を 0.035% 以 下 と す る 。 好 ま し い 含 有 量 は 0.025% 以 下 で あ る 。
【0039】
な お 、 Pを 含 有 さ せ な く て も 、 他 の 合 金 成 分 に よ り 、 十 分 に 高 強 度 化 が 図 ら れ る と き は
、 Pを 積 極 的 に 添 加 す る 必 要 は な い 。 こ の 場 合 、 Pの 下 限 は 限 定 さ れ な い 。
【0040】
S: 0.01% 以 下
Sは 不 純 物 で あ り そ の 含 有 量 は 低 い 方 が 好 ま し い 。 S 含 有 量 が 0.01% 超 で は MnSの 析 出 が
10
顕 著 に な り 鋼 板 の 延 性 を 劣 化 さ せ る の で S 含 有 量 は 0.01% 以 下 と す る 。 好 ま し い 含 有 量 は
0.005% 以 下 で あ る 。
【0041】
sol.Al: 0.01∼ 0.5%
Alは 脱 酸 剤 と し て 添 加 さ れ る が 、 そ の 含 有 量 が sol.Alと し て 0.01% 未 満 で は 脱 酸 が 不 十
分 と な り 介 在 物 が 増 加 し 延 性 が 低 下 す る 。 一 方 、 そ の 含 有 量 が 0.5% を 超 え る と コ ス ト が
嵩 む 。 こ の た め 、 sol.Alの 含 有 量 を 0.01% 以 上 0.5% 以 下 と す る 。
【0042】
Ti: 0.01∼ 0.5% 、 Nb: 0.01∼ 0.5% 、 Mo: 0∼ 1.0%
これらの元素は任意添加元素であり、添加することにより鋼中に炭化物の析出物を形成
20
し、その析出物によって析出強化が図れるので、析出強化による強度向上を目的として添
加することができる。
【0043】
Ti含 有 量 が 0.01% 未 満 か つ Nb含 有 量 が 0.01% 未 満 で は 、 析 出 物 の 量 が 少 な く 強 度 向 上 の
効 果 が 少 な い の で 、 含 有 さ せ る 場 合 の 下 限 は そ れ ぞ れ 0.01% と す る 。 一 方 、 Ti含 有 量 が 0.
5% を 超 え る 場 合 ま た は Nb含 有 量 が 0.5% を 超 え る 場 合 に は 、 析 出 物 の 量 が 過 剰 と な り 鋼 板
の 延 性 低 下 が 著 し く な る の で 、 含 有 さ せ る 場 合 の 上 限 は そ れ ぞ れ 0.5% と す る 。 Tiお よ び N
bの そ れ ぞ れ に つ い て の 好 ま し い 下 限 は 0.02% で あ り 、 上 限 は 0.10% で あ る 。
【0044】
Moは 任 意 添 加 元 素 で あ る 。 Moを 添 加 す る と 、 さ ら に 高 強 度 化 を 図 る こ と が で き る 。 Moの
30
含 有 量 が 1.0% を 超 え る と 延 性 が 極 端 に 劣 化 す る た め 、 添 加 す る 場 合 の 含 有 量 の 上 限 は 1.0
%とする。
【0045】
な お 、 そ の 他 、 Cr、 Cu、 Ni、 Cu、 V等 の 成 分 が 少 量 含 ま れ て い て も 特 に か ま わ な い 。
【0046】
(2)被膜となるめっき層の化学組成
Fe: 10∼ 15%
被 膜 と な る 亜 鉛 め っ き 層 中 の Fe含 有 量 が 10% 未 満 の 場 合 は 、 合 金 化 処 理 後 の め っ き 層 の
表層部に軟質部位が形成されやすくなり、摺動性が低下して被膜のめっき層が母材の鋼板
と の 界 面 か ら 剥 離 す る こ と に よ る フ レ ー ク 状 の 剥 離 が 増 加 す る 。 し た が っ て 、 Fe含 有 量 の
40
下 限 は 10% と す る 。 好 ま し い 下 限 は 11%で あ る 。 一 方 、 Fe含 有 量 が 15% を 超 え る と 、 鋼 板
に曲げ加工が施された場合に、曲げ部の内側で合金化溶融亜鉛めっき層が圧縮変形を受け
る こ と に よ る パ ウ ダ リ ン グ 剥 離 量 が 増 加 す る 。 こ の た め 、 Fe含 有 量 の 上 限 は 15% と す る 。
好 ま し い 上 限 は 14% で あ る 。
