避難所における快適環境を提供する高機能建材の開発 【開発の目標】 避難生活での快適環境を提供するため、吸音・遮音性、抗菌・防臭性などの機能を備え た、環境にも配慮したパーティション、仮設住宅用建材を開発します。 【成果の概要】 原材料に抗菌やリラックス作用があると言われている県産ヒノキ間伐材木削片とイグサ を用いて、吸音性や吸音・遮音性を有する2タイプのパネルを開発しました。 パネルは素材や密度の異なるボードを積層することで、ヒノキ無垢板に近い遮音性を有 したうえで、人の耳の最も感度が高い周波数帯(1kHz~3.5kHz)において、ヒノキ無垢板の 6倍以上の吸音性を実現しました。 これら開発したパネルは、避難所におけるパーティションや仮設住宅における壁材など への利用が可能なほか、一般建築における高機能建材としての利用も期待されます。 図 1 試作品 写真左:吸音・遮音型(表面 ヒノキ) 写真右:吸音型(表面 イグサ) 【試作品の構造及び主な仕様】 素材や密度の異なるボードを積層してパネ イ グ サ ボ ー ド 低 密 度 桧 ス ト ラ ン ド ボ ー ド イ グ サ ボ ー ド イ グ サ ボ ー ド 低 密 度 桧 ス ト ラ ン ド ボ ー ド 桧 ス ト ラ ン ド ボ ー ド ルを製作しました。図 2 に吸音型及び吸音・ 遮音型のパネル断面図を示します。ここで使 用した各ボードの厚み及び密度は以下のとお りです。 ・イグサボード 約 6mm 厚、約 0.17g/cm3 ・低密度桧ストランドボード 約 8mm 厚、約 0.31g/cm3 ・桧ストランドボード 吸音型 吸音・遮音型 図 2 パネル断面図 約 6mm 厚、約 0.70g/cm3 【試作品の音響特性】 音響特性評価として、吸音率測定及び音響透過損失測定を行いました。図 3 に吸音率、 図 4 に音響透過損失の測定風景及び結果を示します。グラフには中心周波数帯域毎の測定 値が表示されていますが、吸音性は吸音率の値が大きいほど、遮音性は音響透過損失の値 が大きいほど性能が高いことを示します。なお、試験室容積の関係により、中心周波数 250Hz 以下の値は参考値となります。 吸音型及び吸音・遮音型の吸音性は、ヒノキ無垢板に対してほぼ全音域で向上が見られ、 中心周波数 1kHz 以上の吸音率は 0.3 以上でした。人の耳の最も感度が高い 1kHz~3.5kHz の周波数において、入射音を 3 割以上吸収する性能を確認しました。 1.0 0.8 吸 音 率 0.6 ○:吸音型 ●:吸音・遮音型 *:ヒノキ無垢板 0.4 0.2 0.0 125 250 500 1000 2000 4000 中心周波数(Hz) 図 3 吸音率測定風景及び結果 吸音型の遮音性は、ヒノキ無垢板に対 40 ○:吸音型 ●:吸音・遮音型 *:ヒノキ無垢板 して 10~20dB 程低い性能でした。また吸 音・遮音型の遮音性は、特に低中音域で ヒノキ無垢板よりも劣りますが、遮音面 として用いた桧ストランドボードの効果 により、ヒノキ無垢板に近い遮音性が得 られました。 30 20 ( 音 響 透 過 損 失 d B ) 10 0 63 125 250 500 1000 2000 4000 中心周波数(Hz) 図 4 音響透過損失測定風景及び結果 [岐阜県生活技術研究所 担当:木村]
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