演示用回路板の製作

演示用回路板の製作
北里大学 山本明利
1.概要
秋 月 電 子 の 「 超 小 型 2 線 式 デ ジ タ ル 電 圧 計 」( 以 下 「 デ ジ タ ル 電 圧 計 」) を 使 用 し て 、
キルヒホッフの第2法則(直列接続時の電圧の関係)を演示する教材を製作した。基本的
な ア イ デ ア は YPC の 2002 年 11 月 例 会 ( 文 献 (1)) で 紹 介 し た 銅 箔 テ ー プ に よ る 演 示 用 回
路 と 同 じ で あ る 。各 部 に デ ジ タ ル 電 圧 計 を 配 置 す る こ と を 前 提 に し て い る 点 だ け が 新 し い 。
2.材料
・ 超 小 型 2 線 式 デ ジ タ ル 電 圧 計 ( 秋 月 電 子 ) 1 個 250 円 ( 税 込 ) × 必 要 な 個 数
・ プ ラ ス チ ッ ク ト レ ー( 百 均 で 調 達 。基 板 と し て 使 用 。絶 縁 性 の 高 い 板 な ら 何 で も よ い 。)
・バナナジャック(必要数)とバナナチップ(必要数)
・006 P 電池(1~2個)とバッテリースナップ
・ 抵 抗 器 ( 20 ~ 100 Ω 程 度 の 固 定 抵 抗 器 や 100 Ω B タ イ プ の ボ リ ウ ム な ど )
・銅箔テープ
・フェライト磁石とフェルトパッチ(スチール黒板面接着用)
3.装置の説明と実験計画
百均のトレーを裏返しに使い基板とした。バナナジャックの裏側への出っ張りが、机の
面に当たらないような深さのトレーを選ぶ。木製の浅い箱や写真用パネルでもよい。
回路に沿って必要な穴開けをし、銅箔テープで配線をした。角の部分は銅箔テープを切
らずに折り曲げて使うか、軽くハンダ付けして電気的接触を確保する。穴の位置にバナナ
ジャックをとりつける。銅箔テープと電気的に接触するように、絶縁ブッシュはすべて裏
側 に ま わ し 、 表 面 に は ラ グ 板 と 端 子 穴 の み が 出 る よ う に し た 。( 写 真 左 )
スチール黒板に貼り付けられるように、フェルトクッションに接着したフェライト磁石
を裏面に取り付けた。また電池を固定するためのマグネットクリップ(ネオジム磁石)を
電 池 取 り 付 け 位 置 付 近 に 接 着 し た 。( 写 真 中 )
20 ~ 100 Ω 程 度 の 固 定 抵 抗 器 や ボ リ ウ ム が 取 り 付 け ら れ る よ う に バ ナ ナ チ ッ プ を ハ ン ダ
付 け し た 。( 写 真 右 )
使 用 す る 抵 抗 は デ ジ タ ル 電 圧 計 を 流 れ る 電 流 ( 15mA 前 後 ) が 大 き く 影 響 し な い よ う に
定 め る 。 電 源 電 圧 を 考 慮 し て 、 抵 抗 を 流 れ る 電 流 が 100mA 前 後 と な る よ う に し た 。 な お 、
デ ジ タ ル 電 圧 計 の 動 作 電 圧 が 3 ~ 15V で あ
ることも実験の設計上考慮すべき重要なフ
ァ ク タ ー で あ る 。 電 源 電 圧 が 15V を 越 え る
場 合 は 20V 対 応 の 改 造 ( 文 献 (2)) が 必 要 に
なる。
本 稿 の た め の 予 備 実 験 で は 、 電 源 は 006P
マ ン ガ ン 電 池 を 2 個 直 列 ( 最 大 18V) に し 、
抵 抗 は 20 Ω ,40 Ω ,80 Ω お よ び 100 Ω B タ イ
プのボリウムとした。
4.実験の例
①電圧の抵抗分割
右 の 図 は 40 Ω と 80 Ω を 直 列 接 続 し た 回 路
の 各 部 の 電 圧 を 示 し て い る 。 前 者 が 4.25V、