【0047】
Al: 0.20∼ 0.45%
被 膜 と な る 亜 鉛 め っ き 層 中 の Al含 有 量 が 0.20% 未 満 の 場 合 は 、 め っ き 浴 中 に お け る 合 金
層 の 発 達 の 抑 制 効 果 が 不 十 分 と な り 、 め っ き 付 着 量 の 制 御 が 困 難 と な る 。 し た が っ て 、 Al
含 有 量 の 下 限 は 0.20% と す る 。 好 ま し い 下 限 は 0.25% で あ る 。 一 方 、 Al含 有 量 が 0.45% を
超 え る 場 合 は 、 合 金 化 速 度 が 低 下 す る こ と か ら 通 常 の ラ イ ン 速 度 で は 上 記 Fe含 有 量 を 実 現
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す る た め に 合 金 化 処 理 温 度 を 530℃ 超 と せ ざ る を 得 な く な る 場 合 が あ り 、 後 述 す る よ う に
鋼 板 と 合 金 化 溶 融 亜 鉛 め っ き 層 と の 界 面 密 着 強 度 を 20MPa以 上 と す る こ と が 困 難 に な る 。
し た が っ て 、 Al含 有 量 の 上 限 は 0.45% と す る 。 好 ま し い 上 限 は 0.40% で あ る 。
【0048】
(3)母材とめっき層との界面の密着強度
界 面 の 密 着 強 度 : 20MPa以 上
母 材 の 鋼 板 と 被 膜 の め っ き 層 と の 界 面 の 密 着 強 度 が 20MPa未 満 で は 、 加 工 時 に め っ き 被
膜 が 界 面 か ら 剥 離 し 易 く な り 、 耐 パ ウ ダ リ ン グ 性 が 低 下 す る 。 よ り 好 ま し く は 25MPa以 上
である。
【0049】
10
(4)高張力合金化溶融亜鉛めっき鋼板の表面性状
表 面 粗 度 Ra: 0.9μ m 以 下 、 表 面 の う ね り Wca: 0.6μ m 以 下
高張力合金化溶融亜鉛めっき鋼板の表面性状、すなわち、被膜のめっき層の表面性状は
、 表 面 粗 度 Ra: 0.9μ m 以 下 、 表 面 の う ね り Wca: 0.6μ m 以 下 と す る こ と が 好 ま し い 。 表
面 粗 度 Raを 0.9μ m 以 下 、 表 面 の う ね り Wcaを 0.6μ m 以 下 と す る こ と に よ り 、 成 形 時 に お
ける金型との摺動抵抗を低減し、めっき剥離に近い剥離形態を抑制して耐パウダリング性
を 向 上 さ せ る こ と が で き る 。 表 面 粗 度 Raに 比 し て 、 表 面 の う ね り Wcaの 方 が 前 記 摺 動 抵 抗
低 減 作 用 が 大 き い の で 、 よ り 好 ま し い 範 囲 は 、 Raが 0.7μ m 以 下 、 Wcaが 0.6μ m 以 下 で あ
る 。 更 に 好 ま し い 範 囲 は Raが 0.9μ m 以 下 、 Wcaが 0.4μ m 以 下 で あ り 、 最 も 好 ま し い 範 囲
は Raが 0.7μ m 以 下 、 Wcaが 0.4μ m 以 下 で あ る 。
20
【0050】
(5)めっき条件
め っ き 浴 中 の Al濃 度 : 0.08∼ 0.14%
め っ き 浴 中 の Al濃 度 が 0.08% 未 満 の 場 合 、 合 金 化 処 理 前 の め っ き 浴 中 に お い て 既 に 過 剰
の Fe-Zn界 面 合 金 層 が 形 成 さ れ て し ま う た め 、 付 着 量 の 制 御 が 困 難 と な る 。 し た が っ て 、
め っ き 浴 中 の Al濃 度 の 下 限 は 0.08% と す る 。 好 ま し い 下 限 は 0.09% で あ る 。
【0051】
一 方 、 め っ き 浴 中 の Al濃 度 が 0.14% を 超 え る と 、 め っ き 被 膜 中 へ の Al濃 化 が 過 剰 に 進 行
し て 合 金 化 速 度 の 低 下 を も た ら し 、 通 常 の ラ イ ン 速 度 で は 上 記 Fe含 有 量 を 実 現 す る た め に
