査定の簡素化の検討状況について

資料1
地震保険制度に関するプロジェクトチーム
フォローアップ会合
査定の簡素化の検討状況について
平成27年2月4日
一般社団法人 日本損害保険協会
1.これまでの課題の検討状況の整理
地震保険制度に関するプロジェクトチーム報告書(平成24年11月30日)
~震源モデル改定と合わせて速やかに対応すべき課題~
【損害査定方法の見直し】
・首都直下地震等に際しても査定の迅速性を確保できるよう、巨大地震を想定した新たな損害査定の
手法(オプション)について要検討。
【損害区分】
・損害区分の細分化は、迅速性への悪影響や査定を巡る苦情増加等の懸念の解消が前提。
・損害査定方法の見直し結果次第では、細分化の可能性が開けると期待。
地震保険制度に関するプロジェクトチームフォローアップ会合座長総括(平成26年1月23日)
~実現に向けて検討中の課題(損害査定の簡素化)~
○「損害査定の簡素化」については、以下の観点からの検討もあわせて損害保険業界において検討を行うことが
必要である。
・簡素化案の実施により、査定の迅速化にどの程度の効果があるか定量的な観点からの検討。
・損害認定の適切性と損害査定の迅速性を両立させるという観点から、仮払いの実施の可能性を含めて検討。
・立会調査の業界共同取組は大規模地震発災時の迅速な保険金の支払のための一つの方法である。今後の
共同調査の拡大に向けた検討を行った上で、実効性のある共同取組の仕組みについて、顧客のニーズも踏まえて検討。
1
2.地震保険損害査定の簡素化(実施可否)
1.損害状況申告(自己申告)方式の拡大
概
要
被保険者の自己申告書による申告内容(被害状況)に基
づいて損害認定を行い、保険金を支払う。
東日本大震災で木造(在来軸組工法)、生活用動産(家
財)を対象に一部損の認定までの範囲で実施していた本
方式について、対象をすべての構造に拡大し、かつ、半
損まで認定する。
実施可否
実施する
課
実施要領、保険会社用Q&A、自己申告書様式にあわせ
た地震保険損害調査書への転記ツール等の整備
題
2.モバイル端末による現場立会調査方式の新設
概
要
損害認定を行う調査人がタブレット端末で被害程度の記
録や写真撮影等を行い、電子的に地震保険損害調査書
を作成する。
実施 可否
実施する
課
システム開発
題
4.公的認定(応急危険度判定等)活用方式の新設
概
要
実施可否
実施しない
理
応急危険度判定は、建物利用者等への2次的災害防止
を目的として、余震等による倒壊等の危険性を調査し安
全性を判定するものであり、地震保険損害認定基準とは
必ずしも相関関係に無いため。
また、着目点等の調査手法も異なり、保険金支払に用い
られることも想定されていないため。
由
5.地域全損認定方式の拡大(※)
概
要
概
要
実 施可否
実施する(実務への適用には更なる検討・準備が必要)
課
電話ヒアリングフローやヒアリングの内容、建物所在地の
震度情報の入手方法等
題
(※)地域全損認定方式について、GIS(Geographic Information
System)を活用した新たなシステム開発することで、認定
の効率化・迅速化を検討しています。
共同調査による全損地域認定方式の対象を津波・火災
以外の被害形態(損壊・液状化等)に拡大する。
実施可否
実施しない
理
火災・津波等以外の被害形態(損壊・液状化等)は、個々
の建物の調査を省略して航空写真等のみで全損地域と
して損害認定することは困難なため。また、認定に準用
可能な公的地域指定についても適当なものが見当たらな
いため。
由
3.電話ヒアリングによる方式の新設
震度や建物種別等から該当可能性の高い損害区分を推
測し、電話ヒアリングで損害状況を確認して損害区分の
認定を行う。
応急危険度判定の判定結果(危険、要注意、調査済)に
応じて保険金を一旦支払い、後日確定させる。
6.一部損以上地域認定方式の新設
概
要
震度、浸水等の状況から、一定の街区を「一部損以上地
域」として認定。一部損の保険金を一旦支払い、後日確
定させる。
実施可否
実施しない
理
個々の建物の調査を省略して航空写真等のみで一部損
以上の地域を選別・認定することは困難なため。また、認
定に準用可能な公的地域指定についても、適当なものが
見当たらないため。
由
2
3.地震保険立会調査の業界共同取組
立会調査の業界共同取組
【前回いただいた主なご意見】
○契約保険会社以外が損害査定を実施することが消費者にアレルギーがあるのではないかという懸念は杞憂ではないか。
○査定組織の編成には、時間がかかるかもしれないが、面で調査することができるようになることからトータルで見れば査定の迅速な実施が可能と
なるか否かという点を考えるべき。
○立会調査を業界共同で取り組んだ場合の取組内容や手法について、具体的なイメージを描きながら検討し、実現に向けた課題を整理しています。
○今回検討した「立会調査の共同取組」は、以下の「地震保険における損害査定の工程」の一部となっており、「④アポイント」から「⑦支払内容
確認」に該当します。
地震保険における損害査定の工程
*一般的な例であり、詳細は保険会社によって異なります。
①事故受付
