(案)〔各論第3章〕(PDF:4038KB)

第3章
認知症施策の推進と高齢者の尊厳の確保
認知症の予防,早期診断,早期対応のシステムを構築するとともに,認知症の方が尊厳を保ち
穏やかな生活を送り,またその家族も安心して生活できるようにするための施策を推進します。
第1節
1
本県における認知症の現状
認知症高齢者等の数について
平成26年10月1日現在,本県の要介護(要支援)認定者のうち,認知症の症状が見られる(認
知症高齢者の日常生活自立度ランクⅡ以上)高齢者は60,416人で,65歳以上の要介護(要支援)
認定者の約6割を占めています。
また,40歳以上64歳以下の認知症患者は953人で,要介護(要支援)認定者の約4割を占めて
います。
【図表3-1-1】要介護(要支援)認定者における認知症高齢者の日常生活自立度別の状況
(平成26年10月1日現在)
(単位:人)
[県介護福祉課調べ]
また,平成25年度高齢者等実態調査・日常生活圏域ニーズ調査によると,要介護(要支援)
認定を受けていない高齢者にも,認知機能に何らかの障害が認められる方が6.9%いるという結
果が出ています。
なお,平成25年度厚生労働科学研究費補助金事業報告(認知症対策総合研究報告)では,全
国10か所の市町において調査が実施され,図表3-1-2のとおり,年齢区分別の認知症有病
率は,高齢になるほど高くなる傾向にあると報告されています。
本県の高齢者の将来推計を見ると,図表3-1-3のとおり,平成37(2025)年頃までは65歳
以上の人口は増加し,平成47(2035)年頃までは75歳以上の高齢者は増加し続けることが見込ま
れていますので,認知症高齢者数は今後ますます増加していくことが予想されます。
140
【図表3-1-2】認知症有病率
[厚生労働省認知症対策総合研究事業(平成25年3月報告)]
【図表3-1-3】将来推計人口(鹿児島県:65歳以上)
[国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成25年3月)」]
※参考
本県の65歳以上の高齢者について,平成25年6月に公表された国の推計値(認知症有病率推
定値15%,MCI((正常と認知症の中間)の状態の者)の有病率推定値13%)を用い推計す
ると,認知症高齢者は約7万人,MCI有病者数約6万1千人となります。
141
【図表3-1-4】認知症等有病率(推計)に基づく本県の認知症高齢者等の推計
[県介護福祉課作成]
2
本県の認知症の人等を取り巻く現状
(1)要介護の主な原因となっている認知症
平成25年度高齢者等実態調査・日常生活圏域ニーズ調査によると,在宅要介護者の介護・介
助が必要となった主な原因は,認知症(アルツハイマー型認知症等)28.5%,脳卒中(脳出血,
脳梗塞等)24.7%,高齢による衰弱21.8%,骨折・転倒20.0%となっています。
また,一般高齢者を対象とした同調査では,「認知症」について不安だと回答した人が約8
割で,そのうち「自分や家族が認知症にならないか心配である」と回答した人が46.0%となっ
ています。(図表3-1-5)
なお,今後,県や市町村において期待される介護予防の取組については,認知機能のトレー
ニングなどの認知症予防プログラムが運動プログラムの次に多く,認知症予防について関心が
高くなっています。(図表3-1-6)
【図表3-1-5】「認知症」についての不安や心配事
[平成25年度高齢者等実態調査・日常生活圏域ニーズ調査]
142
【図表3-1-6】介護予防のために行政に期待する取組
[平成25年度高齢者等実態調査・日常生活圏域ニーズ調査]
(2)認知症の医療相談・鑑別診断等の状況
平成21年度以降,県内8か所に設置された認知症疾患医療センターへの専門医療相談及び鑑
別診断の件数は増加傾向にあり,平成25年度の相談件数は2,812件,鑑別診断件数は1,351件と
なっています。(図表3-1-7)
また,平成25年度は,鑑別診断の結果,認知症の診断を受けた方では,アルツハイマー型認
知症が最も多く58.3%,次いで混合型認知症5.8%,脳血管性認知症及び前頭側頭型認知症が
5.0%となっています。(図表3-1-8)
認知症については,原因疾患を特定することで症状を改善したり,進行を遅らせることが可
能である場合があるため,早期診断・早期対応が重要となっています。
【図表3-1-7】認知症疾患医療センターの相談・鑑別診断件数の推移
※平成21年に4
セ ンタ ー設置
※平成25年に4
セ ンタ ー設置
[県介護福祉課調べ]
【図表3-1-8】認知症疾患医療センターで鑑別診断を受けた方の診断内訳
[県介護福祉課調べ]
143
地域においては,認知症の人等に適切に対応していくため,認知症の相談を受ける認知症疾
患医療センター,もの忘れの相談ができる医師,認知症サポート医等による支援体制を構築し
ていくこと,また,一般病院においても,認知症の人への対応を可能とする認知症対応力の向
上が喫緊の課題となっています。
(3)認知症高齢者に係るサービス提供状況
県内の認知症ケアに関する主な介護サービス指定事業所については,平成26年4月1日現在
でグループホーム(認知症対応型共同生活介護)が368か所,認知症対応型通所介護が89か所,
小規模多機能型居宅介護が113か所あり,このほか,訪問介護サービス事業所,特別養護老人
ホームの併設を除く短期入所生活介護事業所,指定介護老人福祉施設,介護老人保健施設等が
あります。
平成25年度高齢者等実態調査・日常生活圏域ニーズ調査結果によると,介護を受けるように
なった場合,どのような介護を受けたいかについて,約7割の高齢者が自宅での介護を希望し
ているため,可能な限り住み慣れた地域で暮らし続けていけるよう適切な介護保険サービスや
地域資源を活用し,認知症の人と家族を支援していく必要があります。
【図表3-1-9】介護を受けるようになった場合,どのような介護を受けたいか
[平成25年度高齢者等実態調査・日常生活圏域ニーズ調査]
(4)認知症の入院患者の状況
県内の精神科病院の認知症入院患者数(6月末日現在)は増加傾向にあり,平成15年の入院
患者数(1,610人)と比較すると10年間で約40%の伸びとなっています。
【図表3-1-10】認知症入院患者数(精神科病院)
[厚生労働省精神保健福祉資料,県障害福祉課調べ]
144
また,平成25年6月末現在の調査結果によると,認知症の入院患者数2,284人のうち約6割の
方が1年以上入院しており,認知症の人が住み慣れた地域で生活することが困難な状況となっ
ています。
こうしたことから,県障害福祉計画(第4期:平成27年度から平成29年度)においても,国
の指針に基づき入院期間が1年以上の長期入院者の減少等を成果目標として設定し,諸施策に
取り組んでいくこととしています。
【図表3-1-11】平成25年6月末現在の精神科病院の在院患者数
(単位:人)
[厚生労働省精神保健福祉資料,県障害福祉課調べ]
(5)認知症が原因で行方不明となる高齢者等の状況
厚生労働省が平成26年6月に実施した全国調査によると,平成25年度中に県内の市町村で把
握した徘徊などによる行方不明者は81人で,そのうち6月時点で5人の方が未発見の状況とな
っています。地域社会全体で認知症の人等を支えるため,行政サービスだけでなく,地域の自
助・互助を最大限活用し,関係団体と連携しながら,見守り体制を構築していく必要がありま
す。
【図表3-1-12】市町村が把握している認知症の行方不明者数(県内)
[厚生労働省「徘徊などで行方不明となった認知症の人等に関する実態調査」]
【図表3-1-13】市町村が把握している認知症の行方不明者数(全国)
[厚生労働省「徘徊などで行方不明となった認知症の人等に関する実態調査」]
145
(6)地域における相談の状況
平成25年度の認知症の人と家族の会鹿児島県支部や地域包括支援センターへの相談について
は,介護の仕方,介護者の負担軽減,認知症ではないか等の相談が多く寄せられています。
一方で,平成25年度高齢者等実態調査・日常生活圏域ニーズ調査結果によると,65歳以上で
約4割の方が,65歳未満で約5割の方が,認知症の相談窓口を知らないと回答しており,相談
窓口等の周知徹底が必要となっています。
【図表3-1-14】平成25年度認知症の人と家族の会への相談状況
(単位:件)
[県介護福祉課調べ]
【図表3-1-15】平成25年度地域包括支援センターへの相談状況
(単位:件)
[県介護福祉課調べ]
【図表3-1-16】認知症の相談窓口の認知度(65歳以上)(単位:%)
地域包括支援センター
24.8
市町村
21.5
保健所
8.5
医療機関
24.0
認知症疾患医療センター
認知症の人と家族の会
その他
8.4
3.2
1.2
知らない
39.6
[平成25年度高齢者等実態調査・日常生活圏域ニーズ調査]
146
【図表3-1-17】認知症の相談窓口の認知度(40歳以上64歳以下)(単位:%)
地域包括支援センター
26.9
市町村
21.5
保健所
7.5
医療機関
25.6
認知症疾患医療センター
認知症の人と家族の会
その他
6.2
3.1
1.7
知らない
47.7
[平成25年度高齢者等実態調査・日常生活圏域ニーズ調査]
3
認知症対策の新たな国家戦略について
平成27年1月に,厚生労働省から,現行の「認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)」
に代わる,「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」が示されました。
この認知症施策推進総合戦略は,厚生労働省が,関係府省庁(内閣官房,内閣府,警察庁,
金融庁,消費者庁,総務省,法務省,文部科学省,農林水産省,経済産業省,国土交通省)と
共同して策定したものであり,今後,次の7つの項目を柱として,関係府省庁が連携して認知
症高齢者等の日常生活全体を支えるよう取り組んでいくこととしています。
