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ニッセイ基礎研究所
No.14-195
09 Feb. 2015
【1 月米雇用統計】
非常に良いスタートを切った 15 年の
労働市場
経済研究部
窪谷浩
E-mail: [email protected]
主任研究員
TEL:03-3512-1824
1．結果の概要：雇用者数は力強い伸びが持続
2 月 6 日、米国労働省（ＢＬＳ）は 1 月の雇用統計を公表した。1 月の非農業部門雇用者数は前
月対比で+25.7 万人の増加1（前月改定値：+32.9 万人）となり、大幅に上方修正された前月からは
伸びが鈍化したものの、市場予想の+22.8 万人（Bloomberg 集計の中央値、以下同様）を上回った
（後掲図表 2 参照）。
失業率は 5.7％（前月：5.6％、市場予想：5.6％）とこちらは、市場の横ばい予想に反して 0.1％
上昇した（後掲図表 5 参照）。一方、労働参加率2は 62.9％（前月:62.7％）と前月から 0.2％上昇し
た（後掲図表 6 参照）。
2．結果の評価：雇用者数の伸びに、賃金の伸びが伴う、文句のない良い結果
1 月の雇用者の伸びは、前月から鈍化したものの、過去 2 ヵ月の数値が大幅に上方修正された（詳
細は後述）ことも考慮すれば、15 年に入っても労働市場では力強い回復が持続していると判断でき
る。実際、過去 3 ヵ月の月間平均雇用増は 33.6 万人と 30 万人を大きく超えており、11 月以降の雇
用増が顕著となっていることが分かる。
失業率は 5.7％と前月から 0.1％上昇したものの、今月は労働力人口の増加に伴い労働参加率が
前月の低下分をそのまま取り戻す形で増加していることを考慮すれば、それほど気にする必要はな
いだろう。寧ろ前月の失業率の低下が、労働市
場の実態に比べてやや過大評価されていた可能
性もある。
ントは、賃金の伸びが加速したことだ。1 月の
時間当たり賃金は、24.75 ドルと前月比+0.5％
増加し、市場予想（同+0.3％）も上回った（図
表 1）。前月は、雇用者数の堅調な増加にも係わ
らず、賃金が同▲0.2％減少するなど、労働市場
の「質」改善に懸念を抱かせる内容だったが、
2
（前年同月比、％）
5.0
時間当たり賃金の伸び率
4.5
一方、今月の雇用統計で最も評価できるポイ
1
（図表 1）
4.0
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
全雇用者ベース
管理者を除く生産者ベース
0.5
0.0
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015
（注）全雇用者ベースは2007年3月以降
（資料）Ｄａｔａｓｔｒｅａｍ
（月次）
季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
労働参加率は、生産年齢人口（15 歳以上の人口）に対する労働力人口（就業者数と失業者数を合計したもの）の比率。
1｜
｜経済･金融フラッシュ No.14-195｜Copyright ©2015 NLI Research Institute
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今月は前月の減少を補って余りある上昇となったことから、持続的な賃金上昇への期待が再び高ま
る内容と考えられる。
このように、1 月の雇用統計は、雇用増だけでなく賃金上昇も確認できたことから、非常に良い
内容であり、米国の労働市場は 15 年に入ってロケットスタートを切ったと言えるだろう。
3．事業所調査の詳細：
事業所調査のうち、1 月の非農業部門雇用増
の内訳をみると（図表 3）
、前月からの伸びは鈍
化したものの、幅広い部門で力強い伸びが持続
している。民間サービス部門は+20.9 万人（前
月：+24.7 万人）となり、3 ヵ月連続で 20 万人
（図表 2）
（前月差、万人）
非農業部門雇用者数の増減（業種別）
60
50
40
30
20
10
0
▲ 10
超の増加ペースを維持した。サービス部門のな
▲ 20
かでは、前月に伸びが鈍化していた小売業が
▲ 40
+4.6 万人（前月：+0.7 万人）と大幅な伸びとな
▲ 60
ったことが目立つ。12 月の小売売上高は、前月
比でマイナスとなったことから個人消費の減速
政府部門
小売業
その他民間サービス業
製造業
建設業
その他生産部門
非農業部門合計
ＡＤＢ調査
▲ 30
▲ 50
▲ 70
▲ 80
▲ 90
2008/1
2009/1
2010/1
2011/1
2012/1
2013/1
2014/1
2015/1
（月次）
（資料）Ｄａｔａｓｔｒｅａｍ
