四国沖から紀伊水道沖における南海トラフ周辺の構造調査 -KR14-05,KY14-07 航海報告○仲西理子・山下幹也・山本揚二朗・中村恭之・藤江剛・三浦誠一・小平秀一・金田義行 (海洋研究開発機構) 2011年東北地方太平洋沖地震の発生を受けて、南海トラフで発生が懸念される巨大地震の想定震源 域は、浅い側の上限はトラフ軸まで、深い側の下限は深部低周波微動(地震)発生域まで、従来の想 定より拡大された。新たな想定震源域は、地形の変化、既往の最大地震の震源域、現在の地震活動な どを考慮してはいるが、構造研究の結果に基づく根拠は十分ではなく、検証が必要である。具体的に は、浅い側の上限については、巨大地震・津波に伴うイベント堆積物(タービダイト)の分布を把握 することで検証を進める。一方、深い側の下限については、深部低周波微動(地震)の発生メカニズ ムの解明のため、沈み込むプレートからの脱水反応によって生成される水が微動発生に大きく関わっ ていると推測されているため、沈み込むフィリピン海プレートの含水量分布を把握することを目指す。 そこで、海洋研究開発機構では、上限のトラフ軸周辺における地震タービダイトの分布を明らかに するために、可搬式反射法地震探査システムを用いて稠密に測線を設定することにより、高精度高分 解能の構造探査を実施した。また、下限周辺の深部低周波微動(地震)発生のメカニズムに迫るため に、沈み込む前のフィリピン海プレートの構造とその不均質性を把握することを目的として、トラフ 軸海側の四国海盆において屈折法・広角反射法地震探査を実施した。調査は文部科学省の受託研究「南 海トラフ広域地震防災研究プロジェクト」の一環として行われた。 高分解能反射法地震探査は、2013年度は8月23日〜9月2日(KY13-11),2014年度は5月28日〜6月10 日(KY14-07)にかけて,高知沖~紀伊半島沖の範囲で海洋調査船「かいよう」による可搬式システム (380cu.in.エアガン,192chストリーマー)を用いて実施した.次年度以降も調査は継続するが,現 在まで計23測線,総延長約1500㎞のデータ取得を行った.屈折法・広角反射法地震探査は、2014年5月 1日〜15日(KR14-05)、四国沖から紀伊水道沖にわたり、変形フロントより50~60km 海側においてトラ フに平行な測線(SB01測線)で実施した。約360km の測線上に10km 間隔に35 台の海底地震計を設置 後、深海調査船「かいれい」の7800 cu. in. のチューンド・エアガンアレイを200m 間隔で発振した。 この測線では、高分解能反射法地震探査も実施した。 トラフ軸周辺の高分解能反射法探査では付加体の変形、トラフ充填堆積物、沈み込む四国海盆の微 細構造が明瞭に得られた。特に沈み込む四国海盆堆積層の変形構造が20㎞間隔の測線ごとに大きく異 なっており、東西方向の不均質性が明らかになった。トラフ軸の堆積層内に沈み込みに伴ってプロト・ スラストが発達し、特徴マッピングによって想定される南海トラフ巨大地震の滑り域と比較したとこ ろ南限と調和的であった。現在のところ取得された測線は高知沖~紀伊半島沖に限定されているが、 今後は東西方向に測線を延長して、より空間的な密な構造評価を行い巨大地震・津波のイベントとの 比較を行っていく。 四国海盆の測線で得られた高分解能反射断面(船上処理)から、測線に沿った堆積層と基盤の構造 不均質が認められた(図2)。測線南西側の基盤が平坦な部分で反射強度が比較的弱い特徴がみられ る一方、測線北東側では基盤からの反射が明瞭で凹凸が激しい。これらの構造変化は、測線西端から 約160km 周辺で見られ、地磁気異常から四国海盆の拡大初期から拡大終盤の境界域と推定される領域 (Okino et al., 1994, 1999)に相当する。海底地震計で得られたデータからは、基盤で変換したと 考えられるPS 変換波が測線全体で確認された。特に測線北東側で、最上部マントルを通過してくるPS 変換波が明瞭に確認でき、反射断面での基盤の測線方向の特徴の違いを反映していると考えられる。 図1 測線図 往 6 復 7 走 8 時 9 (s) 10 11 図 2 高分解能反射法地震探査断面
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