① 認知症への理解を深めるための普及・啓発の推進
② 認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供
③ 若年性認知症施策の強化
④ 認知症の人の介護者への支援
⑤ 認知症の人を含む高齢者にやさしい地域づくりの推進
⑥ 認知症の予防法,診断法,治療法,リハビリテーションモデル,介護モデル等の研究開
発及びその成果の普及の推進
⑦ 認知症の人やその家族の視点の重視
4
本県の認知症の人等を取り巻く課題
本県においては,今後の高齢化の進行,後期高齢者数の増加に伴い認知症の方が増加するこ
とが見込まれています。認知症になっても本人の意思が尊重され,できる限り住み慣れた地域
のよい環境で暮らし続けることができる社会の実現を目指し,認知症の人の状態に応じて切れ
目のないサービスの提供を行えるよう,認知症の人やその家族の視点に立ち,国及び市町村施
策との連携を図りながら,必要な取組を総合的に推進する必要があります。
5
本県の認知症施策の方向
国の施策,市町村の施策及び県の関係施策との連携を図りながら,「認知症予防の推進」(本
章第2節),「早期診断・早期対応の推進」(本章第3節),「認知症の人と家族への支援の充実」
(本章第4節)を総合的に推進します。
147
【図表3-1-18】認知症施策の方向性イメージ
認知症施策の方向性
○ 「認知症になっても本人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で暮らし続けることができる社会」
の実現を目指し、1 認知症予防の推進、2 早期診断・早期対応の推進、3 認知症の人と家族への支援の充実に取り
組みます。
1 認知症予防の推進
2 早 期 診 断 ・ 早 期 対 応 の 推 進
早期診断・早期対応の体制構築
認知症ケアパスの普及・啓発
・市町村が実施する介護予防
(認知症予防)の取組支援
市町村が作成した「認知症ケア
パス」の普及・啓発(定着支援)
認知症疾患医療
センターの未設置
圏域の解消
・普及啓発 等
日常ケア
初期対応
初期集中支援チーム
自宅
家族
認知症疾患医療センター
を拠点とした関係機関相
互のネットワーク形成促進
認知症初期集
中支援チーム
の設置促進
もの忘れ相談ができる医
師(かかりつけ医)や認
知症サポート医の育成
急性増悪期ケア
日常ケア
老健施設
特養等
居宅サービス、地域密
着型サービス等
認知症サ
ポート医の活
動促進
自宅
家族
短期入所等施設を利
用したサービス
気づき
急性
増悪期
本人
かかりつけ医
認知症疑い
認知症疾患
医療センター
認知症
サポート医
確定診断
短期治療
(精神科医療機関等)
日常診療
認知症行動・心理症状悪化時
などの急性増悪期診療
日常診療
3 認 知 症 の 人 と 家 族 へ の 支 援 の 充 実
認知症の正しい理解の普及・啓発
認知症の正しい
理解の普及・啓発
認知症サポーターとキャラ
バンメイトの養成・活用
地域の支援体制の構築
認知症に関する
相談窓口の周知
地域の見守り体
制の構築支援
認知症地域支援推
進員の設置促進
在宅・事業所等での認知症ケアの充実
家族介護者の精神的負担
の軽減及び介護技術の修
得を支援
介護・医療従事者、地域包括支
援センター職員等の認知症対応
力の向上
若年性認知症施策の推進
・ 県民への若年性認知症に関する普及・啓発
・医療・介護・障害・雇用部門等の関係機関と連携した総合的施策の推進
[県介護福祉課作成]
【図表3-1-19】市町村,県及び国による認知症施策等の推進イメージ
[県介護福祉課作成]
148
第2節
認知症予防の推進
【現状・課題】
○ 認知症の中でもっとも大きな割合を占めている原因疾患は,アルツハイマー病と脳血管障
害です。
○
脳血管障害の危険要因は,運動不足,肥満,食塩の摂取,飲酒,喫煙の生活習慣,高血圧
症,高脂血症,糖尿病や心疾患などがあり,これら生活習慣病を予防することが,脳血管性
認知症の予防にも繋がります。
○
また,アルツハイマー病は,食事や運動習慣,文章を読むなどの知的な生活習慣や,対人
的な接触頻度等が発症に大きく関わっていることが,近年実証的に明らかとなってきていま
す。
○ 認知症の発症を予防するためには,良好な生活習慣の維持・改善と,認知機能低下を予防
するための継続的な取組が必要です。
○ また,近年認知症になる前段階とされる「軽度認知障害(MCI)」の方への予防の重要
性が注目されています。
○
MCIとは,そのまま何も対策を取らなければ認知症になる可能性が高い状態であり,厚
生労働省研究班が平成25年6月に公表した推計によると,高齢者の13%がMCIだと言われ
ています。今後は,MCIの方を含む認知症になる可能性の高い高齢者を把握し,重点的に
認知症予防活動につながるよう支援していくことが重要です。(図表3-2-1)
○
現在,認知症予防のための脳活性化教室の開催や,認知機能低下予防を含む介護予防の取
組については,主に市町村で地域支援事業を活用するなどして展開されていますが,国は,
平成27年1月に示した「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」において,認知症
の予防法,治療法,リハビリテーションモデル,介護モデル等の研究開発を推進するとして
おり,発症予防法の研究が進むことが見込まれます。
149
【図表3-2-1】
認知症有病率(推計)に基づく各認知症施策の対象となる高齢者数
認知症高齢者
①日常生活自立度Ⅱ以上の認知症高齢
者(58千人)
②日常生活自立度Ⅰ又は要介護認定を
受けていない認知症高齢者(12千人)
【施策の展開】
15%
約58千人
約70千人
◎早期診断・早期対応
◎認知症の人やその家
族等への支援
約12千人
MCI(軽度認知障害)
13%
約61千人
◎認知症予防
・認知機能低下予防
に関する理解の普
及・促進
・生活習慣病予防
健康な高齢者
・介護予防
約336千人
・認知症になる可能性
の高い高齢者(MCI
含む)の把握・支援
鹿児島県の65歳以上推計人口 467千人(H25)
※ 高齢者人口は,平成25年10月1日現在年齢別推計人口(県統計課調べ)より
※ 有病率を国の推計値(15%,13%)で推計
※ 日常生活自立度Ⅱ以上の認知症高齢者数は平成25年10月1日現在(県介護福祉課調べ)
[県介護福祉課作成]
【参考】認知症予防の取組
脳のトレーニング楽習教室(指宿市)
指宿市では,市内の65歳上の高齢者を対象に,平成26年度から市内2か所で毎週1回1時間
程度,認知症予防のための「脳のトレーニング楽習教室」を開催しています。
教室では,市の講習を受けた学習サポーター1名に2
名の受講者が向き合い,簡単な読み書き(音読)計算,
すうじ盤に取り組み,学習後は,レクレーション・体操
や交流会などを行っています。
仲間と楽しく取り組むことも脳の活性化のポイントで,
事前事後のMMSE検査,基本チェックリスト,参加者
へのアンケートによる評価では,多くの方に改善の傾向
が見られます。
また,参加者からは,
(写真)教室の様子
○ 参加するようになって,生活リズムがついた。
○ 家ではボーッとする事が多かったが,教室に参加すると色々な人の話を聞くことができ
て楽しい。
○ 参加前は日付が分からない事もあったが,参加するようになって,スムーズに日付が出
るようになった。
といった感想が寄せられ,当初の参加者全員で楽しく6か月間の教室を修了することができ
ました。
150
【施策の方向】
○ 国の最新の研究結果に基づき,市町村の認知症予防の取組を支援します。
○ 「健康かごしま21」に基づき,生活習慣病を予防するための健康づくりの普及啓発・環境
整備の推進に努めます。
○ 認知症(特にその原因となる疾患と認知機能低下予防の方法)に関する正しい知識の普及
・啓発を図ることで,住民の認知症予防の機運を高めます。
第3節
1
早期診断・早期対応の推進
認知症ケアパスの普及・啓発
【現状・課題】
○ 早期診断・早期対応の遅れ,周辺症状(行動・心理症状)等への不適切な対応などにより,
不必要な施設入所や精神科病院への入院が増えています。また,「認知症の人は,在宅で生
活することが難しく,施設や精神科病院に入所・入院する」という考えが一般化しています。
○
認知症の人やその家族が,認知症と疑われる症状が発生した場合に,医療や介護サービス
へのアクセス方法やどのような支援を受けることができるのかを早めに理解することが,そ
の後の生活に対する安心感につながります。
○
このため,市町村においては,地域の実情に応じて,その地域ごとの認知症ケアパスを作
成し,認知症の人の生活機能障害の進行にあわせて,いつ,どこで,どのような医療・介護
サービスを受ければよいのか,具体的な機関名やケア内容等が,あらかじめ,認知症の人と
その家族に提示されるように努めています。
151
【図表3-3-1】認知症ケアパスのイメージ(平成27年4月現在)
A市○×△地区における標準的な認知症ケアパス(提示例)
<A市の地域福祉・高齢者福祉の理念・目標>
・ 高齢者が安心して暮らせる町づくり
・ 認知症になっても住み慣れた地域で暮らし続ける
認知症の
生活機能障害
支援の内容
認知症の疑い
認知症を有するが
日常生活は自立
誰かの見守りがあれば
日常生活に
日常生活は自立
手助け・介護が必要
常に介護が必要
物忘れはあるが、金銭管理や 買い物や事務、金銭管理等 服薬管理ができない、電話の
着替えや食事、トイレ等がうま ほぼ寝たきりで意思の疎通が
買い物、書類作成等を含め、 にミスがみられるが、日常生 応対や訪問者の対応などが1
くできない
困難である
日常生活は自立している
活はほぼ自立している
人では難しい
介護予防・悪化予防
一次予防,二次予防
いきいきふれあいサロン
一次予防,二次予防
いきいきふれあいサロン
通所介護
通所介護
訪問介護
他者とのつながり支援
いきいきふれあいサロン
高年者クラブ
いきいきふれあいサロン
高年者クラブ
いきいきふれあいサロン