お客様から事故受付センターに事故のご連絡(お電話)をいただきます。
②事故登録
事故受付センターで、事故を受け付けたことをシステムに入力します。
③ファイル作成
立会拠点で、システムから事故受付があった契約の契約データを確認し、損害査定に必要な書類(契約内
容確認書類等)をファイルにします。
④アポイント
立会拠点で、お客様に調査日程のアポイントをとります。
⑤立会調査
現地に赴いて物件の損害調査を行います。
⑥協定
お客様と損害認定結果について協定(合意)します。
※⑤とあわせて現場で行うことが多いです。
⑦支払内容確認
現地拠点で、損害調査報告書の内容をチェックします。
⑧システム入力・支払
現地拠点で、損害調査報告書の内容をシステムに入力し、認定結果に基づいて保険金をお支払(振込)し
ます。
⑨ファイル送付
現地拠点から、ファイルを書庫などに保管します。
(参考)損害査定における代理店
代理店自体に損害調査する権限はありません。ただし、代理店は、契約物件所在地やその周辺の地理(交通状況・社会情勢、地域性)などに明るく、また、通常、契約者または被保
険者と相対する立場であることから、調査以外の補助的な業務、例えば、お客様と保険会社間の連絡(事故受付やアポイントを取る等)の仲介や、事故対応時のお客様へのアドバイ
スなどを担うことがあります。
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(1)立会調査の業界共同取組を実施した場合と実施しない場合の比較
○各社が受け付けた事故内容および契約内容のデータ・書類を全社共同のシステム・拠点に転送、全社分共同で立会調査を実施し、共同
取組拠点の調査結果を各社にフィードバックし、保険金を支払う仕組みを想定しています。
○業界共同で立会調査をした場合には、契約・事故受付・査定結果を共有するシステム・ネットワークの構築が必要になります。
各社対応
各社対応
共同取組を実施した場合
共同取組の範囲
A損保
A損保
共同取組拠点A
書類
書類
B損保
B損保
共同取組拠点B
書類
書類
事故受付集約
システム
C損保
査定結果集約
システム
C損保
共同取組拠点C
書類
書類
進捗管理
システム
共同取組を
実施しない場合
D損保
①事故受付
⑥アポ取り、立会調査、協定を実施
D損保の調査拠点
④契約物件の所在地に応じた
調査拠点に依頼
書類
③契約データ入手
②契約確認
⑤契約データ
事故受付データ
D損保
⑩支払
⑧現地で受領した書類の返却
⑦査定結果を入力
⑨査定データ
各社基幹システム(契約・事故受付・工程管理・支払業務などの工程の管理システム)
4
(3)共同取組において想定される主な課題
課題①システム構築の必要性
○立会調査を業界共同取組とした場合、「各社の事故受付などの入口業務から共同取組拠点への立会調査連携」
「共同取組拠点の立会調査業務から各社の保険金支払などの出口業務への連携」(4ページのフロー図では赤い線の
部分)が必須となるため、業界全体と共同取組拠点を結ぶネットワークシステムの構築が必要となります。
○事故受付、保険金支払などの保険会社の基幹業務を含めた業界全体のネットワーク構築には、莫大なコストと
時間が必要であり、その規模は想定できません。地震保険損害査定の体制整備にかかるコストは保険料から支出
されるため、保険料アップが避けられない状況となる可能性があります。
○なお、仮に業界ネットワークシステムの構築を行わずに、共同取組拠点での立会調査を行う場合には、膨大な
件数を紙ベースで対応することになるため、業務が成り立たないことが予想されます。
課題②オペレーションの混乱
○共同取組拠点の設置時には、共同取組の拠点確保、調査要員召集、組織体制整備・指揮命令系統の確立といった
立ち上げ業務に膨大な労力がかかることが予想されますし、非常時に体制を切り替えるため、通常オペレーション
と異なる例外的な対応となることに伴う混乱(システムの習熟不足、引受保険会社と立会した保険会社が異なる
ことに伴う経過管理、責任所在の問題等)も生じやすいと考えられます。そして、その規模は、地震の規模が
大きいほど大きくなると予想されます。
○体制の切り替え後においても、共同取組についての習熟不足等による混乱の発生が予想されます。
○このため、トータルで見た場合に査定が迅速となるかについて判断することはできません。
○現在のところ、立会調査の共同取組を実現することは難しい状況ですが、各保険会社では、これまでの地震
や風水害などの自然災害発生時の損害査定のノウハウを蓄積しており、これまでの知見と経験に基づいて
各社の損害査定を迅速に行えるよう努めてまいります。
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4.地震保険損害査定の簡素化(実施に向けた課題と取り組み)
簡素化案
課題と取り組み
スケジュール
○発災後に迅速かつ適切な対応を可能とし、お客様からの自己申告書のみ
での損害認定の完了率向上を目指すために、以下のツールを平時から
整備する。
1.自己申告書様式の作成
お客さまの分かりやすさ・記入のしやすさの観点から、建物の損傷状態は
