2015/2/4 BCP 策定・見直しに対する耐性設計の適用について (株)ヒルベット・ソリューション 小山 隆 1.はじめに 「事業中断リスクに対する耐性設計について」では、単一の資産(社会インフラ、外部サービス、 施設・設備、人、装置、情報、部品・材料、製品等)が機能停止した場合の影響を評価しましたが、 ここでは大規模災害等で複数の資産が同時に機能停止した場合の影響をプロダクトベースの設 計方法を用いて評価し、これを BCP の策定や見直しに適用してみたいと思います。 *)耐性設計およびプロダクトベース設計方法の説明は、「事業中断リスクに対する耐性設計 について」をご参照ください。 2.対象モデル 対象モデルは、「事業中断リスクに対する耐性設計について」で使用したものと同じ仮想企業の モデルを使用しています。ただし在庫は、各工場とも部品、検査前の製品、検査後の製品を各々 10 日分置いてあるものとします。図表1に、仮想企業のモデルを示します。 *)対象モデルの具体的な内容は、「事業中断リスクに対する耐性設計について」をご参照 くだ さい。 3.被災シナリオ 被災シナリオは、首都圏直下型の地震が発生して、図表2のような被害が発生したものとします。 4.シミュレーション結果 図表3には、平常時と上記被災シナリオを想定したシミュレーション結果を示します。各画面には、 各拠点における業務、プロセス、部品、製品在庫や一部の社会インフラ、データーの10日目から 29日目、40日目から59日目、70日目から89日目までの遷移状況を示します。図表4には、1 日目から100日目までの製品(運送業者1)と製品(運送業者2)、すなわち、A 工場と B 工場の 平常時における累積出荷量と被災時の累積出荷量を示します。また図表5には、25日目、55日 目、85日目の A 工場と B 工場の平常時における累積出荷量と被災時の累積出荷量との差を示 します。 5.結果の検討 シミュレーション結果を見ると、被災における出荷の減少量は100単位で、これは約17日分の 出荷量の減少にあたります。このうち A 工場は80単位で、B 工場は20単位です。B 工場からの 出荷量(製品(運送業者2))を見てみると、停止しているのは発災直後から5日間で、1 日4単位 の出荷量なので、この停止期間の分が B 工場の減少量となります。この原因は納品先の道路 (埼玉県)が5日間不通になることによります。A 工場の80単位の内訳ですが、まず発災直後か ら30日間の停止による60単位の減少と、51日目から70日目の2単位ではなく、1単位ずつに よる20単位の減少となっています。最初の30日間の停止は5日間の電力と通信網の停止と、そ の後の LAN が使用できず、データーセンターにある ERP にアクセスできないため、全業務が停 止状態になるためです。後の20日間の停止は、2台のうちの1台の製造装置と検査装置が修理 のために停止しているためです。41日目から50日目は製造装置と検査装置とも各1台が停止し ているのに1単位ではなく2単位ずつの増加となっていますが、これは検査後の製品在庫が10 単位あるのと、他の 1 台の製造装置と検査装置で 1 日1単位、10日で10単位の製品を製造し ているためです。これらの結果から、ここで分析の対象とした企業では、首都圏直下型の地震に おいては、A 工場の製造装置や検査装置のみでなくルータ等の LAN 関連装置に対する対策が 喫緊の検討課題となることがわかります。 6.まとめ 図表6には、A 工場の製造業務における復旧行動計画の一部を示します。この例では製造業務 に関連する資産の被災、復旧状況を見ながら、時系列で復旧行動の検討をしています。これを 各業務ごとに検討することにより、全社的に整合性のとれた復旧行動計画を策定することができ ます。そして、これらをさまざまな被災シナリオに適用することにより、より実効性の高い BCP の 策定や見直しにも利用することができます。 図表1.分析対象モデル 図表2. 被災シナリオ 図表3.シミュレーション結果 平常時(25日) 平常時(25日) 平常時(55日) 平常時(55日) 平常時(85日) 平常時(85日) 被災時(25日) 被災時(25日) 被災時(55日) 被災時(55日) 被災時(85日) 被災時(85日) 図表4. 被災時における平常時の累積出荷量との比較 平常時 被災時 A 工場 B 工場 図表5. 被災時における平常時の累積出荷量との差 図表6.業務復旧行動計画
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