教育センターWeb通信12月24日号

教育センター WEB 通信
平成 26年12月24日号
(第 45 号)
今年の研修グループの漢字は「活」としています。この字の成り立ちには諸説ありますが、
“水が勢いよく流れるようす”を表しているようです。そこから、「活用」のように“持っ
ている力をうまく発揮させる”という意味にもなります。
この漢字のもつ“生命力に満ちたイメージ”の研修グループをめざしています。潜在して
いる優れた教育実践や高い指導力をもった教員を講師とした研修を一層進めるだけでなく、
新たな視点からの研修の創出に挑みます。
本号では、家庭学習によって子どもがもつ可能性を開花させるための方策や、今ある教育
資源を見直し活用した 2 校の取組を紹介します。
「家庭学習力が生きる力の幹になる」(教員採用・育成マネージャー
石井雅彦)
今年に入って、家庭学習(宿題)の重要性について考えさせられる機会があった。
ひとつは、『調査報告「学力格差」の実態』(岩波ブックレット、2014 年 6 月)である。府下小中学校
39 校で実施した独自の学力調査結果を、阪大の研究グループが教育社会学的に考察した著作である。
「家庭の教育的環境」「通塾」「学習習慣」など多くのの内容と学力の関係を調べた結果、「家で 30 分
以上勉強する」という項目との相関が強く、たとえ家庭環境が厳しくても、質・量ともに充実した宿題を出し
ている学校が学力を伸ばしているというデータが報告されている。
いまひとつは、新規採用教員授業参観のため学校訪問した際の校長と
の懇談である。「新規採用教員は真面目だが、進んで学ぼうとする姿勢や
状況を改善しようとする姿勢が弱い。」 そんな声が多い。「学校教育が
教え込み中心で主体的な学びを育ててこなかったことに問題があるのでは」
という意見も聞いた。自主学習ノートの指導のように子ども自身が学習内容
を自己決定するという取り組みも進められているが、学校全体としての組織的な実践は少ない。
さて、家庭学習は、その中身から次の2つに大別できる
① 学習内容を学校(教師)が決定するもの(授業を補完するための学習、プリント類、計算・漢字ドリ
ル、教科書の音読、問題集など)
② 学習内容を子ども自らが決定するもの(自主学習ノート、読書、主体的な予習や復習、定期テスト
等に向けた学習、部活ノートなど)
① ②ともに重要である。ゲームや SNS などの誘惑に負けず、毎日学習することは、子どもたちの意志の
強さを育て、学習習慣を形成する。小中 9 年間の視点からすると、小学校低学年では①の比重が高いと
考えられるが、この時期から「学習内容を自己決定する習慣」もつけていきたい。
学校教育の中心は授業であり、そのなかで子どもの主体性な学びを伸ばすことは可能である。しかし、学
習内容は「大人」の側で決められている。一方、②の家庭学習では、内容や方法を「子ども」が自己決定
することができる。自分自身をふりかえり、現状を的確に分析し、方向性を明確にし、強い意志で取り組も
うとする力(生きる力)を育てるうえで、②の家庭学習はとても重要な役割を持っているのではないか。
授業は、「生きる力」の根っこを育て、家庭学習こそが「生きる力」の幹になるのではないかと考えている。
学校での取り組み報告
○金岡南小学校
「ノートグランプリ」~子どもの学びと自主学習を支えるノートづくり~
金岡南小学校では、自学自習の意識や意欲を高め、ノート
指導の充実を図るため、日々の授業や家庭での自主学習で
使用するノートの指導に、継続的に取り組んでいます。指導
に際して、各学年に応じた「ノート指導のポイント」を設定し、
系統的な指導を行っています。
ノートグランプリを1年に2回おこなっていますが、クラスでグラン
プリに出展するノートを決める時や、出展されたノートを見ることで
友だちのノートのよさを学ぶことができます。具体的には考えた筋
道や大事なことの記述形式や色や絵図の使い方等を学び、自ら
のノート作りに生かしており、学習意欲、思考力・表現力の向上にもつながっています。保護者からは「展
示されているノートをみて、家庭での自主学習にどのように関わればいいか、具体的にわかりました。」という
感想もありました。教員も、それぞれノートから、指導方法の共有ができ、研修にもなっています。
ノートグランプリは子どもたちの日々の頑張りを励ます、教員、保護者が一体となった子どもの学びを支え
る取組の一環です。
○月州中学校
「バディシステム」~初任者・若手教員の育成体制の構築~
月州中学校では、初任者・若手教員の育成に向けて、独自の取組を行っています。経験年数4年~
6年を中心とした教員が初任者とペアになり、初任者への指導や相談を行うなど、初任者の育成に関わっ
ています。この取組を月州中学校では「バディシステム」と呼んでおり、ペアとなる教員は、初任者の担当学
年や教科以外から決定します。企業研修からヒントを得て今年度から取り組んでいるシステムです。初任
者とペアになる教員の役割は、日に1回、初任者に声をかけて様子を確認したり、月1回の定例会で初
任者の相談を受けたり、学校チームの仲間として支えています。
初任者・若手教員等の育成体制
・日々の関わり
・月 1 回の定例会
チーム力の向上
・情報の共有
・指導観の統一
定例会では、生徒指導や学校行事など共通
のテーマについて話し合い、指導方法などの共通
理解や各課題についての情報の共有化に役立っ
ています。初任者は、具体的な指導方法や計画
的な指導スケジュール管理など、先輩教員の経
験をもとにしたアドバイスから学ぶことができます。
また、ペアとなる教員が先輩教員としての自覚を
若手教員等
・意欲の向上
・使命感の再認識
初任者
・指導力の向上
・不安の解消
持ち更なる専門性の向上をめざして研修意識
を高めることにもなっています。