後 者 が 8.24V を 示 し て い て 、電 源 電 圧 が 12.5V
なのでぴったり第2法則が成り立っている
ようだが、電圧計を通る電流が点灯する数
字のセグメントの数に応じて変動するので、
互いに干渉して表示は極めて不安定である。
0.01V の 桁 は 無 視 し て 、 4.3V + 8.2V = 12.5V
程 度 に 見 る の が よ い 。 そ れ で も 80 Ω の 抵 抗
の 電 圧 は 40 Ω の 2 倍 に は な っ て い な い 。
右 の 図 は 同 じ く 20 Ω と 80 Ω の 直 列 の 場 合
で あ る 。 電 圧 は そ れ ぞ れ 2.57V、 9.42V を 示
し て い て 、 そ の 和 は 電 源 電 圧 12.0V に 一 致 し
て い る が 80 Ω が 4 倍 と い う わ け で は な い 。
2.57V は 動 作 保 証 電 圧 の 下 限 を 下 回 っ て お
り 、 数 値 は 当 て に な ら な い 。 3V と い う 下 限
を考えると、1:4の抵抗分割を演示する
に は 、 15V 以 上 の 余 裕 の あ る 電 源 が 必 要 で あ
ることがわかる。
な お 、 006P マ ン ガ ン 電 池 で は 100mA の 負
荷 は 大 き す ぎ て 、 起 電 力 18V の は ず が 、 端
子 間 電 圧 12V ま で 降 下 し て い る こ と に 注 目
し た い 。 15V 程 度 で 安 定 化 し た 直 流 電 源 装
置を使う方がよいかもしれない。
②回路の切断
直列にした抵抗の一方を取り外して回路
を切断したら各部の電圧はどうなるか、と
いう問いは高校物理では有効だろう。あら
かじめ予想を立てさせてから演示するとよ
い 。 右 上 の 写 真 は 40 Ω 2 個 直 列 の 右 側 の 抵
抗を外した場面である。それまでは二等分
されていた電圧がすべて回路の切断部分に
かかる。
残 念 な が ら 、 電 池 が 15.2V、 切 断 部 分 が
14.7V と 微 妙 に 一 致 し な い の は 、 電 圧 計 を 流
れる電流による電圧降下があるからで、計
算 上 は 15mA × 40 Ω = 0.60V で お よ そ つ じ つ
まは合っている。
③ボリウムのはたらき
直列接続による電圧の抵抗分割の考え方
が理解できたら、音量調節などに使うボリ
ウムのはたらきを紹介しておきたい。応用
上重要な回路素子である。つまみを回転す
る と セ ン タ ー タ ッ プ の 接 点 が 摺 動 し て 、 100
Ωの抵抗を任意の比に分割する。
右に回せば右側の抵抗が減り、左側の抵抗が増すので、それに比例して左右の電圧も連
続的に変化する。どのような比にしても左右の電圧の和は電源電圧に等しいことを、一目
瞭然に示すことができる。
な お 、 3.0V を 切 る と 表 示 が 消 え て し ま う の で 、 左 右 ど ち ら に も 回 し 切 ら な い よ う に 注 意
しながらデジタル電圧計の動作電圧の範囲内で実験する。
【参考文献】
(1)YPC 例 会 速 報 2002 年 11 月 http://www2.hamajima.co.jp/~tenjin/ypc/ypc02y.htm
(2)秋 月 電 子 通 商 「 超 小 型 2 線 式 LED デ ジ タ ル 電 圧 計 」 デ ー タ シ ー ト
http://akizukidenshi.com/download/ds/tekivi/DC_Voltmeters_Rw2c.pdf
(3)YPC 例 会 速 報 2014 年 12 月 http://www2.hamajima.co.jp/~tenjin/ypc/ypc14z.htm