カルフェントラゾンエチル資料 水質汚濁に係る農薬登録保留基準の設定に関する資料 カルフェントラゾンエチル Ⅰ.評価対象農薬の概要 1.物質概要 エチル=(RS)−2−クロロ−3−[2−クロロ−5−(4−ジフルオロメチ 化学名 ル−4,5−ジヒドロ−3−メチル−5−オキソ−1H−1,2,4−トリアゾ ール−1−イル)−4−フルオロフェニル]プロピオナート 分子式 C15H14Cl2F3N3O3 分子量 412.19 CAS NO. 128639-02-1 構造式 ※化学名を MAFF 名から IUPAC 名に修正(平成 27 年 2 月 5 日告示) 2.開発の経緯等 カルフェントラゾンエチルは、広範囲の広葉雑草に対して効果を示すトリアゾリノ ン系の除草剤であり、現在小麦、ばれいしょ、果樹、芝、樹木等に対して適用がある。 平成 20 年 2 月に農薬取締法に基づく適用拡大申請(適用作物:移植水稲)がなさ れている。 3.各種物性等 外観・臭気 黄色粘稠液体、かすかな石 油のような臭い 土壌吸着係数 密度 1.457 g/cm3(20℃) オクタノール 融点 -22.1℃ /水分配係数 沸点 蒸気圧 土壌残留性 (推定半減期) 350∼355℃(760 mmHg) 178℃(2.2 mmHg) 7.2×10-6 Pa(20℃) 畑地 かに分解したため。)1) logPow = 3.36(20.3℃) 生物濃縮性 水溶解度 1.6×10-5 Pa(25℃) 測定不能(試験系中で速や − 12 mg/L(20℃) 22 mg/L(25℃) 23 mg/L(30℃) 圃場試験 1 洪積火山灰、軽埴土 1 日以内 (約 32 日) 2) 真砂土造成、砂壌土 約 2 日 (約 3 日) 2) 火山灰、軽埴土 3.6 日 (29 日) 2) 洪積、壌質砂土 1 日以内 (8.9 日) 2) カルフェントラゾンエチル資料 容器内試験 水田 水質汚濁性 圃場試験 試験水田 (推定半減期) 洪積火山灰、軽埴土 1 日以内 (約 53 日) 2) 真砂土造成、砂壌土 1 日以内 (約 4 日) 2) 火山灰、軽埴土 − (85 日) 2) 洪積、埴壌土 − (15 日) 2) 灰色低地土、軽埴土 − (約 2 日) 2) , 3) 多湿黒ボク土、埴壌土 − (約 2 日) 2) , 3) − :推定半減期は算出されていない。 1) カルフェントラゾンエチルの土壌吸着係数が測定不能なため、主要代謝分解物 B∼E について 土壌吸着試験が実施されている。各代謝物の土壌吸着係数(KFadsoc)は以下のとおり。 代謝物 試験条件 KFadsoc 欧米土壌、20℃ 6.3∼47.7 日本土壌、25℃ 36.0∼46.6 C 欧米土壌、20℃ 27∼260 D 欧米土壌、20℃ 44∼333 E 欧米土壌、20℃ 4∼41 B 代謝分解物 B:2-クロロ-3-[2-クロロ-5-(4-ジフルオロメチル-4,5-ジヒドロ-3-メチル-5-オキソ-1H-1,2,4-トリア ゾール-1-イル)-4-フルオロフェニル]プロピオン酸 代謝分解物 C:3-[2-クロロ-5-(4-ジフルオロメチル-4,5-ジヒドロ-3-メチル-5-オキソ-1H-1,2,4-トリアゾール-1イル)-4-フルオロフェニル]プロピオン酸 代謝分解物 D:3-[2-クロロ-5-(4-ジフルオロメチル-4,5-ジヒドロ-3-メチル-5-オキソ-1H-1,2,4-トリアゾール-1イル)-4-フルオロフェニル]アクリル酸 代謝分解物 E:2-クロロ-5-(4-ジフルオロメチル-4,5-ジヒドロ-3-メチル-5-オキソ-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イ ル)-4-フルオロ安息香酸 2) 括弧内の推定半減期は、カルフェントラゾンエチルの測定値及び代謝分解物 B∼E の測定値 (カルフェントラゾンエチルに換算した値)の合計値について算出された推定半減期を示す。 3) 環境省において算出した推定半減期を示す。なお、当該推定半減期は、有効成分及び代謝分解 物が一次反応により減少すると仮定して、最小自乗法により算出した。 Ⅱ.安全性評価 許容一日摂取量 (ADI) 0.03 mg/kg 体重/日 環境省は、平成 14 年に、作物残留に係る農薬登録保留基準を設定するにあたってカルフ ェントラゾンエチルの安全性評価を行い、ADIを 0.03 mg/kg 体重/日と評価している。1) なお、この値はラットを用いた 104 週間慢性毒性/発がん性併合試験における無毒性量 3 mg/kg 体重/日を安全係数 100 で除して設定された。 1) 本剤は、 適用拡大に係る登録申請にあたって食品衛生法に基づく残留基準の見直しが行われない ため、食品安全委員会による食品健康影響評価は行われていない。ただし、カルフェントラゾン エチルについては、食品衛生法に基づくいわゆるポジティブリスト制度を導入するにあたり暫定 基準が設定されているため、今後食品安全委員会において食品健康影響評価が行われることとな る。 2 カルフェントラゾンエチル資料 Ⅲ.水質汚濁予測濃度(水濁PEC) 水田使用及び非水田使用のいずれの場面においても使用されるため、それぞれの使 用場面について水濁PECを算出し、両者を合算する。 (1)水田使用時の水濁PEC 水濁PECが最も高くなる以下の使用方法の場合について、以下のパラメーター を用いて算出する。 使用方法 剤 型 各パラメーターの値 ① 0.9%粒剤 ② 1.8%ジャンボ剤 I:単回の農薬使用量(有効成分 g /ha) 90 使用場面 水田 Napp:総使用回数(回) 1 適用作物 移植水稲 Ap:農薬使用面積(ha) 50 農薬使用量 ① 1kg/10a ② 10 パック(500g)/10a 希釈倍数 − 1回 総使用回数 地上防除 /航空防除 施 用 法 地 上 ① 湛水散布 ② パック投げ入れ (2)非水田使用時の水濁PEC 水濁PECが最も高くなる以下の使用方法の場合について、以下のパラメーター を用いて算出する。 使用方法 剤 型 各パラメーターの値 36.5%顆粒水和剤 I:単回の農薬使用量(有効成分 g /ha) 219 使用場面 非水田(果樹以外) Napp:総使用回数(回) 6 1) 適用作物 西洋芝 Ap:農薬使用面積(ha) 37.5 農薬使用量 希釈倍数 総使用回数 60g / 10a 100∼200L / 10a の水 で希釈 3回 1) 3 カルフェントラゾンエチル資料 地上防除 地 /航空防除 施 用 法 上 雑草茎葉散布 本剤の西洋芝に対する使用回数は最大 3 回として登録されているが、カルフェントラゾンエチ ルを含む農薬の総使用回数は最大 6 回とされているため、水濁 PEC の算出にあたっては、本剤 を 6 回使用すると仮定した場合について算出した。 1) (3)水濁PEC算出結果 水濁PEC Tier1 (mg/L) 使用場面 水田使用時 0.00119 … 非水田使用時 0.0000180 … うち地表流出寄与分 0.0000179 … うち河川ドリフト寄与分 0.0000000769 … 1) 0.00121 … 計 1) 合 ≑ 0.0012 (mg/L) 水濁PECの値は有効数字2桁とし、3桁目を四捨五入して算出した。 Ⅳ.総 合 評 価 1.水質汚濁に係る登録保留基準値(案) 公共用水域の水中における予測濃度 に対する基準値 0.07 mg/L logPow が 3.5 未満であることから、生物濃縮性は考慮せず、以下の算出式により登録保留基準 値を算出した。1) 0.03(mg/kg 体重/日)× 53.3(kg)× 0.1 / ADI 1) 平均体重 10 % 配分 2(L /人/日) = 0.079…(mg / L) 飲料水摂取量 登録保留基準値は有効数字 1 桁(ADI の有効数字桁数)とし、2 桁目を切り捨てて算出した。 <参考> 水質に関する基準値等 (旧)水質汚濁に係る農薬登録保留基準 1) なし 水質要監視項目 2) なし 4 カルフェントラゾンエチル資料 水質管理目標設定項目 3) なし ゴルフ場暫定指導指針 4) なし 水質評価指針 5) なし WHO飲料水水質ガイドライン 6) なし 平成 17 年 8 月 3 日改正前の「農薬取締法第3条第1項第4号から第7号までに掲げる場合に該当するかどう かの基準を定める等の件」(昭和 46 年 3 月 2 日農林省告示 346 号)第4号に基づき設定された基準値。 1) 2) 水質汚濁に係る要監視項目として、直ちに環境基準とはせず、引き続き知見の集積に努めるべきとされた物質 に係る指針値。 3) 水道法に基づく水質基準とするには至らないが、水道水質管理上留意すべき項目として設定された物質に係る 目標値。 「ゴルフ場で使用される農薬による水質汚濁の防止に係る暫定指導指針について」 (平成2年5月 24 日付け環 水土 77 号環境庁水質保全局長通知)において設定された指針値。 4) 「公共用水域等における農薬の水質評価指針について」(平成 6 年 4 月 15 日付け環水土第 86 号環境庁水質 保全局長通知)において設定された指針値。 5) 6) Guidelines for Drinking-water Quality(First addendum to 3rd edition) 2.リスク評価 水濁PEC Tier1 = 0.0012(mg/L)であり、登録保留基準値 0.07(mg/L)を下回って いる。 3.農薬理論最大摂取量と対ADI比 農薬理論最大摂取量(mg/人/日)1) 食品経由 2) 水質経由 備考 0.1562 mg 小計 飲料水 0.14 mg 0.07 mg/L (基準値案) 農薬理論最大摂取量 0.2962 mg ADI (mg/人/日) 3) 1.599 mg × 2 L/人/日 (飲料水摂取量) 18.5 % 対ADI (うち食品経由) 9.8 % (うち水質経由) 8.8 % 1) 表中の数値の一部は、計算過程において算出された値を機械的に記載したものであり、必ずしも 有効数字桁数に対応した数値ではない。 2) 食品規格については、いわゆるポジティブリスト制度の導入時に設定された各食品群毎の暫定基準を 基に算出した理論最大摂取量を示す。なお、今般の適用拡大申請に伴う基準値の見直しは行われてい ない。 3) 平均体重 53.3 kg で計算 <検討経緯> 平成 21 年 2 月 3 日 中央環境審議会土壌農薬部会農薬小委員会(第 14 回) 5
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