通所介護
通所介護
訪問介護
通所介護
訪問介護
仕事・役割支援
高年者クラブ
いきいきふれあいサロン
高年者クラブ
いきいきふれあいサロン
通所介護
訪問介護
通所介護
訪問介護
通所介護
訪問介護
安否確認・見守り
SOSネットワーク
緊急通報装置
配食見守りサービス
認知症サポーター
SOSネットワーク
緊急通報装置
配食見守りサービス
認知症サポーター
SOSネットワーク
緊急通報装置
配食見守りサービス
認知症サポーター
服薬確認電話サービス
緊急通報装置
訪問介護
緊急通報装置
訪問介護
生活支援
配食見守りサービス
高年者クラブ
配食見守りサービス
高年者クラブ
配食見守りサービス
通所介護,訪問介護
通所介護
訪問介護
通所介護
訪問介護
通所介護
訪問介護
通所介護
訪問介護
通所介護
訪問介護
かかりつけ医
○○市民病院
かかりつけ医
○○市民病院
身体介護
医療
家族支援
緊急時支援
(精神症状がみられる等)
住まい
サービス付き高齢者住宅等
かかりつけ医
○○市民病院
かかりつけ医
○○市民病院
服薬確認電話サービス
かかりつけ医
○○市民病院
服薬確認電話サービス
地域包括支援センター
高年者クラブ
地域包括支援センター
高年者クラブ
認知症カフェ
認知症サポーターによるサロン
○○市民病院
○○市民病院
小規模多機能型居宅介護
短期入所生活介護
○○市民病院
小規模多機能型居宅介護
△△高齢者住宅
△△高齢者住宅
△△高齢者住宅
グループホーム、介護老人福
祉施設等居住系サービス
地域包括支援センター
認知症カフェ
認知症対応型共同生活介護
定期巡回随時対応訪問介護看護 定期巡回随時対応訪問介護看護
地域包括支援センター
地域包括支援センター
認知症サポーターによるサロン 認知症サポーターによるサロン
○○市民病院
小規模多機能型居宅介護
○○市民病院
小規模多機能型居宅介護
認知症対応型共同生活介護 認知症対応型共同生活介護
介護老人福祉施設
介護老人福祉施設
※下線の部分は,平成27年~平成29年の間に整備予定です。
[厚生労働省資料]
【施策の方向】
認知症の人ができる限り住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるように,市町村が作成
した認知症ケアパスについて,県のホームページや広報誌への掲載等により普及・啓発に努め
ます。
2
早期診断・早期対応の体制構築
152
【現状・課題】
○ 認知症は,薬で進行を遅らせることができる場合や手術などで改善する場合があり,初期
の段階で診断を受け,適切な治療を開始することが非常に重要です。
○
これまでのケアは,認知症の人が認知症の行動・心理症状等により症状が悪化したり,介
護者が疲弊してからの受診が多く,危機が発生してからの事後的な対応が主眼となっていま
したが,今後は危機の発生を未然に防ぐ早期・事前的な対応が課題となっています。
○
平成25年度に認知症疾患医療センターで鑑別診断を受けた方の状況をみると,55.5%の方が,
認知症の症状が疑われてから1年以上経過して受診しているなど早期に適切な治療を受けてい
ないことが判明しています。(図表3-3-3)
○
また,認知症疾患医療センターの鑑別診断で認知症と診断された方のうち75%の方が自宅で
の生活を続けているため,認知症の人の在宅生活を支援し,必要なサービスにつなげていくた
めにも,関係機関の情報共有など医療と介護の連携体制の強化が必要となっています。
(図表3-3-4)
○ このため,県では,地域における認知症の専門医療機関である認知症疾患医療センターの
設置や関係機関による早期診断・早期対応の体制構築を進めています。
【図表3-3-2】早期発見・早期対応の意義
○
正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫による認知症で
あれば,発症後遅くとも半年から1年以内に脳外
科的手術で改善が見込めます。
○
アルツハイマー型認知症であれば,より早期か
らの薬物療法による進行抑制が可能です。
○
本人が変化に戸惑う期間を短くでき,その後の
暮らしに備えるために,自分で判断したり家族と
相談ができます。
○
家族等が適切な介護方法や支援サービスに関す
る情報を早期から入手可能になり,病気の進行に
合わせたケアや諸サービスの利用により認知症の
進行抑制や家族の負担軽減ができます。
[かかりつけ医認知症対応力向上研修テキスト(第6版)]
【図表3-3-3】認知症が疑われてから受診に要した期間
29.3%
0%
10%
半年未満
15.1%
20%
30%
半年以上1年未満
16.4%
40%
50%
1年以上2年未満
12.3%
10.8%
60%
2年以上3年未満
70%
16.0%
80%
3年以上5年未満
90%
100%
5年以上
認知症が疑われてから1年以上経過して受診 : 55.5%
[平成25年度認知症疾患医療センター鑑別診断状況調査]
【図表3-3-4】
鑑別診断後の処遇結果
0.5%
34.0%
0%
10%
外来(疾患センター)
20.0%
20%
30%
40%
外来(他医療機関) 外来(両方)
21.0%
50%
入院(疾患センター)
12.5%
0.6%
5.5%
60%
70%
80%
90%
入院(連携先) 入院(その他) 鑑別診断のみ
3.0%
3.0%
100%
経過観察 その他
鑑別診断後の居住場所が自宅 : 75.0%
[平成25年度認知症疾患医療センター鑑別診断状況調査]
153
ア
認知症疾患医療センター
○ 県では,より身近な地域で適切な治療ができるように,二次保健医療圏域毎に,認知症
疾患医療センターを8か所設置(指定)していますが,平成26年度末時点で曽於,肝属及
び熊毛の3圏域が認知症疾患医療センターの未設置圏域となっています。
○
認知症疾患医療センターは,認知症の専門医療機関として,鑑別診断や専門医療相談,
周辺症状と身体合併症への急性期対応等を実施しているほか,地域連携推進機関として,
地域包括支援センター,認知症初期集中支援チーム,保健所等と連携し,早期診断・早期
対応の体制構築や顔の見える関係をつくることにより,認知症の方に対して切れ目のない
サービスを提供する体制構築に努めています。
【図表3-3-5】認知症疾患医療センターの役割及び所在地等(平成26年3月31日現在)
認知症疾患医療センター
荘記念病院
出水保健医療圏
長島町
◎
出水市
宮之城病院
<役割>
1 鑑別診断とそれに基づく初期対応
2 周辺症状と身体合併症への急性期対応
3 専門医療相談
4 認知症疾患医療連携協議会の設置及び運営
5 研修会の開催
伊佐市
阿久根市
栗野病院
湧水町
さつま町
川薩保健医療圏
◎
◎
姶良・伊佐保健医療圏
薩摩川内市
松下病院
姶良市
薩摩川内市
霧島市
◎
いちき串木野市
日置市
パールランド病院
曽於保健医療圏
◎
鹿児島保健医療圏
谷山病院
曽於市
鹿児島市
◎
垂水市
志布志市
南さつま市
二次保健
医療圏域
指定病院
谷山病院
鹿児島
南薩
川薩
出水
姶良・
伊佐
奄美
パールランド
病院
ウエルフェア
九州病院
宮之城病院
荘記念病院
松下病院
栗野病院
奄美病院
所在地
鹿児島市小原町
8番1号
鹿児島市犬迫町
2253番地
枕崎市白沢北町
191番地
薩摩郡さつま町船木
34番地
出水市高尾野町
下水流862番地1
霧島市隼人町真孝
998番地
姶良郡湧水町北方
1854番地
奄美市名瀬浜里町
170番地
専用電話番号
指定開始
年度
ウエルフェア九州病院
099(269)4119 平成21年度
鹿屋市
枕崎市
大崎町
南九州市
東串良町
◎
南薩保健医療圏
肝付町
指宿市
錦江町
肝属保健医療圏
099(238)0168 平成25年度
南大隅町
奄美保健医療圏
0993(72)4747 平成25年度
0996(53)1005 平成21年度
◎
熊毛保健医療圏
龍郷町
大和村
喜界町
奄美市
0996(82)2955 平成25年度
鹿児島保健医療圏
奄美市
宇検村
奄美病院
西之表市
瀬戸内町
徳之島町
0995(42)8558
三島村
天城町
中種子町
平成21年度
0995(74)1140
屋久島町
伊仙町
南種子町
和泊町
0997(52)0034 平成25年度
十島村
知名町
与論町
[県介護福祉課作成]
154
【図表3-3-6】認知症に対する医療連携体制イメージ
[県介護福祉課作成]
イ
認知症初期集中支援チーム
市町村では,早期診断・早期対応に向けた取組として認知症初期集中支援チームを設置し,複
数の専門職が家族の訴え等により認知症が疑われる人やその家族を訪問し,アセスメント,家族
支援等の初期の支援を包括的・集中的に行い,自立生活のサポートを行う取組を進めています。
この認知症初期集中支援チームは,全ての市町村で設置することが義務づけられており,平成
30年度までに段階的に設置されます。県内では平成26年度末時点で2市町が事業に取り組んでい
ます。
【図表3-3-7】認知症初期集中支援チームの概要
地域包括支援センター・認知症疾患医療センター等に設置
●認知症初期集中支援チーム
●専門医療機関(認知症疾患医療センター等)
複数の専門職による個別の訪問支援
(受診勧奨や本人・家族へのサポート等)
紹介
診断・指導
認知症サポート医
である専門医(嘱託)
助指
言導
専門医
派遣
情相
報談
提
供
○
○
○
○
専門的な鑑別診断
定期的なアセスメント
行動・心理症状外来対応
地域連携
診療・相談
診療・指導
相談
近隣地域
本人
訪問(観察・評価)
医療系+介護系職員
(保健師、看護師、介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士等
紹介
家族
日常診療・相談
●かかりつけ医・歯科医
情報提供・相談
指導・助言
《認知症初期集中支援チームの主な業務の流れ》
①訪問支援対象者の把握
②情報収集(本人への生活情報や家族の状況など)
③観察・評価(認知機能、生活機能、行動心理症状、家族の介護負担度、身体の様子のチェック)
