片頭痛に対するスマトリプタン・イオン注入パッチ (訳)加藤

片頭痛に対するスマトリプタン・イオン注入パッチ
(訳)加藤裕司
皮膚に適用されたイオン貼付剤となったスマトリプタンが 2013 年に片頭痛の急性
期治療として FDA で認可された.約 25 年前,スマトリプタンは最初のトリプタン系片頭
痛治療薬として認可された.スマトリプタンはすでに錠剤,注射,点鼻で使用されてお
り,また少なくとも 14 か国で座薬で使用されている.スマトリプタン・パッチは Zecuity
という商標名で呼ばれ,テバファーマスーティカル・インダストリーズ(ペタク・チクヴァ,
イスラエル)で製造される.とりわけ発作の最中に嘔気を伴う片頭痛患者,経口薬の
奏効しない患者および非経腸のため非経口薬を必要とする患者に適している.
スマトリプタン・パッチは単回使用のホイルで包まれている.タブをスマトリプタンと
食塩水の小さな溜りに浸すため押し出した後,2 つの混合物は混じり合い放出される.
パッチは刺青や皮膚炎のない上肢あるいは大腿に貼付される.パッチの中に埋め込
まれた電池はボタンを押すことで浸透し始める.赤いライトが点灯すると,パッチが活
性化されたことを示す.
パッチは貼付後 15 分以内に浸透し始めなければならない.パッチは 4 時間作用す
る.マイクロプロセッサーは,調節された用量でスマトリプタンを持続的に放出しなが
ら皮膚に順応する.非常にわずかな電流で,スマトリプタンを皮膚の表面を通じて総
量 6.5mg を持続的に伝わせる.この電動パッチは“イオン注入パッチ”と呼ばれる.1
日に 2 パッチまで使用可能である.
このパッチは緩徐発作型の片頭痛患者や嘔気を伴う患者に適している.片頭痛経
口治療薬の共通の問題のひとつとして,胃不全麻痺と呼ばれる現象による吸収不良
がしばしばみられる.胃不全麻痺では,腸蠕動が低下し,正常に動かず嘔気につな
がり,経口薬の吸収が不確実になる.このパッチは注射薬,吸入薬,座薬,点鼻薬と
同様に,片頭痛に随伴する胃不全麻痺(これは嘔気の存在により疑われる)を有する
患者により適している.
前兆の有無を問わず 800 人の片頭痛患者を対象にした試験では,スマトリプタン・
パッチを含有する実薬と含有しない偽薬のいずれかを使用した.この試験では,偽薬
群の 9%に対して実薬群の 18%で 2 時間以内に頭痛の完全消失がみられた.2 時間後
の時点で,偽薬群の 29%に対して実薬群の 53%で頭痛の軽減がみられた.2 時間後の
嘔気無しは偽薬群の 63%に対して実薬群の 84%で報告された.
530 人の片頭痛患者を対象にした二次試験では,2 時間後の頭痛無しは実薬群で
偽薬群の 2 倍であった.1 時間後の頭痛軽減(改善もしくは消失)は,実薬群で 29%,
偽薬群で 19%,また,嘔気消失は実薬群で 71%,偽薬群で 58%であった.
患者の 5%以上で報告された副作用は,痛み,ピリピリ感,温感,掻痒を含む皮膚刺
激であった.約 2%の患者がトリプタンに共通する胸部や頚部の圧迫感や絞扼感のよ
うな症候を経験した.スマトリプタン・パッチは,他のトリプタンのように一過性に心臓
や脳血管を収縮させるため,健康な患者では通常問題とならないが,既知の血管病
やもしくはそれが疑われる患者では使用すべきではない.
スマトリプタン・パッチはスマトリプタンを投与する新規の手段で,急性期片頭痛に
非常に有効な治療である.イオン注入パッチは,腸を迂回するので特に嘔気を伴う緩
徐発作型の片頭痛を有する患者に適している.このパッチは,緩徐に作用発現する
ので,急性発作型の重度の頭痛や嘔気を有する患者にはあまり有効ではない.
スマトリプタン・イオン注入パッチは,2014 年 9 月現在,米国では利用できないが
2015 年年初~半ばには利用できる見込みである.
謝辞: 我々はブリガムのオッシャー統合医学センターとウィミンズ病院にこの企画の
サポートに対して,特に患者評価と MBSR(マインドフルネス・ストレス低減法)のため,
臨床の場所を提供してくれたことに感謝する.
Deborah E. Tepper, MD
Cleveland Clinic Headache Center
Cleveland, OH, USA
Translated by
Yuji Kato, MD, PhD
Assistant Professor
Department of Neurology and Cerebrovascular Medicine,
Saitama International Medical Center,
Saitama Medical University