合 金 化 処 理 温 度 を 530℃ 超 と せ ざ る を 得 な く な る 場 合 が あ り 、 後 述 す る よ う に 鋼 板 と 合 金
30
化 溶 融 亜 鉛 め っ き 層 と の 界 面 密 着 強 度 が 20MPa以 上 と す る こ と が 困 難 に な る 。 し た が っ て
、 め っ き 浴 中 の Al濃 度 の 上 限 は 0.14% と す る 。 好 ま し い 上 限 は 0.13% で あ る 。
【0052】
浸漬時間については、3秒以内であれば性能、操業性を特に阻害することはない。その
他 の め っ き 条 件 に つ い て は 、 一 般 的 に 採 用 さ れ て い る 範 囲 で 良 く 、 め っ き 浴 温 は 450∼ 470
℃ 、 侵 入 板 温 は 450∼ 480℃ の 範 囲 で 有 れ ば 特 に 問 題 は な い 。 め っ き 浴 中 の Al以 外 の 成 分 と
し て 、 不 可 避 元 素 で あ る Feと Pb、 Cd、 Cr、 Ni、 W、 Ti,Mg、 Siの そ れ ぞ れ が 0.1% 以 下 含 有
さ れ て い て も 本 性 能 に 影 響 を 及 ぼ さ な い 。 付 着 量 は 一 般 に 製 品 と し て 用 い ら れ て い る 25∼
2
70g /m の 範 囲 と す れ ば よ い 。
【0053】
40
(6)合金化処理
合 金 化 処 理 温 度 : 470∼ 530℃
合 金 化 処 理 温 度 が 470℃ 未 満 で あ る と ζ 相 の 粗 大 結 晶 が 合 金 化 溶 融 亜 鉛 め っ き 層 の 表 層
部 に 形 成 さ れ や す く 、 所 定 の 調 質 圧 延 を 施 し て も 表 面 粗 度 Raを 0.9μ m 以 下 に 制 御 す る こ
と が 困 難 と な る 。 し た が っ て 、 合 金 化 処 理 温 度 の 下 限 を 470℃ と す る 。 好 ま し い 下 限 は 480
℃である。
【0054】
一 方 、 合 金 化 処 理 温 度 が 530℃ を 超 え る と 、 上 述 し た 鋼 板 中 へ の Si添 加 に よ る め っ き 被
膜 中 の Znが め っ き 母 材 で あ る 鋼 板 の 粒 界 へ 拡 散 す る の を 助 長 す る 効 果 が 弱 ま り 、 鋼 板 の 粒
内への拡散が支配的となるため、鋼板と合金化溶融亜鉛めっき層との界面密着強度が低下
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す る 。 し た が っ て 、 合 金 化 処 理 温 度 の 下 限 を 470℃ と す る 。 好 ま し い 上 限 は 520℃ で あ る 。
合金化処理における加熱手段については、輻射加熱、高周波誘導加熱、通電加熱等何れの
手段によっても良い。
【0055】
(7)調質圧延
調 質 圧 延 ロ ー ル の 表 面 粗 度 Ra: 3 μ m 以 下 、 表 面 の う ね り Wca: 0.5μ m 以 下 、 調 質 圧 延
線 荷 重 : 1.47∼ 2.94MN/m
調 質 圧 延 ロ ー ル の 表 面 粗 度 Raを 3 μ m 以 下 と す る こ と に よ り 、 調 質 圧 延 後 の 高 張 力 合 金
化 溶 融 め っ き 鋼 板 の 表 面 粗 度 Raを 0.9μ m 以 下 に 制 御 す る こ と が 容 易 と な る 。 し た が っ て
、調質圧延ロールの表面粗度は3μm以下とすることが好ましい。より好ましくは2μm
10
以下である。
【0056】
調 質 圧 延 ロ ー ル の 表 面 の う ね り Wcaを 0.5μ m 以 下 と し 、 調 質 圧 延 線 荷 重 を 1.47MN/m 以
上 と す る こ と に よ り 、 調 質 圧 延 後 の 高 張 力 合 金 化 溶 融 め っ き 鋼 板 表 面 の Wcaを 0.6μ m 以 下
に 制 御 す る こ と が 容 易 に な る 。 し た が っ て 、 調 質 圧 延 ロ ー ル の 表 面 の う ね り Wcaを 0.5μ m
以 下 と し 、 調 質 圧 延 線 荷 重 を 1.47MN/m 以 上 と す る こ と が 好 ま し い 。 調 質 圧 延 線 荷 重 は 1.9
