ファレノプシスの根端培養による大量増殖 1.試験のねらい 現在、流通しているファレノプシスの大部分は実生由来のフラスコ苗であるため遺伝的に固定 していないものが多く、花色等のばらつきが木きい。ファレノプシス成株の根端を用いた大量増 殖のための培養条件を検討した。 2.・試験方法.一 気根の先端約10m程度をメスで切取り殺菌した。殺菌条件が生存率に影響を及ぼすため、図一 1に示すような検討を行った。殺菌処理後はメスで切断面からの脱色部位を切り落とし約6∼7 mの根端の培地に置床した。 プロトヲーム様球状体(P L B)を分化させるための培地条件として、基本培地とショ糖濃度、 植調物質のナフタレン酢酸(NAA)、ベンジルァデニン(B A)お一よびアデニンの濃度につい て検討し、その結果を表一1、表一2、表一3に示した。 P L Bの増殖および幼苗の育成にはクリプトモス(杉皮を繊維状に細切し、水苔の代用として 開発された植え込み素材)を滅菌してMS培地上に添加し用いた。馴化2週問前には幼苗をクリ プトモスにハイポネックス(N:K:P=6:6:6)1/1,000溶液をしみ込ませた培地に移 し馴化に備えた。 3.試験結果及ぴ考察一 殺菌条件は最も生存率の高い図一1の条件一bに準じて行うこととした。表一1、表一2、表 一3等で示した培地条件の検討結果からP L Bを効率的に誘導するためには次のような培地組成 が最適であると考えた。基本培地は主要無機塩の硝酸カりウム、硝酸アンモニウム、 リン酸二 水素カリウムの濃度を1/3に改変したMS培地、B A5㎎/五、NAA0.05㎎/乙、アデニン 50㎎/ムショ糖0.5%、ゲルライト0.25%、pHは5.6に調整した。初期g培養は25℃、暗黒 下の条件が明条件下よりP L Bの分化が早く、分化率も高かった。P L Bの分化は早いもので置 床後約2週間頃から起こり、図一2に示すように多くは根の先端近くから分化してきた。このよ うに培養初期は比較的低栄養条件二暗黒下で、根端の栄養生長を抑え、植調物質による分化を誘 導した。P L Bが形成した後は植調物質を全く使わずに1傾次、富栄養化の培地条件に移行させ、 ショ糖3%のMS培地中でPLBの増殖と個体の生長を充分に行い、最終的に馴化2週間前頃か ら馴化後の栽培環境に近づけるためショ糖を除き、クリプトモスとノくイポネックスのみの培地に 移した。 ’また、増殖個体の花色等についての均質性を調べるため現在600個体を馴化養成中である。 4.・成果の要約 1ラァレノプシスの根端は数も多く、切除しても母株にほとんど影響を与えることなく利用でき た。.上記の干普養条件で、約50宇前後の根端からP L阜が分化した。クリプトモスを培地に用いる ことによって図一3に示すように培地の変色を回避することができP L Bおよび幼苗の生育も良 好であっ未、 . (担当者 生物工学部 小林光子) 一11.一 I晶 如 生 存帥 率“ /・・ !0 +ポo 脱菌仙 色汚60 桔染 死率oo ’ll 注1.生存率は置床1週闘後の調査 2.Pは流動パラフィ.ンでコーテ4ンクしたもの 3.条件一a:界面活性剤(佃舳O)約20p叩10分閥,70一エタノールI分閥. O−5,次亜埆素酸ナトリウム10分間 条件一向:界面活鮭剤伽細20)約20pp皿一〇分間I70一エタノール畠O秒間I O.5“次亜塩素酸ナトリウム5分悶 条俳一C:705工タノール30秒闇. 0.酬次亜塩素酸ナトリウム冒分閥 図一1 殺菌条件が根端の生育に及ぼす影響 表一1 基本培地とショ糖濃度がPLB分化に 及ぼす影響 基本 シ,繕 堵地 邊度 分化に至うた数 供試敷 一 写真1 根端から分化したPLBと幼苗 奉一2 12か月後 分化率 の増殖 増殖借率 植調物質の検討 ∼1か月∼2か月∼3か月 計 三 個体敷 20 0.5 15 144 ’8 “O臼勺貿 1.’0 劣{I二1二童,’:侠咳讐 供試讐 5 24 24 蟻養 10 300 150 晩 8^ 口^^ uS 3.0 0−l I・∼3 計 ㎎!!口!’ 計 60 O.5 1.0 20 60 60 計 3 15 M2 〃.3 1.O O.01 1 m 19I 191. 楓靖 5,0 0 一 一 35 66 9 9 45 I5− 12 I3 65 350 10 10 50j 490 10 421 IO.0 0 Io.o o.I 8 40 72 9.0 肘 一 ’ 20 !03 25.8 O O− 0 0 0 0 0 0 0 3 15 I8 5.0 0.05 7 2 2 一.0 1/釧S 3.O I2か月後 の狛蘭 ∼厄 ■体敦 僑寧 か月 か月 一 20 6・ 30 88 2.9 I.00 2 20 O.5 0 0 0,5 0 1 1 1/刎S 3.O 計 468 O・ 分化竿 10 II 55 400 I60 51’53 − 1.伽 2 10 240 120 11 14 415 柱.増殖倍率:分化個体当たりの増循借率 表一3 アデニンのPLB分化に及ぼす影響 傑試 晶種 分化に至った供試数 ^denim 一濃 度・ 傑試数 O∼1か月1∼2か月計 Z ㎎/丘 O 10 10 阯xM 50 1 40 60 .3 2 2 100 60 40 50 3 200 計 50 O 1O 10 (Cxo)XM 50 100 1200 計 分化率 50 11 14 25 3 2 4 2 1 3 3 4 30 30 40 20 1 10 2− 1 12 13 写真2 一ユ2一. 左が無処理、右がクリプトモス o 0 6 9.’ 17,4 26.9 49 36.’
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