④初回訪問時の支援(認知症への理解、専門的医療機関等の利用の説明、介護保険サービス利用の説明、本人・家族への心理的サポート)
⑤専門医を含めたチーム員会議の開催(観察・評価内容の確認、支援の方針、内容・頻度等の検討)
⑥初期集中支援の実施(専門的医療機関等への受診勧奨、本人への助言、身体を整えるケア、生活環境の改善など)
⑦引き継ぎ後のモニタリング
[厚生労働省資料]
155
【参考】市町村の取組
認知症初期集中支援チーム(南大隅町)
南大隅町は,平成25年度に全国14か所でモデル事業として実施された「認知症初期集中支
援チーム設置促進モデル事業」に県内で初めて取り組み,52名の認知症の方の支援を行いま
した。
この事業は,認知症初期集中支援チームが認知症の方やその家族を訪問し,生活環境,家
族支援などの初期の支援を包括的,集中的に行い,自立生活のサポートを行います。
支援を受けられたご本人の感想
○ デイサービスに楽しく参加出来るようになった。
○
○
○
ねぎらいや感謝の言葉が出るようになった。
日中,草むしりを自主的にするようになった。
穏やかな性格を取り戻した気がする。
また,認知症に関する正しい知識の理解・普及のため公民館での認知症講話の開催や中学
生を対象とした認知症サポーター養成講座の開催など普及啓発活動も盛んに行われていま
す。
認知症になっても住み慣れた地域のよい環境で暮らし続けることができるように,関係者
が一体となって医療・介護の切れ目のない連携体制を構築し認知症施策に積極的に取り組ん
でいるこの事例は,全国でも高齢化率が高い本県において大きく寄与するものと注目されて
います。
(写真)公民館での認知症講話
ウ
(写真)中学生を対象とした認知症サポーター養成講座
認知症の早期発見等が期待されるかかりつけ医
○ 日常の暮らしの中で,本人はもちろん,家族や周囲の人が,認知症の初期症状に気付い
た場合は,早めにかかりつけ医に相談することが重要です。
○ かかりつけ医は,認知症の人を受け入れて,認知症の早期発見や日常的な診療,家族へ
の助言や専門医療機関へのつなぎ等の役割を担うことが期待されています。
○ 県では,認知症疾患医療センターが,認知症サポート医と連携し,「かかりつけ医認知
症対応力向上研修」を実施しており,研修修了者で県ホームページへの掲載に同意した医
師を「もの忘れの相談ができる医師」として公表しています。
○
「もの忘れの相談ができる医師」は,平成26年10月31日末現在で299人ですが,県内では
いまだに当医師がいない市町村もあるため,今後とも,人材の育成の強化を図る必要があ
ります。
○ また,今後は,「かかりつけ歯科医」による口腔機能の管理や「かかりつけ薬局」にお
ける服薬指導を通じた早期発見・早期対応の体制を構築していく必要もあります。
156
○
国が平成27年1月に示した「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」では,「歯
科医師・薬剤師の認知症対応力向上研修(仮称)」が新設され,平成27年度に研修の在り
方について検討され,平成28年度から関係団体の協力を得て研修を実施していくこととし
ています。
エ
認知症サポート医
○ 認知症サポート医は,地域における連携の推進役として,かかりつけ医への助言,研修
の講師,県や市町村の会議の委員等として活躍しており,今後は,市町村が設置する認知
症初期集中支援チームのチーム員として,中心的な役割を担うことも期待されています。
○
県では,平成24年度から,県医師会と連携して,認知症サポート医フォローアップ研修
を実施していますが,今後,さらに認知症サポート医の重要性が高まることから,資質の
向上や認知症医療の連携体制の強化に取り組む必要があります。
【図表3-3-8】
認知症施策を推進する人材育成の年度別状況(医療)(単位:人)
研修名
かかりつけ医認知症対応力向上研修
認知症サポート医養成研修
認知症サポート医フォローアップ研修
平成23年度
85
22
-
平成24年度
69
23
35
平成25年度
98
31
45
[県介護福祉課調べ]
【図表3-3-9】認知症施策を推進する人材育成の市町村別状況(平成26年10月31日現在)
(単位:人)
南薩
川薩 出水 姶良・伊佐 曽於
肝属
熊毛
大島
いちき串木野市
合計
与論町
知名町
和泊町
伊仙町
天城町
徳之島町
喜界町
龍郷町
瀬戸内町
宇検村
大和村
奄美市
屋久島町
南種子町
中種子町
西之表市
肝付町
南大隅町
錦江町
東串良町
垂水市
鹿屋市
大崎町
志布志市
曽於市
湧水町
姶良市
伊佐市
霧島市
長島町
出水市
阿久根市
さつま町
薩摩川内市
南九州市
南さつま市
指宿市
枕崎市
十島村
三島村
鹿児島
日置市
鹿児島市
市町 村名
圏域
かかりつけ医
認知症対応力
向上研修修了者
(もの忘れの相談
ができる医師)
98 12 7 0 0 10 9 8 5 25 5 9 8 1 31 4 16 3 4 6 3 5 6 1 2 0 2 2 0 0 1 9 0 0 1 1 0 1 0 0 2 1 1 299
認知症
サポート医
40 3 1 0 0 3 3 1 2 8 3 1 3 0 12 3 9 2 2 3 2 8 0 0 3 1 0 2 0 1 0 12 1 0 0 1 0 1 0 0 1 0 0 132
117
44
32
9
30
11
18
4
54
26
13
7
16
12
3
3
16
16
299
132
[県介護福祉課調べ]
【施策の方向】
○ 認知症高齢者について身近な地域での早期診断,早期対応が図れるよう,病院だけでなく
診療所を含む医療機関を認知症疾患医療センターとして指定し,認知症疾患医療センターの
未設置圏域(曽於圏域,肝属圏域,熊毛圏域)の解消に努めます。
また,平成29年度末までに,認知症疾患医療センターを12か所設置するよう努めます。
○
認知症疾患医療センターによる認知症疾患医療連携協議会の運営や,情報連絡票を活用し
た地域包括支援センターとの連携強化を支援し,認知症疾患医療センターを拠点とした関係
機関相互のネットワークの形成を促進します。
157
○
認知症の早期診断・早期対応の取組を進めていく上で非常に有効だとされる市町村の認知
症初期集中支援チームによる取組等については,身近な地域の認知症サポート医を活用でき
るように,医師会等と連携し,未配置市町村において重点的に認知症サポート医を養成する
よう努めます。
○
また,認知症サポート医が地域における連携の推進役として十分に機能するよう,医師会
等と連携し,フォローアップ研修の充実を図るとともに認知症サポート医の活動を促進しま
す。
○
認知症疾患医療センター,医師会,保健所,市町村等と連携しながら,もの忘れの相談が
できる医師(かかりつけ医認知症対応力向上研修修了者)を養成し,認知症の早期発見体制
の充実・強化に努めます。
また,平成29年度末までに,もの忘れの相談ができる医師を500人養成し,当医師の未配置
市町村の解消に努めます。
158
【参考】認知症疾患医療センターの取組
1
メモリーカフェ
野の花(松下病院認知症疾患医療センター)
松下病院では,霧島市からの委託によ
り,認知症の人やその家族,地域住民
の方々の交流の場として,「メモリーカ
フェ 野の花(認知症カフェ)」を開設
しています。
認知症の人は自ら活動して楽しむ場
に,家族は悩みや愚痴を語り合う場に,
地域住民は認知症への理解を深め,予
防する場のほか,認知症の初期や若年
性認知症の人の居場所としても期待さ
れ,認知症の相談や早期治療のきっか
けにもなるような場所づくりを目指し
ています。
参加料は無料で,食材・活動材料費
の一部に自己負担があります。
■平成26年度の活動内容(一部)
内 容
講 師
デコパージュ体験
第1回
(オープニングセレモニー)
第2回
作業療法士
エコクラフト
(コースター・ランチョンマット作り)
作業療法士
第3回 フラワーアレンジメント
看護師
第4回
アロマテラピー
(アロマオイルを使って石けん作り体験)
第5回
健康体操
(日常生活に運動を取り入れよう!!)
看護師
作業療法士
第6回 身の回りにある薬についての講話
第7回
灯篭づくり
(当院の夏祭りとコラボレーション)
第8回
折り紙
(小物入れ・割り箸袋作成)
薬剤師
作業療法士
外部講師
第9回 お料理作り
管理栄養士
霧島市地域包
括支援センター
第10回 「私のアルバム」作り
第11回
お化粧の仕方
~日々のお手入れ方法からメイクアップまで~
(写真)メモリーカフェ
2
外部講師(化粧
品会社勤務)
野の花
認知症ランチョンセミナー(宮之城病院認知症疾患医療センター)
宮之城病院では,病院で昼食を食べながら医療関係者と認知症
について学ぶ「ランチョンセミナー」を開催し,介護家族や認知
症に興味のある方を対象に,日頃の悩みを語り合う場の提供を行
っています。
参加料は無料,昼食代800円で,タッチパネル方式の認知症検査
も無料で実施しています。
(写真)認知症ランチョンセミナー
■平成26年度のセミナー内容
学
習
内
容
第1回
認知症について
第2回
認知症の薬物療法について
~薬の飲み方,副作用時の対応~
第3回
認知症のリハビリについて
第4回
利用できる社会資源,介護保険サービス
専
門
職
医師
159
薬剤師
作業療法士
精神保健福祉士
【参考】一般高齢者の認知機能の障害程度
認知機能障害程度( CPS:Congnitive Performance Scale)
区分
0レベル
1レベル
2レベル
3レベル
4レベル
5レベル
6レベル
計
有効回答 n=23,362
割合
77.39%
15.75%
4.73%
1.22%
0.15%
6.86%
0.69%
0.07%
100%
定義
障害なし
境界的である
軽度の障害がある
中等度の障害がある
やや重度の障害がある
重度の障害がある
最重度の障害がある
-
認知症が疑われたら,早めにかかりつけ医を受診し,相談 をしましょう!
