県内企業の 3 分の 2 近くが地方創生に「関心あり」

2015/2/12
松本・長野・飯田支店
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特別企画:地方創生に対する長野県内企業の意識調査
県内企業の 3 分の 2 近くが地方創生に「関心あり」
重要な政策としては「若い世代の経済的安定」が最多
はじめに
国内経済を分析するうえで、常に指摘されるのが大都市圏と地方の格差。アベノミクスによる
景気回復に関しても、大企業・中央官庁が集中する首都圏(大都市圏)と過疎地域も含む地方と
の間には、受け止め方に大きな格差が生じている。
日本経済の発展には地域経済の活性化が欠かせない。2014 年 11 月 21 日に可決・成立した「ま
ち・ひと・しごと創生法」及び「地域再生法の一部を改正する法律」では、人口減少・超高齢社
会への取り組みとして地方創生を掲げている。また、今年1月 20 日には内閣府地方創生推進室が
設置され、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部とともに安倍政権における地方創生に向けた動
きが本格化してきた。
そこで、帝国データバンクでは地方創生に対する企業の見解について調査を実施した。この調
査は、TDB 景気動向調査 2014 年 12 月調査とともに行っている。調査期間は 2014 年 12 月 15 日~
2015 年1月5日。調査対象は全国2万 3324 社、長野県 484 社で、有効回答企業数は全国1万 583
社(回答率 45.4%)
、長野県 226 社(同 46.7%)
。
調査結果(要旨)
■地方創生に「関心あり」は 65.5%、全国を 12.2 ポイント上回る
地方創生について、「関心あり」と回答したのは全体の 65.5%と3分の2近くに達した。
「関心なし」は 6.6%、「どちらでもない」は 22.1%だった。全国調査で「関心あり」は
53.3%。長野県は全国を 12.2 ポイント上回っている。
■地方創生に重要な政策、
「若い世代の経済的安定」のほか広範囲に及ぶ
地方創生においてどのような政策が重要かを複数回答で尋ねたところ、最も多かったの
が「若い世代の経済的安定」の 47.3%。このほかにも、30%以上となったのが8項目に達
しており、課題が山積していることを示している。
■ビッグデータの活用、「重要である」は 42.5%
地方版・総合戦略策定におけるビッグデータの活用に関しては、
「重要である」が 42.5%
となり、
「重要でない」の 7.5%を大きく上回った。一方、「どちらでもない」
(33.6%)と
「分からない」(16.4%)の合計が半数に達しており、ビッグデータに関する情報や国の方
針がまだ十分浸透していない状況も窺える。
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特別企画:地方創生に対する長野県内企業の意識調査
1.都道府県別で大きな格差がある地方創生への関心、長野県は高い方から 19 番目
地域経済を活性化させる地方創生について、企業はど
の程度関心を抱いているのだろうか。「関心あり」(「非
常に関心がある」と「関心がある」の合計)と回答した
企業は 65.5%(148 社)に及び、全体の3分の2近くを
占めた。このほかは、多い順に「どちらでもない」(22.1%、
50 社)、「関心なし」(「関心はない」と「全く関心はな
い」の合計、6.6%、15 社)、「分からない」(4.9%、11
社)、
「地方創生を知らない」
(0.9%、2社)
。
「関心あり」
は「関心なし」の 9.9 倍と約 10 倍に達しており、地方創
生に対する県内企業の関心の高さを窺うことができる。
他方、企業からは「何をもって地方創生とするのか」「中
央で『地方創生・再生』と言われても実感がわかない」
「国のあり方を根本的に変える覚悟がなければ無理」と
いった声も聞こえてくる。
規模別にみると、
「関心あり」は「大企業」の 73.2%、
「中小企業」の 63.8%、「(中小企業のうち)小規模企
業」の 63.1%。また、主要業界別では、
「卸売」の 74.5%、
「建設」の 64.3%、「サービス」の 61.9%、「製造」の
61.4%が「関心あり」と回答した。規模間よりも業界間
で差が大きいが、総じて地方創生に対する関心は高い。
なお、
「関心あり」の構成比を都道府県別に比較すると、
鹿児島県(77.8%)
、宮崎県(76.0%)
、高知県(72.9%)
、
秋田県(72.9%)、長崎県(72.0%)、青森県(70.6%)、
