PIO−NETから - 国民生活センター

インターネットで申し込む手配旅行をめぐる消費者トラブル
特集
インターネットで申し込む
3
手配旅行に関する
消費生活相談の概要 ― PIO−NET から ―
今回は、ネットで申込みを行う海外手配旅行、
1. 相談件数の推移
国内手配旅行の相談について、その傾向をまと
めました。
PIO−NET * によると、全国の消費生活セン
ネットで申込みを行う海外手配旅行
(以下、
ター等に寄せられた海外手配旅行に関する相談
件数は、2009 年度~2014 年度までの約5年間
海外)
に関する相談件数は、2009 年度~ 2014
で、合計2,920件です。そのうち、インターネッ
年度までの約5年間で、合計 1,365 件です。相
ト(以下、ネット)
による申込みについての相談
談件数の推移をみると、2010 年度の伸びが最
は、全体の 46.7%を占めています。そして、
も大きく
(前年度比 88.8%増)
、2009 年度には
2009 年度以降は年々増加傾向にあり、2012
116 件でしたが、2010 年度には 219 件の相談
年度以降 50%を超えています
(図1)。
が寄せられています。2013 年度には 273 件と
最も多くの相談が寄せられ
(前年度比 2.2%増)
、
一方、国内手配旅行に関する相談件数は、
2009 年度以降増加しています
(図1)
。
2009 年度~2014 年度までの約5年間で合計
1,531 件です。そのうち、ネットによる申込み
一方、ネットで申込みを行う国内手配旅行
(以
についての相談は、全体の 41.7%を占めていま
下、国内 )に関する 相 談 件 数 は、2009 年 度 ~
す。2012 年度には 50%を超えました
(図1)
。
2014 年度までの約 5 年間で、合計 639 件です。
相談件数の推移をみると、2012 年度の伸びが
最も大きく
(前年度比 91.1%増)
、2011 年度に
(件数)
600
544
533
500
300
195
0
219
116
65
2009
談が寄せられています。その後も 2013 年度に
は 182 件
(前年度比 20.5%増)と増加傾向にあ
364
274
100
は 79 件でしたが、2012 年度には 151 件の相
518
419
399
400
200
507
り、多くの相談が寄せられています
(図1)
。
290
235
255
267
182
151
85
79
2010
2011
国内手配旅行全体
ネットによる申込み(国内)
273
2012
2013
235
173
2. 相談の傾向
77
⑴契約当事者の属性
2014 (年度)
①年代別・職業別
海外手配旅行全体
ネットによる申込み(海外)
契約当事者を年代別にみると、海外は20 歳代
253 件
(20.0%)
、30 歳 代 382 件
(30.2%)
、40 歳
図1 海外手配旅行、国内手配旅行に関する相談件数
代277件
(21.9%)
、50歳代194件
(15.4%)で、
* PIO−NET
(パイオネット:全国消費生活情報ネットワーク・システ
ム)とは、国民生活センターと全国の消費生活センター等をオンラ
インネットワークで結び、消費生活に関する情報を蓄積している
データベースのこと。データはいずれも 2014 年 11 月 30 日まで
の登録分。小数第2位以下を四捨五入しているため、合計が 100
にならないことがある。
国内は 20 歳代 121 件
(20.2%)
、30 歳代 166 件
(27.8%)
、40 歳代 157 件
(26.3%)
、50 歳代 86
件
(14.4%)で、国内、海外とも 20~40 歳代で
2015.1
国民生活
9
インターネットで申し込む手配旅行をめぐる消費者トラブル
特集 3 インターネットで申し込む手配旅行に関する消費生活相談の概要 ― PIO−NETから―
31件
2.5%
106件
8.4%
194件
15.4%
20件
1.6%
253件
20.0%
18件
1.6%
(n=1,263)
102件
9.1%
10歳代
20歳代
41件
6.9%
86件
14.4%
382件
30.2%
1000~1万円未満
11件
1.8%
121件
20.2%
50歳代
5万~10万円未満
10万~50万円未満
60歳代
50万~100万円未満
70歳以上
100万~500万円未満
図4 契約購入金額
(海外手配旅行)
5件
1.0%
(n=598)
72件
14.4%
10歳代
20歳代
30歳代
166件
27.8%
244件
21.7%
549件
48.8%
10件
2.0%
50歳代
(n=499)
58件
11.6%
1000円未満
1000~1万円未満
1万~5万円未満
128件
25.7%
40歳代
157件
26.3%
1000円未満
168件
14.9%
1万~5万円未満
図2 契約当事者の年代
(海外手配旅行)
16件
2.7%
(n=1,124)
41件
3.6%
30歳代
40歳代
277件
21.9%
2件
0.2%
5万~10万円未満
226件
45.3%
60歳代
10万~50万円未満
50万~100万円未満
70歳以上
図3 契約当事者の年代
(国内手配旅行)
図5 契約購入金額
(国内手配旅行)
全体の約4分の3を占めています
(不明・無回
海外手配旅行
答を除く)
(図2、3)。
国内手配旅行
1
解約料
500 件
36.6%
解約料
206 件
32.2%
2
解約(全般) 495 件
36.3%
解約(全般) 204 件
31.9%
(65.4%)
、国内が給与生活者 371件
(63.2%)
で、
3
返金
434 件
31.8%
電子広告
171 件
26.8%
海外および国内のいずれにおいても