認知機能障害程度の評価方法
問5-5 その日の活動(食事をする,衣類を選ぶなど)を自分で判断できますか
1.困難なくできる
2.いくらか困難であるが,できる
3.判断するときに,他人からの合図や見守りが必要
該当なし
4.ほとんど
判断できない
以下の該当項目数をカウント
問5-4 5分前のことが思い出せますか
2.いいえ
問5-5 その日の活動を自分で判断できますか
2.いくらか困難であるが,できる
3.判断するときに,他人からの合図や見守りが必要
問5-6 人に自分の考えをうまく伝えられますか
2.いくらか困難であるが,伝えられる
3.あまり伝えられない
4.ほとんど伝えられない
1項目該当
2項目以上該当
以下の該当項目数をカウント
問5-5 その日の活動を自分で判断できますか
3.判断するときに,他人からの合図や見守りが必要
問5-6 人に自分の考えをうまく伝えられますか
3.あまり伝えられない
4.ほとんど伝えられない
該当なし
1項目該当
2項目該当
問6-6 食事は自分で食べられますか
1.できる
2.一部介助が
あればできる
0レベル
障害なし
1レベル
境界的
である
2レベル
軽度の
障害がある
3レベル
中等度の
障害がある
4レベル
やや重度の
障害がある
5レベル
やや重度の
障害がある
3.できない
6レベル
最重度の
障害がある
[平成25年度高齢者等実態調査・日常生活圏域ニーズ調査]
160
【参考】家族がつくった認知症
早期発見の目安
①もの忘れがひどい
□
□
□
□
今切ったばかりなのに,電話の相手の名前を忘れる。
同じことを何度も言う・問う・する。
しまい忘れ置き忘れが増え,いつも探し物をしている。
財布・通帳・衣類などを盗まれたと人を疑う。
②判断・理解力が衰える
□
□
□
□
料理・片付け・計算・運転などのミスが多くなった。
新しいことが覚えられない。
話のつじつまが合わない。
テレビ番組の内容が理解できなくなった。
③時間・場所が分からない
□
□
約束の場所や日時を間違えるようになった。
慣れた道でも迷うことがある。
④人柄が変わる
□
□
□
□
些細なことで怒りっぽくなった。
周りへの気づかいがなくなり頑固になった。
自分の失敗を人のせいにする。
「このごろ様子がおかしい」と周囲から言われた。
⑤不安感が強い
□
□
□
ひとりになると怖がったり寂しがったりする。
外出時,持ち物を何度も確かめる。
「頭が変になった」と本人が訴える。
⑥意欲がなくなる
□
□
□
下着を替えず,身だしなみを構わなくなった。
趣味や好きなテレビ番組に興味を示さなくなった。
ふざぎこんで何もするにもおっくうがり,嫌がる。
[公益社団法人認知症の人と家族の会]
【参考】専門医療への受診の工夫(自分は病気ではないと思っている方のために)
① 初期で理解力のある方は,「精神神経科」には強い拒絶が
みられるので,「もの忘れ外来」「老年科」「心療内科」
「神経内科」などを経て,専門医療機関へ移行するとよい。
② 介護者が「私の健康相談に付き合ってください」とお願い
するとよい。
③ 認知症に限らず,医療機関への受診を拒否する患者は少な
くないので理解のある医師に訪問診療を依頼するとよい。
④ 病院は嫌だという場合には,「保健所に健康診断に行きま
しょう」と誘うとよい。
⑤ 信頼感を寄せているかかりつけ医に専門医への受診をすす
めてもらうとよい。
⑥ 頭痛,だるさ,腹痛など身体症状を訴えるときには受診を
納得させやすい。
⑦ 日頃顔をあわせない息子や娘,あるいは,友達・同僚,ヘ
ルパーやケアマネジャー,保健所のソシャルワーカー,など
に付き添ってもらうとよい。
⑧
受診の日を早くから言わないで当日さりげなく言うとよい。
⑨ 一人が手続きや順番待ち,他の一人が本人の相手をするな
ど,付き添いは二人がよい。
[公益社団法人認知症の人と家族の会
代表理事・川﨑幸クリニック院長
161
杉山孝博]
第4節
1
認知症の人と家族への支援の充実
認知症の正しい理解の普及・啓発
【現状・課題】
たとえ認知症になっても,周囲の人の理解と少しの気遣いがあれば,住み慣れた地域で尊厳
をもって暮らし続けることができます。
そのためには,地域住民をはじめとする多くの方が,認知症について正しく理解し,偏見を
持たず,認知症の方やご家族を支援することが必要です。
国は,平成27年1月に示した「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」において,
① 認知症への社会の理解を深めるための全国的なキャンペーンを展開し,認知症の人が生
き生きと活動している姿(認知症の人が自らの言葉でそのメッセージを語る姿等)を積極
的に発信すること。
*1
② 認知症サポーター が様々な場面で活躍できるようにすること。
③ 認知症サポーター養成講座の修了者が,さらに理解を深められるような,より上級の学
習手法の見本を検討すること。
④ 学校教育等における認知症の人を含む高齢者への理解を推進すること。
等を掲げており,認知症の本人の視点に立った普及・啓発の取組や,認知症サポーターの
養成・活躍の幅がより一層広がることが見込まれます。
県では,各市町村や公益社団法人認知症の人と家族の会鹿児島県支部と連携して,次のよう
な認知症の正しい理解の普及・啓発活動に取り組んでいます。
ア
認知症サポーターとキャラバン・メイト*2の養成・活用
○ 認知症サポーター養成講座は,主に市町村において,民生委員や在宅福祉アドバイザー,
老人クラブ,見守りボランティア等の地域住民を対象に実施されており,近年は,紙芝居
や絵本,寸劇などを取り入れ,小・中学生ら若い世代を対象に実施する市町村も増えてき
ています。
○
また,小売店,金融機関,交通機関,警察署など様々な企業・団体が,認知症サポータ
ー養成講座を受講し,講座で得た知識を生かして接客対応や窓口業務にあたるなど,日常
生活の様々な場面で認知症の方をサポートする体制が整いつつあります。
○
平成26年12月末現在,県内で約9万人の認知症サポーターが養成されていますが,今後
も,さらに地域住民,学校,企業や商店などを対象に広く認知症サポーターの養成を促進
し,認知症の人がどんな場面でも尊厳をもって生活できる地域づくりを進める必要があり
ます。
【図表3-4-1】認知症サポーター養成数(累計)等の推移
認知症サポーター養成数
キャラバン・メイト養成数
(単位:人)
平成24年度末現在 平成25年度末現在 平成26年12月末現在
58,956人
73,696人
90,438人
1,102人
1,339人
1,526人
[全国キャラバン・メイト連絡協議会調べ]
*1
認知症サポーター
:認知症サポーター養成講座を修了した者で,認知症を正しく理解し,認知症の人とその家族を見守る応
*2
キャラバン・メイト:キャラバン・メイト養成研修を修了し,「認知症サポーター養成講座」の講師となる人。
援者をいう。
162
【参考】普及啓発の取組
認知症啓発アニメーション「やっぱり笑顔のサブちゃんがいい!」(さつま町)
さつま町では,認知症地域支援推進員が中心となっ
て,平成25年度に認知症について楽しく学べるオリジ
ナルアニメ「やっぱり笑顔のサブちゃんがいい!」を
制作しました。
ほのぼのタッチの絵と明るい音楽で認知症を描き,
現在,町として力を入れて取り組んでいる小中学生向
けの認知症サポーター養成講座等で活用しています。
また,依頼のあった全国の地域包括支援センターや
(図)アニメーションの一場面
事業所,病院等にも提供し,大きな反響をいただいて
おります。
平成26年度には続編「やっぱりサブちゃんのチャーハンは最高」も制作しました。
これからも認知症の正しい理解の普及啓発活動を進めていきます。
たけちゃん一座(民間)
(写真)一座の集合写真
イ
霧島市の福祉施設で働く職員を中心に2008年11月に
結成した劇団で,認知症や介護について正しい理解を
訴える講演を月1,2回行っています。
劇は1時間程度,主人公で認知症の「霧島トメさん」
と家族の日常を鹿児島弁で描き,笑いの多いシナリオ
ですが,その中で記憶をなくしていく不安など,認知
症になった本人の思いを聴衆に伝えています。
シリーズでDVDも出しており,平成26年12月現在
5作品を制作。認知症を地域に理解してもらうために
これからも演じ続けます。
世界アルツハイマーデーの啓発活動
○ 毎年9月21日は,「世界アルツハイマーデー」とされており,認知症への理解の向上を
図る活動や,認知症の人とその家族を支援する活動等が各地で行われます。
○
県では,毎年度「公益社団法人認知症の人と家族の会鹿児島県支部」と共催で,認知症
支援を訴えるリーフレット等を配布する街頭活動を実施するほか,企業の協力を得て,ラ
ンドマークのライトアップ等に取り組んでいます。
163
【参考】平成26年度の活動の様子
世界アルツハイマーデーPR活動(「認知症の人と家族の会鹿児島県支部」と県の共催)
(写真)街頭活動の様子
平成26年度は,9月21日(日曜日)に鹿児島市内3か所で,
9月23日(火曜日)に霧島市内4か所で街頭活動を行いました。
県PRキャラクターの「ぐりぶー」や,鹿児島大学の学生,
ピエロ,子どもたちなど多くの方がボランティアとして参加し,
世界アルツハイマーデーに関するリーフレットや,相談窓口等
の案内を載せたチラシを配布しながら,認知症の正しい理解や,
早めの相談を呼びかけました。
立ち止まって話に耳を傾けてくれる方や,「友人にも渡すか
ら」と複数のリーフレットを受け取ってくれる方など,多くの
皆さんが関心を示してくださいました。
活動に参加した大学生の感想
○ リーフレットを受け取ってくれない人もたくさんいて,その度に心が折れそうにな
りました。認知症なんて興味ない,自分には関係ないと思っている,本当はそんな人
たちに一番に受け取ってもらいたかったのに,断られると無理に渡すわけにもいかず,
とても悔しく感じました。それでも,自分の手から認知症の知識が少しでも広がった
と思うことができ,活動に参加して本当によかったと思います。
また,企業の皆さんの御協力のもと,「世界アルツハイマーデー」当日(9月21日)の日没
から午前0時まで,鹿児島市内3か所のランドマークをオレンジ色(認知症支援のシンボル
カラー)にライトアップしました。
県では,世界アルツハイマーデーを契機に,より多くの方に認知症を身近な疾患として考
えていただけるよう,これからもPR活動に取り組みます。
(写真左から)
1 アミュプラザ鹿児島の屋上に設置されている観覧車「アミュラン」
2 ドルフィンポート「なぎさタワー」
3 ソラリア西鉄ホテル鹿児島
【施策の方向】
○ 平成29年度末までに,県内で12万人の認知症サポーターを養成することを目標に,市町村
等と連携して養成に取り組みます。また,地域住民の方はもちろん,様々な企業・団体等に
おける認知症サポーターの養成を促進し,認知症支援の輪を広げます。
○ 「世界アルツハイマーデー」の啓発活動や,講演会,研修会等を通じて,認知症の正しい
理解の普及・啓発を図ります。
164
2
地域の支援体制の構築
【現状・課題】