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福島県(70.1%)、徳島県(70.0%)が 70%以上になったのに対し、東京都(42.2%)
、愛知県(44.3%)
、
大阪府(44.7%)
、神奈川県(45.5%)
、埼玉県(46.0%)
、千葉県(46.8%)は 40%にとどまるな
ど、将来人口の急減や働き手不足が懸念されている地域と大都市圏の間で大きな差が生じている。
最も高い鹿児島県と最も低い東京都の間には 35.6 ポイントの格差がある。
なお、長野県の 65.5%は高い方から 19 番目に位置している(全国の 53.3%を 12.2 ポイント上
回る)
。
2.重要な政策、
「若い世代の経済的安定」が長野県・全国ともにトップ
「まち・ひと・しごと創生本部」では、地方創生に向けた政策の検討が進められている。地方
創生においてどのような政策が重要と考えるかを尋ねたところ(複数回答)
、最も多かったのは「若
い世代の経済的安定」で、47.3%(107 社)と半数近い企業が選択した。
「若い世代の経済的安定」
は全国でも 43.7%で最多となっており、企業は働き手として地方を担うことになる若い世代が経
済的に安定して暮らしていけるような政策を最も重視していることが明らかになった。
以下、
「大都市から地方への『人材還流システムの構築』
」
(39.4%、89 社)
、「地域を支える個別
産業分野の戦略推進」「地方移住の推進」
(各 36.7%、83 社)などと続き、30%以上の項目が9つ
に及ぶなど重視する政策、言い換えれば地方創生を実現するための課題が非常に多いことを示し
ている。
「企業・官庁・大学の地方移転の促進」「地方産業の育成・税制の優遇」「地方における就業の
場の増加策」といった意見を寄せる企業もあった。
3.ビッグデータの活用、判断を保留する企業も多数
地方創生関連法では、地方自治体が定量的・客観的なデータ分析に基づき、地方特性を踏まえ
た地方版・総合戦略の策定を求めている。そのため、国はビッグデータを活用した「地域経済分
析システム」
(企業が保有する企業間取引データ等を活用し、地域経済に関する様々なビッグデー
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タから都道府県・市町村の産業や企業の実体〈産業マップ〉などを分かりやすく「見える化」す
るシステム)を開発し、その分析手法の普及を図るとしている。そこで、このような考え方で地
方自治体が地方版・総合戦略を策定することに対する考
え方を尋ねてみた。
「重要である」と回答した企業が 42.5%(96 社)で最
も多く、「重要ではない」(7.5%、17 社)の5倍以上に
達している。企業の中には、「基本的なシステムづくりや
データ分析は重要」とする意見がある反面、
「調査や分析
ばかりに時間や費用をかけても無駄」との指摘もあった。
一方、
「どちらでもない」が 33.6%(76 社)、
「分からな
い」が 16.4%(37 社)存在。両者を合計すると全体のち
ょうど半数に達しており、どのようなデータになるのか、
誰がどんな観点で使うのか、どのくらいの費用がかかる
のかなど不明な点もあるため、現時点では判断を保留す
る企業も少なくないことがみてとれる。
3.まとめ
1月 20 日、政府は内閣府地方創生推進室を設置し、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務
局とあわせて、安倍政権における地方創生の動きが本格化している。
日本が直面する人口減少、特に地方における人口流出は地域経済縮小という悪循環が懸念され
るが、本調査では県内企業の 65.5%、全国企業の 53.3%と半数超が地方創生に関心を持っている
ことが判明した。とりわけ、将来人口の急減や働き手の不足が予測されている地域における地方
創生への期待は高い。また、地方創生に向けた政策では、若年世代の支援を重視する回答が多く
みられた。若い世代が経済的に安定することで、人口流出を防ぎ、地域経済の活性化に資すると
考えている様子が窺える。さらに、企業は地方自治体が定量的・客観的データを活用する重要性
を認識しているものの、現状では判断しかねている企業も多く、地域特性や構想力を持って地方
版・総合戦略を策定することが重要となろう。
“いつの時代も日本を変えてきたのは「地方」
”である。そして、地域経済が活性化することは
日本経済を勢いづけると同時に、地方が抱える問題の解消にもつながる。そのため、地方創生の
成否は将来の日本社会の姿を規定することにもなり、かけ声だけに終わらせることなく、スピー
ド感のある政策実行が求められる。
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