デッサンの実技指導

使って輪郭線を描き、形を決める。大きな固
デッサンの指導実践
まりから、細部へ。最初から輪郭線で形を描
くのは難しいが、この方法なら、短時間で目
都立昭和高等学校主幹教諭 坂 本 的に合ったデッサンがしやすい。
2 友だちの肖像(美術Ⅱ)
本校は全日制普通科。中堅の進学校。芸術
イ ー ゼ ル、 画 用 紙( B 3)、 画 板 を 使 用。
は音美書2クラス3展開。1クラス25名。本
6時間。3、4人で輪になって行う。1週目(2
校で、何年か試みて、成果があったと思える
時間)は鉛筆で、2、3週でコンテで調子を
デッサン指導の実践例を紹介する。
つける。人の目、鼻、口のプロポーションを
1 彫塑のためのデッサン(美術Ⅰ)
教えておくと描きやすい。頭部、首、肩、腕
彫塑の制作は4週(8
などのつながりをしっかり把握させる。
時間)。ロダンなど彫刻作
品の鑑賞し、次に手の構
造を学習する。①F4の
スケッチブックに指を広
げた自分の手を置き、輪
郭線を描きとらせる。必
ず、腕は10cm程度入れる。②骨の構造を想
像して描かせる。ほぼ全
員、手首から腕にかけて
の構造がわからず、お手
上げとなる。 そこで、 レ
ントゲン写真や骨格図な
どの資料を参考に、構造
を描き加えさせる。
③構想を練り、 自分の
手をモデルにコンテで
デッサンを行う。
(約30分)
3 3つの立方体(美術Ⅲ)
ンテの腹をつかって、ま
子を想定して鉛筆でデッサンする。1個は、
一辺10㎝の立方体が3個、1点で接した様
半分くらいに折ったコ
ず腕や手首、 掌、 指をシ
ルエットで表す。全体の
バランスやつながりをよ
く確かめさせ、コンテの
調子を指でこすったりし
て、立体をイメージさせ
る。 次に、 前にある部分
は練り消しゴムで調子を
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明るくし、コンテの角を
アクリルガッシュで彩色。B3画用紙使用。
12時間。ケント紙で一辺10㎝の立方体を作
らせ、それを参考に、空間構成の構想を練り、
アイデアスケッチをしっかりさせる。3個が
同じ大きさに見えるか、また彩色した立方体
が他の2個と同じような明度差で塗り分けら
れるかがポイント。美大の過去の入試問題だ
が、難易度としては3年生に適している。
4 立方体のある校内風景(美術Ⅲ)
校内風景に任意の大きさの立方体を想定し
て描く。14時間。ケント
紙で1辺10cmの立方体
を作らせ、どのような場
合に1点透視と2点透視
を使い分けるかを学習す
る。 最 低 3 週 間 は「 線 」
で対象の空間を描き、地
平線や消失点の位
置 を 確 認 さ せ る。
生徒の根気が失せ
な い よ う、「 頑 張
5 さいごに
れ!」 と 励 ま し 続
描画材料の使い方などデッサンの基本をわ
け、 こ の 段 階 で 何
かりやすく教えることも重要だが、心構えを
度でも描き直させる。難易度は高い。
いかに持たせるかが課題。以前、宮崎多美子
4 石膏デッサン(夏期講習、公開講座)
先生の自画像デッサンの優れた授業発表を聞
初心者を対象とした集中的な授業。夏期講
いて、発奮して私も何度か挑戦したが、なか
習は、木炭で、首像と胸像の2点を3日間(15
なか上手くいかない。より深く「視る」とい
時間)で制作。公開講座では、同様の内容を
う未知の領域にいかに、生徒を誘い、意欲を
3週(10時間)で制作。
奮い立たせられるか。授業に対する教師の覚
初心者に伝えるポイントは、「稜線」「形の
悟のほどが問われるように思う。
つながり」、「光の方向」。 1枚目の制作で、
この3つのポイントを重点的に指導し、多少
形がおかしくても深追いさせない。続けて2
枚目に取りかかる。2枚目では必ず上達し、
成長を実感できると力説し、生徒たちに信じ
させる。必要と感じたら、形の狂いを直すこ
とも大切。
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公開講座 下段1枚目 上段2枚目