平成25年度高齢者等実態調査・日常生活圏域ニーズ調査によると,在宅の要介護(要支援)
者のうち,認知症の方(「認知症高齢者の日常生活自立度」ランクⅡ以上の方)の約4人に1
人が,単身で暮らしています。認知症の方を地域全体で支える体制の構築は喫緊の課題です。
【図表3-4-2】認知症の方の家族構成
3.9%
在宅要介護者のうち認知症の方
(日常生活自立度Ⅱ以上)
23.7%
0%
一人暮らし
10%
57.2%
20%
30%
40%
家族などと同居(二世帯住宅含む)
50%
15.2%
60%
70%
80%
その他(施設入居など)
90%
100%
無回答
[平成25年度高齢者等実態調査・日常生活圏域ニーズ調査]
ア
認知症に関する相談窓口の周知
○ 平成25年度高齢者等実態調査・日常生活圏域ニーズ調査によると,40歳以上64歳以下の
約5割,65歳以上の約4割の方が「認知症の相談窓口を知らない」と回答しています。
【図表3-4-3】認知症の相談窓口の認知度(40歳以上64歳以下)(単位:%)
地域包括支援センター
26.9
市町村
21.5
保健所
7.5
医療機関
25.6
認知症疾患医療センター
認知症の人と家族の会
その他
6.2
3.1
1.7
知らない
47.7
[平成25年度高齢者等実態調査・日常生活圏域ニーズ調査]
165
【図表3-4-4】認知症の相談窓口の認知度(65歳以上)(単位:%)
地域包括支援センター
24.8
市町村
21.5
保健所
8.5
医療機関
24.0
認知症疾患医療センター
認知症の人と家族の会
その他
8.4
3.2
1.2
知らない
39.6
[平成25年度高齢者等実態調査・日常生活圏域ニーズ調査]
○ また,地域包括支援センター等に相談に訪れた時には,認知症の症状の悪化による近所
トラブル等により,地域での対応が困難となっているケースも少なくなくありません。
○ 認知症になっても,できる限り住み慣れた地域で暮らし続けるためには,早期に地域包
括支援センター等が介入し,本人の必要なサービスにつなげたり,地域住民の理解のもと,
見守り等に協力していただける体制を作っていく必要があります。
○ そのため,認知症の相談窓口そのものの周知を図るとともに,より早い段階で相談につ
ながるよう呼びかけの徹底を図ることが必要です。
相談窓口の紹介
① 地域包括支援センター
保健・医療・介護・福祉等の総合相談,虐待の防止や人権・財産などを守る権利擁護,
地域の様々な関係者・資源を活用した生活支援など,高齢者の生活を支える総合機関と
して各市町村に設置(県内に70か所)され,保健師,社会福祉士,主任介護支援専門員
(ケアマネジャー)等が配置されています。
②
県認知症コールセンター(公益社団法人認知症の人と家族の会 鹿児島県支部)
公益社団法人認知症の人と家族の会鹿児島県支部で,介護体験者や専門職(看護師,
保健師,社会福祉士等)が,電話及び来訪での相談を受け付けています。相談は無料で
す。
問合せ先 電話・FAX 099-257-3887
利用時間 火曜日・水曜日・金曜日 午前10時~午後4時(事務所開設日)
運営主体
公益社団法人認知症の人と家族の会 鹿児島県支部(やすら木会)
〒890-8517 鹿児島市鴨池新町1-7 鹿児島県社会福祉センター2階
166
③
若年性認知症コールセンター(厚生労働省開設)
若年性認知症特有の様々な疑問や悩みに対し,専門教育を受けた相談員が対応します。
相談は無料です。
問合せ先 フリーコール 0800-100-2707(無料)
利用時間 月曜日~土曜日(年末年始・祝日除く) 午前10時~午後3時
運営主体
④
社会福祉法人仁至会 認知症介護研究・研修大府センター
〒474-0037 愛知県大府市半月町3-294
地域の家族会,家族交流会
介護者が集い,不安や悩みを語り合える家族会が,県内各地で組織されています。
地 域
出水市
西之表市
いちき串木野市
志布志市
名 称
きさらぎ会
家族の会 ひなたぼっこ
認知症の人と家族の会鹿児島県支部地区会
「かたいもんそ会」
認知症を支える会
奄美市
認知症の人と家族と支援者の会「まーじんま」
龍郷町
たつごう在宅家族の会
喜界町
認知症の人と家族の会鹿児島県支部地区会
「よ~りよ~り」
大島地区
群星(ぼれぼし)会
また,上記以外の地区においても,地域包括支援センター等が中心となって,家族介護
者の交流会を開催している市町村もありますので,まずはお気軽に地域包括支援センター
に相談してみてください。
イ
地域の見守り体制の構築支援
○ 近年,認知症による徘徊が原因で列車事故に遭ったり,保護されても身元が分からず長
期間にわたり家族等のもとに帰ることができないなどのケースを受け,認知症の方の徘徊
に備えた地域の見守り体制を構築することの重要性がクローズアップされています。
○
厚生労働省が平成26年6月に実施した全国調査によると,平成25年度中に県内の市町村
で把握した徘徊などによる行方不明者は81人にのぼり,そのうち6月時点で所在が分かっ
ていない認知症高齢者が5人います。
○
認知症の方が行方不明になった場合に,早期に発見し,事故等を未然に防ぐためには,
住民一人ひとりが認知症は決して他人事ではなく,高齢者の目線を意識した日常の声かけ
などで行方不明を防止できることを十分に認識し,地域社会の見守りの目を増やしていく
ことが必要です。
○
また,厚生労働省の同調査によると,県内で行方不明となった方のうち,発見された方
の約1割は市町村区域外で発見されており,市町村圏域を超えた広域的なネットワークを
構築する必要があります。
167
【図表3-4-5】平成25年度中に県内で行方不明となった者の状況
① 発見・未発見
未発
見
6.2%
② 発見場所
区域
外
9.2%
発見
93.8
%
区域
内
90.8%
[厚生労働省「行方不明になった認知症の人等に関する実態調査」]
○ 県では,地域住民らによる日頃の声かけや見守り活動の取組を促進し,地域のつながり
を強めるとともに,認知症の方の徘徊に備えて,市町村や警察が中心となって,地域住民,
医療・介護関係者や商店などと連携する「徘徊SOSネットワーク」の構築や徘徊模擬訓
練の実施を促進しています。
○
また,厚生労働省の身元不明者に係る特設サイトを活用し,身元不明のまま県内で保護
されている方の情報をホームページに掲載することにより,県内外で身元不明者の情報共
有を図るなど,市町村域又は都道府県域を超えて行方不明となった認知症高齢者等の発見
に向けて取り組んでいます。
【図表3-4-6】行方不明となった認知症の方への対応のイメージ
[県介護福祉課作成]
168
【参考】見守り体制を構築する取組
住民主体の徘徊模擬訓練(姶良市)
姶良市の松原上地区では,地域の高齢者の『孤独死』をき
っかけに,「高齢者を地域(自治会)で見守り,支え続ける
こと」を目標に,気になる高齢者等を日常的に見守る「見守
り隊」を結成するなど,住民が主体となって地域づくりを進
めています。
徘徊模擬訓練についても,平成23年度から同地区で市が実
施していましたが,さらなる見守り体制の強化を目的に,平
成25年度からは自治会の主催となりました。
(写真)徘徊模擬訓練の様子
訓練の実施にあたっては,介護保険事業所,行政,警察署など
が協力することで,自治会と関係機関がネットワークを構築する
場にもなっています。
さらに,今年度からは自治会とNPOが協力して,自治会内の
住民向けに認知症や介護の知識の普及啓発を行う世代間交流の場
を設けるなど,関係機関とのネットワークを生かして,工夫して
取り組んでいます。
(写真左)普及啓発劇の様子
ウ
認知症地域支援推進員の設置促進
○ 認知症地域支援推進員とは,地域包括支援センター等に配置され,認知症の方を支援す
る関係者の連携体制を構築したり,認知症の人と家族を支援する事業を企画したりするス
タッフであり,平成30年度までに全ての市町村に配置される予定です。
○
認知症地域支援推進員が,認知症初期集中支援チームと有機的に連携を図ることで,こ
れまで相談につながらなかったより初期の認知症の方の生活支援と,認知症になっても暮
らし続けられる地域づくりを一体的に進めることができるようになります。
【施策の方向】
○ 地域での生活が困難になる前に適切な支援につながるよう,認知症の相談窓口の周知と,
初期の段階での相談の促進に努めます。
○ 日常の見守り体制の構築と,徘徊に備えた関係者間のネットワークの構築に向けた市町村
の取組を支援します。
○ 認知症地域支援推進員が地域の課題や強みを抽出し,地域の実情に合った取組が実施でき
るよう,好事例の紹介等を通じてその活動を支援します。
169
3
在宅・事業所等での認知症ケアの充実
【現状・課題】
平成26年10月1日現在,県の要介護(要支援)認定者のうち,認知症の症状が見られる(認
知症高齢者の日常生活自立度ランクⅡ以上)高齢者は,60,416人であり,そのうち約1割の方
は医療機関で,3割強の方は介護施設等で暮らしています。
【図表3-4-7】認知症高齢者の現在の生活場所
医療機関
9.2%
介護老人保健
施設,介護療
養型医療施設
9.5%
介護施設等
34.5%
特別養護老人
ホーム
14.1%
居宅等
56.3%
グループホー
ム
8.2%
介護付き有料
老人ホーム
2.7%
[県介護福祉課調べ]
平成25年度高齢者等実態・日常生活圏域ニーズ調査によると,在宅の要介護(要支援)者の
うち,認知症の方(「認知症高齢者の日常生活自立度」ランクⅡ以上の方)の約7割が,今後
希望する生活場所として「現在の住まい」と回答しています。
【図表3-4-8】認知症の方の今後の生活場所に関する意向
その他, 3.6%
介護保険施設,
有料・軽費老
5.1%
人ホーム,
1.1%
グループホー
ム, 1.8%
高齢者対応の住
宅やアパート, 子どもや親族の
0.6%
家, 1.0%
無回答, 14.0%
現在の住まい,
72.8%
[平成25年度高齢者等実態調査・日常生活圏域ニーズ調査]
170
一方で,介護を行うようになって介護者に生じた体調や生活状況の変化を見ると,「身体的
・精神的負担が大きくなった」,「仕事を中断したり辞めなければならなくなった」,「家を留守
にできなくなったり,自由に行動できなくなった」,「気分が落ち込みやすくなったり,外出や
人との関わりがおっくうになった」と回答した割合が,介護者全体と比べて,認知症の方の介
護を行っている人の方が高くなっており,認知症の方を在宅で介護することの負担が大きいこ
とが分かります。
【図表3-4-9】介護を行うようになって介護者に生じた変化(複数回答)
8.7%
8.9%
家族の絆が強まったり,生きがいになった
26.0%
28.4%
人間の尊厳や自身の老後について考えるようになった
19.4%
19.3%
健康づくり・体力づくりを心がけるようになった
友人や地域の人などの周囲の人の協力や,
つながりを実感できるようになった
10.2%
11.3%
27.1%
身体的,精神的負担が大きくなった
22.9%
家を留守にできなくなったり,自由に行動できなくなった
28.4%
気分が落ち込みやすくなったり,
外出や人との関わりがおっくうになった
