第4回ID-Link研究会 展示4 尾道方式薬薬連携の 取り組み 向井 弘恵1)、友滝恵子2) 1) 尾道市立市民病院薬剤部、 2)尾道中央薬局西御所店 薬薬連携の取り組み • 退院後も患者さんが安心して薬物療法が継続できるように退院時薬剤情報 提供書やお薬手帳を通じて保険薬局へ情報提供を行っています • 在宅主治医や保険薬局等の在宅スタッフと退院前ケアカンファレンスを開催して 薬物療法に関する情報交換を行っています • 天かけるID-Linkを介して保険薬局で検査値、処方内容や注射内容等を 閲覧することが可能となり、きめ細やかな服薬指導を実施しています 退院前ケアカンファレンス 天かけるID-Link 退院前ケアカンファレンス • 顔のみえる連携により退院後も安心して薬物療法を継続できる 病院側 在宅ケア側 司会進行役 地域医療連携室看護師 ソーシャルワーカー ケアーマネージャー 患者・家族 病院主治医 在宅・介護を必要と する 担当看護師 病院薬剤師 在宅主治医 訪問看護師 訪問介護士 薬局薬剤師 管理栄養士 訪問リハビリスタッフ 理学療法士 通所施設スタッフ 作業療法士 介護福祉機器担当者 言語聴覚士 民生委員 退院前ケアカンファレンスの開催連絡方法 (尾道市立市民病院) • 地域医療連携室から尾道薬剤師会を通じてFAXで参加を依頼する 地域医療連携室 参加要請を FAXで連絡 尾道薬剤師会 カンファレンス 開催連絡書 開催連絡内容 • • • • • • • 参加の可否 FAXで返信 薬局薬剤師 患者氏名 生年月日 住所 病院主治医 在宅主治医 かかりつけ薬局の有無 ケアカンファレンスの 開催日時及び場所 返信内容 • • • 参加の可否 調剤薬局の名称 薬剤師氏名 退院前ケアカンファレンスにおける情報提供内容 (尾道市立市民病院) • 事前に退院時薬剤情報提供書を作成し在宅スタッフへ配布する 退院時薬剤情報提供書 • 入院期間 • 診療科/主治医 • 副作用歴・アレルギー歴 • 服薬状況 (あり・なし) (自己管理・看護師管理) (コンプライアンス良・不良) • 調剤上の留意点 (一包化・簡易懸濁法・粉砕) • 入院中の経過 • 入院中の薬 (持参薬も含む) • 退院時の薬 • その他特記事項 尾道市立市民病院 薬剤師介入件数 :2010年4月~2014年3月 421件/463件(91%) 介入患者の環境変化及び薬の自己管理能力(尾道市立市民病院) • 退院後は約8割の方が在宅療養を継続されており1割の方が独居である • 8割以上の患者が自己管理が困難な状況で介護者や在宅スタッフとの連携が 必要不可欠である 平均年齢 80±9.4歳 介入患者(2010年4月~2014年3月) 薬の自己管理能力(n=421) 退院後の環境変化(n=421) 入院前 10 退院先 8 0% 独居 家族と同居 72 71 50% 介護施設 17 1 18 3 100% 回復期・療養型病院 可能 17% 困難 83% 在宅経腸栄養療法及び抗がん剤注入が必要な症例 患 者 80歳代 男性 病 名 悪性神経膠腫 既往歴 脳梗塞,2型糖尿病,高血圧 家族構成:妻と2人暮らし XX年3月26日 進行する嚥下障害、歩行障害があり脳腫瘍の疑いにて精査後、入院。 3月28日 胃瘻造設後、NST介入 4月11日 開頭腫瘍摘出術で生検を施行し、悪性神経膠腫と診断 4月18日 テモダール®カプセル+放射腺照射の併用療法を開始 5月24日 在宅経腸栄養療法に向けて妻に指導を開始 5月29日 テモダール®カプセル+放射線照射の併用療法が終了 6月5日 退院前ケアカンファレンスにて在宅スタッフへ情報提供 6月13日 経過良好にて在宅退院 在宅スタッフとの情報共有 テモダール®カプセルの留意点 退院後の処方薬 当院主治医から処方する薬剤 100mgテモダール®カプセル 2C 1日1回 20mgテモダール®カプセル 2C 1日1回 6月26日~7月1日 連日5日間 カイトリル®細粒2mg 1包 1日1回 副作用予防:悪心・嘔吐 バクタ®配合錠 2錠 1日1回 隔日 • 用法・用量(1日1回空腹時に注入) • 簡易懸濁法 (手袋・マスク着用) • 主な副作用症状(悪心・嘔吐・脱毛・便秘) • 副作用予防薬 • 注意すべき副作用(リンパ球数減少) • 投与スケジュールと次回受診日の確認 副作用予防:ニューモシスチス肺炎予防 在宅主治医から処方する薬剤 マグミット®330mg錠 3錠 1日3回 糖尿病用薬を注入 定期的に血糖確認を依頼 栄養剤の投与スケジュール 副作用予防:便秘 ラコールNF®配合経腸用液400ml 3包 1日3回 塩分補給について 塩化ナトリウム 栄養管理ファイルを妻に配布 3g 1日3回 1mgアマリール®錠 1錠 1日1回 50mgエクア®錠 2錠 1日2回 薬及び栄養剤の供給方法の確認 在宅療法に向けての問題点(抗がん剤の注入) テモダール®カプセルの注入を自宅で出来るかどうか心配です 妻 お宅を訪問してテモダール®カプセルを注入します ケアカンファレンス終了後に注入方法を教えてください 訪問看護 テモダール®カプセルの注入指導 ①手袋・マスク・エプロンの着用 (健康被害を防ぐ) ②注入シリンジの内筒を抜き、薬を入れる 内筒を戻し、55℃のお湯を20ml吸い取る ③注入シリンジにキャップをして溶解まで放置 ④薬剤を投与する。