6MN/m 以 上 と す る こ と が 更 に 好 ま し い 。
【0057】
ま た 、 調 質 圧 延 線 荷 重 を 2.94MN/m を 以 下 と す る こ と に よ り 、 鋼 板 の 加 工 硬 化 に よ る 成
形 性 劣 化 を 抑 制 す る こ と が で き る 。 し た が っ て 、 調 質 圧 延 線 荷 重 を 2.94MN/m 以 下 と す る
20
こ と が 好 ま し く 、 さ ら に 好 ま し く は 2.45MN/m 以 下 で あ る 。
【0058】
(8)後処理
めっき後の製品表面には、無処理でもよいが、公知のクロム酸処理、リン酸塩処理、樹
脂被膜塗布などの後処理を施しても構わない。また、防錆油を塗付してもよく、その塗付
に 用 い る 防 錆 油 に つ い て は 、 市 販 の 一 般 的 な も の で 良 い が 、 極 圧 添 加 剤 で あ る S や Caを 含
有した高潤滑性防錆油を塗布しても良い。
【実施例1】
【0059】
本 実 施 例 で 用 い た 供 試 材 を 表 1に 示 す 。 こ れ ら の 成 分 を 実 験 室 に て 溶 製 、 鋳 造 し 、 板 厚 3
0m m の ス ラ ブ を 作 製 し た 。 前 記 ス ラ ブ を 大 気 中 で 1150℃ で 1Hr保 持 し 、 粗 圧 延 及 び 仕 上 げ
圧 延 に 供 し た 。 仕 上 げ 圧 延 は 950℃ で 行 い 、 大 気 中 に て 600℃ で 巻 き 取 っ た 。 熱 延 仕 上 げ 厚
み は 、 4.5m m で あ る 。 本 熱 延 板 を 酸 洗 し た 後 、 板 厚 2.3m m ま で 冷 間 圧 延 を 行 っ た 。
【0060】
30
(10)
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【表1】
10
20
30
【0061】
この供試材を縦型溶融Znめっき装置を用い、以下の条件でめっきを行った。
【0062】
40
ま ず 、 板 厚 2.3m m の 鋼 板 を 75℃ の NaOH溶 液 で 脱 脂 洗 浄 し 、 雰 囲 気 ガ ス が N2 +20% H2
、
露 点 -40℃ の 雰 囲 気 中 で 820℃ × 60s焼 鈍 し た 。 焼 鈍 後 、 浴 温 近 傍 ま で 鋼 板 を 冷 却 し 、 浴 中 A
l濃 度 0.07∼ 0.15質 量 % 、 浴 温 460℃ の 溶 融 亜 鉛 め っ き 浴 に 浸 漬 し 、 2秒 間 浸 漬 し た 後 、 ワ
2
イ ピ ン グ 方 式 に よ り め っ き 片 面 付 着 量 を 50g /m に 調 整 し た 。 引 き 続 き 、 め っ き 鋼 板 に 赤
外線加熱装置を用いて種々のヒートパターンによる合金化処理を行った。冷却速度は、風
量並びにミスト吹付量を変化させ調整した。また、合金化処理後の調質圧延条件として、
ロ ー ル の 表 面 粗 度 Raを 1.5∼ 5.0μ m 、 表 面 の う ね り を 0.4∼ 0.7μ m 、 圧 延 線 荷 重 を 0.98∼
3.43MN/m の 範 囲 で 変 化 さ せ た 。 そ の 結 果 を 、 表 2 に 示 す 。
【0063】
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【表2】
10
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【0064】
40
1)試 料 片 の 採 取
合 金 化 処 理 後 の 試 料 か ら 25m m φ の 試 料 片 を 採 取 し 、 0.5vol% イ ン ヒ ビ タ ー ( 商 品 名 :
朝 日 化 学 製 「 イ ビ ッ ト 710N 」 ) を 含 有 し た 10% HCl水 溶 液 で め っ き 層 を 溶 解 し 、 こ れ を IC
P法 で め っ き 層 の 組 成 分 析 に 供 し た 。
【0065】
2)鋼 板 と 合 金 化 溶 融 亜 鉛 め っ き 層 と の 界 面 密 着 強 度 の 測 定
合 金 化 処 理 を 施 し た サ ン プ ル を 長 手 方 向 が 圧 延 方 向 と な る よ う に 20m m × 100m m に 裁