6.9%
8.7%
12.6%
10.7%
特に変化はない
① 在宅要介護(要支援)者の介護者
33.3%
8.1%
10.2%
仕事を中断したり辞めなければならなくなった
② ①のうち,認知症の方(日常生活自立度Ⅱ以上)の介護者
[平成25年度高齢者等実態調査・日常生活圏域ニーズ調査]
認知症の方が住み慣れた自宅での生活を続けるためには,在宅介護の負担軽減と認知症ケア
の向上を図るのはもちろん,必要な医療,介護サービスが身近な地域で適切に提供されるよう,
医療・介護従事者の認知症対応力の向上を図ることが必要です。
ア
在宅における認知症ケアの向上
○ 認知症は,周囲の環境や人間関係などが症状に大きく影響し,誤ったケアは認知症の周
辺症状を悪化させ介護負担の増大につながります。
○
住み慣れた自宅での生活を続けていくためには,家族等の介護者が症状の段階に応じた
適切な認知症ケアの知識・技術を身につけ,認知症の方が穏やかに生活できる環境を整え
るとともに,家族等の介護者の負担の軽減を図ることが必要です。
○
県では,家族等が医療・介護専門職,介護経験者らから認知症の在宅介護に関する知識
・技術を習得し,介護の悩みを相談できる場として,家族交流会の開催や認知症カフェの
設置を促進しています。
○
また,国も,平成27年1月に示した「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」
において,市町村の認知症地域支援推進員等による認知症カフェ等の取組を推進するとし
ています。
○
認知症の方やご家族,地域住民が気軽に集え,専門医や介護専門職などに相談できる認知
症カフェは,既に県内の多くの市町村や民間事業所で取り組まれており,認知症支援の輪が
広がっています。
171
【参考】認知症カフェの取組
平成26年度に始まった認知症カフェ
市町村と事業所が協力して取り組んでいる認知症カフェ(奄美市)
○
奄美市では,名瀬地域包括支援センターと事業所(グループホームや小規模多機能型居宅
介護事業所)が中心となり,認知症の人と家族と支援者の会「まーじんま」の会員や民生委
員の協力を得ながら,認知症カフェを開設しています。
現在は,月1回の休日に実施しており,地域の方が昔から
聞き親しんだ島唄を歌ったり,参加者が負担のない範囲での
おやつ作りや折り紙作品づくり等を行いながら認知症の方や
地域の高齢者が一緒にお茶飲み話を楽しむ場となっています。
事業所がその知識・経験・人材を生かして専門的な相談に
も応じるなど,この認知症カフェの開設をきっかけに,地域
の方と身近にある社会資源(事業所等)がつながり,地域の
高齢者が安心して生活できる地域づくりが進んでいます。
(写真)ホットケーキづくり
民間事業所が主体となって取り組んでいる認知症カフェ
○
医療法人明輝会では,認知症などの困り事を住民同士が
共有できる拠点づくりを目指し,鹿児島市川上町の小規模
多機能ホームすばるに併設のサービス付き高齢者住宅「東
風」のリビングで,介護職員らが週1回の喫茶店を始めま
した。(写真右)
○
○
医療法人有隣会は,「カフェが早期発見につながり,介護
に悩む人が思いを共有できる場にもなれば」と,病院に併
設する鹿児島市下伊敷の居宅介護支援事業所「おとなりさ
ん」で箸袋作りなどのイベントや認知症予防活動を月2回
ほど開催しています。イベント日以外も平日職員が常駐し
て地域の方々が気軽に立ち寄って介護に関する相談ができ
るようにしています。(写真左)
公益財団法人慈愛会は,介護サービスを利用していない方や
若年性認知症の方を含め,認知症の方や家族を地域で支える場
にしようと,鹿児島市小原町のデイサービスセンター「あした
の風」で月1回認知症カフェを実施しています。(写真右)
172
イ
地域での生活を支える介護サービスの構築
○ 認知症ケアの手法は,日々研究が進められており,認知症の方の特性に合わせた適切な
介護サービスが提供できる体制を構築するためには,認知症介護の第一線である介護保険
施設・事業所等の介護従事者が,最新の専門的な認知症介護の知識・技術を身につけると
ともに,認知症の方の能力に応じ自立した生活を送るためのケアプランが作成されるよう,
地域の介護支援専門員の支援を行う必要があります。
○
また,介護保険施設・事業所等は,その知識・経験・人材等を生かして,在宅で生活す
る認知症の方や家族等に効果的な介護方法などの専門的な相談支援を行うなど,地域全体
の認知症ケアの向上を図る拠点としての役割も担っています。
○ 国が平成27年1月に示した「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」では,特
にグループホーム(認知症対応型共同生活介護)が地域における認知症ケアの拠点として,
共用型認知症対応型通所介護や認知症カフェ等の事業を積極的に展開することを期待して
いるほか,
① 現在,都道府県が実施している介護従事者が適切な認知症ケアを身につけるための
実践的な研修について,eラーニングの部分的活用など研修を受講しやすい仕組みの導
入を図り,修了者数の増加を図ること。
② 新任の介護従事者が認知症介護に最低限必要な知識・技能をeラーニングの活用によ
り修得できる研修として,新たに認知症介護基礎研修(仮称)を導入し,認知症介護
に携わる可能性のあるすべての職員の受講を目指すこと。
としており,介護従事者を対象とした認知症ケアの研修が,今後ますます充実していくこ
とが見込まれます。
○ 県では,このような介護従事者向けの研修の実施や,地域の介護支援専門員への支援を
行う地域包括支援センターの職員の資質向上を通じて介護サービスの充実を図るとともに,
介護保険施設・事業所等が認知症介護のプロとしての専門性を地域で十二分に発揮できる
よう,その活動を支援しています。
【参考】事業所が地域の認知症ケアの拠点として活動している取組
まちかど介護相談所(霧島市)
(写真)看板
ウ
霧島市では,高齢者が住み慣れた地域で安心・安全に暮らせるよう,
「まちかど介護相談所」を市内35か所に設置しています。(平成26年12
月1日現在)
「まちかど介護相談所」には,市の研修を修了した「霧島市包括ケア
・ライフサポートワーカー」(地域密着型サービス事業所の介護職員等)
が在籍しており,高齢者の介護や認知症に関すること,介護保険サービ
ス,高齢者福祉サービス及び生活相談等の悩み・不安・心配ごとなどの
相談に応じています。
地域包括支援センターとも連携を図りながら,住民にとって気軽に立
ち寄れる身近な相談窓口となるよう,地域に根づいた活動を進めていま
す。
医療従事者における認知症対応力の向上
○ 病院における,医療従事者の認知症への知識及び対応能力は十分とはいえず,しばしば
入院した認知症の人の行動・心理症状やコミュニケーションの困難さによる戸惑いや混乱,
173
看護・介護負担の増加がみられます。
○
そのため,認知症を理由とする入院拒否等によって手術や処置などの必要な医療を受け
ることができなかったり,時には不適切な身体拘束や安易な薬物的鎮静がなされる場合が
あります。
○ これらの中には,認知症に対する理解や基本的知識,具体的な対応方法が習得されるこ
とで避けられるものも多いとされています。
○
そのため,県では,病院に勤務する医師や看護師等の医療従事者を対象として,認知症
への理解を高め,認知症の方やその介護家族を支えるための基礎知識を習得するための研
修を実施しています。
【施策の方向】
○ 家族交流会の開催や,介護保険施設・事業者等の人材を活用した介護者相談会等の促進に
より,家族介護者の精神的負担の軽減及び介護技術の習得を支援し,在宅での認知症ケアを
支援します。
○ 認知症に関する専門的知識や技術の習得を目的とした研修等による介護従事者や医療従事
者,地域包括支援センター職員等の資質の向上を図ります。
○ 認知症疾患医療センターにおける認知症カフェの開設を支援し,地域の誰もが専門職に気
軽に相談できる体制の整備を図ります。
【図表3-4-10】認知症疾患医療センターにおける認知症カフェの展開イメージ
[県介護福祉課作成]
4
若年性認知症施策の推進
【現状・課題】
○ 平成26年10月1日現在,本県の要介護(要支援)認定者のうち,認知症の症状が見られる
(日常生活自立度ランクⅡ以上)40歳以上64歳以下の認知症者は953人で,要介護(要支援)
認定者の約4割を占めています。
174
○
若年性認知症は,65歳未満の現役世代で発症し高齢者の認知症と比較して進行が早いため,
親の介護や子育て等,患者本人の生活環境に大きく影響します。
○ 若年性認知症は,認知症でよく知られるアルツハイマー型よりも,血管性認知症の割合が
高いことも特徴のひとつです。
○ 血管性認知症は,脳卒中が原因で起こる認知症で若年性認知症の原因疾患の中では最も多
く,約40%とされています。
○
また,認知症を発症しても,うつ病や他の病気に間違われやすく,早期に医療機関を受診
しても確定診断が的確に行われず,その後の医療と介護の連携が不十分であったために,適
切な治療や介護の提供が行われないなどして,認知症が進行してしまう場合があります。
○
しかも,若く働き盛りの方が若年性認知症になった場合には,本人や家族がその事実を受
け止めるのに時間がかかる場合もあり,適切な支援になかなか結びつかないのが現状です。
○ さらに,若年性認知症の場合,年齢により利用できる制度が介護または,障害関係の施策
と分かれるため医療,介護,障害,雇用部門など,総合的な支援体制が必要です。
○ 国が平成27年1月に示した「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」では,若年
性認知症の強化を7つの柱のひとつとして掲げており,
① 若年性認知症の人やその家族に支援のハンドブックを配布
② 都道府県の相談窓口に支援関係者のネットワークの調整役を配置
③ 若年性認知症の人の居場所づくり,就労・社会参加等を支援
することとしており,若年性認知症人やその家族への支援の充実が見込まれます。
【図表3-4-11】若年性認知症の原因疾患
【図表3-4-12】若年性認知症の有病率
年齢
18-19
20-24
25-29
30-34
35-39
40-44
45-49
50-54
55-59
60-64
18-64
人口10万人当たり有病率(人)
認知症患者(人)
男性
女性
総数
1.6
0
0.8
20
7.8
2.2
5.1
370
8.3
3.1
5.8
450
9.2
2.5
5.9
550
11.3
6.5
8.9
840
18.5
11.2
14.8
1,220
33.6
20.6
27.1
2,090
68.1
34.9
51.7
4,160
144.5
85.2
115.1
12,010
222.1
155.2
189.3
16,040
57.8
36.7
47.6
37,750
[平成21年3月 厚生労働省「若年性認知症の実態等に関する調査結果の概要及び厚生労働省の若年
性認知症対策について」]
【施策の方向】