「給与生活
4
電子広告
341 件
25.0%
返金
170 件
26.6%
5
約束不履行
226 件
16.6%
連絡不能
123 件
19.2%
職業別でみると、海外が給与生活者 822 件
者」が全体の6割を占めており、労働世代の多
表
くが申込みにネットを利用していることが分か
相談内容の上位とその件数・割合
※複数回答項目。割合は総相談件数を 100 として算出。
ります(団体等、 不 明・ 無 回 答 を 除 く。海外
n=1,257、国内 n=587)
。
②性別
いなどにより金額の分布に幅はありますが、
契約当事者の性別をみると、海外、国内とも
「10 万~50 万円未満」
が 549 件
(48.8%)
と多く、
に女性が半数を超えており、女性が海外 761件
次いで
「5万~10 万円未満」が 244 件
(21.7%)
(56.8%)、国内 338 件
(53.7%)
、男性が海外
です
(不明・無回答を除く)
(図4)
。
579 件(43.2%)
、国内 291 件
(46.3%)で、海
一方国内は、
「1万~5万円未満」が 226 件
外のほうが、女性からの相談が多く寄せられて
(45.3%)
、
「5万~10万円未満」
が128件
(25.7%)
います(団体等、 不 明・ 無 回 答 を 除 く。海外
となっています
(不明・無回答を除く)
(図5)
。
n=1,340、国内 n=629)
。
⑶主な相談内容
⑵契約購入金額
主な相談内容について上位5位までをみると、
海外、国内ともに
「解約料」
「解約
(全般)
「返金」
」
平均契約購入金額は、海外が約 21万円、国内
「電子広告」
に関する相談が目立ちます
(表)
。
が約6万円です。海外は行き先や滞在日数の違
2015.1
国民生活
10
インターネットで申し込む手配旅行をめぐる消費者トラブル
特集 3 インターネットで申し込む手配旅行に関する消費生活相談の概要 ― PIO−NETから―
⑷主な相談事例
格安航空券の価格比較サイトから旅行
1 会社のサイトへ入り、格安航空券を申
し込んだ。業者からメールで
「予約確認
書兼請求書」
が届き、その中に本日が入金の期
限日であること、出発日まで3週間を切って
いるので入金後の手配になること、自己都合
の取消しの場合は入金の有無にかかわらず
キャンセル料を支払うことになると記載され
ていた。入金も発券手続もまだなのにキャン
セル料がかかるのは納得できない。
(20 歳代 男性)
海外旅行に行く4カ月前にインターネッ
3 トで希望のパックツアーをみつけた。
旅行のついでに友人に会うために違う
国に立ち寄りたいと要望し、パックツアーと
帰路の航空券の変更、追加の航空券の手配を
申し込んだ。旅行代金全額を支払った後、旅
行の2カ月くらい前に突然帰路の飛行機が夜
から朝に変更されたため、最終日の観光が
まったくできなくなった。旅行会社がその分
は返金するという一方で、予定通り観光した
いなら、翌朝の便に変更し、追加料金を支払っ
て1泊延長する方法があるという。どちらに
するかと言われたが、どちらを選んでもしわ
寄せがくるので不満。しかし、パックツアー
と思っていたら、実際は手配旅行の契約で、
今キャンセルするとキャンセル料は自主規程
により 100% になるので、行くしかない。
旅行会社に苦情を伝えると、最終日の観光
を別の自由行動の日に入れると提案された。こ
の場合、観光する時間が短縮されるが、利用
しない食事代、車代、ガイド代などの返金はな
いという。自由行動時間や現地滞在時間も減
る。旅行会社の対応に不満。
(40 歳代 男性)
事例
事例
旅行代理店に南米行きの往復航空券を
2 インターネットを使って申し込み、代
金はクレジットカードで決済した。当
初は宿泊なしの乗り継ぎ便だったが、航空会
社の運航スケジュールの都合で乗り継ぎ地で
1泊しなければならなくなり、その宿泊費用
は私の負担だと言われた。航空会社の都合で
変更になったのに、ホテル代を払うのは納得
がいかない。
旅行代理店に予約の取り消しを申し出たと
ころ、キャンセル料として5万円かかると言
われた。苦情を言ったら、旅行代理店が航空
会社に交渉し、3万円に減額された。それで
も解約にはキャンセル料がかかるし、解約し
なければホテル代も支払うことになる。どう
したらいいか。
(20 歳代 女性)
事例
海外 OTA に関する主な相談事例
ることが一般的です。日本国内においても、数
海外 OTA とは?
多くの海外 OTA が事業を展開していますが、
旅行業法の適用を受けないとされているため、
海外 OTA は、営業拠点を海外に置き、イン
トラブルも多発しています。
ターネットを活用して、国境を越えて航空券等
の運送サービスや宿泊施設の手配を行っている
事業者のことです。消費者との間で結ばれる契
事例
海外の旅行業者のサイトで、申込画面
にキャンセル手数料無料と表示がある
ことを確認したうえで、ホテルの宿泊を申し
込み、全額をクレジットカードで決済した。
その後都合が悪くなり、電話で解約を伝えた
ところ、
「解約料がかかる、解約料について
はキャンセルポリシーに記載がある」と言わ
れた。キャンセル手数料無料と表示されてい
るにもかかわらず、キャンセル料が請求され
ることに納得できない。 (40 歳代 男性)
約は事業者の拠点の法律に基づくこととしてい
B
事例
海外の旅行業者のサイトで海外のホテ
ルを予約した。その後解約したら、全
額返金にはならなかった。規約に書いてある
そうだが、日本の旅行業者ならまだ全額返金
になる時期である。日本語で日本人を相手に
商売をしているのに、日本の法律が適用にな
らないのは問題だ。
(60 歳代 男性)
A
2015.1
国民生活
11
(文責:国民生活センター広報部)