イラストを用いた選択方式(東日本大震災時と同様)とする。イラストは、
すべての構造について、半損まで適切な認定が可能となるように、現在、
建築の専門家とともに新たに作成中。
2.保険会社向け・お客さま向けツール
上記の他、以下のツールについても対象拡大にあわせ新たに作成予定。
(1)実施要領、保険会社用Q&A、自己申告書様式にあわせた地震保険
損害調査書への転記ツール
(2)お客様向けの自己申告書記入例、写真撮影のポイント、よくある
ご質問と回答
2014年度中:
木造建物に関するツー
ル整備を行う
②モバイル端
末による現場
立会調査方
式の新設
○お客さまからの事故のご連絡から保険金のお支払いまでの一連の業務
プロセスを整理した業務フロー図を作成し、その中からシステム化する範囲を
決定した。
○システム仕様の検討にも着手しており、今後は、システム開発会社において
詳細なシステム開発が行われた後に、損害保険業界およびシステム
開発会社による運用 テスト等が行われる。
2014年4月:
システム開発に着手済
③電話ヒアリ
ングに基づく
方式の新設
○今後の検討次第では十分可能であると判断した。今後、実務への適用に
関するさらなる検討・準備を行う。
○実務への適用については、地震発生後の査定実務や被災されたお客さまの
おかれる状況などを踏まえた電話ヒ アリングフローやヒアリングの内容、建物
所在地の震度情報の入手方法等の検討を行う。また、ツール類の整備を行う。
○まず在来軸組工法を対象に検討したため、他の構造等(枠組壁工法や
家財等)での実施可否について検討する。現在は在来軸組工法でこの
簡素化を確立することを優先しているため、他の構造等はその後検討を
実施する予定。
2014年度中:
ツール類の整備を行う
(木造(在来軸組工
法))
①損害状況
申告(自己申
告)方式の拡
大※
※東日本大震
災時に一部構
造等の一部損
事案のみ実施
済
対象範囲
・すべての構造
・一部損と半損
2015年度以降:
その他の構造について
対応を行う。
・すべての構造
・すべての損害区
分
2014年度中:
各保険会社で使用可能
な状態になる予定
その後:
他の構造等(枠組壁工
法や家財等)での実施
可否について検討する
・木造(在来軸組
工法)
・木造(在来軸組
工法)の検討の後、
他の構造等の検
討を実施
・すべての損害区
分(木造(在来軸
組工法の場合))
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5.査定の簡素化の定量的な観点からの検討
○実施する簡素化のうち、導入に向けた準備が進んでいる「損害状況申告(自己申告)方式の拡大」および 「モバイル端末による現場立会調査
方式の新設」について、定量的な効果を試算しました。
○首都直下地震を想定したうえで、具体的には次の手法で行いました。なお、想定のモデルは以下のとおりです。
・簡素化しない場合と簡素化を実施した場合で、それぞれの1日当たりの調査件数を試算したうえで、当該試算結果を用いて受付対完了率
(そのときの受付件数に対する調査完了件数の割合)が80%に到達する時点がどのように変化するかを確認しました。
【定量的な観点からの検討モデル】
■想定地震 :首都直下地震
■受付件数 :286万件
※2014年の損害保険料率算出機構による被害想定の要調査件数
■実調要員 :最大5,500人(各社動員計画調査による)
■1日あたりの立会調査件数(平均):2.84件(東日本大震災での業務フローを参考に推定)
○いずれの簡素化案についても、簡素化を実施した場合の方が受付対完了率が80%に到達する時点が早くなるという試算結果でした。
※表の数字は、簡素化しない場合の受付対完了率が80%に到達する日数と簡素化をした場合のそれぞれの受付対完了率が80%に到達する日数との
増減率(マイナスであればより早いことを示す)
①損害状況申告
(自己申告)方式の拡大
▲20%程度
②モバイル端末による
現場立会調査方式の新設
▲7%程度
③簡素化①と②を
両方実施した場合
▲24%程度
※総調査件数314.6万件(=「被害想定の調査件数(286万件)」+再立会件数(28.6万件)」。再立会率は東日本大震災のサンプル調査から10%と設定。
区分細分化を実施
▲20%程度
▲5%程度
▲25%程度
※総調査件数330.33万件(=「被害想定の調査件数(286万件)」+再立会件数(44.33万件)」。区分細分化は、半損部分が分割されると仮定。
定量的な効果の試算結果の留意点
○この試算は、要員の招集率や稼働率、調査に必要な時間などの前提について、一定の仮定を置いたうえで行ったものです。
○この試算結果は、簡素化の効果の有無を定量的に確認することを目的とするものであって、実際に地震が発生した時に簡素化の効果が
そのとおり現れることを示したものではありません。
○前提は、首都直下地震等の巨大地震が発生した場合には、被害状況により変化します。このため、実際の地震発生時には、損害調査に
必要な日数が変動(増加)する可能性があります。
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