○ 認知症の初期症状では,うつ病や別の病気と間違われやすく,早期の治療につながりにく
い場合があるため,若年性認知症に関する正しい理解の普及・啓発を図ります。
○ 市町村で実施される認知症初期集中支援推進事業等の促進を図り,早期診断・早期対応へ
向けた支援を行います。
175
【参考】認知症支援の取組事例
認知症等見守りメイト活動事業(鹿児島市)
鹿児島市では,平成25年度から,認知症と思われる一人暮ら
しの高齢者等の見守りや家族への支援などを行う「見守りメイ
ト」を養成しています。
認知症に関する2日間の講義とグループホーム等での実習を
通じて,認知症高齢者への正しい対応を身につけた「見守りメ
イト」が,カーテンの開閉やポストなどの生活状況を見守り,
挨拶や声かけをするほか,家族からの相談対応,家族不在時の
見守りなどを行っています。
(写真)養成講座の様子
「見守りメイト」の活動によって
○ 定期的に訪問することで,1人暮らしで閉じこもりがちな認知症高齢者が往診を受け
入れるようになり,介護保険の認定申請につながった。
○ ガス料金の支払いが滞っていることが分かり,支払いを促してガスの復旧ができた。
といった具体的な生活支援につながった事例もありました。
養成講座の受講や見守り活動の利用の募集は,随時行っておりますので,詳しくは,お近く
の鹿児島市長寿あんしん相談センター(地域包括支援センター),または長寿支援課099-2161186までお問い合わせください。
あんしんノート(垂水市・宇検村)
(図)垂水市あんしんノート
垂水市では,これからの人生に尊厳を持ち,住み慣れた地域で
安心して暮らしつづけられるよう「あんしんノート」の書き方教
室を開催しています。
人は誰でも,年齢を重ねたり,災害等に巻き込まれたりすると,
周りの人の支援を必要とします。しかし,今までの生活様式や習
慣,価値観,生き方などが違うため,望ましい支援の在り方も人
によって異なります。
「あんしんノート」は,支援が必要になった時に,まわりの人
に支えてほしいことや終末期医療への考え方,葬式や相続,お墓
のことなど,自分の気持ちを家族や近親者に伝え書き留めておく
ことができるノートです。
本人や家族,近親者が一緒に記入することで,将来について話
し合うきっかけになるほか,緊急時の連絡カードとしても活用し
ています。
また,宇検村では,垂水市の取組を参考に,村仕様にアレンジ
した「あんしんノート」を作成し,各集落で開く介護予防教室で
書き方の説明や記入のお手伝いをしています。
参加者からも「元気なうちから今まで話せなかったことを子ど
も達と話すきっかけになった」などの声が寄せられるなど好評で,
この取組を通じて住民同士の支え合う力や防災意識の向上にもつ
なげていきたいと考えています。
(写真)宇検村の取組の様子
176
第5節
1
高齢者の権利擁護
高齢者虐待防止の推進
【現状・課題】
○ 高齢者虐待が起こる背景には,介護疲れや経済的困窮,認知症の進行に伴う言動の混乱な
ど,様々な要因が複雑に絡み合って発生します。平成25年度に市町村が高齢者虐待と判断し
た件数は,家庭内虐待132件,施設内虐待1件となっています。
○
家庭内虐待においては,息子,夫など男性介護者が虐待者になる割合が約6割を占め,虐
待行為の種類としては,身体的虐待と心理的虐待が多く,複数の種類が同時に起こっている
場合があります。
○ また,虐待を受けた高齢者の約8割は女性で,年齢別で見ると80歳以上が過半数を占めて
います。
○
高齢者虐待防止法に基づく対応状況等に関する調査によると,虐待を受けた高齢者のうち,
要介護認定を受けている人は約6割を占めており,そのうち何らかの認知症の症状がある高
齢者が約7割となっていることから,認知症高齢者は虐待の被害を受けやすい傾向にあると
いえます。
○ 施設内虐待においては,虐待の背景として職員のストレスや,経験の少ない職員への教育
支援の不足などがあり,高齢者への暴言や大声など心理的虐待につながっています。
○
高齢者虐待の相談対応・事実確認等,市町村による速やかな対応が求められています。
【図表3-5-1】市町村における相談・通報件数及び虐待件数の推移
(単位:件)
調査対象
家庭内虐待
施設内虐待
年
度
相談・通報件数
虐待判断件数
相談・通報件数
虐待判断件数
平成21年度
368
270
5
0
平成22年度
302
177
5
1
平成23年度
333
190
1
0
平成24年度
250
155
8
2
平成25年度
232
132
15
1
[県介護福祉課調べ]
177
【図表3-5-2】本県の家庭内虐待の状況(平成25年度)
(虐待者の状況)
息子の配
孫 偶者(嫁)
2.8% 2.1%
兄弟姉妹
4.2%
娘の配偶
者(婿)
0.7%
(虐待行為の類型
その他
5.6%
介護放棄
等
14.1%
息子
45.5%
妻
9.1%
娘
14.7%
性的虐待
0.9%
身体的虐
待
38.0%
経済的虐
待
17.9%
心理的虐
待
29.1%
夫
15.4%
(被虐待者の性別)
(被虐待者の年齢)
90歳以上
14.3%
女
76.7%
重複あり)
男
23.3%
85-89
歳
22.6%
80-84
歳
19.5%
65-69
歳
12.0%
70-74
歳
10.5%
75-79
歳
21.1%
[県介護福祉課調べ]
【施策の方向】
県では,高齢者虐待を未然に防止するとともに早期発見から早期対応に結びつけるため,県
民への普及啓発や,養介護施設従事者及び市町村職員等に対する各種研修を実施するとともに,
認知症に関する正しい知識と理解の普及や介護する家族への支援等,認知症に関する各種施策
と連携しながら,今後とも,市町村をはじめとする関係機関と連携し,高齢者虐待防止対策を
推進します。
○
高齢者虐待の未然防止及び虐待を受けた高齢者の保護並びに養護者の支援が適切になされ
るよう,市町村や地域包括支援センターの職員を対象とした研修の実施や情報提供に努め,
市町村を中心に,地域包括支援センターの機能強化や地域の関係団体との連携体制(高齢者
虐待防止ネットワーク)の構築・充実が図られるよう支援します。
○
※1
養介護施設※1等の職員に対する研修等を実施し,高齢者の権利擁護の視点に立った実践
的かつ専門的な介護手法の修得や施設等における権利擁護の取組を支援します。
養介護施設:老人福祉法上の老人福祉施設若しくは有料老人ホーム又は介護保険法上の地域密着型介護老人福祉施設,介
護老人福祉施設,介護老人保健施設,介護療養型医療施設若しくは地域包括支援センターをいう。
178
○ 各種広報媒体や県が作成した高齢者虐待防止の手引を通じ,高齢者虐待防止に関する県民
への普及啓発に努めます。
○
高齢者虐待防止対策の推進に当たっては,認知症施策と連携した取組に努めます。
○ 県高齢者虐待防止推進会議の開催等を通じ,関係機関の連携による高齢者虐待防止対策の
総合的かつ効果的な推進を図ります。
2
日常生活の自立支援や成年後見制度の活用促進
【現状・課題】
○ 高齢化の進行に伴い,認知症等により判断能力が十分でないため福祉サービスの利用手続
や金銭管理等が難しく,日常生活に支障をきたしている事例が増えています。
○ このため,福祉サービスの利用手続や日常的な金銭管理の援助,書類等預かりサービスな
どを行い日常生活を支援するとともに,家庭裁判所が選任した法定後見人(保佐人,補助人)
又は任意後見契約に基づく任意後見人が,本人に代わって不動産の処分等を含む法律行為を
行うことができる成年後見制度の活用を促進する必要があります。
○ また,成年後見制度における市町村長申立ての活用を促進するため,市町村と協力して,
審判請求の円滑な実施に資するための相談体制整備等に努める必要があります。
○
さらに,福祉サービスの利用契約の支援等を中心とした身上監護等の後見人には,弁護士
などの専門職後見人ではなく,市民がボランティアとして後見活動を行う市民後見人の育成
が喫緊の課題となっており,平成26年度現在,3市で市民後見人の育成に向けた取組を行っ
ています。
○ 今後は,日常生活の支援と成年後見制度の両者があいまって機能を果たすことにより,判
断能力が十分でない方でも安心して生活できる仕組みを構築していく必要があります。
【図表3-5-3】福祉サービス利用支援事業(日常生活自立支援事業)の実施状況 (単位:件)
区
分
平成22年度 平成23年度 平成24年度 平成25年度
実利用者件数
659
747
810
817
[県社会福祉課調べ]
【図表3-5-4】 成年後見制度利用の市町村長申立ての状況
(単位:件)
区
分
平成22年
平成23年
平成24年
平成25年
鹿児島(家庭裁判所管内別)
10
12
25
22
[最高裁判所事務総局家庭局調べ]
【施策の方向】
ア 福祉サービス利用支援事業(日常生活自立支援事業)への支援
認知症高齢者などの判断能力が十分でない方が,住み慣れた家庭や地域で,自立した生活
を送ることができるよう,県社会福祉協議会及び市町村社会福祉協議会においては,福祉サ
ービス利用支援事業(日常生活自立支援事業)を実施します。
179
イ
成年後見制度の活用促進
県では,家庭裁判所等と連携して,成年後見制度に関する情報提供や普及啓発を行うほか,
市町村における以下の取組等を支援することにより,制度の活用促進を図ります。
(ア) 成年後見制度活用促進の取組
地域包括支援センターにおいて実施される成年後見制度活用のための業務
a 成年後見制度の啓発及び活用促進
b 成年後見制度の活用に関する判断
c 成年後見制度の活用が必要な場合の申立て支援
d 診断書の作成や鑑定に関する地域の医療機関との連携
e 成年後見人等となるべき者を推薦できる団体等との連携
(イ) 成年後見制度利用支援事業
成年後見制度を利用するための費用負担が困難な者に対して,市町村が申立費用や後見
人への報酬の助成などを行う成年後見制度利用支援事業(地域支援事業)の実施
ウ
成年後見制度における市町村長申立ての活用の促進
成年後見制度の活用を図るため,市町村長申立てによる審判請求の実施に関し,助言その
他の援助を行います。
エ
後見等の業務を適正に行うことのできる人材の育成及び活用
今後,親族等による成年後見が困難な高齢者や一人暮らしの高齢者が増加していく傾向が
見られることから,福祉サービスの利用契約の支援等を中心に,成年後見の担い手として弁
護士などの専門職による後見人だけでなく,それ以外の市民を含めた後見活動に係る体制整
備が必要です。そのため,県では,市町村が主体となって行う市民後見人養成研修の実施や
活動を支援する組織体制の整備について,市町村に対し支援を行います。
オ
福祉サービス利用支援事業と成年後見制度との相互連携
福祉サービス利用支援事業の利用者等が認知症の進行等により判断能力を有しなくなった
場合には,成年後見制度等へ円滑に移行できるよう,また,成年後見制度利用者が必要に応
じて福祉サービス利用支援事業を活用できるよう,地域包括支援センターや社会福祉協議会
などの関係機関の相互連携を促進します。
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