断 し 、 サ ン ス タ ー (株 )製 の 一 液 型 エ ポ キ シ 系 構 造 用 接 着 剤 ( 商 品 名 : E − 6 9 7 3 ) を 接
着 剤 と し て 用 い 、 重 ね 代 : 12.5m m 、 接 着 剤 膜 厚 : 200μ m 、 焼 付 条 件 : 180× 20分 、 引 張
速 度 : 5m m /分 、 室 温 下 の 条 件 で 長 手 方 向 に 引 張 試 験 を 実 施 し た 。 本 試 験 の 界 面 密 着 強 度
50
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は 、 母 材 変 形 も 加 わ る た め 基 板 強 度 の 影 響 を 受 け る が 、 今 回 の よ う に YPが 350MPa以 上 の 母
材では、殆ど無視できる。
【0066】
3)高 張 力 溶 融 亜 鉛 め っ き 鋼 板 表 面 の 表 面 粗 度 Raと 表 面 の う ね り Wcaの 測 定 条 件
表 面 粗 度 Raは 中 心 線 平 均 粗 さ に よ っ て 測 定 す る 。 JISB 0610に 規 定 さ れ て お り 、 カ ッ ト
オ フ 値 0.8m m を 採 用 し 、 東 京 精 密 製 の サ ー フ コ ム ( 商 品 名 ) を 用 い て 測 定 さ れ た 値 を 用
いた。
表 面 う ね り Wcaは ろ 波 中 心 線 う ね り に よ っ て 測 定 す る 。 JIS B0610に 規 定 さ れ て お り 、 高
域 カ ッ ト オ フ 0.8m m お よ び 低 域 カ ッ ト オ フ 8m m を 採 用 し 、 同 様 の 測 定 器 で 測 定 さ れ た 値
を用いた。
10
【0067】
4)パ ウ ダ リ ン グ 試 験
供 試 材 を 30m m × 100m m (圧 延 方 向 )に 裁 断 し た サ ン プ ル に 日 本 パ ー カ ラ イ ジ ン グ 製 防
錆 油 550S を 刷 毛 塗 り 、 ブ ラ ン ク ホ ル ダ ー 圧 フ リ ー (ダ イ ス と ポ ン チ の 間 に 板 厚 以 上 の ス ペ
ー ス を 確 保 )の ハ ッ ト 成 形 試 験 を 室 温 で 行 っ た 。 縦 壁 部 の テ ー プ 剥 離 後 、 ハ ッ ト 成 形 前 後
の質量を測定し、1試験材当たりの被膜のパウダリング量を測定した。その他の条件は、
ポ ン チ 平 行 部 : 27.6m m 、 ダ イ ス 平 行 部 : 30m m 、 ポ ン チ 肩 R : 3m m 、 ダ イ ス 肩 R : 5m
m 、 成 形 速 度 : 60m m /分 で あ る 。
【産業上の利用可能性】
【0068】
実施例に記載したように、本発明の高張力合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、プレス時に優
れた耐パウダリング性と耐フレーキング性を有し、家電、建材および自動車等の分野の構
造部材として適している。
【0069】
そして、本発明の製造方法は、このような耐パウダリング性と耐フレーキング性を有す
る高張力合金化溶融亜鉛めっき鋼板を安定して製造することを可能とする。
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JP 2006-97102 A 2006.4.13
フロントページの続き
(51)Int.Cl.
FI
C23C
C23C
2/26
2/28
(2006.01)
(2006.01)
テーマコード(参考)
C23C
2/26
C23C
2/28
(72)発明者 大野 剛
大阪府大阪市中央区北浜4丁目5番33号 住友金属工業株式会社内
(72)発明者 中川 浩行
大阪府大阪市中央区北浜4丁目5番33号 住友金属工業株式会社内
Fターム(参考) 4K027 AA05 AA23 AB02 AB07 AB28 AB36 AB44 AC73 AC87 AE03
AE25
4K037 EA01 EA05 EA06 EA15 EA16 EA17 EA19 EA23 EA25 EA27
EA31 EB05 EB06 EB08 FA02 FC04 FE02 FG01 FJ02 FJ05
FM02 GA05 GA08 JA02