が懸念されたが、小売関係の雇用をみる限り減速したと考えるのは早計だろう。
一方、財生産部門は+5.8 万人（前月：+7.3 万人）と前月から若干伸びが鈍化した。製造業が+2.2
万人（前月：+2.6 万人）となったほか、建設業が+3.9 万人（前月：+4.4 万人）となった。前月か
らの伸びは鈍化したものの、昨年 11 月以降は比較的堅調な増加を維持していると考えて良いだろ
う。
最後に、政府部門の雇用は▲1.0 万人（前月:+0.9 万人）と、こちらは 3 ヵ月ぶりの減少となっ
た。連邦政府が▲0.6 万人（前月：+0.2 万人）となったほか、州・地方政府も▲0.4 万人（前月：
+0.7 万人）となるなど、政府部門は全般的に伸びが減少した。政府部門が減少するのは昨年 5 月以
来 8 ヵ月ぶりである。
今月は、昨年の年次改定値も公表され、昨年
の雇用増が月平均で 1.4 万人上昇修正された
（図表 3）。とくに前月（12 月）と前々月（11
月）の改定幅が大きくなっている。12 月は、
+32.9 万人（改定前：+25.2 万人）へ+7.7 万人、
1 月も+42.3 万人（改定前：+35.3 万人）へ+7.0
万人上昇修正された。
（図表 3）
（改定幅、万人）
45
9
40
8
35
7
30
6
25
5
20
4
15
3
10
2
5
1
0
0
▲5
▲1
▲ 10
▲2
なお、ＢＬＳの公表に先立って 2 月 7 日に発
▲ 15
表されたＡＤＰ社の推計は、非農業部門（政府
▲ 25
部門除く）の雇用増が+21.3 万人（前月改定
2014年改定の結果
（前月差、万人）
▲3
▲ 20
改定幅（右軸）
前回
▲4
今回
▲5
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
（注）12月は未確定値
（資料）Ｄａｔａｓｔｒｅａｍ
9月
10月
11月
12月
平均
（月次）
値:+24.1 万人、市場予想:+22.3 万人）となり、前月値や市場予想を下回った。ＡＤＢ統計が前月
2｜
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から増加幅を縮小させた一方、ＢＬＳ統計も前月から増加幅が縮小しており、1 月の増減パターン
は整合的だった。
1 月の賃金・労働時間（全雇用者ベース）に
ついては、民間平均の時間当たり賃金は 24.75
ドル（前月:24.63 ドル）と前月から 12 セント
増加した。前月は同 5 セント減少していたが、1
月の増加幅は前月の減少を補って余りある水準
となった。次に週当たり労働時間は、34.6 時間
（図表 4）
（年率、％）民間非農業部門の週当たり賃金伸び率（年率換算、寄与度）
6
5
4
3
2
1
0
▲1
（前月:34.6 時間）とこちらは前月から横ばい
となった。その結果、週当たり賃金は 856.35
ドル（前月:852.20 ドル）となり前月から増加
した（図表 4）
。
▲2
週当たり労働時間
時間当たり賃金
週当たり賃金
▲3
▲4
2007/1
2008/1
2009/1
2010/1
2011/1
2012/1
2013/1
（注）3カ月後方移動平均後の前月比伸び率（年率換算）
週当たり賃金伸び率≒週当たり労働時間伸び率＋時間当たり賃金伸び率
（資料）Ｄａｔａｓｔｒｅａｍ
2014/1
2015/1
（月次）
4．家計調査の詳細：失業率は小幅上昇したものの、労働参加率も上昇。
家計調査の結果を見ると、1 月の労働力人口は前月対比で+70.3 万人（前月：▲27.3 万人）と大
幅に増加した3。内訳を見ると、就業者数が+43.5 万人（前月：+11.1 万人）増加したほか、失業者
数も+26.7 万人（前月: ▲38.3 万人）増加した。一方、非労働力人口は▲53.3 万人（前月：+45.6
万人）と、前月から大幅に減少した。
労働力人口の増加に伴い、1 月の労働参加率は 62.9％と前月（62.7％）から+0.2％上昇した（図
表 6）。この結果、労働参加率は 11 月の水準に回復した。今後、労働市場の回復が持続する過程で
は、職探しを諦めて労働市場から退出した人が、再び職探しを開始することで労働参加率は上昇す
る可能性が高いとみられる
一方、1 月の失業率は、5.7％と前月（5.6％）から+0.1％上昇し、市場予想（5.6％）も上回った。
今月の失業率の上昇は主に非労働力人口の減少が主な悪化の要因である（図表 5）。
（図表 5）
（前月差、％ポイント）
0.8
（図表 6）
失業率の変化（要因分解）
（％）
11
0.6
10
0.4
9
0.2
8
（前月差、％ポイント）
0.3
労働参加率の変化（要因分解）
0.2
（％）
67
66
0.1
65
0.0
0.0
7
▲ 0.2
6
▲ 0.4
5
▲ 0.6
非労働力人口要因
失業率（前月差）
