デジタル彫刻美術館の誕生と今後

SSN 地図クラブ 2015 年正月例会(公開講座)
2015 年
1月8日
デジタル彫刻美術館の誕生と今後
講師:
橋本
信夫
(1)エクセルによる彫刻データベースの入力と検索
(2)URL 化による彫刻写真の共有
(3)グーグルマップによる彫刻地図コンテンツの制作と活用
概要:道内には開拓の歴史を刻む様々な野外彫刻が各地に多数設置されている。
30 年ほど前、彫刻好きの一市民が北海道の野外彫刻の戸籍を作ろうと思い立
ち、
全道各地を訪ね歩いて約 2,500 点の野外彫刻の写眞と関連資料を収集した。
図 1 北海道における野外彫刻の分布
道央が全体の
ほぼ半分を占
め、次いで道東、
道北、道南の順
であった。
また札幌から
旭川までの国道
12 号 沿 い 市 町
村に厚い分布が
認められた。
その後これらの彫刻資料が仲間に引き継がれるとともにエクセルでデータベ
-ス化され、野外彫刻の基礎台帳として利用可能となった。
さらに 2007 年頃に野外彫刻の写真、素材、設置場所や制作経緯などの基礎情
報が地図上で展開できるようになり、地図コンテンツの制作が開始された。
“デジタル彫刻美術館”の基本構造
現在、データベース化されたこれらの彫刻資料を〝屋根のない美術館”の収
蔵品【左半分】、またグーグルマップ上に公開された彫刻写真や基本情報を展覧
会場の展示品【右半分】とみなし、このバーチャル構造物を「デジタル彫刻美
術館」と名付けて ICT 活用を図ることとした。
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作成 橋本信夫(f1411227 芸術学会 2013 年度パネル)
SSN 地図クラブ 2015 年正月例会(公開講座)
図2
A
デジタル彫刻美術館の資料収蔵庫
エクセルで彫刻の名称、作家名、形状、大きさ、素材、製作年、設置経緯、
所在地、所有者、解説文や文献など多岐にわたる基本情報を入力し、彫刻情
報の検索システムを確立した。
B デジタル彫刻美術館の情報展示場
1. 彫刻写真をフォト蔵または WordPress にアップロードし、URL 化するこ
とでインターネット上での公開に備えた。
2. 2011 年に国土地理院の「電子国土ポータル」が無償公開され,これに伴っ
て彫刻の基本台帳を彫刻地図コンテンツとして地図上で簡単に検索できる
ばかりでなく、インターネットによる公開が可能となった。
現在はグーグル・アース/マップを活用し、彫刻設置場所から直接、携帯電
話や QR コードなど、クラウドコンピューテングによる野外彫刻情報の検索シ
ステムの構築も図っている
「地域デジタル彫刻美術館」の構築
そこでこれら各地の野外彫刻資料をもとに、地区別の地図コンテンツを作成
し、ICT による地域文化の特性を生かした「地域デジタル彫刻美術館」の開設
と運営を、赤平市をモデルにして試行中である。
これらは美術館のない市町村でも、野外彫刻以外の記念碑や由緒ある歴史的
建造物など「その場所でなければ見られない」特別な耐久文化財情報も加えて
作ることができる。さらに各地域内の市町村が連携することによって地域を広
くカバーする経済的で魅力的な美術館の構築も可能である。インターネットの
メリットは、各自のパソコン技術が低くても皆で資料や技術を持ち寄り、一つ
の公開目的に結集した場合の効果が極めて大きいところにある。
郷土史に彩られた市町村毎のアート情報が「アートツーリズム」の波に乗っ
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作成 橋本信夫(f1411227 芸術学会 2013 年度パネル)
SSN 地図クラブ 2015 年正月例会(公開講座)
て観光資源や美術教材として広く活用された場合のメリットは図り知れないも
のと思われる
図3
図4
北海道における野外彫刻の分布(グーグルマップ)
赤平市の野外彫刻
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作成 橋本信夫(f1411227 芸術学会 2013 年度パネル)