インターコネクト時代の鍵を握る ソフトウェア・テクノロジー

E
xecutive message
エグゼクティブ・
メッセージ
インターコネクト時代の鍵を握る
ソフトウェア・テクノロジー
日本アイ・ビー・エム株式会社
専務執行役員
ソフトウェア事業本部長
Vivek Mahajan
インターコネクト時代の到来
つなぐ技術です。もちろんモノ同士をつなぐには
電気的、機械的な仕組みが必要になりますが、私
今から約300年前に英国で起きた産業革命に端
はソフトウェアが重要だと考えています。インター
を発する工業化は、
「蒸気の時代」
「電気の時代」
コネクトの時代はソフトウェアの時代と言い換え
を経て、
「コンピューターの時代」へと発展してき
ることもできます。ソフトウェアによってビッグ
ました。そして今、新たな段階である「インター
データを俊敏に処理し、リアルタイムにアクション
コネクトの時代」へと移り変わろうとしています。
を起こす仕組みが鍵を握っているのです。
インターコネクトとは、人やモノがいつでもど
こでもつながる世界を意味しています。私たちが
IoTの価値はデータにあり
普段利用しているソーシャル・メディアは、まさ
にインターコネクトの力です。現在は人と人をつ
こうしたインターコネクトの時代において、イン
なぐことが中心ですが、今後は日々使っているあ
ターネットを通じてモノ同士をつなぐ仕組みがモ
らゆるモノがつながるようになり、それが加速し
ノのインターネット、すなわちIoT(Internet of
ています。
Things)です。このモノの中には、人も含まれる
人やモノがつながれば、膨大なデータ、すなわ
6
と考えています。極端な考え方かもしれませんが、
ちビッグデータが生まれます。そのビッグデータ
モノ同士がつながってデータのやりとりが発生し
から新しい知恵が生まれ、私たちの生活や社会に
たとき、そのデバイスの先に人が介在するかし
さまざまな影響を与えます。そんなインターコネ
ないかの違いがあるだけです。したがって、IoT
クトの時代に欠かせないのが、人やモノを簡単に
と同列に扱われることがあるM2M(Machine to
P ROVISION No.84 / Winter 2015
Machine)は、機器同士のつながりであり、IoT
また、IoTのアプリケーション基盤はクラウドが前
の一部に過ぎません。アプリケーションが機器に
提となりますが、IBMは「IBM Bluemix」や「IBM
つながることが、IoTの大きな特徴です。
SoftLayer」といったさまざまなクラウド・ソリュー
そのIoTの前提条件になるのが、ネットワーク・
ションを展開しています。さらに、ソーシャルや
インフラです。現在は通信事業者の尽力により、
モバイルを通じてシステムを横断的につなぐエン
世界中に99.99%止まらないネットワークが確立さ
ゲージメントは、そのものがIoTの姿とも言える
れました。インターコネクトの世界は、ネットワー
でしょう。
ク・インフラが整備された上に成り立っているの
です。
IoTで最も重要になるのがデータです。モノ同
中でもIBMの強みは、価値のある新しいテクノ
ロジーを誰よりも先に提供することができる点です。
私は、IBMの研究開発部門は宝物だと思っています。
士がつながることで生み出されたデータを活用す
どのソフトウェア・ベンダーもテクノロジー・ベン
ることが、IoTの本当の価値になります。それを
ダーも、決して真似することができないでしょう。
実現するには、ソフトウェアでアプリケーション
この研究開発部門を通じて、世界を変える新技術
を作る必要があります。アプリケーションとは人
を生み出していくことがIBMの仕事です。
が利用するソフトウェアに限りません。モノ同士
をつなぐのにもアプリケーションが必要です。
特に重要なアプリケーションがアナリティク
ここまでテクノロジーについて紹介してきまし
たが、IoTそのものはテクノロジーではなくビジ
ネスモデルです。IoTを実現するソリューション
スだと考えています。データをどこから取るか、
はさまざまなテクノロジーの組み合わせですが、
データをどうまとめるか、そのデータをどのよう
そのすべてのテクノロジーを理解する必要はあり
に分析するのか、分析した結果を次のビジネスに
ません。
どうやって活用するかというアプリケーションが、
IoTの真価と言えるでしょう。
業種業界を問わずすべての企業は、どうやっ
てビジネスチャンスを作り、 ビジネスを成功さ
せ、社会に貢献するかを考えています。それに対
ビジネスモデルを提案
し、IBMはインターネット、ソーシャル、モバイル、
セキュリティー、 クラウド、 データなど、IBM
IoTに関して、IBMはさまざまな角度から貢献
することが可能です。
が持っているテクノロジーによってIoTを実現し、
ビジネスモデルとしてご提案します。
IBMでは今、三つの分野に力を入れています。
一つはデータ・アナリティクス、もう一つはクラ
ウド、そして三つ目がエンゲージメントです。こ
れらの三つはすべてIoTに関連してきます。
前述したようにIoTの価値は機器や人から発信
されたデータを分析、活用することにありますが、
IBMではビッグデータという言葉が流行する以前
からデータ・アナリティクスに注力してきました。
P ROVISION No.84 / Winter 2015
7