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ニッセイ基礎研究所
No.14-196
10 Feb. 2015
【インドGDP】
10-12 月期は前年同期比+7.5%
~原油安の追い風で景気回復トレンドは鮮明に~
経済研究部 研究員 斉藤 誠
(03)3512-1780 [email protected]
1. 10-12 月期は前年同期比+7.5%
インド中央統計機構(CSO)は 1 月 30 日に、国家会計の基準年度を 2004-05 年度から 2011-12
年度に切り替えたと発表した。この変更に伴い、2013 年度(13 年 4 月~14 年 3 月)の実質国内総
生産(GDP)の成長率は前年度比+6.9%と、これまでの同+4.7%から上方修正された。12 年度の
成長率も同+4.5%から同+5.1%に上方修正された。また、今回の基準改訂によって景気が反転上昇
した時期も前倒しとなった。景気の反転上昇は、旧基準の下では昨年 4-6 月期と見られていたが、
新基準の下では 13 年 4-6 月期には既に7%まで回復していたことになる。なお、CSOは基準改
訂によってGDP統計が国際基準に近付き、経済活動の実態が把握しやすくなるとしている。
CSOは 2 月 9 日に、2014 年 10-12 月期の国内総生産(GDP)を公表した。実質GDP成長率
(需要側)は前年同期比+7.5%の増加と、前期の同+8.2%(旧基準で同+5.3%)から鈍化した。ま
た、2014 年度の成長率(見通し)は前年度比+7.4%と、政府予想の 5.5%から大幅に上昇した。
成長率を需要項目別に見ると、個人消費・投資の鈍化と輸出の低迷が目立つ(図表1)。内需は、
政府消費が前年同期比+31.7%(前期:同+5.8%)と大幅に増加したが、全体の6割を占める個人
消費が前年同期比+3.5%(前期:同+8.7%)、投資が前年同期比+1.6%(前期:+2.8%)とそれぞ
れ鈍化した。また純輸出については、輸出が前年同期比▲2.8%(前期:▲3.8%)と2期連続で減
少し、輸入は前年同期比+1.1%(前期:同+1.2%)と鈍化した。結果、純輸出の成長率への寄与度
は▲1.0%ポイント(前期:▲1.4%ポイント)とマイナス幅は縮小した。
産業別の総付加価値(GDA)を見ると(図表2)、第一次産業と第二次産業が成長率を押し下
げたことが分かる。第一次産業が前年同期比▲0.4%(前期:同+2.0%)とマイナスに転じ、第二
次産業は前年同期比+3.9%(前期:同+6.0%)と鈍化した。主要の製造業は前年同期比+4.2%(前
期:同+5.6%)と小幅鈍化に留まり、建設業は前年同期比+1.7%(前期:同+7.2%)と大幅に鈍化
(図表1)
(前年同期比)
12%
10%
8%
(図表2)
インドの実質GDP成長率(需要側)
実質GDP成長率
(新基準)
(前年同期比)
12%
誤差など
実質GDP成長率
(旧基準)
10%
第三次産業
(金融・保険・不動産・事業サービス)
実質GDP成長率
第三次産業
(公共サービスなど)
8%
6%
在庫変動
投資
6%
4%
政府消費
4%
2%
2%
個人消費
0%
0%
第二次産業
第三次産業
(小売・ホテル・運輸・通信)
▲2%
▲2%
純輸出
▲4%
2012-13
(資料)CEIC
1|
インドの実質GVA成長率(産業別)
2013-14
2012-13
2014
4-6月期
2014
7-9月期
2014
10-12月期
(年・四半期)
第一次産業
▲4%
2013-14
2014
4-6月期
2014
10-12月期
(年・四半期)
(資料)CEIC
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2014
7-9月期
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した。一方、成長を支える第三次産業は、前年同期比+13.5%(前期:同+10.1%)と加速した。第
三次産業の中では、小売・ホテル・レストラン業が前年同期比+7.2%(前期:同+8.7%)と鈍化し
たものの、金融・不動産業が前年同期比+15.9%(前期:同+13.8%)
、行政・防衛が前年同期比+20.0%
(前期:同+6.0%)と増加した。
2.原油安の追い風で景気回復トレンドは鮮明に
インド経済の先行きは、昨秋からの原油価格の下落による経常赤字・財政赤字の改善および高イ
ンフレ・高金利の緩和を通じて、景気の回復トレンドがより鮮明になると見ている。まず、増加傾
向にあった輸入は原油安を始めとした資源価格の下落を受けて 12 月に前年比▲4.8%とマイナスに
転じ(図表3)
、年率換算した貿易収支(対GDP比)は約▲5.5%と前月の▲9.4%から縮小した。
こうした貿易赤字の縮小は経常収支の改善に繋がり、通貨の安定に寄与する。また、原油安は財政
面でもプラスに作用している。政府は 10 月に軽油に対する補助金を撤廃し、11-12 月にガソリンと
軽油の燃料税を 2 ヵ月続けて引き上げたが、原油価格が下落したために小売価格の値上げを回避で
き、同時に財政再建の取組みを進展させることができた。これによって生まれた財源は来年度予算
の財政赤字の縮小およびインフラ投資に配分されると見られる。
消費者物価指数は昨年 12 月に前年比 5.0%と、原油価格の下落を受けて昨年 7 月の前年比 8.0%
から低下した。物価はここ数年高止まりしていただけに、今後は実質所得の増加による個人消費の
回復が期待される。また、インド準備銀行(中央銀行)は予想以上のインフレ圧力の鈍化を受けて、
1月に緊急利下げ(政策金利を 8%から 7.75%に引下げ)、2 月に法定流動性比率の 0.5%の引下げ
に踏み切った(図表4)。中央銀行は追加利下げに向けては、物価の安定推移や財政健全化が必要
などと示しており、今月末に発表される来年度予算案で財政赤字目標(GDP比で財政収支▲
3.6%)の達成が示されれば、先行きの追加利下げの可能性は高まり、企業の投資意欲は改善する
ものと見られる。
懸念材料としては、引き続きねじれ国会(上院は野党が多数派)が挙げられるが、新政権は国会
の承認が得られない保険分野への外資の出資比率規制などにおいては大統領令の発布によって対応し
ている。新政権はこうした改革に向けた前傾姿勢により、企業のインドへの投資意欲を繋ぎ止めること
ができている。
(図表3)
(前年同期比、%)
80
(図表4)
インドの貿易収支
(億ドル)
300
60
(%)
(前年同月比、%)
インドの金利、貸出残高
13
30
200
40
11
輸入伸び率
輸出伸び率
20
25
市場金利
100
9
0
20
0
貿易収支(右軸)
▲ 20
▲ 100
7
政策金利
石油輸入伸び率
▲ 60
▲ 80
2011
2012
(注)後方3期移動平均後の伸び率と貿易収支
(資料)CEIC
15
貸出残高伸び率(右軸)
▲ 40
▲ 200
▲ 300
2013
2014
(月次)
5
10
預金準備率
3
2010
(資料)CEIC
2011
2012
2013
2014
5
2015
(月次)
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