投与後はフラッシュを3回行い チューブ内に残った薬液を洗い流す ⑤注入後、使用済みのシリンジ、手袋、マスク等 は 医療廃棄物として廃棄 (大鵬薬品ホームページより引用) 在宅でテモダール®カプセルを注入後 妻 おかげ様で栄養剤・薬の注入は順調です 栄養管理ファイルの配布資料 胃瘻・栄養剤 薬の情報 薬・栄養剤 栄養剤の の調製方法 操作方法 薬・栄養剤の 注入手順 抗がん剤の 注入について 簡易懸濁法 器具の 洗浄・消毒方法 注入器の交換 について 薬剤情報提供書 お薬手帳 その他 ・簡易懸濁ボトルの説明 ・胃瘻トラブル対応マニュアル ・緊急連絡先 尾道薬剤師会が関与した退院前ケアカンファレンス実施状況 (2011.4~2014.12) 退院前ケアカンファレンス出席状況 (件数) 14 (件数) 退院前ケアカンファレンス実施状況 12 14 10 12 8 10 6 8 4 6 2 4 0 2011.4~2012.3 2 2012.4~2013.3 出席 0 2011.4~2012.3 2012.4~2013.3 尾道市立市民病院 欠席 2013.4~2014.3 2014.4~2014.12 該当薬局なし 2013.4~2014.3 2014.4~2014.12 尾道総合病院 退院前ケアカファレンス出席率 公立みつぎ総合病院 80 70 出 席 率 ( ) 上記の該当薬局なしとは、退院後の医療機関が 院内処方の場合やかかりつけ薬局が確認されて いないため、退院前の時点で薬局が確立されて いない場合です。 今後、麻薬、無菌調剤、医療材料の調達を保険薬局で 行うことが多くなると予想され、かかりつけ薬局の認識が 定着すれば参加率は上がってくると考えられます % 60 50 40 30 20 10 0 2011.4~2012.3 2012.4~2013.3 2013.4~2014.3 2014.4~2014.12 「天かける」医療・介護連携事業の情報共有システム • 同意を得た患者を対象に地域中核病院の処方、注射、検査値、画像などの情報 が閲覧できる • 処方箋の情報しかない場合に比べ、様々な情報を把握した上できめ細やかな服 薬指導及び処方監査が可能となる 処方 退院時サマリー 注射 尾道薬剤師会参加率:44%(38件/87件) 画像情報 検査値 (2014年12月時点) 6 保険薬局でのIDリンク活用事例 • • • • まず、患者に同意を得て、急性期病院の地域連携室にFAXで連絡し、通常翌日に は閲覧可能となります。 血液検査値などはもちろんのこと、CT、MR検査報告、退院・転科要約、化学療法 のレジメンなどの情報を得ることが出来ます。 情報収集により患者とのスムーズな会話と起こり得る副作用の情報を早めに得る ことが出来、より適格な服薬指導、アドバイスが行えるようになります。 同意を得た患者に限定されることや、設備投資、閲覧可能な情報の範囲は地域や 病院によって異なるなどの制限はありますが、患者の薬物療法をモニタリングする 上で大きなメリットとなっています。 退院・転科要約 MR検査報告書 CT検査報告 「天かける」医療・介護連携システムの活用症例 (例) 化学療法患者の情報を閲覧することで下記のようなメリットが得られる • 化学療法のレジメン内容を把握することが出来る • 病状の把握や薬の有効性の評価に役立つ • 副作用予防の指導や副作用の早期発見に繋がる JA尾道総合病院と保険薬局との化学療法連携シート 天かけるID-Linkの参加メリット 保険薬局からの意見 ① 情報共有について • 病状が書いてあるので理解しやすい • 病状について本人は多くを語りたがらないが、閲覧により正確に情報が 入手できたと思う • 過去に受けた検査が分かって、病歴が確認できた。 • 治療内容が明確になった。 • 薬の用量の調整したことが理解しやすい • 病院での注射内容が分かり注意すべき副作用チェック項目が明確になる • 質問する時間が省け、スピードアップする 天かけるID-Linkの参加メリット 保険薬局からの意見 ② 服薬指導・処方監査について • 入院前後の処方変更理由が分かり、具体的な説明ができた(以前は推測) • 他院、他科にも受診されていたので、病名の確認が速やかに行え、服薬指導 の質が向上した • 服薬指導の参考になり、病院での治療の話ができより深い話ができた • 化学療法を受けていることは聞いていたが、詳細は聞きづらい。あらかじめ 情報を得ていると服薬指導がやりやすい。 • 痴呆症などアドヒアランスが低下していても、併用薬をしっかり確認できる ため、お薬手帳を持参されない時にも役立つ。 結語 退院前ケアカンファレンス及びID-Linkを通じて薬学的情報を 移行先スタッフと情報共有することで、適切な薬物療法が継続できる 検査値、処方内容、画像情報、退院時サマリー等や注射内容等、多くの 情報を収集することでより適確な服薬指導を実施することが容易となる 患者や家族の在宅医療に対する不安を払拭及び他職種との信頼関係を 構築することができる 今後は、病院及び保険薬局の双方向に情報が提供・共有する機能拡充に 向けた取り組みに努める
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