就業者要因
失業率（水準、右軸）
16才以上人口要因
4
▲ 0.8
3
2007/1
2008/1
2009/1
2010/1
2011/1
2012/1
2013/1
2014/1
2015/1
（注）非労働力人口の増加、就業者人口の増加、16才以上人口の減少が、それぞれ失業率の改善要因。
また、年次ごとに人口推計が変更になっており、2009年以降は断層を調整している。
（月次）
（資料）Ｄａｔａｓｔｒｅａｍ
64
▲ 0.1
▲ 0.2
63
労働力人口要因
16才以上人口要因
労働参加率（前月差）
労働参加率（水準、右軸）
▲ 0.3
62
2007/1
2008/1
2009/1
2010/1
2011/1
2012/1
2013/1
2014/1
2015/1
（注）労働参加率の前月差≒（労働力人口の伸び率─16才以上人口の伸び率）×前月の労働参加率
グラフの前月差データは後方3カ月移動平均。また、年次ごとに人口推計が変更になっているため、
2009年以降は断層を調整している
（月次）
（資料）Ｄａｔａｓｔｒｅａｍ
2015 年から人口推計を変更しているため、2014 年と断層が生じている。ここで記載している労働力人口、雇用者数、失業者数、非
労働力人口はこの断層を調整した後のもの。
3
3｜
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次ぎに平均失業期間は、32.3 週（前月:32.8 週）と、こちらは僅かに低下した。
もっとも、1 月の長期失業者数（27 週以上の失業者人数）は、280.0 万人（前月:278.5 万人）と
なり、こちらは逆に前月対比で+1.5 万人（前月：▲3.7 万人）と、6 ヵ月ぶりに増加に転じた。長
期失業者の失業者全体に占めるシェアは、1 月が 31.5％（前月：31.9％）とこちらは前月から小幅
低下した。しかしながら、同比率は 10 年 1 月以来、30％を超える異常な状況が継続しており、リ
ーマン・ショック前の水準（10％台後半）までは未だ大きな開きがある（図表 7）
。
これまでの労働市場の回復は、長期失業者まで恩恵が行き渡っているとは言えない状況となって
おり、長期失業問題の正常化には今暫く時間がかかるとみられる。
最後に、周辺労働力人口（223.4 万人）4や、経済的理由によるパートタイマー（681.0 万人）も
考慮した広義の失業率（U-6）5をみると、1 月は 11.3％（前月:11.2％）とこちらも通常の失業率と
同様、前月から小幅上昇した（図表 8）。この結果、通常の失業率（U-3）と広義の失業率（U-6）の
差は 5.6％ポイントと、前月（5.6％ポイント）から横ばいとなった。広義の失業率は、リーマン・
ショック前の 1 桁台後半と比べて依然として高い水準に留まっているほか、失業率の差も当時の
3％台後半に比べて、依然として開いており、広義の失業率からみた労働市場の「質」改善は未だ
道半ばである。
（図表 7）
（図表 8）
失業期間の分布と平均失業期間
（シェア、％）
100
（週）
45
18
90
40
16
80
35
14
30
12
70
60
25
50
20
40
15
30
（億人）
周辺労働力人口（右軸）
通常の失業率（U-3）
10
10
5
1.65
広義の失業率（U-6）
10
1.60
経済的理由によるパートタイマー（右軸）
8
1.55
1.50
6
4
20
0
2007/1
広義失業率の推移
（％）
1.45
2
2008/1
5週未満
（資料）Ｄａｔａｓｔｒｅａｍ
2009/1
5-14週
2010/1
2011/1
15-26週
2012/1
27週以上
2013/1
2014/1
0
2015/1
平均（右軸）
（月次）
労働力人口（経済的理由によるパートタイマー除く、右軸）
0
1.40
2005/1 2006/1 2007/1 2008/1 2009/1 2010/1 2011/1 2012/1 2013/1 2014/1 2015/1
（注）U-6＝（失業者＋周辺労働力＋経済的理由によるパートタイマー）／（労働力＋周辺労働力）
周辺労働力は失業率（U-6）より逆算して推計
（資料）Ｄａｔａｓｔｒｅａｍ
（月次）
4
周辺労働力とは、職に就いておらず、過去 4 週間では求職活動もしていないが、過去 12 カ月の間には求職活動をしたことがあり、働
くことが可能で、また、働きたいと考えている者。
5
U-6 は、失業者に周辺労働力と経済的理由によりパートタイムで働いている者を加えたものを労働力人口と周辺労働力人口の和で除し
たもの。つまり、U-6＝（失業者＋周辺労働力人口＋経済的理由によるパートタイマー）／（労働力人口＋周辺労働力人口）。
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