【MR14-01他】 東部インド洋湧昇域研究イニシャティブ

東部インド洋湧昇域研究イニシャティブ ○植木 巌・安藤 健太郎・升本 順夫(海洋研究開発機構) 1990 年代後半のインド洋ダイポールモード現象の発見や、その後の東部熱帯インド洋へのトライト
ンブイの展開を契機に、インド洋での気候変動モードやそれらが及ぼす影響に関する研究が活発にな
ってきた。それらに加え、近年ではマッデンジュリアン振動等の季節内変動を対象とした CINDY/DYNAMO
のような観測キャンペーンも精力的に展開されている。国際的な研究の枠組みの一つである CLIVAR
(Climate and Ocean: Variability, Predictability and Change)と深く関係するこれらの物理過程
の研究に加えて、SIBER(Sustained Indian Ocean Biogeochemistry and Ecosystem Research)によ
る生物地球化学および生態系研究も盛んに行われるようになってきたのが最近のインド洋研究の進展
状況である。 そうした背景と共に、1960 年代前半に SCOR が中心となって行った国際インド洋調査(IIOE)から
半世紀と言う区切りの時期を迎え、改めてインド洋全域を対象とする国際的な共同プロジェクト(国
際インド洋調査-2;IIOE-2)の必要性が IOC および SCOR でも提起されている。本発表ではこの IIOE-2 の主要コンポーネントの一つとして、東部インド洋の湧昇域を対象海域とする物理および生物地球化
学共同の国際研究プロジェクトである東部インド洋湧昇域研究イニシャティブ(EIOURI)の進捗状況
を紹介する。 1959-65 年に行われた IIOE には、世界の 14 カ国から 46 隻の研究船等が参加し、物理、化学、生物、
地質および気象に関する総合的な観測を行った(図1)。日本からも 1963/64 年に海鷹丸、おしょろ丸、
かごしま丸、耕洋丸が東部インド洋の南北側線観測に加わり大きな貢献をした。IIOE は、インド洋の
詳細を記述する上で非常に重要な役割を果たしたが、半世紀を経た現在では衛星やアルゴなど新たな
観測手法が実現し、インド洋における観測網(IndOOS/RAMA)の構築も進み、CINDY/DYNAMO のような
プロセス研究も行われるようになった。さらに数値モデリングも飛躍的に発展し、より詳細で総合的
なインド洋域の海洋変動を明らかにすることが可能になっている。そこで、CLIVAR/GOOS インド洋パネ
ル、SIBER、および IOC Perth office が中心となり、SCOR の協力を得ながら、新たなインド洋域の総
合的な研究プロジェクトとして IIOE-2 を行うべく、2013 年 5 月に第1回目の計画策定会議がインドで
行われた。IIOE-2 は、2015 年から 2020 年の期間を中心として、各国の独自の研究プログラムを総合
しながら、インド洋域の変動と物理-生物化学相互作用という全体の科学目標を実現するためのプロジ
ェクトとする方向性が示された。現在では各国での国内プロジェクトの検討とともに、国際的な研究
の枠組みをベースとした観測プロジェクトの策定が進められている。 我々のグループはこれまでに CLIVAR/GOOS インド洋パネルと SIBER の共同提案の形で進められてい
る EIOURI の策定に参画してきた。EIOURI は IIOE-2 と同じ 2015-2020 年をターゲット期間として、東
インド洋の湧昇域研究における物理、生物地球化学、生態系研究の分野関連系を強化し、観測、解析、
モデリングの総合的なアプローチを試みるものである。そのなかで我々は特にスマトラ島、ジャワ島
沖の湧昇域とオーストラリア北西のニンガルー沖合を対象として研究を進める予定である。前者に関
しては沿岸湧昇とインド洋ダイポールモード現象との関係性に注目すると共に、生物地球化学的観点
から沿岸湧昇と基礎生産/植物プランクトンの関係および渦活動に伴うその変調に注目する。後者に関
しては近年発見されたオーストラリア北西岸沖のニンガルー・ニーニョ/ニーニャ現象と当該海域の優
勝の影響を含む混合層過程の関係に注目する。2017 年の公募航海では大気観測を主体としたプロジェ
クトである Year of Maritime Continent とも連携し観測を進める予定である。そのように機構船舶に
よる観測を中心に研究を進め、東部インド洋湧昇域の総合理解を深めることで EIOURI の中核を成し、
国際的な計画である IIOE-2 に大きく貢献を進める事を目指すのが我々の目的である。 図 1:1960 年代に実施された IIOE における測線図